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DAISY活用事例交換セミナー

DAISY活用事例交換セミナーについて
全国LD(学習障害)親の会
井上芳郎

今回のDAISY活用事例交換セミナーでの各地の実践例の報告を受け、以下の三点に関して下記のような感想を持った。
まず第一点目は、DAISYを活用する上でもっとも基本となるソフトウェアとハードウェアの問題である。これに関しては最近のさまざまな技術革新やバージョンアップにより、今後とも大いに期待が持てるとの印象を受けた。利用者にとって、より使いやすいシステムへとさらに進化し続けていくものと思う。

次に第二点目としては、コンテンツ作成のための人的資源の問題である。これについても、DAISYに対する認識が深まるにつれ、制作講習会の活発化であるとか、制作者の方たちの組織化により技術の蓄積や共有化が進み、将来に向けて明るい展望が開けつつあるように感じた。すでにいくつかの地域では、コンテンツ制作者の方々を中心としたNPO組織なども立ち上がっており、様々な活動が開始されているようである。

最後に第三点目の問題として、著作権法などの社会的制度の課題があげられる。人間自身が作り出した、このような制度上の壁、言い換えると人為的なバリアが、もっとも乗り越えにくいものであるとしたら、これは大いなる問題であると言うべきである。しかしその一方、制度そのもの自体は社会全体の合意形成によって、いくらでも変更可能なものであるという点も銘記すべきことだと思う。

現行の日本の著作権法では、障害を持つ方達のための情報保障の観点が諸外国に比べると大きく立ち後れており、例えば正常な視力がありながら、文字情報を取り入れることに困難のある人たちに対しては、まったく配慮がされていない状態である。
もともと日本の著作権法でいう「障害者」には、聴覚障害と視覚障害の方たちしか想定されておらず、それ以外の情報保障が必要な方たちへの規定がされていないのである。このことは、諸外国と比較した場合、特に日本の制度が大きく遅れを取っている部分であり、今後早急に解決を図らなければならない点でもある。

そのためには視覚・聴覚障害の方たち以外にも、多くの情報保障を必要としてる方たちが存在するという事実を、広く社会一般に対し知らしめることや、諸外国ですでに行われている情報保障制度や方策について紹介することなどが必要だと思われる。
今後日本でも、主に学校教育の場面を中心として、LD(学習障害)等に対する支援課題に対する取り組みが展開されることになる。このような取り組みのなか、情報保障に関する認識が深まることで、さらに道が開けていくことを強く望みたい。親の会としても多くの支援者の方たちの協力を得ながら、さらに活動を強めていく必要性を感じさせられた。