音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

文化審議会著作権分科会

「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理」に関する意見

障害者放送協議会

 

第1章はじめに(総論)(1〜3ページ)

障害者福祉関係の課題については、すでに「平成19年度・中間まとめ」で一定の結論が示されたものの、「最終まとめ」にまで至らず、具体的な法改正についても大部分が先送りとなってしまった。まことに残念で遺憾なことと言わざるをえない。

「平成19年度・中間まとめ」で示された検討結果については、一日も早い法改正の実現を要請するものである。

 

第1章はじめに(3ページ)

第3章保護期間の在り方について

第3節各論点についての意見の整理(92ページ)

著作権の保護期間に関しては、現状の障害者等に対する情報保障が不十分な環境のまま延長されることになると、さらに現状以上に悪化することにつながるので賛成しかねる。主に著作権利者サイドから「諸外国並み」にするようにとの要望が出されているが、まず「諸外国並み」にされるべきなのは、障害者等に対する情報保障の環境整備であると考える。

 

第2章過去の著作物等の利用の円滑化

第3節 図書館等での障害者等サービスにおける著作者不明等の対応について(23ページ)

著作権者そのものが不明、著作権者への連絡先が不明、連絡が取れても許諾そのものが拒絶される等の理由から、公共図書館、国会図書館等での障害者サービスに支障が生じている例がある。このことは、障害者の著作物や情報にアクセスする権利が侵害されている看過することのできない事例と考える。障害等の有無にかかわらず、全ての国民が情報や著作物へ自由にアクセスすることを保障する意味からも、著作権法上の規定を作り早急に解決されるべきである。

 

第2章過去の著作物等の利用の円滑化

第4節次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(40ページ)

著作物のアーカイブ化に際しては、アーカイブされる著作物本体についてはもちろんのこと、アーカイブの公開システムについても障害の有無にかかわらず、すべての人に対してアクセス可能なものとすべきである。

例えばテレビ番組や映画等のアーカイブについては、聴覚障害者等向けの字幕・手話の付与、視覚障害者等向けの音声解説の付与がされるべきである。また書籍など印刷物については、画像ファイル形式のみでアーカイブ化するのではなく、OCR技術等でテキストデータ化したものも付与されるべきである。

公的な非営利目的のアーカイブはもちろんのこと、営利目的のアーカイブであっても、このことが保障されるよう著作権法上の規定が作られるべきである。

 

第2章過去の著作物等の利用の円滑化方策について

第5節その他の課題1意思表示システムの在り方について(49ページ)

自由利用マーク等の意思表示システムは、現状では実効性のあるものとはなっていない。国や地方公共団体、独立行政法人等の出版物やウェブサイト等がまず率先し、このような意思表示システムを活用し広めることで、一般にも周知徹底されるべきである。そのための著作権法上の意思表示システムについての規定が作られるべきである。

いわゆる「コンテンツの二次利用」等について。(5ページ、19ページ、20ページ、22ページ他)

特に「緊急災害時等の著作物利用」について。(※今回の中間整理案には「緊急災害時等の著作物利用」として項目立てはされていない。)

 

障害者等への緊急災害時の情報保障はいまだに不十分である。対応策として放送事業者以外の第三者が緊急災害発生時等に、放映中や放映済みのテレビ番組について、視覚障害者等向けの音声解説や聴覚障害者等向けの字幕や手話を付与して送信することなど、最新のデジタルネットワーク技術を使うことで十分可能となってきている。すでに聴覚障害者向けのリアルタイム字幕や、視覚障害向けの点字データ、録音図書の音声データの公衆送信については、著作権法上も著作権者の許諾なしでも可能とされているが、その利用対象者の範囲等については著作権法上の制約として限定的なものとされている。緊急災害時の情報保障は生命・財産の保護に関わる喫緊の課題であり、著作権法上の対応が早急にされるべきである。

そして、この件については必ずしも個別の限定列挙的な権利制限規定によらずとも、緊急時の人命保護等に関わるという場面を考慮するならば、知的財産戦略本部等で検討されている「包括的な権利制限規定(日本版フェアユース規定)」により対処することが可能であるし、「フェアユース」の理念そのものにも合致するものと考える。