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デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告案に対する意見

<法人・団体用>

 

法人・団体名: 障害者放送協議会

意見 1

報告案における該当項目: I コンテンツの流通促進方策

該当ページ 2ページ

意見の概要(80字以内)

デジタルコンテンツを障害者の情報保障に活用できるよう、権利処理の促進や、アクセス可能な形式での流通を促進するような法的対応策を取るべきである。

意見の全文

報告案では、音楽・映像分野でのコンテンツの流通促進を中心にした検討がされている。しかしデジタルネットワーク上では、書籍・雑誌・新聞等の従来紙媒体でしか流通してこなかったコンテンツも、デジタルデータの形で流通しており、このことが障害者の情報保障促進にもつながっていると考えられる。このような障害者の情報保障促進という観点からの、契約による権利処理促進や法的対応策についての検討も必要である。さらに障害者にとって、アクセス可能な形式のコンテンツ流通をより促進するための、法的な担保やコンテンツ提供や流通に係わる事業主体に対し、一定のインセンティブを与えるような制度についても検討すべきである。

放送番組については、総務省の視聴覚障害者向け放送普及指針では「平成29年度(2017年度)までに、字幕付与可能な放送番組のすべてに字幕付与されることを目標とする。」とされているが、「権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組」を除外対象にしている。そもそも「権利処理上の理由」により障害者のアクセスが除外されていることは、障害者の情報保障よりも著作権者の権利保護を優先するもので、政府として批准を進めている「国連障害者の権利条約」の理念にも反するものと言わざるを得ない。

このような除外が生じないよう、障害者にとってもアクセス可能であるコンテンツの流通促進を最優先課題とするべきである。

 

意見 2

報告案における該当項目: II 権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入

該当ページ 9ページ

意見の概要(80字以内)

フェアユースの考え方は、「商用利用」のみならず、障害者の情報保障のためにも活用できるよう導入すべきである。

意見の全文

限定列挙的な著作者の権利制限のみで、障害者への情報保障を実現していくことには限界がある。あらゆる障害種別、また障害の重複、そして今後さらに多様化するであろう著作物利用の場面や態様等に対応しきれるものではない。また現在主流となっているICF(WHO国際生活機能分類)による考え方に照らせば、障害者にとってアクセス不可能な形式でしか提供されていない著作物を、アクセス可能な形式に変換すれば「環境因子」が整えられ、「個人の活動の制限や社会参加への制約」が軽減されることにつながる。

「障害等の理由でアクセスが困難な形式でしか提供されていない著作物を、アクセスできる形式に『変換』する行為は、『複製』とは見なさず著作権侵害とはしない。」などの「包括的な権利制限規定」を設けるべきであり、これとあわせてまだ不十分な個別の限定列挙的な権利制限規定についても、整備していく必要がある。

報告案では、もっぱら「商用利用」の際の検討が行われているが、障害者の情報保障に関しては、以上をふまえ権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入していくべきである。

 

意見 3

報告案における該当項目: III−1 コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方について

該当ページ 15ページ

意見の概要(80字以内)

コンテンツの技術的な制限手段の回避を規制することで、障害者の情報保障が妨げられないよう、慎重に検討すべきである。

意見の全文

報告案では「著作権侵害コンテンツの蔓延を防ぎ、ビジネスの対価が正当に権利者へ還元される環境を作る」ために、「コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制」を強化すべきとの見解が示されている。しかし「回避に対する規制」強化が障害者の情報保障促進の妨げとなることのないよう、慎重に検討を進められるべきである。

 

意見 4

報告案における該当項目: III−2 インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方について

該当ページ 18ページ

意見の概要(80字以内)

プロバイダの責任を強化することが、障害者の情報保障の妨げとならないよう、慎重に検討すべきである。

意見の全文

報告案ではインターネット・サービス・プロバイダの責任を、強化する旨の見解が示されている。プロバイダの責任を強化することが、障害者の情報保障促進の妨げとなることのないよう、慎重に検討を進めるべきである。

 

意見 5

報告案における該当項目: III−4 国際的な制度調和等について

該当ページ 26ページ

意見の概要(80字以内)

わが国が署名し、批准の準備を進めている「障害者権利条約」第30条3の趣旨を最大限尊重し、障害者のある人もない人も等しく文化的生活を送れるよう法改正や制度設計をすべきである。

意見の全文

国際的な制度調和を考慮する際に、「国連障害者の権利条約」第30条3でうたわれている「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」という趣旨を最大限尊重すべきである。そして障害者が自由に文化的活動に参加し文化の発展に寄与できるよう、法改正や制度設計を推進すべきである。

 

以上