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国際シンポジウム「国際協力と障害の問題に人権の枠組みを」

国際協力に関するパネルディスカッション:まとめ

国連ESCAP障害プロジェクト専門官  高嶺豊

午前中の発表で、障害者分野でも様々な国際協力が展開されていることが報告された。その中で、国際協力に対して批判的な意見も無い訳ではないとの報告があった。多くの批判は、国内の障害者問題が十分に解決していないのに何故外国の障害者にまで支援の手を伸ばす必要があるのかと言う点に集約される。では、どのようにして、このような批判に対応し、そして、国際協力の意義はどこにあるのかが初めに討論された。
 まず、指摘されたのは、国の経済や社会福祉政策が国際会議での議論や他国の首脳の意見に大きくに影響されることが多くなっていると言うこと。障害者問題の国の施策の流れを、きちんと把握し、対応していくためには、国際的な場での、自国の立場や、他の国からの影響を十分に理解する必要がある。そのために、国際的な情報を得るためのアンテナを伸ばし、他国の障害者関係団体との意見交換や交流が不可欠になる、と言う意見があった。
 また、国際協力は、援助する側、される側にとって相互学習のプロセスであるとの指摘があった。だから、援助する側が一方的にやってあげるという図式は成り立たない。献身的に活動する開発途上国の障害者の姿に感動することも度々あるとの発言があった。さらに、隣国の人々の苦しみを無視できない人道的な立場もある。自分達が培った、経験、ノウハウや情報が途上国の障害者にとっての問題解決のきっかけになることがあれば国際協力の意義がある。このように、団体としてあるいは個人として国際協力に関わる意義が多義に渡ることが分かった。
次に、援助対象国やパートナーとしての団体の選択の基準が話し会われた。また、援助対象のパートナーに求められているものなどについて討論された。 援助のきっかけは、個人的な縁、支援を要請されたから援助を始めるケースもある。また、資金にが限られているので、対象を選択する必要がある。オーストラリアは大平洋諸国、カナダは南米に優先順位をおいているように、国によって地理的に好まれる地域があることが分かった。援助のパートナーとして重要な要素は、同じ価値観を共有することである。障害者問題がただ単にサービスを提供することから、市民権、人権問題として捉えられてきているが、このような価値観を共有する団体と協力して行きたいとの意見があった。また、支援する条件として、パートナーとなる団体が民主的な団体であるとが大切な条件である。
 最近、NGOの柔軟な活動ができる利点が指摘されて、NGOへの期待が高まっているが、障害者の国際協力分野でのNGOの役割について議論された。
特に、政府レベルでは障害者問題の優先順位は低く、開発援助の対象として上がりづらい。一方、NGOは、小規模な支援から始められ、障害者問題にも柔軟に対応できる。最近は、国連や政府もNGOを開発問題の重要なパートナーとして認識している。しかし、まだ NGOの規模は小さく、人的、資金的にも限られている。今後NGOの国際開発援助体制の強化が必要になっているとの意見があった。これに対して、国際金融機関のNGOの役割に対する認識に対して懸念が表明された。国際金融機関の指導により、最近、政府機関が公的サービスを民間セクターに依託する傾向があり、民営化により、規制が弱まりサービスの質の低下が懸念されるとの指摘があった。
 次に、会場からのコメントで、障害者へのサービス提供団体には、資金的な援助が豊富であるが、障害者自身の自助団体の組織運営や維持、さらに能力強化(エンパワメント)への援助がほとんどないとの発言があった。これに関して、パネリストから、国際援助機関の資金援助の優先順位をサービス提供団体から、障害者のエンパワメントや、人材を育成する団体、障害者の権利や民主主義を進める団体に変換する必要性がある、との意見が表明された。また、障害者自身のニーズを適格に把握するためには、サービス提供団体の運営に障害者自身が直接かかわっていることを援助の条件にすることを考えられるべきだとの意見があった。
 障害者のエンパワメントを強化するために、障害者自身の国際協力参加の意義が話し合われた。日本において、政府のイニシャチブで障害者の国際協力への参加が検討されている。日本でも、障害当事者のマネージメントスキルを高めたり、国際協力への参加を進めるための方策の必要性が認識されつつあるとの発言があり、今後、どのように実践していくかが課題になるとの報告があった。
障害者自助団体の国際協力活動に関しては、すでにスウェーデンでは本格的に実践されている。障害者自身が実際に障害分野の専門家、フィールドワーカーとして、途上国に派遣されることが重要である。SHIAの代表から、SHIAでは障害を考慮にいれた短期専門家派遣の予算がつくられており、派遣される専門家は殆ど障害者当事者だととの報告があった。障害者自身が直接途上国での活動に参加することにより、障害者の視点からの支援ができることの大切さが指摘された。
 さて、先進国と開発途上国の経済格差は益々広がる傾向にあるが、その格差を少なくするためにも、情報のアクセスの格差を少なくし、情報の共有を進める必要がある。そのために障害者の分野でも情報を共有するための世界的な基準つくりが始まっているとの報告があった。DAISY(digital audio information system)は、最初から開発途上国でも適応できる基準として日本の支援で開発された。このソフトは、途上国の使用者には無料で配布されている。現在タイの障害者団体の協力を得てアジア地域にDAISYを広げる計画がある。
最後に、各パネリストから発言があり、障害者の国際協力分野で、今後日本の活躍を大いに期待するとの声が多く聞かれた。