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「障害者のための情報保障」セミナー報告書
デジタルテレビ放送の情報アクセス

講演1 情報通信政策とアクセシビリティ

飯島 信也
総務省情報通信政策局情報通信利用促進課長

みなさん、こんにちは。総務省情報通信政策局の飯島と申します。今日はお招き頂きまして有難うございます。少しお時間を頂きまして、政府全体の情報通信政策と、我々総務省が取り組んでおりますアクセシビリティについての施策の概要を説明させて頂きます。

私がおります情報通信利用促進課は、総務省の中でITの人材育成や、IT分野での高齢者・障害者の方への支援といった仕事をしております。この2つの仕事は、いわばITを利用する人の視点で取り組んでいる施策と言えるかと思います。

今日お話しします中身ですが、大きく3つありまして、1つ目にインターネットの利用・普及の状況とデジタルデバイドの現状についてご説明します。2つ目として、政府全体の情報通信政策の概要を紹介し、さらに最近総務省が新しくu-Japan構想というものを打ち出しておりまして、これについても簡単に紹介させて頂きたいと思います。3つ目に、アクセシビリティの確保に向けた取り組みとして、総務省が行っております施策を中心に、いくつかご紹介致します。今日のテーマはテレビが中心かと思いますが、それ以外にも、情報通信全般のアクセシビリティにつきましてお話しをさせて頂きたいと思います。

急速に進むインターネットの利用

まず、現状として、インターネットの普及状況をご紹介します。世帯の普及率をみますと、98年に約1割であったのが、2003年には88.1%になり、この5年間に大体1割から9割へと、急速にインターネットが普及してきていることが分かります。1割から9割に普及する期間がわずか5年というのは、大変早いスピードだと思います。色々手元にあるデータをみても、今まで一番早いスピードで普及したのがカラーテレビで、これが6年かかっています。1割から9割にいくのが。その次に早いのが携帯電話で、7年かかっています。あとは電気冷蔵庫が10年。それ以外のものの普及はさらに長い期間がかかっており、インターネットの普及というのが、非常に早いスピードで進んできたのがお分かり頂けるかと思います。
もう一つ、携帯電話の契約の数をみますと、2004年で8,000契約を超えており、そのうち約7,000の契約が、インターネットが使える携帯電話となっております。携帯電話の上でも、インターネットが使える状況が進んできているわけです。

高齢者・障害者のデジタルデバイドの状況

次に、利用する側の人の状況についてご紹介いたします。年齢別の日本の人口構成をみますと、50代の半ばの人口が多く、この団塊の世代の方々がこれから定年を迎えてくるわけです。一方、10歳以下の人口は相対的に小さく、高齢化・少子化が進んでいます。日本の総人口は、この1~2年のうちにピークを迎え、その後は長い期間にわたり減少が続いていく、そんな状況にさしかかっています。また、総人口に占める高齢者の割合をみますと、日本は国際的に見ても比率が高く、今だいたい5人に1人が65歳以上ですが、10年後には4人に1人の割合へと増えるという状況です。

次に、障害者の方の人口の推移をみますと、長期的に、人口は増加を続けております。一つの要因としてありますのは、高齢化が進んできていること。高齢が主な原因となって、体が不自由になる方が増えているのではないかと思います。

このように、高齢者の方、障害者の方、それぞれ人口はかなり増加しております。ところがインターネットの利用の度合いということでは、まだ高齢の方、あるいは障害をお持ちの方の利用というのは、相対的に低い状態にあり、デジタルデバイドが存在している現状があります。ただ一方で、情報通信の技術をうまく使っていくことによって、高齢の方や障害をお持ちの方でも、十分に情報を利用していくことが可能になると考えております。新しい情報通信の技術を上手に活用することによって、高齢の方や障害をお持ちの方が社会に積極的に参加して頂けるような形で、デジタルデバイドの解消をしていくことが重要だと考えております。

2005年を目標とした政府のe-Japan戦略

次に、政府全体の情報通信政策であるe-Japan戦略の概要をご説明いたします。これは、2001年の1月にIT基本法が施行され、内閣にIT戦略本部という組織が立ち上がりました。当時まだ日本の情報化が欧米に比べて遅れをとっていると言われておりましたが、このIT戦略本部におきまして、2005年までに世界最先端のIT国家になる,という目標を掲げたe-Japan戦略が策定されました。まずはインフラ、基盤を整備していくことを重点的に、様々な施策が進められてきました。2003年に戦略の見直しが行われ、e-Japan戦略Ⅱが策定されましたが、これはインフラが整備されてきたことを踏まえ、ITの利活用を重視していく内容になっています。

最新の政策パッケージであるe-Japan重点計画2004の中身をご紹介しますと、大きく4つに分かれています。この中で、デジタルデバイドについては、横断的課題の5つの課題の一つとして挙げられています。具体的に書かれている内容を、e-Japan重点計画2004の中から引用しますと、横断的な課題の3.として「デジタルデバイドの是正」があります。この中に、1の「地理的情報格差の是正」に続いて、2として「年齢・身体的な条件の克服」という項目が記述されています。具体的な施策としては、情報提供のバリアフリー化、公共空間のバリアフリー化、学校のバリアフリー化、それから高齢者・障害者・子供のためのシステム・サービスの開発などが掲げられており、それぞれの省でこのような施策が進められています。

総務省が新たに提案しているu-Japan政策

昨年末に、総務省では、u-Japan政策というものを提案いたしました。e-Japanは2005年までに世界最先端のIT国家を作ろうという戦略ですけれども、2006年以降もさらに政策を進めて、2010年に次世代のICT社会、ユビキタス・ネット社会を実現していこうという構想が、このu-Japan政策です。情報通信のネットワークは、今までナローバンドからブロードバンドへと進んできましたが、さらにこれからはユビキタス・ネットへと進化して、新しいICT社会に向かっていきます。u-Japanというのは、4つのU、ユビキタス、ユニバーサル、ユーザー、ユニーク、で表される特質を備えており、ユニバーサルという特質が、一つの柱になっています。

アクセシビリティ確保に向けた2つのアプローチ

次に、アクセシビリティの確保に向けた取り組みについてご紹介致します。大きくは2つの方向性、2つのアプローチがあると思います。一つは利用環境のユニバーサル化、障害をお持ちの方・高齢の方も含めて、誰もが使いやすい情報通信の環境を作っていくということ。もう一つは、障害をお持ちの方はそれぞれ事情が異なりますので、個別のニーズに合わせた支援をしていくこと。この2つのアプローチが必要で、両方が車の両輪のように、うまく動いていくことが重要だと思います。

アクセシビリティについての規格化

まず、ユニバーサル化の取り組みですが、一つ目として、電気通信機器のアクセシビリティの規格化を進めております。ここで言う電気通信機器といますのは、固定電話やファクシミリ、携帯電話といったものです。これらの機器のアクセシビリティを確保するための規格化について、JIS化や国際提案ということも含めて、取り組んでおります。

これに関連した民間での取り組み例を紹介しますと、携帯電話では、Fomaのらくらくフォンや、ツーカーの骨伝導スピーカー付きの携帯電話といったものがあります。最近では、ツーカーSという、通話専用でディスプレーの無い、簡単な携帯電話というのも売れています。

二つ目は、ウェブのアクセシビリティの規格化で、これは昨年の6月にJISの規格がすでに出来ております。

今、政府全体で電子政府の推進に取り組んでおり、ポータルサイトにより政府の行政サービスのワンストップ化が進められておりますが、JISを踏まえ、こういった政府のウェブについて、アクセシビリティに配慮していくこととなっております。

それから地方自治体でも、電子自治体というのが進められておりますが、自治体の場合、アクセシビリティを高めていく必要性をご理解頂き、いざウェブのアクセシビリティを高めようとしても、具体的にどうしたらいいのか分からない、JIS規格だけではよく分からない、という問題があると聞いております。そういう自治体に対して、使いやすいモデル的な評価方法や評価体制について、総務省で研究致しまして、参考として提示していきたいと思っています。

字幕放送等の普及に向けた取組み

ユニバーサル化の三つ目となりますが、放送分野での取り組みです。放送では字幕放送・解説放送などを充実していくことが重要ですけれども、97年に放送法を一部改正致しまして、字幕番組や解説番組について努力義務が法律に盛り込まれ、また同時に、当時の郵政省が、2007年までに字幕付与可能な放送番組について全て字幕を付ける、という字幕普及目標を出しております。これを受けまして、NHKや民放のキー局を中心に、それぞれの放送局が年次ごとの字幕拡充計画を作りまして、それに沿って字幕番組の拡充が各放送局で今進められています。

総務省と致しましては、字幕や解説番組の制作費の一部を助成することと、各放送局が策定した字幕拡充計画の進捗状況をフォローして公表することを通じまして、各放送局の自主的な取り組みを促進してきております。

字幕番組などの制作費については、独立行政法人情報通信研究機構を通じまして、毎年、助成を行っております。また、字幕放送の実績をみますと、昨年の段階で、字幕を付与できる総放送時間に占める字幕放送の割合は、NHKが92.4%、民放キー局では38.7%となり、着実に上昇してきています。

放送のデジタル化については、BSデジタル放送がすでにスタートし、地上デジタル放送も2003年12月に一部の地域でスタートしております。こういったデジタル放送においては、字幕デコーダーが標準の規格になっておりますので、デジタル対応のテレビは、必ずデジタル放送の字幕が見られる機能が付いております。ですから、デジタルの字幕放送が増えることによって、飛躍的に多くの人が字幕放送を見ることができるようになって参ります。

また、それ以外に、日本ビクターでは、「きき楽」という機能の付いたテレビやラジオを出しており、話速変換を用いまして、ゆっくり言葉が聞ける、あるいは聞き返しができるといった機能が利用できます。

個別のニーズに合わせた機器・サービス

今まで説明しましたのは、ユニバーサル化に向けた取り組みですが、もう一つのアプローチとして、個別のニーズに合わせた機器・サービスの開発・提供にも取り組んでおりまして、色々な民間の取り組みに対して助成をしております。

例えば、色々な事業者で電話リレーサービスなどの様々な支援サービスが行われていますが、こういったサービスへの助成も行っております。さらに、障害をお持ちの方がITを利用する際に、ボランティアの方が支援される取組みも行われていますが、総務省では、こういった支援を行う人材を育成し、サポートする体制を整備していくためにはどうすればいいか、研究をしております。障害者の方のIT利用を総合的にサポートする体制のモデルといったものを、提示して参りたいと思っております。

総務省では、このように様々な取組みを行っております。先程も申しましたが、アクセシビリティを確保していくためには、ユニバーサル化の方向と個別支援の取り組みと、2つのアプローチがいずれも重要ですが、こういった取り組みが、社会に高く評価されるような環境にしていくことも必要だと思います。そういう意味で、ここにお集まりの皆様方の日頃のお取り組みは、大変重要なことだと考えております。これからも、皆様方が、取り組みを一層進められ、一層ご活躍されることを期待致しまして、お話を終えさせて頂きたいと思います。有難うございました。

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