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「障害者のための情報保障」セミナー報告書
デジタルテレビ放送の情報アクセス

兒玉 明
日本身体障害者団体連合会会長/日本障害フォーラム(JDF)代表

兒玉でございます。まず初めに、このような大変素晴らしい企画セミナーにおいて、発言の機会を賜りましたことを心から感謝申し上げます。

私は日本身体障害者団体連合会会長職のほか、昨年10月に発足いたしました、日本障害フォーラムのJDFの代表も務めております。

先程以来、各講師の先生方から、大変分かりやすくかつ適切なご説明を提言頂いたわけでございますが、本日は、わが国の障害NGOを対表する立場から、現在、国際連合で進められております、障害者権利条約の審議に対する見解提言を、述べさせて頂きたいと存じます。

放送通信の分野において、障害のある人々への情報アクセスを保障する動きは、本日この席にいらっしゃいます、全難聴、また日本ライトハウスの方々をはじめとする当事者団体の運動によりまして支えられ、地道な成果が積み上げられて参りました。

またわが国の放送通信のあり方に、強い問題意識を持つ約20の組織で構成致します、障害者放送協議会が7年前に発足し、障害の種別横断的な取り組みが可能となります。

さらにここ3、4年の間に、こうした流れをさらに後押しする動きが、国際的な舞台で生まれております。それは先程も少し触れましたが、障害者の権利条約の制定の動きでございます。デジタル放送という大きな可能性を秘めたアイテムを最大限に生かしつつ、世界各国で独自のやり方で進められてきた放送通信分野の情報の保障を、国連の権利条約を起爆剤として、各国の法制度にしっかりと規定していくことが、私たちに課せられた義務といっても過言ではございません。

現在、国連の権利条約特別委員会、アドホック委員会といいますが、条約草案の本格的な審議に入っております。この草案の第3条には、コミュニケーションについての定義が書かれております。また13条には情報へのアクセスを規定した条文が加えられております。その冒頭を読みあげますと、「締約国は、点字、手話及び障害のある人が選択した他のコミュニケーション様式を通じて、障害のある人が証言及び意見の自由を行使するために、全ての適当な措置をとる。また締約国は障害のある人が他の人との平等な立場で情報を求め、また受ける、及び伝えると、そのために全ての適当な措置をとる」とございます。いずれの条文においても、手話や点字などの位置付けを行ったことなどは、一定の評価ができるものと思います。

しかし、放送通信分野はもとより、様々な場面の情報アクセスを考えるとき、要約筆記や文字通訳など文字におけるコミュニケーションなどについても、明確に条文化することが不可欠でございます。

またこのほか解説放送の普及について、第13条には、マスメディアには利用可能なものとするよう奨励するという規定がございます。より拘束力のある義務的な規定が実現できないものか、また知的障害者の情報アクセスなど、より幅広いニーズに答える条文を付け加えることは可能かどうか、早急に議論を深めていく必要があるといえます。

日本身体障害者団体連合会そして日本障害フォーラムJDFでは、全難聴の高岡理事長をはじめとする関係当事者団体の皆様と一層の連携を図り、国連加盟の各国代表や日本政府の代表に対しまして、これらの課題の解決を強く訴えていきたいと考えております。

最後に、本日のセミナーが参加者の皆様にとりまして、大変有意義なものになり、また私共の活動もさらに強固なものになるよう祈念致しまして、意見発表とさせて頂きます。ご清聴をありがとうございました。