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「障害者のための情報保障」セミナー報告書
デジタルテレビ放送の情報アクセス

パネルディスカッション

<司会 寺島氏>

それでは、パネルディスカッションを始めたいと思いますが、最後に金子先生が言われましたことについて、私から、まず、質問させて頂きます。EUあるいはUKで、障害児だとか障害者の方を扱ったテレビプログラムについて、どのような対応がされているのかをお聞きしたいと思います。

<マーク・ホダ氏~通訳>

私の知る限り、障害児に関する情報アクセス関連の法律はないと思います。しかし、字幕やその他のアクセスサービスによる効果についての心理学的研究は数多く行われています。それらの研究は、聴覚障害の子供たちについてだけでなく、子供たち全体について研究されています。これについては、ダウンズ博士が先ほど述べました。特に北欧の国々の調査で、字幕を見ている子供たちは、そうでない子供たちと比べて読解力が優れているという結果が出ています。北欧でそのような調査がしやすいのは、北欧では、アメリカの映画をたくさん放送していて、いわゆる吹き替え(ボイスオーバー)ではなくて、字幕で放送されています。そのために、子供たちは、字幕をよく見ていて、他のヨーロッパ諸国、特に字幕よりも吹き替えが中心になっている国々の子供たちと比べて読解力が高いというものです。しかし、残念ながらそれに関する数字はもっておりません。

<司会 寺島氏>

質問内容と答えが合っていないようです。知的障害児の方や障害者の方をテレビプログラムで登場させたりする時の権利侵害や差別的な扱いに対する規制について、EUの法律や規制、或いはルールのようなものはあるのでしょうか。

<マーク・ホダ氏~通訳>

一般的な障害関係法としては、先程、ダウンズ博士が述べました「障害者差別禁止法」のなかに障害児に関係する条項があり、教育と学校についてカバーしています。英国の教育局は、障害児に対する早期支援、機会均等、利益に強い重点を置いています。

より一般的な法規制が、放送にかかっています。しかし、特に、障害を持つ子供たちを差別するような番組内容ではいけないとか、そういったような特定の文言はないと思います。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

少し、追加させていただきます。イギリスを始めその他の殆どの国でそうだと思うのですが、様々な法律に影響を与えている人権に関する法律があります。その人権法は、成人だけでなく子供も含めて人権を保障しています。また、字幕に関して言えば、子供向けの番組であっても、大人向けと同じように付けています。

<司会 寺島氏>

そういう特別な法律だとか監視機関は無いようなことであるようです。

<マーク・ホダ~通訳>

子供のための慈善団体にはそのような機能を果たしているものはあります。例えば、全国聴覚障害児協会(National Deaf Children's Society)は、特にろう児をサポートしています。この団体は、子供たちがテレビの番組の中で不公平に取り扱われていないかをチェックしています。もちろん、そういった問題が起これば、つまり、差別などがあれば、それに対してそれを規制するようなメカニズムはありますけれども、それを謳った法律というのは無いと思います。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

オフコムという団体は、さっき、少しお話しましたけれども、これは、例えば放送の場において、子供も含めて、誰でも障害を持つ人たちを不公平に扱っている場合には、それに対して声をあげて保護するという機能を果たしています。彼らは、放送されている番組をモニターする役割をもっています。また、独立したクレームの手続きをもっています。もし、放送されたものが、攻撃的であったり、不適切であったり、子供を差別的に取り扱っているというものであった場合、公式にクレームをつけ、ひどい場合には、告訴にまで持っていくこともあります。

<司会 寺島氏>

どうもありがとうございました。よろしいですか。はい、高岡さん、ご意見がありますか。

<高岡氏>

全難聴の高岡です。ダウンズさんとホダさんのお話の中で、一番関心があったのは、オフコムという組織とそれからキャンペーンの方法です。オフコムが議会からも政府からも独立して運営されているということですが、その運営の資金、或いはスタッフはどこが支援している(お金を出している)のでしょうか。それから、その中には障害を持った当事者団体はどのような形で関わっているのかということです。

アメリカには連邦通信委員会FCCという、やはり政府から独立した組織があって、放送と通信に対して強い権力を持っているわけですね。このオフコムが、放送事業者に対して、色々なことを要求できる法的な基礎というのが「2003コミュニケーションアクト」という法律だそうですが、具体的にどんな権限を持っているのかを知りたいということです。

2つめに、EUにおけるキャンペーンの方法ですね。字幕放送とか解説放送が実施されているということと、それから全ての国で実施しなくてはいけないというキャンペーンを展開されたそうですけども、そのキャンペーンのやはり資金はどこでまかなっているのか、具体的に議会への働きかけが中心だったのか、放送事業者への働きかけは行われなかったのかどうかについてお伺いしたいと思います。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

ありがとうございます。いくつかご質問頂きましたので、お答えしたいと思います。

オフコムというのは、独立した団体と言いました。英国の2003年通信法によりできた団体です。この法律により政府からの独立性を与えられています。オフコムのトップの人は、通産大臣から指名を受けます。いったん指名されると、この人は、全く政府から独立した存在になります。大臣との公式の関係は無くなります。ただし、オフコムは、イギリスの議会に対して、その運営状況を直接報告する義務が生じます。

資金については、一部の省庁からの資金も入ってきますが、殆どは、オフコムが管轄している人々からの資金です。例えば、通信事業者は、オフコムに管理費用を提供しています。これは、よい解決方法です。というのは、民間部門は、自らが規制管理するというのは難しいからです。しかし、この資金は、オフコムとは切り離されているので、オフコムが不正使用することはできません。そのための通信事業者は、オフコムとは関係なく資金提供を求められ、オフコムの役割とは関わりがありません。

スタッフは、全国的に募集いたします。一部のスタッフは、政府から出向しています。それは、FCCに似た役割をもっていると考えて良いと思いますが、それよりも、かなりの権限をもっています。例えば、放送局が不適切な行為があれば、それを裁判に訴えたり、放送免許を一時停止する権利も持っています。この機関は、強力な権限を持っています。

障害者団体との関わりについては、オフコムには、障害者・高齢者特別委員会というのがあります。この委員会は、オフコムが法律形成にあたって障害者関連事項を十分説明するという公式な役割を持たされています。

また、英国法について言えば、すべての新しい法律は、一般からの意見聴取が必要とされています。この意見聴取は、少なくとも12週間は続けなければいけないということになっています。また、その結果は、一般に公開されなければなりません。このために、RNIDも含め障害者関連の慈善団体なども、正式に、この意見聴取に対して公式な対応をしていて、自分たちの意見を取り入れさせるように多くの時間を費やしています。

ヨーロッパのキャンペーンと字幕放送については、マーク・ホダ氏にお願いしたいと思いますが、キャンペーンの資金についてだけお話します。それは、すべて慈善活動によって集められています。政府からの資金はありません。キャンペーンのために個人や企業やトラストから民間の資金を集めるのは、非常に困難です。ともかく、私たちの資金はすべてボランタリーな資金です。そのために、その使い方について制限はありません。

<マーク・ホダ氏~通訳>

ヨーロッパキャンペーンの資金ですが、RNIDやその他多くの慈善団体がそのキャンペーンに資金を提供しています。ヨーロッパにも、ヨーロッパ難聴者連合(European Federation of Hard of Hearing)とか、ヨーロッパろう者連盟(European Union of the Deaf)、ヨーロッパ盲人連盟(European Union of the Blind)などのパートナーがたくさんおられて、そういったヨーロッパからの資金も一部あります。しかし、それはかなり少額で、殆どのキャンペーンにかかる費用は、会費により成り立っております。しかし、それでも、全体の額は多くはありません。というのは、メンバーの殆どは、ボランティア団体だからです。スタッフは、ボランティアであったりします。国内のメンバーも同じことで、あまり、お金を使うことはできないのが実態です。

ただ、ダウンズ博士が述べたように、私共には、幸運なこと一般からの意見聴取を活用する方法があります。これは、国内にもEUにもあります。それをするのに多額の資金が必要というわけではあません。もちろん、交通費やキャンペーン用の資料作成のためには費用がかかりますが、それほど大きな額ではありません。

<司会 寺島氏>

よろしいですか。高岡さんからもう一度質問をいただきます。

<高岡氏>

オフコムの資金は、通信事業者などからもらっているということですが、そうすると通信事業者に対して、ものを言うことが難しくならないですか。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

そういうことは無いと思います。何故かというと、企業が直接オフコムにお金を払うのではなくて、政府を通じて間接的にそういった資金がまわってくるということなのです。ある意味では税金のようなものになるわけです。そのような資金は、公共のために集められ政府に与えられます。だから、直接的な関係はありません。企業は、オフコムの活動に関わらず、有無を言わさず資金提供をしなければなりません。

<司会 寺島氏>

よろしいでしょうか。他にご質問はありますか。はい、金子先生どうぞ。

<金子氏>

「手をつなぐ育成会」の金子です。

一つお伺いしたいのですが、EUの中で字幕放送にしても、障害者向けの情報についての様々な取り組みがEUの中でも色々だと、まだ難しいところもあるというようなお話があったと思います。これは、どこからその差というものが出ているのでしょうか。これは、例えば放送事業者の財力だったり、或いは、もちろん国レベルでの財政的な問題もあるのかもしれません。ただ、その後ろにその地域の人々の、意識の違いといいますか、Public Awarenessの違いというものがあるのでしょうか。

その辺りを少しお伺いして、それによっておそらくこういった私たちの運動を進めていって、それが前進していくためには、単なる事業者の理解、あるいは政府レベルでの理解ということだけではなくて、一般の市民の理解といいますか、まさにそのSocial Attitudeというようなものが社会的な理解や態度というようなものが大きく影響するのではないかと思うものですから、EUにおける地域差というものがどこからきているのか、ということについてちょっとお伺いしたいと思います。

<マーク・ホダ氏~通訳>

そうですね。達成レベルの差が出てきているという背景には、確かに色々な要素が関係してきています。一つの要素は、どれだけの法規が存在するかというのは国によって違います。それは、各国の歴史に関係しています。ある国では、非常に厳しい法律がある国では、障害者のためのアクセス規定を盛りこむことは、比較的容易いでしょう。

別の要素は、放送事業者の資金力と彼らが持っている技術です。多くの新しいEUの加盟国、例えば、東ヨーロッパなどの国々では、必ずしも放送事業者も資金が潤沢というわけではありませんし、技術的にも多くの字幕を付けるというというような技術がまだありません。また、字幕作成の訓練も不足しています。それは、英国においても同じです。

英国では、この産業がかなり発展してきていましたので、それほど深刻ではありませんが、多ヨーロッパの国々では、字幕作成の訓練が不足しています。

もう一つの要素は、キャンペーンの組織力です。大きなキャンペーンを行うときに資金や資源がなければ、彼らの声は聞いてもらえないでしょう。

これらが、国によるアクセスレベルの違いを生み出しているいくつかの要素だと思います。

RNIDの場合は、その他のヨーロッパの同様の団体と比べてもずっと大きいので、私たちの場合は、国内及びヨーロッパレベルの活動において大きな働きかけができます。北欧の国々の団体は、人口比にすれば、かなり大きな組織ですか、それでも、RNIDよりは小さいので、その意味では、私たちの団体の規模に関してはラッキーであると言えると思います。

<司会 寺島氏>

他に、何かご質問はありますか。はい、岩井先生どうぞ。

<岩井氏>

全国視覚障害者情報提供施設協会の岩井と申します。

放送事業者の役割として、障害者が利用しやすいアクセシブルな放送を提供するということが一つと、もう一つ最初の金子先生の質問にも関連するんですけれども、障害者のことが正しく社会に伝わる、その橋渡しをしていく、情報提供していくという役割があろうかと思っております。

そこには、やはり番組作りの中に、障害当事者がスタッフとして参画していることの重要性、あるいはRNIDさんがされているように、コーディネートとして正しく障害者観を番組制作に反映させていくことの必要性があろうかと思うわけですが、雇用の面で放送事業者が努力している部分があるのか、RNIDさんがそうした役割をサポートしておられる面があるのかをお教えいただきたいのが一点です。それともう一つ、RNID for the deafという団体と、視覚障害者のサポートをするRNID for the blindの団体があろうかと思います。この両団体は、本当に大きな優れた団体ということですが、放送事業等に関して、協力していろんな場面での取り組みをされているのかということをお聞きしたいと思います。

<マーク・ホダ氏~通訳>

ヨーロッパに関する英国内の調整役としての我々の組織の役割として、このキャンペーンにおいては、大きな役割を担っていると思います。このキャンペーンとは、放送と放送アクセスに関するキャンペーンのことです。このキャンペーンにおいて、我々は、ヨーロッパレベルで大きな役割をもっています。その理由は、我々が大きな規模の団体であることと、我々の会員がこの問題に興味を持っているためです。そのために、我々はこの問題に深く関わることになってきました。

また、盲人の団体で、ヨーロッパレベルの国内組織であるRNIBは、会員のために、全体がテレビに対するアクセスを取り扱う部局をもっています。この組織は、ヨーロッパ盲人連合の姉妹組織になっています。そのために、彼らは、彼らの関心に基づき、EUキャンペーンにおいて非常に活発に活動しております。

このように、このキャンペーンは、我々にとって重要です。また、我々を支援してくれる別の組織があります。これは、例えば、ヨーロッパ難聴者連盟(European Hard of Hearing Federation)です。この組織は、非常に小さな組織で、殆どボランティアから成り立っていますが、そのメンバーとは非常に緊密に連携を取っています。英国の慈善団体として、我々もそこと情報を共有していますが、ヨーロッパの他のパートナー組織と情報共有のためには、この組織は、非常に役に立っています。彼らは、すべての国々と連絡を取り合っています。彼らは、資金はありませんが、重要な役割を果たしています。私が言いたいことは、資金や資源が不足していてもよい関係をつければ、重要な仕事ができるということです。

支援つき雇用(Assisted Employment)については、ダウンズ博士が先ほど申しましたようにテレビ局のネットワークがありまして、これは、衛星チャンネルのスカイがリードをしているのですけれども、彼らが制度や方針をもっていると思いますが、どのような政策や雇用方法であるかは知りませんが、メディアや産業における支援つき雇用を支援する制度があると思います。

<司会 寺島氏>

岩井先生、よろしいですか。じゃあ、兒玉先生、お願いします。

<兒玉氏>

日身連の会長の兒玉でございます。

本日、ホダさんの話の中で、文字放送の資金を得るためのコマーシャルを、放送メディアが実施しているということに、本当に先駆的な取り組みと感じました。

私共も、当面、やはり、文字放送の普及は急務であります。そのために、それには莫大な費用がかかるというようなお話の中で、ホダさんがおっしゃった、そういうような問題を日本のメディアに働きかける、そういうことをこれからやっていきたいと思います。

本当にありがとうございました。

<司会 寺島氏>

どうもありがとうございます。会場の方で、是非これは聞いてみたいというふうな方がおられましたら。いっぱいありますね。じゃあ順番で、後ろの元気よく手を挙げて頂いた方。

<会場質問者~福井氏>

大阪から参りました、福井と申します。今日は大変興味深い話をありがとうございます。

岩井さんもおっしゃっているように、私、視覚障害者の立場から、例えば外国人がしゃべっている時に、その翻訳を文字だけで流すというのは、内容が全く理解できない。

これを、音声でナレーションも入れるっていうことは、既に翻訳は文字で出来ているわけですから、ドラマの解説なんかを付けるよりは、よほど容易に出来るのではないかと想像しています。

また、インタビューされた人が特定できないように、声を変形させて、なんかボワボワボワー、キーキーキーというような声でテレビで流すというのが最近とても増えていて、あれは全ての人にとって雑音でしかない、と思うんですね。放送局がもし内容を伝えたいということであるならば、あれもナレーションで置き換えるのがいいのじゃないかと思うわけなんです。

そこで、2つご質問したいのですが、一つは聴覚障害者のために、テレビの音声を文字に変えて、パソコン通信やインターネットで流すという方法があるようですけれども、逆に、視覚障害者のために、画面に映っている文字をその場で声で読み上げて、それをインターネット中継するということが、技術的には可能そうに思えますが、これを日本で行うと、何か法律的に触れることになるのかどうか。これは日本の法律の問題、どなたかご存知でしたら教えて頂きたいと思います。

もう一つは、イギリスにおいて、デジタルテレビ放送の技術は非常に進んでいるようですけれども、放送番組の付加情報を取得したり、あるいは視聴者が番組に参加するために、逆方向で意見を表明するといった、そういった新しい機能というのは、視覚障害者も公平にアクセスできるように、もうなっているのかどうか、例えばそれは画面に表示される文字の合成音声による読み上げなどを含めて、実現しているのかどうかについてお伺いしたいと思います。

よろしくお願いします。

<司会 寺島氏>

最初の方は、福井さんのほうがよくご存知だと思うので、これは省いていいですか。

<会場質問者~福井氏>

分かりませんので答えて下さい。

<司会 寺島氏>

そうですか、じゃあ、高岡さん、いかがですか。

<高岡氏>

高岡です。2000年の著作権法改正で、音声を文字に変えてインターネットで配信することは、文部科学省の文化庁に「字幕配信事業者」として届け出た事業者が、著作権の許諾を取らないでも実施できることになっています。また、点字データも著作権法の許諾が不要ということになっています。

ただ、その逆の文字を音声で配信するということについては、今まで問題になったことが無いです。ですから、私たちの考えでは、本来は放送事業者がやらなくてはいけないことを、当事者団体がお金も人も使ってやっているのですから、放送事業者が反対する理由は無いと思っています。そういう形で、実施を進めるということも、必要じゃないかなと思います。法律的には、今、取り上げられたことはないのではないかと思うのですが。

参考に、アメリカではラジオの字幕放送、インターネットで文字を放送するということがどんどん行われているんです。ですから、メディアの変換というのは放送事業者、通信事業者の責務だと思います。

<司会 寺島氏>

どうもありがとうございます。2番目のことについては、外国の方のどちらかお願いします。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

最初の質問についてですが、文字を音声に変換することは、技術的には可能ですが、これは、放送事業者がこのテキストを、信号化して送る必要があります。それをやってから、コンピューターの方がそれを充分速く再生できることが必要になってきます。それと、ご存知のように文字を音声にすると非常に人工的な声になってしまいます。放送事業者にとってのもう一つの問題は、音声解説は、単なる翻訳ではなくて、それ以上の解説を付けるということです。だから、このシーンはどういうシーンなのか言葉を追加する必要があります。そのために、余分な作業が必要になってきますから、それもなかなか簡単にはできないわけです。技術的にはできることはできると思います。

<マーク・ホダ氏~通訳>

追加のコメントですけれども、音の字幕化については、例えば、オランダなどではこれは行われています。これに関する情報が欲しければ、RNIBのWEBサイトにも載っております。RNIBの連絡先もお教えすることができます。

それから、双方向サービスについては、視聴者参加のサービスということで言えば、必ずしも常にアクセスできるかっていうと、そういったことはありません。私が知っている限りでは、BBC以外にはやっていないと思います。更に追加の情報を欲しいので、例えば、この赤いボタンを押すと盲人がテキスト情報を得られます。他の放送事業者の双方向サービスは、必ずしも字幕や手話のようなものではないようです。今後、デジタルテレビの能力が向上し、調査が進めば、追加の双方向サービスがアクセシブルになると思われます。

しかし、DVDの場合は異なります。DVDには、音声解説または字幕を付けることが出来るわけです。このDVD上の追加的な機能、例えば、背景シーンの説明ですとか直接コメントというこういったような追加的な機能を活用したいためにDVDを買っても、障害者にとってアクセシブルでないという問題があります。

<司会 寺島氏>

じゃあ、あの、川畑さん。2番目の方。

<会場質問者~川畑氏>

日盲連の川畑ですが、ちょっとイギリスの状況を教えて頂きたいなっていう中に、いわゆるデジタル化された放送の放送画像、これはいわゆるきれいな画像であり、プラス、鮮明な画像であり、音がいいという、そういうことが売り物になっていると思うんですね。

そうすると、視覚障害者はきれいな画像を残念ながら見えない、それから聴覚障害者の方は美しい音が聴こえない、矛盾していると思うのですが、その場合に、製作の著作権を持っている方に対してその開放をどのような形でお願いしているのか、その辺りの現状をお教え頂きたいなと思うのですが。

<司会 寺島氏>

はい、どうもありがとうございました。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

最初のご質問についてですけれども、なぜデジタルテレビなのかというご質問だと思うのですが、現実問題としてはいつもそうとは限りませんが、理論的には、デジタルテレビは、音声解説の音声は明瞭ですし、字幕のフォントもろう者や難聴者にとってははっきりときれいになると思います。また、手話通訳もよりきれいになるでしょう。理論的には、多分、デジタルテレビの恩恵はあるでしょう。現実的にも、そうなるように願っております。

それから、著作権の問題ですが、英国には、著作権の問題は、殆どのテレビ番組についてはありません。

ただ、一つあるとしますと、それはポップミュージックビデオの問題はあります。特に音楽放送局は、字幕を付けられないといいます。つまり、音楽の歌詞の著作権の問題がある、これはレコード会社に所属するわけです。

ただ、私たちは、それは正しくないと考えます。非常に人気のある音楽番組がBBC1にあります。「トップ・オブ・ザ・トップス」という番組で、かなり長いこと続いている人気番組なのですが、そこでは、全部中身を字幕を付けて紹介しているのです。字幕をつけていない他の放送局が音楽番組が無理だと言っているのは単なる言い訳であると思います。もちろん、確かに問題があるエリアであることは事実です。そのために、彼らがそう主張するのでしょう。

<司会 寺島氏>

少し、追加してよろしいですか。イギリスの場合は放送に字幕を付けるのに、無料でやっているのでしょうか。問題はないのでしょうか。

<マーク・ホダ~通訳>

字幕作成者にはお金を支払いますが、著作権に対しては支払いはしません。BBCが音楽ビデオに字幕が付けても、著作権に対しては支払わなくていいんです。ただ、字幕を付ける部分の製作コストはかかります。しかし、一部の音楽放送局は、我々は著作権料を支払わなければならないと言っています。

また、英国には全国字幕図書館というのがあって、そこではどんなプログラムでも無料で許可なしに字幕を付けることができました。しかし、字幕がだんだんと一般的になってくるにつれて、この図書館は閉鎖されました。非常に多くのテレビ番組に字幕が付くようになってその意義が失われたというのがその理由です。過去には、著作権の問題がありましたが、今日ではありません。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

少し追加しますと、もちろん放送局は、自前以外のそのコンテンツに対して著作料は支払います。そして、それに、字幕放送を付ける場合には、その分の著作権も契約の最初に含めます。放送に対する著作権を持つ者は、その放送事業者が字幕をつけなければならない法的義務を負っていることを知っています。そのために、字幕に関する著作権料は、全体の著作権料に含まれていることを了解しているでしょう。

<司会 寺島氏>

著作権は問題にならないということのようです。

それでは、3番目にあちらで手を挙げられた方お願いします。女性の方ですね。

<会場質問者~ニワタ氏>

先程、高岡さんがおっしゃられたように、字幕の色、大きさとかフォントとか当事者に聞かないとという部分は、聴覚障害の方だけでなく、軽度発達障害とかでDyslexiaとか読字障害とかそういう人達に関しても、そういう読字障害の人で、高次脳障害とかがあったりすると、やっぱりそういうことにもこだわりが出てきちゃったりもしますので、そういう意味においても、やっぱり当事者が重要だと思います。そういう意味でも他の意味でも、今回の講演をすごくおもしろいなと思って聴いていました。金子さんが言われていたように、情報保障という意味で考えた場合、やっぱりこういうふうな軽度発達障害とか認知障害の方とか、知的障害の方に分かりやすいように両方作るということも必要だと思うんですけど、イギリスではどういうふうな感じなのかお聞きしたいと思います。

<司会 寺島氏>

どうもありがとうございました。もし差し支えなければお名前を教えてください。

<会場質問者~ニワタ氏>

ニワタです。

<マーク・ホダ~通訳>

今おっしゃったような障害についての特定の法律というのは特に無く、一般的な法律が、放送における、字幕、音声解説、手話通訳すべてをカバーしています。学習障害のある方だけのための法律は特にないと思います。一般的な障害者関連の法律がそれらに適用されるというふうに考えて頂ければと思います。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

我々は、実際の利用者による製品やサービスのフィードバックをすることで放送業界や製造業者と緊密に協力しております。驚くことに、非常に多くの製品がユーザーのテストなしに販売されています。ある領域では、それが改善されていますが、まだ、依然として、民間事業者がユーザーにもっと関心をもってくれるように努力している領域もあります。結局、ユーザーがそれを求めないから、彼らは、それをしないのだ思います。また、関連して、英国の障害者差別禁止法は、ICT問題に適用されないことも問題です。

<司会 寺島氏>

はい、どうもありがとうございました。よろしいですか。じゃあ、川井さんお願いします。

<会場質問者~川井氏>

全難聴の川井と申します。イギリスの状況についてお伺いしたいと思います。

日本では今、昨年度、インターネットのWEBアクセシビリティのJIS規定を作りました。そのJIS規格の審議に参加していたのですが、それと同時に日本では昨年度、市販されているパソコンに、テレビを映し出す製品がたくさん発売されました。

ですから、当然私は聴こえませんので、パソコンでテレビを見る場合でも、字幕放送を入れられるよう、日本のWEBアクセシビリティの規定に盛り込もうと思ったわけです。

ところが、その審議会では、パソコンメーカーではなくWEB関係、ソフト関係の方たちがその審議をしていたのですが、パソコンでテレビを見るには規格が違いすぎて、今の段階ではそういう文言を規定の中に入れることはできないというふうに言われたんです。

ですが、先程ホダさんが言われたことには、イギリスではやるというふうに言われたと思いますので、特に技術的な規定に問題は無いのか、あればどういうことなのかお聞かせ願えればと思います。以上です。

<司会 寺島氏>

どうもありがとうございます。

<マーク・ホダ~通訳>

おっしゃるとおりだと思います。WEBアクセシビリティガイドラインというのがEUと英国にもあるのですが、確かに、インターネットテレビコンテンツは、含まれていないのです。しかし、これは、ご指摘のように、ますます普及してくると思われますので、聴覚障害者は、それから排除されてしまうでしょう。

英国では、私の知っている限り、二つのよい兆候があります。ひとつは、少なくとも2つの字幕会社がWebやインターネットコンテンツに特殊化して字幕化を行っています。技術的には、それほど難しくはなくて、彼らはIBMの「ベーシス」というソフトウェアを使って字幕を作っているようです。

もう一つは、グローカル(glocal)メディアという会社があって、この会社は、インターネット上で字幕を提供するということをしています。例えば、これらのことというのは、技術的にはそんなに難しいことではないはずです。おそらくヨーロッパでも近い将来法律の改正が行われると思いますけれども、まだその法律が追いついていないという状況です。

<マーク・ホダ博士~通訳>

そうですね、大きな技術的な課題というのは特に無い。それをやりたいかどうか、放送事業者の意思によると思います。そういったサービスを提供するつもりがあるかどうかということになってくると思います。

問題は、ボランタリベースでないといけないということなんです。つまり、放送というのは、もちろん、一国の問題にとどまりますが、インターネット上の放送ということになりますと、世界が対象になります。例えば、私がイギリスから日本に放送したいとすると、インターネットを使えばそれができるわけです。でも、英国の法律は日本では適用できません。ですから、これはもう善意によって、そしてベストプラクティスによってやるしかないわけです。法律で規制はできないわけです。

<マーク・ホダ~通訳>

もう一つ追加したいのは、たとえ、法的な圧力があったとしても商業的な圧力も必要だと思います。例えば、GOOGLEという検索エンジンサイトは、ビデオサーチというアーカイブの機能をもたせようとしています。ビデオのコンテンツの検索を、インターネット上のGoogleエンジンを使ってやろうとすると、テキストベースの情報をベースしなければなりません。それにビデオをくっつけるわけです。これは、字幕を付ける大きな誘引になります。字幕が入っているということは、サーチエンジンのためにテキストの情報が既にあるからです。

それと、もう一つの商業的圧力は、もし、インターネットのビデオコンテンツのプロバイダーがGoogle検索にのせたいと思うと、テキスト情報を提供しなければなりません。これも、字幕普及のための商業的圧力となる可能性があるでしょう。

<司会 寺島氏>

はい、どうもありがとうございます。もう時間になってしまいました。最後に、一人手が挙がっています。どうぞ。

<会場質問者~瀬谷氏>

全難聴の瀬谷です。どうも本当にありがとうございます。

それで2つ質問があるのですが、字幕の表示速度なんですけども、ライブで放送する場合、字幕の表示速度がかなり速くなることが予想されて、人によっては読みきれない状況が生じるかと思うのですが、それに対して、例えばどういう対策を取っているか。

例えばですね、日本では要約と言うのですけれども、まとめて表示速度を遅くするか、あるいは速く読めるように訓練するのか、そちらの方をちょっと教えて欲しいのと、それから学習障害児への字幕放送がオランダで進んでいるということなんですが、これは聴覚障害者への字幕放送と知的障害者への放送は別チャンネルでやっているのかどうか、について教えて下さい。

<マーク・ダウンズ博士~通訳>

大変いい質問だと思いますが、難しい質問でもあります。2年前くらいに、英国でいくつか研究が行われておりまして、毎分140~160ワードが理想的なスピードだという結果が出ております。

また、英国では、録画字幕の場合、要約字幕もよく行われておりますが、生放送の字幕は、これは、難しいわけです。私が生放送の字幕デモ見たとき、要約をするには、トレーニングが必要だと思いました。というのは、全部をそこで伝えなければならないからです。例えば、サッカーゲームでは、極端な要約をしているでしょう。解説者は、非常に早口ですし、私のプレゼンでもそうですけれども、全ての情報を全部スクリーン上に字幕で出すというのは難しいわけですから、それを編集するための技能訓練というのも必要になってきます。

失聴者・難聴者の場合は、そういった要約が欲しい場合と、全部の情報が欲しい場合があると思いますので、難しいとは思いますが、バランスが必要だと思います。

英国では、要約が実践されているわけですが、オランダの学習障害児者に対するプロジェクトはどのようになっているのか、調べて見るのも面白いかもしれません。

<司会 寺島氏>

最後に、高岡さんが、話したいということですので、お願いします。

<高岡氏>

高岡です。先程のニワタさんの方から、当事者の番組制作、コンテンツ製作に参加が重要だとおっしゃられたことに関して、この放送・通信バリアフリー委員会では色々な障害者がテレビにアクセスする場合、こういう番組だったらよく分かる、よく理解できるというモデルを作ろうとしています。3月までに作らなくてはいけないので、焦っているんですが、RNIDにもいいモデルとなる番組を提供して頂いて、私たちでも色々な意見を集めて、モデルを作って、それを各放送事業者に提供して、こういうふうに作って欲しいとか、これから作る時には私たちの意見も反映させるようにして欲しい、ということを強く言いたいと思います。

最後にですね、お2人にお聞きしたいのは、放送事業者ですとか、政府、議会、それからメーカーなどに対して、私たちが働きかける、アプローチするときに何が一番ポイントかということです。

私は、人権ということを表面に出した場合、技術的な問題とか、お金の問題とか、いろんな理由を付けて反論してくるわけです。

EUではどういうことを掲げて、アプローチされたのかお伺いしたいと思います。

<マーク・ホダ氏~通訳>

どういった番組に字幕を付けるべきなのか、解説を付けるべきなのか、手話を付けるべきなのかという問題です。字幕について言えば、調査結果によれば、英国では全ての番組に字幕が欲しいという結果が出ております。

手話については、ある番組のタイプによっては、手話のほうがよいという場合もあります。例えば、ドキュメンタリーは、手話使用者に人気がありますが、この場合、手話通訳が好まれています。この問題については、現在、いろいろな会員に対して調査を行っていますので、その結果が出ましたら詳しいデータを提供することができます。

音声解説については、視覚障害者の方々がどのような希望を持っておられるのか私自身把握しておりません。RNIBには、その情報があると思いますので、そちらに直接お問い合わせ頂ければ幸いです。

それから、ロビーイングやキャンペーンの戦略については、これは、大部分、その国の制度に依存すると思います。議会、法律、政府のシステムなどがどういう戦略を採用するかを決定します。ヨーロッパでは、それぞれの国が、一番機能すると思うそれぞれのキャンペーンのスタイルとメカニズムを持っています。日本のシステムがどうなっているのか、詳しく知りませんが、皆様のリソースと戦術に対する判断によると思います。

ヨーロッパの多くの国では、まず国会議員に顔と顔を突き合わせて、話しを始めるというところから始めます。また、宣伝やポスターキャンペーンをやります。ダウンズ博士の話の中に、スウェーデンのポスターキャンペーンをやったというのがありましたけれども、公の場所にポスターをどんどん貼っていくということで、失聴者・難聴者のニーズを分かってもらう。60万枚くらい貼ったと言いました。そのポスターには、テレビ番組を見ることができない、アクセスできないという女性の写真を載せたりしております。

また、公共の議論に参加するというのも効果的なキャンペーンツールであると思います。

もちろん、選挙の時に、政治家は、再選を希望しますので、英国やアイルランドでは、これらの政治家からアクセスについての確約を得ておくわけです。選挙になったら選挙民の意見を聞かざるを得ないし、意見を聞いてくれる人を選べばよいわけです。

<司会 寺島氏>

時間が、過ぎてしまいましたのでこれで終わりたいと思います。最後に講師のお二人と、パネラーの皆様に、拍手で感謝の意を表したいと思います。よろしくお願いします。

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