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平成18年度
地域におけるインターネット・パソコンを利用した障害者情報支援に関する調査研究事業報告書

講演「障害の特性に配慮したIT支援について」

講演2
「視覚障害者の視点から」

金沢真里
東京都盲人福祉協会 中途失明者緊急生活訓練主任指導員

今ご紹介いただきました金沢真里といいます。すみません、資料は突然今日、先ほどご無理を言って作っていただきました。事前に用意すればよかったのですが、配るつもりではなかったのですけれども持ってきたものを、ご無理を言って作っていただいたものです。中身は、視覚障害に関わるウェブ等の紹介やスクリーンリーダー等の紹介をしてあります。以上、配ったものは、そういう内容のものです。

では、まず私の自己紹介から少しさせていただきたいと思います。
皆さんの中で、視覚に障害のある人たちの支援をされているという方たち、どのくらいおられますか? 私には誰もいないというふうに…
黙って手を挙げても見えない人には伝わりません。
…あ、そうなんですね、わかりました。では多くは視覚障害以外の支援を目指している、あるいは目指していらっしゃる方というふうに思います。
私自身も、中途の視覚障害者です。今どんな見え方かといいますと、正面を見ると、ボーッとちょっと上のほうが明るいかなという感じで、
あとはほとんど、レースのカーテンがかかっている、あるいはカルピスの中にドボーンと入って見ているという、そういうような見え方です。

私は進行性の目の病気で、網膜色素変性症という大事な目の病気で、少しずつ見えなくなりました。今正面はそういう見え方なのですが、では光はどうかというと、両サイドの残った視野のところで光を感じたり、あるいはコントラストがはっきりしたようなものが動いたりすると、わかることもあるという感じの見え方です。普段は白い杖をついて、単独で歩いています。
徐々に見えなくなっていったのですが、二十歳、大学生の前半くらいまでは、普通の文字を読んで、文庫なんかも読んだりしていました。現在の仕事は、東京都の補助事業で、視覚障害者の人たちの在宅支援ですね、訪問で出向いていって相談を受けたり、日常生活のことを一緒に考えながら行うというようなことをしています。
パソコンに関しては、本当にボランティアでちょっとだけ支援をしたり、というようなことはしていますけれども、そんなことで今日はちょっとお話をしていきたいと思います。

私のほうも3つ、畠山さんがすごく支援に対する心構えみたいなことをお話していただいたのですけれども、私もすごく重なる部分がありますので、ちょっとこれからお話をしていきます。
まず、視覚障害と言いましても、私が今言ったみたいに二十歳くらいのときには見えていたけれども、今はボーッとしか見えないという進行性の目の病気の人もいれば、あるいは突然大人になってから見えなくなる人もいれば、生まれつき見えない人もいれば、見え方もさまざまなんですね。
それから、生活してきた環境もさまざまなので、その人に、視覚障害の人にこうしたらいいというのではなく、今目の前にいる人がどうしたら、たとえばパソコンが使いやすくなるか、ということを目の前の対象者の人に視点を合わせて考えていく、視覚障害だからどうだということではないということを是非覚えておいていただけるといいかな、と思います。

見え方なのですが、たとえばものを見たり書いたりするのは、主に目の中心を使います。それから、行動するときには主に周辺の視野を使うことになります。それから、視野がたとえば狭かったり、斑だったり、たとえば斑というのは私で言うと、これくらいの明るさだともう私はほとんど見えないのですけれども、たとえば今私は指を1本立てています。私の肩の上くらいのところに指を持っていっています。たとえば、このへん――肩のへんですね――は見えるけれども、だんだん鼻に近づいていくと、指が消えて、また指が見えて、また指が消えてというような見え方の人もいるわけですね。
だから、どういうことかというと、たとえばパソコンを拡大して使いたい、パソコンをやっぱり目で確認しながら見たいというふうになったときに、あまり視覚に障害のある人の見え方などわからないと、見えないのだったら大きくしてあげればいいだろうとか思って画面にがーんと大きく書くと、視野が狭いものなので、大きすぎて逆に見えなかったり、視野に入らないんですね。私の場合も、徐々に見えなくなったときに、たとえば「松」という字があって、デパートに行ったときに、お店を探すときに「松」という字を探したかったんですね。ぱっと見たときに、「木」というのが見えたんですね。「松」という字のお店を探したときに、「木」だけが目に入っているのですけれども、実はそれが「松」だったんですね。考えられますか、皆さん。私は自分でも信じられなかった。木偏ですよ、木偏に、すぐ隣に「公」という字があるのに、視線が「木」に行っちゃったら、「木」しかわからない。「木」はわかるけど、「公」がわからないんですね。「公」に目が行っちゃうと、「公」は読めるけど、目をちょっと動かせば「松」がわかるんだけど、こういうのってちょっと信じられないですよね。自分でもなかなか、そういう見え方って信じられなかったのですが、こういうことが起こります。なので、今目の前の人が画面を使いたいと言ったときには、どういう文字が適当なのか、これは、情報提供は皆さん支援者の役割で、これがいと決めるのは我々対象者、利用者の役割です。
だから皆さんは、自分が見えないのだからこれでいいだろうと思うのではなくて、相手にどう、これはどう、どこが一番見やすい、ということをパソコンで変えていくことができる、ということが大切だというふうに思います。 そのように、見え方というのはさまざまなので、その人に合ったパソコンの使いやすさというものを情報提供していく、ということをしていただくといいかなと思います。

今日は、特に私が今まで関わったり、いろんな利用者さんから聞いて思うことがありますけれども、たとえばパソコンだと、支援する側はきっと、自分はパソコンのことが詳しい、あるいはスクリーンリーダーのこともすごくわかった、じゃあもうそれで、パソコンのことがわかれば視覚障害者に教えられるかというと、実はそれだけでは不十分なんですね。技術は努力すれば学ぶことができるのですけれども、意識をしないとなかなか視覚障害者に伝わりやすいコミュニケーションとか説明のしかたというのが難しい。見えないので、普通は自分が動作させているのを見てもらいながら、たとえば説明すればいいのだけれども、私たち見えない者にとっては、言葉での説明しかわからないことがあります。なので、そのへんをやはりどういうふうにしたらわかりやすいか、あるいはコミュニケーションをとれるかということも、すごく大切なので、皆さん今、次にお話するのはコミュニケーションのとり方ということでちょっと説明をしていきたいと思います。

今、画面に今映り始めているのですが、これは今話していることを項目やコメントを付けているだけなので、見える方は見ていてもいいですけれども、見なくてもこれからしゃべっていきますので大丈夫です。
今、コミュニケーションのとり方ということを言いましたけれども、一番最初に私たち支援者と対象者、あるいは利用者と何が一番大切かというと、信頼関係だと思います。私たち見えない者にとると、この人、説明がわかるかな、とか、視覚障害者のことを理解してくれるな、というのを第一印象に持てると、すごくスムーズにいくし、それからパソコンや何かを学習するについても楽しくなります。
その信頼関係、視覚障害のことを理解してくれるなというふうに思ってもらえる最初のとっかかりが、挨拶のときに自分の名前を名乗ってほしいんですね。皆さん、それは一番最初に会ったときには自分の名前を言えると思います。私だったら「金沢です、畠山さんおはようございます」というふうに、たぶん最初は言えるのだけれども、私がいつも困るのは、廊下やなにかで「こんにちは」とかって言われても、笑顔で「こんにちは」って私もご挨拶しますけれども、「うーん、一体誰かな?」って思ったりするわけです。それが、先ほど学習支援をしてくれていた人だったりすると、「うーん、やっぱりもうちょっと視覚障害のことをわかったりして、名前を言ったりしてくれると嬉しいのにな」という気持ちになっていくと、パソコンのことよりも、その支援をしてくれる人との戦いみたいになってしまう可能性も出てきてしまいます。なので、この「自分の名前を名乗る」ということは、非常にとっかかりとしては大きい話なのですね。
そう言うと、挨拶とか自分の名前なんかは「わかった、見えない人の前に行ったら自分の名前を名乗ればいいのでしょう」、と皆さん思うかも知れないのだけれども、いざ会ってみると、普段からしていないとたぶんなかなか難しい。これはなぜなかなか難しいと言うかと言うと、私が見えなくなってきたときに、まだ見えない若葉マークの頃ですね、その頃にベテランさんたちにお会いしたときに、やはり自分の名前を名乗るというのがなかなかできなかったんですね、私も。今はそんなことはないのですけれど。ですから、普段からしていないとなかなかそういうことが伝わっていかないということになりますので、是非皆さん、そんなことは百も承知と思うかも知れないけれども、心がけていただけるとすごく嬉しいかな、というふうに思います。

技術だけではないというときに、私も経験があるのですが、一対一でたとえば隣同士でしゃべっていますと、私はたとえばパソコンに夢中になって真剣に操作しています。きっとその操作を見て、学習提供者、支援者の方は、今一生懸命やってるんだから、ちょっとトイレに行きたいけど声をかけたら悪いからそっと行きましょう、とたとえば思う人がけっこうおられます。それは好意で、よかれと思って。そうするとどうなるか。一所懸命夢中になっているから気配は感じませんね。だけど隣にいると思うから、「こうなっちゃったんだけどどうのこうの」と一所懸命しゃべっているのに返事がないということになりますね。これはやはり、視覚障害の人に対する支援では、やはりきちんと「ちょっと席を外すね」と言っていくというのが必要なことになります。
それから、「席を外すね」というのは言えても、戻ったというのを言わないという方がけっこういらっしゃるんですね。そうすると「席を外すね」と言われてずっと操作して、「まだ来ないのか」と言っているうちになんか咳をしたりして「え、戻ってたんですか?」というようなことって、本当にあるんです。本当にそれが、私たちにとっては大きな「あーあ」という、ため息になってしまうことになってしまいます。なので、それをたとえば一番最初にやったときに、そういう声のかけ方とかをうまくやってもらえると、言葉は悪いのですが、多少音声のことがわからない、どうするんだっけと言われても、ああ、視覚障害のことをきちんと理解して接してくれているんだというそっちの方のことも我々にとっては非常に大きいことになります。音声のことがなかなか、支援者も一所懸命努力してくれているけれども、わかりにくいというは私たちも、利用者じゃ相手はないのは十分わかっていることなので、それよりはきちっと、私たちにとってわかりやすく、いかに説明してもらえるかというほうが、信頼関係を作るという上では大きな役割になっていくことになります。
「なんだそんなこと」と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、我々見えない者、あるいは見えにくい者にとっては、そういうことが非常に、次に「やっぱりまたパソコンを習おう」とか「パソコンを教えてもらおう」という気持ちにつながっていきますので、是非そういうふうに、言葉のかけ方とかを普段からなさっていただけるといいかな、というふうに思います。

それから、よく皆さん方は、見える方たちはマウスで操作していきますよね。私たちは、多くの視覚障害の人は、キーボードだけで操作していきます。私たちがとまどっていると、「あ、ちょっとじゃあやっちゃうね」と言ってマウスで操作されるんですね。私もたくさん経験があります。そうすると、目的のところは行くのだけれども、じゃあ今度自分でやろうとしたときに、困っちゃうわけです。なので、やはりキーだけで操作する、あるいはその人が使ってその人のしやすい操作、普段使っている操作のしかたをきちんと説明するなり、本人にやはりやってもらう、時間がかかってもやってもらうということは、必要なことになります。よく、「ちょっと」ってやってもらったり、やってくれたりするんですね。それはそれで、時間の節約にはなりますけれども、相手が、我々が覚えていくということだとそれではやはり不十分で、マウスでやってしまうと、私たちが操作ができるようにはならないので、じゃあ今度はキーでやるにはどうしたらいいかというのをやはり一緒になってやっていく、ちゃんとやっていくということが必要なことになっていくなというふうに思います。

3番目なのですが、たとえば視覚障害の人がパソコンを操作しやすくする工夫という一つの提案ですけれども、ちょっとお見せしたいと思います。今私のパソコンは、キー操作だけでもちろんしているので、まったくキーって同じですよね。なので、たとえばノートだと、数字なんかは非常に困るわけです。スムーズに打っていくのに。どうするかというと、キーに印を貼っています。
たとえば、今画面で言うとたとえば[F6]のところにポッチが……。では数字で言います。私のところは数字の3と7と横棒のところに、バンボンドットという印なのですが、ぼこっとした印をつけています。そうすると私は3と7と横棒というので俄然打ちやすくなるんですね。あるいは、ミスタッチをするようなキーがあるとすると、同じようなところにミスタッチするようなキーがあるところに印を貼るとか、見えない人だとショートカットキーといって、短縮でキーを、コマンドというか設定なんかをするときにいくつかのキーを押して設定していくときに多く使うキーのところに印をつけるとかすると、俄然、操作しやすくなったりします。これは「つけたくない」という人もおられるので、利用者の方に「こうするとちょっと楽に打てるかもしれないんだけど、付けてみて、1回試してみて、よかったらずっとつけてみませんか」という形で提案していただけるといいかなと思います。
それから弱視の人、画面を見たいという人に対してはいろいろなソフトもありますけれども、パソコン自体でコントロールパネルの中から画面とかユーザー補助なんかで文字を大きくしたり、それから見え方によりますけれども中には画面が白っぽいとまぶしいから、白黒反転で画面を黒くしたほうが見やすいという方も結構おられるんですね。そういう設定というのが、簡単にできます。皆さんちょっと、見える方ごめんなさい、見える方は画面を見ていてください。ぱっ。変わりました? 画面。これは白黒反転の設定をしておくと、キーだけで切り替えができます。画面の白黒反転だけです。こうやってスクリーンに映し出すときは、普通のほうが見える方にとっては見やすいのでこういうふうにしますけれども、キーの操作、切り替えだけで白黒反転にすることもできるし、設定では画面を大きくしたりとか文字を大きくしたりとか、それからメニューバーだけの文字を大きくしたりとか、お好みに応じて画面を変えるということがWindows自体でできたりします。そういうことも情報提供していただけると、見ていただいて、もし見やすくなるのだったらそういう設定もして、見てもらって決めてもらえるといいかな、と思います。
「操作しやすく工夫されたパソコンの写真」
 「操作しやすく工夫されたパソコンの写真」

最後に、たとえば視覚に障害のある人たちだと、言葉での説明というのが主流になると思います。見える方たちにはなかなか難しいと思うんですね、言葉だけというのは。支援者同士が、ちょっと一人アイマスクなり見えにくい状態にして、もう一人は言葉だけで、たとえばガイド――F、Jのところに手が行くように説明するとか、たとえば数字の電話番号を打つときに090というところを言葉だけでスムーズに090が打てるように説明できるかどうかというようなことを、支援者同士でちょっとやってみるとかというのも、一つ実際の目の前にいる支援者の人にわかりやすい説明をするためにそういうことをやってもいいのかなと思ったりします。
では、時間がちょうど30分ちょっと過ぎましたので、私の話はこのへんにさせていただきます。ありがとうございました。