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分科会WS-1 9月7日(水)9:00~17:30

ニード別課題

精神薄弱

SPECIAL NEEDS POPULATIONS:MENTALLY RETARDED CHILDREN AND ADULTS

[医学] 座長 有馬 正高 国立精神・神経センター武蔵病院副院長
江草 安彦 日本精神薄弱者愛護協会会長
[教育] 座長 山口 薫 東京学芸大学教授
Prof.Peter Mittler Manchester University Ex-President of ILSMM〔UK〕
[福祉] 座長 妹尾 正 日本精神薄弱者愛護協会副会長
Mr.Ong Pin Sam Ex-President of AFMR〔Singapore〕
[職業] 座長 松矢 勝宏 東京学芸大学助教授


[医学]

精神薄弱者の社会統合のための医療

MEDICAL CARE OF CHILDREN WITH MENTAL RETARDATION TO SOCIAL INTEGRATION

Vanrunee Komkris
Rajanukul Hospital,Thailand


精神薄弱者の基本的なニーズは両親と社会からの理解と愛であり,これは一般の人とは違う.したがって,精神薄弱者の生活の質の向上を計るための適切なサービスが必要となる.医療,教育,職業訓練などのサービスや機会は,誕生時,子供の時代からおとなに至るまで,容易に利用できるものでなければならない.
最初の重要なサービスは障害の予防と早期発見といった医学的なものであり,これが早期介入につながる.地域社会で行うべき特殊教育,リハビリテーション,職業訓練などのサービスでは,デイケア・センター,グループホーム,普通の人と同じような働く機会を提供する共同作業所などが重要である.
1986年のWHOの報告によると,精神薄弱者は世界に約9,000万人から1億3,000万人おり,18歳以下の重度精神薄弱者の割合は3~4対1,000人ということだ.軽度ないし中度の精神薄弱者の割合は20~30対 1,000人である.
WHOおよび保健省によれば,タイでは人口の1%がさまざまな程度の精神薄弱者である.これは30年前のことなので,現在数がどれくらいかは想像できよう.
タイで精神薄弱児の医療が始まったのは1957年である.この年,保健省が精神薄弱の診断治療とリハビリテーション専門病院としてRajanukul病院精神薄弱研究所を設立した.この種のものとしては国内で最初で唯一のものである.機能は以下のとおりである.

  1. 診断,予防および治療
  2. 医療,教育,社会,職業訓練の各分野でのリハビリテーション
  3. 早期治療のプログラム
  4. 両親のためのカウンセリング
  5. 精神薄弱予防策の分野での調査研究
  6. 精神薄弱者に関係している人を対象とした精神薄弱分野の人材養成センター
  7. 看護学生や医学生の訓練センター

精神薄弱者のための医療サービスは次のものがある.

  1. Rajanukul病院および州立病院による保健省の事業.
  2. 首都保健部による内務省の事業.
  3. 大学病院による大学省の事業.

精神薄弱者のための医療は子供の時から行う必要がある.Rajanukul病院は1981年の国際障害者年に早期治療計画を開始した.計画の基本的な目的は知覚運動能力,自助能力,社会性,言葉,コミュニケーションなどさまざまな能力を精神薄弱者に刺激を与えて引き出すことにある.このプロジェクトは外来診療所の心理部門を通して提供されている.診療所は一般の人々によく受け入れられており,患者数も増えている.同病院はバンコク市内にRajanukul小児リハビリテーションセンターとDindaegCBRセンターを新たに開いてそのサービスを拡大している.
タイ中部では大体どこでも精神薄弱者のための医療を受けられるが,他の地域には少なく,1989年にはチェンマイに精神薄弱者のための特別病院をもうひとつ作る予定がある.Daughter of Charity経営のCBRセンターが3ヵ所にあり,3歳以下の身体障害児と精神薄弱児の早期介入を行っている.3歳から6歳の就学前の精神薄弱児のためには就学準備のためのデイケア・センターがある.
Rajanukul病院は,医療サービスの他にも1964年に特殊学校を設立して学齢期の子供の特殊教育を行っている.この学校は現国王が精神薄弱者福祉財団を通して寄贈したもので,Rajanukul病院医療サービス部門が管理しており,7~18歳の教育と訓練が可能な精神薄弱者の教育が行われている.
同病院は成人の精神薄弱者のために職業訓練を行っている.病院内にはワークショップがひとつあり,精神薄弱者を男女別々に訓練するための職業訓練センターが病院外に2カ所ある.
1985年Rajanukul病院は在宅の重度精神薄弱児の家庭を訪問し,両親にカウンセリングをしていろいろな治療法を紹介するため,医師や看護婦,ソーシャルサービス・スタッフ,医療スタッフから成るチームを作り,地域ベースの計画を設定した.
今のところ,タイの精神薄弱者向けのサービスは需要に応えきれているとは言えず,現時点で54万人という障害者の数を考えればまだまだ不十分であることがわかる.サービスは主にバンコクを中心としており,遠隔地では施設が全くないか,極めて少ない状態である.この不足は以下の理由による.

  1. 財政援助の欠如
  2. 有資格人材の欠如
  3. 精神薄弱者に関する教育,職業およびリハビリテーションに関する最新の知識の欠如

保健省は,人的資源開発の一環として精神薄弱者に幅広くサービスを提供するべく,非政府機関を含む他の3つの省との協力計画をすすめている.


[医学]

自閉症の医療

―現在と将来―

MEDICAL TREATMENT OF AUTISM:PRESENT AND FUTURE

栗田 広
国立精神・神経センター精神保健研究所


はじめに

過去40年間の自閉症に関する医学的研究は,この状態の基底に,ある種の脳機能障害が存在することを示唆するさまざまな所見を生み出してきた.これらの結果は,乳幼児に対する母親の養育における障害あるいは失敗が自閉症の原因であるという当初の誤解を訂正した.自閉症の原因に関する理解の変遷に反映されるように,自閉症の第一選択の治療も,精神分析的な方向性をもった遊戯治療から,行動変容および教育的方法へと変化した.薬理学的な治療で代表される医学的治療の試みもまた,自閉症の原因に関する研究の進展とあいまって増加してきている.

自閉症の医学的研究の展望

認知および発達神経学的障害
自閉症の認知障害は,自閉症と対照(すなわち,精神遅滞児,発達性言語障害)の間での知的機能のプロフィールに関する比較研究によって確認されてきた.これらの結果は,自閉症児は機械的記憶や視覚空間的技能に関しては比較的優れているが,一方,彼らは論理的な思考や概念形成では劣っていることを示している.
自閉症児はまた,発達神経学的問題(たとえば,不器用さ,ジェスチャーの模倣の困難さ)および微細脳機能障害あるいは学習障害のそれらとかなり類似した臨床像を呈する.自閉的な子供の利き手の確立は遅れる傾向がある.

神経生理学的研究
青年期の終わり頃まで年齢が上がると増加する傾向のある脳波異常は,自閉症児の20から40%に存在すると信じられている.てんかん発作は,自閉症児の10 から20%に彼らの青年期の終わり頃までに出現する5).聴性脳幹反応の潜時と伝導時間は,自閉症では延長することがある15).

生化学的研究
神経伝達物質がこの領域の研究の焦点であった.約1/3の自閉症で高セロトニン血症があることが認められているが,ある自閉症児はセロトニン低値を示す14).カテコールアミンについての研究結果は,セロトニンでのそれらのようには一定していない.


神経病理学的研究

神経病理学的研究は,適当な資料を得ることが困難なため数が少ない.ほんの少しのそのような研究は, Ritvoら12)の自閉症者では対照よりもプルキンエ細胞の数が有意に少ないという結果以外は明確な異常を示さなかった.

形態学的研究
Hauserら9)は気脳写によって,左側脳室側角の病的な拡大を報告した.CT研究は,自閉的な子供の約20 %に異常を見い出した8).自閉症でのポジトロンCTの結果13)は,多少不明瞭である.最近の磁気共鳴画像(MRI)の研究4)は,自閉症における小脳虫部の一部の構造的な発育不全を示唆している.

遺伝学的研究
遺伝的因子は,自閉症の多様な原因の一部として示唆されている.一卵性双胎での自閉症の発端者の同胞の間には,認知障害の頻度が高いことは,自閉症そのものは遺伝しないが,より広義の認知障害が遺伝可能な形質であることを示唆している6).アメリカ2)とスウェーデン1)での多施設研究は,約10%の男性の自閉症者には脆弱X症候群が存在することを示した.

他の疾患の合併
現在まで,フェニルケトン尿症のような単一遺伝子病を含めて,さまざまな明確な疾患が自閉症に合併したという散発的な報告が存在した.これらの事実も自閉症が,共通の単一の原因では生じないことを示唆している.
個々の例では自閉症の原因を明確にすることは極めて困難である.自閉症に関する病因的研究の結果は,自閉症を,その本態は下位群の間で多少違い得るが,ある種の脳機能障害を基礎に生じる行動的に定義される臨床的症候群とみなすことが妥当であることを示唆している.

医学的診察
自閉症におけるさまざまな医学的問題をみると,詳細な医学的な検査は,自閉症の医学的治療の本質的な第一段階である.精神神経学的および小児神経学的診察,発達評価,脳波検査,CT検査,そして代謝障害と脆弱X症候群のスクリーニングは,発達障害の子供のためのどの診療機関でも,通常の手技として受け入れられることが勧められる.

医学的治療

歴史的治療法
歴史的には,電気けいれん療法やインスリン昏睡療法さえもが,効果はなかったが,自閉症児に試みられた.自閉的な子供に対する精神分析的な方向性をもった遊戯治療と彼らの親たちへのカウンセリングの組み合わせは,かつては自閉症の最も有力な治療法であった.これらの治療法は,自閉症が精神分裂病の最早発型であるという仮定に基礎をおいていた.そしてそれらは,自閉症の本態と,自閉症と精神分裂病との違いに関する知識が増大するとともに衰退した.

薬理学的治療
自閉症の間でのてんかんの発生率の高さを考えると,てんかんを有する自閉症児への抗てんかん剤の重要性は明らかである.しかしながら,他の薬物は自閉症に対する効果に関しては,まだ不明であるように思われる.今日まで,自閉的な子供の精神発達に対して効果があると証明された薬物はない.たとえば,フェンフルラミン,それは理論的には血中セロトニン濃度を下げることを通して,自閉的な子供の知的機能を改善すると初期の臨床的施行7)では思われた,アメリカでの全国的な治験を通して問題があることが明らかになりつつある.推奨者による有効性の主張にもかかわらず,メガビタミン療法の効果は,広くは受け入れられていない.ペントキシフィリンは,その自閉症への効果は日本で,かつて経験ある数人の児童精神科医によって主張されたが,多施設での二重盲検試験においてそのような作用を証明できなかった.成瀬ら11)は,チロジンとトリプトファン水酸化酵素の補酵素であるテトラハイドロバイオプテリンが,自閉症状を軽減することを予備的なプラセボを対照とした二重盲検試験で証明したが,彼らの結果は今後さらに追試される必要がある.
もし自閉症に治療的効果のある薬物が発見されるとするなら,それは自閉症のある下位群に共通するある生化学的変化に基礎をおいた,確実な薬理学的な根拠を有しているべきであり,決して万能薬ではなく,その下位群のみの治療薬であるべきである.薬物の薬理学的基礎とその実際の効果との間と同様に,病因論的研究の結果と薬物の効果の根拠の間にも,まだ大きな隔絶が存在する.
ある種の抗精神病薬(たとえば,ハロペリドール,ピモジド)の効果に示されるように,これまで自閉的な子供に有用であることが証明された薬物の大部分は,実際には主として異常行動に有効である3,10).自閉的な子供は通常多くの行動上の問題を有し,それらは彼らの社会適応はもちろんのこと,教育的および職業的訓練をはなはだしく障害する.自閉的な子供はまた,とくに青年期に強い強迫的な行為を示しやすくなる.自閉的な子供と青年の異常行動をコントロールすることは,彼らの教育と職業訓練のためには疑いもなく有益である.薬物が自閉症を治せない限りにおいては,それは他の形の治療,とくに治療教育とともに統合されていくことが最も良いことである.

医学的治療におけるその他の問題
自閉的な子供は,障害のない子供たちと同様に,決してさまざまな身体的疾患に無縁ではない.自閉的な子供,とくに重度の遅れを有するものは,痛みや不快を適切に訴えない.そのかわりに,彼らは彼らの苦難を問題行動(たとえば,自傷行為,攻撃行動,癇癪)の形で表現するかもしれない.彼らの身体的疾患は見逃されやすい.自閉的な子供の保護者たちは,彼らの自閉的な子供たちの行動あるいは気分のわずかな変化さえも認めることに敏感でなければならない,なぜならそのような変化は重篤な身体疾患の初期症状でありうるからである.

結論
自閉症の医学的治療の現状をみれば,たとえ自閉症の医学的治療の将来は有望かもしれないとしても,自閉症に効果的な薬物を我々が手に入れるまでには,我々はまだ多くの道のりを行かねばならない.さらにまた,そのような薬はすべての自閉症の子供にではなく,その薬の作用の根拠となる生化学的変化を共有する下位群に有効でありうるのである.対症的治療法に関しては,自閉症の問題行動を扱うためのいくつかの薬を我々はすでに手にしている.より広い自閉症治療の枠組みを作るために,そのような医学的治療を治療教育とともに,統合していくことは意義あることと思われる.

〔参考文献〕

  1. Blomquist,H.K.,Brown,M.,Edvinson,S.O.et al.:Frequency of the fragile X syndrome in infantile autism.Clin.Genet.,27:113‐117,1985.
  2. Brown,W.T.,Jenkins,E.C.,Cohen,I.L.et al.: Fragile X and autism:A multicenter survey. Am.J.Med.Genet.,23:341‐352,1986.
  3. Campbell,M.,Anderson,L.T.,Small,A.M.et al.:The effects of haloperidol on learning and behavior in autistic children.J.Autism Dev. Disord.,12:167‐175,1982.
  4. Courchesne,E.,Yeung‐Courchesne,R.,Press, G,A.et al.:Hypoplasia of cerebellar vermal lobules VI and VII in autism.N.Engl.J.Med., 318:1349‐1354,1985.
  5. Deykin,E.Y.&MacMahon,B.:The incidence of seizures among children with autistic symptoms.Am.J.Psychiatry,136:1310‐1312,1979.
  6. Folstein,S.E.&Rutter,M.L.:Autism:Familial aggregation and genetic implications.J. Autism Dev.Disord.,18:3‐30,1988.
  7. Geller,E.,Ritvo,E.R,Freeman,B.J.et al.: Preliminary observations on the effect of fenfluramine on blood serotonin and symptoms in three autistic boys.N.Engl.J.Med.,307:165‐169,1982.
  8. Gillberg,C.and Svendsen,P.:Childhood psychosis and computed tomographic brain scan findings.J.Autism Dev.Disord.,13:19‐32,1983.
  9. Hauser,S.L.,DeLong,G.R.and Rosman,N.P.:Pneumographic findings in the infantile autism syndrome.Brain,98:667‐688,1975.
  10. Naruse,H.,Nagahata,M.,Nakane,Y.et al.:A multi‐center double‐blind trial of pimozide, haloperidol and placebo in children with behavioral disorders,using crossover disign.Acta Paedopsychiatr.,48:173‐184,1982.
  11. Naruse,H.,Hayashi,T.,Takesada,M.et al.: Therapeutic effects of tetrahydrobiopterin in infantile autism.Proc.Jpn.Acad.,63:231‐233, 1987.
  12. Ritvo,E.R.,Freeman,B.J.,Scheibel,A.B.et al.:Lower Purkinje cell counts in the cerebella of four autistic subjects:Initial findings of the UCLA‐NSAC autopsy research report.Am.J.Psychiatry,143:862‐866,1986.
  13. Rumsey,J.M.,Duara,R.,Grady,C.et al.:Brain metabolism in autism.Resting cerebral glucose utilization rates as measured with positron emission tomography.Arch.Gen.Psychiatry,42:448‐455,1985.
  14. Takahashi,S.,Kanai,H.and Miyamoto,Y.: Reassessment of elavated serotonin levels in blood platelets in early infantile autism.J.Autism Child.Schizophr.,6:317‐326,1976. 15)
  15. Tanguay,P.E.,Edwards,R.M.,Buchwald,J. et al.:Auditory brainstem evoked responses in autistic children.Arch.Gen.Psychiatry,39:174‐180,1982.

[医学]

重症心身障害児の疫学と地域ケア

EPIDEMIOLOGY AND COMMUNITY CARE OF THE SEVERELY MULTIPLY HANDICAPPED IN JAPAN

岡田 喜篤
札幌あゆみの園


はじめに

重症心身障害児(以下重症児と略す)とは,わが国における児童福祉法上の概念で,重度の精神遅滞と重度の肢体不自由を重複している児童のことである.これはわが国独特の概念であるが,さらにはこの重症児を法的な措置として入所させることのできる施設もまたわが国独特の福祉制度である.これらはおそらく世界的にみても非常にユニークなものと考えられる.社会福祉において先進的といわれる国々では,日本でいう重症児が,精神薄弱児(者)施設の一角にある病院部門ないし集中治療部門などで受け止められているのが通例である.
わが国では,過去25年ぐらい前まで,このような重い障害をもった人たちの場合,家庭で受け止めることはおろか,従来からの精神薄弱児(者)施設ないし肢体不自由児施設や身体障害者施設などいずれの施設でも受け入れることは困難であった.このため当時は,悲惨なできごとも少なくなかった.すなわち,両親が精神薄弱児を殺してしまうとか,障害児の母親がわが子とともに心中するといった事件がしばしば発生したりした.こうした事件は,昭和30年代の後半に特に多かったが,大きな社会問題にまで発展した.テレビ各社や新聞の全国紙などはこのことを大きく取り上げ,新しい施設制度の確立をもとめて一大キャンペーンを展開した.昭和38年のころであった.
これより先,東京・日赤産院・小児科部長だった小林提樹氏は,戦後まもなくから障害の重い乳幼児を産院小児科病棟や併設の乳児院で受け止め,その数は常時25人ないし30人となっていた.ところが,昭和31 年になると,これら障害児について行政当局から,小児科診療の対象として,または乳児院措置児として適切ではないので,健康保険の適用を停止し,あるいは医療扶助を停止するという通告を受けた.小林氏はこうした決定に対して激しい憤りを感じ,障害の重い子どもたちが適正に保護されるべきであることを社会に訴えていった.昭和33年の全国社会福祉大会は,小林氏の提案に対して全面的な支持を決議し,全国社会福祉協議会に「重症心身障害児対策協議会」を設置してその福祉対応を早急に検討することとした.この時以来,「重症心身障害児」という名称が正式な術語として用いられるようになった.

行政的施策の確立

昭和38年,政府は,重症児のための施設として東京の島田療育園ならびに滋賀県大津市のびわこ学園を指定し,その費用については国および都道府県(または政令都市)が負担するということを決定した.これは,まだ法律的な整備に至るものではなかったが,重症児の親やその関係者の切なる期待に応える画期的なことがらであった.
続いて昭和41年からは,全国にあるいくつかの国立療養所に重症児のための病棟を新設し,ここに重症児を委託して療育するという方針が実施された.これによって,重症児の福祉制度の法制化は,いよいよ間近であることが感じられた.

重症児福祉制度の法律的整備

昭和42年8月1日,児童福祉法第25次改正が行われ,重症児施設の法制化が実現した.この法制化にさいして,重症児の定義は,従来のものに比べて限定した範囲の障害を意味するものとされたが,それは精神薄弱児(者)施設や肢体不自由児施設の重度棟の整備が進行してきたためであった.重症児の新しい定義は「重度の精神薄弱と重度の肢体不自由が重複する児童」で,具体的には,知能指数おおむね35以下で,身体障害の程度が1級ないし2級に相当する肢体不自由を伴う児童という意味である.定義では児童とされたが,児童福祉法の第63条で,同様の障害をもつ18歳以上の者も児童と同じ処遇を受けることができると規定されたので,重症児という場合には,しばしば年齢制限を無視することも珍しくない.因みに,重症児の処遇では,実際の年齢が18歳以上でも児童相談所が措置することとなっている.また,重症児が入所する施設(つまりは重症心身障害児施設=重症児施設)はすべて児童福祉法に基づく児童福祉施設であって,成人専用の施設というものは存在しない.

重症児施設の整備状況と重症児の実態

昭和63年4月1日現在,わが国には59力所の重症児施設があり,このほか80カ所の国立療養所が1~4つの重症児病棟をもっている.これらの総ベッド数は 14,560床である.
わが国にどれほどの重症児(成人を含む)がいるか正確な数は不明であるが,愛知県の児童相談所が把握している重症児の人口に対する割合(0.0253%)から推計すると,全国では約30,600人となる.因みに,愛知県児童相談所は重症児の把握に務めていることでよく知られており,現在のところ全国推計にはこれを利用することが多い.
ところで,重症児施設は必ずしも常に満床となっているわけではない.むしろ,諸々の理由によって定員の約90%程度の入所(13,100人)というのが最近の傾向である.そしてこれらの入所者の約30%は,重症児の定義に合致しない人々とみられるので,残る70%の 9,100人程度が重症児ということになる.つまり,全体で30,600人ほどの重症児がおり,そのうち入所しているのは9,100人ということは,21,500人がなお在宅児(者)であることを意味する.

在宅重症児について

重症児をとりまく状況は,この10~15年のうちに大きく変わってきたように思われる.全体の7割にも及ぶ重症児が在宅であるが,この人達は,少なくとも自分自身の生活に関する限り,特に問題なく過ごしている.そして,親や家族の多くは,重症児をできる限り家庭で受け止めていきたいと思っている.こうした風潮の背景には,次のような社会的要因を見逃すわけにはいかない.
1近隣社会の理解や協力が得られるようになった.2地域療育体制が整備されてきた.3在宅手当,障害者医療,ヘルパー派遣,緊急一時保護,税の減免などの諸制度が確立された.4国民所得と生活水準の向上が実現した.5家庭療育を可能にする知識,技術,機器,器材の著しい進歩があった.6ノーマリゼーションの思想が普及し家庭や地域で受け止めるという風潮が定着してきた.
しかし,親や家庭は重症児施設などの入所施設の必要性を否定しているのでは決してない.むしろ,施設に対しては,はっきりとした新しい役割を求めている.それは,施設が単に入所機能だけを備えるのではなく,外来診療,通園療育,デイケア,母子入所,地域活動などを含めた地域のセンター的存在となり,同時に次のような入所に積極的な姿勢を示すことを期待しているのである.すなわち,1専門的な医療管理を必要とする場合,2一定の目的のために一定の期間だけ入所という場合,3親や家族が介護できなくなった場合,4家庭での介護者が短期間の休養・娯楽・文化的活動などで一時的に預かってほしい場合,などである.

今後の重症児施設

重症児の場合,すべてが家庭や地域で受け止められるとはいえないが,一般的な趨勢はノーマリゼーションの方向に進みつつある.多くの重症児施設がこの方向への歩みを示しつつあることも事実であり,これからは在宅児にとっても意味のある重症児施設になることが重要であることを強調したいと思う.


[教育]

知的障害をもつ人々の特殊教育にみられる国際的動向

INTERNATIONAL TRENDS IN SPECIAL EDUCATION OF PERSONS WITH INTELLECTUAL DISABILITIES

Peter Mittler
Professor of Special Education,University of Manchester,UK


来世紀を12年後に控え,将来を見据え,どんな変化が必要かを問い,またすべての障害児,特に重度知的障害をもつ子供達のために今後50年間の戦いの準備をすべき時である.
第一に,障害がどんなに重かろうとすべての子供が就学すべきだと我々は考える.義務教育が普及している国の国民にとって,この目標はさほど遠いものとは思えない.ユニセフの推定によると,世界の1億4,000 万人の障害児のうち1億2,000万人が開発途上国,つまり8,800万人がアジア,1,800万人がアフリカ,1,300 万人が中南米,1,100万人がヨーロッパ,600万人が北アメリカに住んでいる.1980年から2000年までの20 年間に障害をもつ児童及び成人の数は4億人から6億人に増えるものとみられる.UNESCOその他の国際機関の大ざっぱな推測によると,アフリカ東部及び南部の障害児で学校に行っているのは1%にも満たない.
このようなはなはだしい対照が見られる一方,積極的な動向もうかがえる.最近のユネスコの調査によると,58カ国中48カ国で,障害児教育はかつてのように保健または社会福祉当局の担当であったり,またはどこも担当していないというのでなく,国,州両方のレベルで教育省の責任の下にある(UNESCO,1988).だが家族にとって通学が常に可能とは限らず,また当局の強制もない.第2に,障害児の就学に関する法律を制定した国が増えている.第3に普通校での障害をもつ児童の教育に対する関心が高まっている.
こうした動向はプライマリー・ヘルスケアおよびコミュニティ・ベースド・リハビリテーション(CBR)がますます重視される世界的傾向のひとつである.CBRは,地域のヘルスワーカーに基礎的研修を行い,家族や地域社会が障害をもつ児童・成人が自立と生存に必要な技能を習得できるよう支え,助けるために手をさしのべられるようにすることが基本となっている. David Wernerの優れたマニュアルである「障害をもつ村の子供たち」(1987)は今後に大きな影響を与えるものと思われる.

就学年齢の子供:統合への挑戦

子供のニーズは統合でなく教育であると言われてきた.今では統合は特殊教育,また教育そのものの中心的課題である.そして子供の障害と大人の態度や期待を考えた時,知的障害をもつ子供の統合は最も困難な教育的課題であろう.
障害児のための教育の整備を望む開発途上国は困難なジレンマに直面することになる.専門家によっては特殊学校を作って西欧の間違いを繰り返してはならない,最初から統合で始められるすばらしい機会があるのだから,と説く.一方で,開発途上国の普通校は絶望的過密状態で,教師の訓練も行き届いていず,カリキュラムは中央集権的で個別化に対応できないという現実がある.
たいていの国では視覚,聴覚,身体障害のある子供が優先され,知的障害のある子供はほとんどいつも政府でも学校でも一番後回しにされる.事実「精神薄弱児のための」とうたっている特殊学校の多くは知的障害が軽度ないし中程度の子供だけを入学させているのが実情で,しかもそれもトイレの訓練ができていて行動上大きな問題がない場合に限られている.重度または重複障害のおる子供は排除される場合が多く,教育あるいは特殊教育の制度が進んでいる国でも変らない.

責任ある統合に向けて

障害児に普通校を解放しようという場合,特殊教育が必ずしも質の低い教育とか隔離された教育と断定してはならない.特殊学校を閉鎖し子供を普通の学校に入れるだけでは統合でもメインストリーミングでもなく,“放り出し”である.
責任ある統合政策のもとでは,知的障害のあるすべての子供は特別のスタッフ他の資源が用意されており,スタッフがすべての子供のニーズに応えている最寄りの学校か少なくとも特別に選定した普通校に入れるようにするべきである.文献調査によると,統合を成功させることは可能である(Hegarty,1987;Mittler and Farrel,1987).成功の中味を一言で言うならば,それは「サポート」である.
サポートは子供が教室の学習活動や運動場あるいは近隣での社会活動に参加できるようにするために必要である.普通校の教師も,特別のニーズをもつ子供や特に知的障害のある子供との経験が豊かな専門家からのサポートが必要である.こうしたサポートをする教師はクラス担任教師と協力して子供がすでにどんな力をもっているかを評価し,また親と協力して優先的指導項目を決め,他の子供から分断されることなく学習できる指導方法,技術を決める.他の子供からのサポートも成功の条件のひとつである.「子供は残酷である」との見解を立証した調査はない.子供は明らかな障害のある子供に対して協力的である.子供が,からかうのは自分に似た者であることが多い.子供は障害のある者を進んで助けようとする.
地域社会のサポートも不可欠である.両親や親族は子供に付き添うだけでなく,教室の中で先生の助手として,障害のある子供ばかりでなくクラス全体のために活躍する場合もある.
子供の家族からのまた家族へのサポートも大切である.家族と学校の双方が地域の学校に通う子供を支えれば統合の成功はさらに容易になろう.
普通学級への完全統合はすべての知的障害をもつ子供にとって実際的で効果的であるわけではない.しかし,慎重に選定した少数の普通校にこうした子供を対象とした単数または複数の特殊学級を置くことは実現性が高い.2つか3つのクラスを子供とその教師や助手と一緒にクラスごと普通校に移し,教師とセラピスト両方の十分なサポートを保証することなどが考えられる.こうしたクラスは普通学級への個々人の統合を一歩一歩すすめていくための出発点となる.

学校卒業後は?

西欧諸国では子供は16歳くらいで学校を終えると考えられていたが,今日では20代の初めかそれ以降まで全日教育を受け続ける若者が増えてきている.だが西欧でも,知的障害をもつ子供のほとんどは16歳くらいで学校を終えるが,この年齢は子供が学習への真の興味を示し始め,基本的な教育技能習得で進歩をみせる頃である.学校卒業者の多くの知的成熟度はある点では5~6歳の非障害児の知的成熟度と同程度なので,これは驚くに当たらない.
知的障害をもつ人々は,その希望があれば一生涯教育を受け続ける機会を得て学んでいけるようにする必要がある.ここでも他の成人と別でなく,地域社会の教育プロジェクトに参加できるような援助が必要である.地域センターや大学,成人教育施設,職業準備教育,職業訓練など知識技能向上のために人々が集まるどんな場でもよい.これは今後数10年間に我々が取り組まねばならない大きな課題である.

〔参考文献〕

  1. Hegarty,S.(1987)Meeting Special Needs in Ordinary Schools.London:Cassell.
  2. Mittler,P.and Farrell,P.(1987)“Can children with severe learning difficulties be educated in ordinary schools?” European Journal of Special Needs Education,2,221-236.
  3. UNESCO(1988)Review of the Present Situation of Special Education.Paris:UNESCO(in press)
  4. UNICEF(1981)“The disabled child:a new approach to prevention and rehabilitation”. Assignment Children,53/4,Geneva:UNICEF
  5. Werner,D.(1987)Disabled Village Children. Palo Alto,Calif.:Hesperian Foundation.

[教育]

日本の精神遅滞児教育における生活主義教育の発展と課題

DEVELOPMENT AND PROBLEM OF THE LIFE‐CENTERED EDUCATION IN JAPAN

小出 進
千葉大学教育学部


1.戦後の精神遅滞児教育の出発
1945年8月,わが国は,第二次世界戦争に敗れた.わが国の学校教育における精神遅滞児教育は,第二次世界戦争後,ほとんどゼロから出発した.戦後当初の時期には,特殊学級(小学校・中学校の)における教育が中心となった.
新制度の学校教育は,敗戦後の社会的・経済的・文化的悪条件の下での出発であった.当然のことながら,子どもたちの教育環境条件も劣悪であった.したがって,子どもたち全体に学力低下の傾向があったとみられる.学力低下への応急対策として,学校では「勉強のできない子ども」を集めた学級が作られた.そして,「勉強の最もできない子どもたちを集めた学級」が特殊学級とされることが多かった.

2.水増し教育
勉強のできない子どもたちを集めた学級であれば,そこでは勉強ができるようにすることが目指される.勉強のできない子どもを対象に,学年段階を下げた内容を用意し,やや丹念に,繰り返し指導しようとする,いわゆる「水増し教育」が進められがちであった.学業遅進児と精神遅滞児を厳密に区分せずに教育対象を把握し,学力促進を目指し,そして,一般教育の方法をよりどころとして,指導を進めようとする傾向は強かった.

3.生活主義教育の指向
しかし,そのような考え方や方法で,精神遅滞児教育を進めることの誤りを,体験的に認識するのに,多くの年月を必要としなかった.やがて,本来の対象である精神遅滞児の特性を積極的に認め,精神遅滞児教育独自の方法を力強く捜し求めるようになる.
独自な方法を追究する過程で,過去の学校教育からの離脱を懸命に指向した.教科にとらわれない教育,教科書に依存しない教育,教室や机から離れた教育,の実現を目指したのである.その結果,見出されのが生活主義教育であった.

4.アメリカ経験主義教育の影響
日本の精神遅滞児教育における生活主義教育は,精神遅滞児を対象とした教育実践体験を通して,指向されるようになったものである.しかし,戦後,日本の教育界に流入した,アメリカ経験主義教育の影響も無視することはできない.1947年,新教育制度発足とともに,連合軍総指令部の協力の下に,講習会や研究集会が盛んに開催された.その際,アメリカの教育関係資料が紹介され,アメリカから専門家が来日し,直接指導に当たることもあった.1952年,山口薫らにより翻訳され,出版された「Martens,EH.(ed);Curriculum Adjustments for the Mentally Retarded,1950」は大きな影響を与えた.

5.生活主義教育の実現
精神遅滞児教育が指向した生活主義教育では,教育目標として,自立的生活力の育成が大切にされ,社会自立が終局の目標とされた.そして,教育内容については,予想される将来の自立的生活に必要最小限なものは何かという視点から,必要な内容が選択された.その結果,自分の身の回りの処理ができること,自分の居住する地域で社会的生活ができること,自活するのに必要な職業的技能を身につけることなどが大切にされた.
指導方法については,学習活動の実生活化が協調された.学習活動を実際的な生活活動に近づけることであり,実際的な生活活動を学習活動に取り入れることでもあった.「実生活化の程度」を表すために「現実度」という語が,しばしば使用され,「学習活動の現実度を高める」ということが,指導方法上の重要な基本原理とされた.

6.職業教育の拡大
精神遅滞児教育における生活主義教育は,当初から職業教育との結びつきが強かった.教育目標「社会自立」は「経済的自立」として,また「社会適応」は「職場適応」として理解されることが多かった.1965年ごろまでの精神遅滞児教育は,比較的障害の軽い子どもを対象としていたので,その教育目標は,達成することができたのである.
中学校段階以降にあっては,労働的作業活動の教育的価値が高く認められ,労働的作業活動が,学習活動として大きく位置づけられた.現実の生産現場に似た状況を,学校内に設定したり,現実の生産現場に教育の場を求める方法も,早くからとられた.

7.養護学校学習指導要領の制定
戦後約15年を経て,制度整備の必要もあって,養護学校の学習指導要領が制定されることになったが,この制定に対しては,生活主義教育の立場からは,激しく批判された.
第一に,学習指導要領という法的基準を国が示すことは,教師の自主的創意工夫を抑え,各学校における教育の進め方を,いたずらに画一化するおそれがある,という批判であった.そして,第二に,学習指導要領では,教科等で教育内容を示すことになったが,教科で教育内容を組織することは,生活主義教育と矛盾するものであり,戦後当初の水増し教育に逆行するものである,という批判であった.

8.生活主義教育の変容
養護学校の学習指導要領で,教科等によって教育内容が選択・組織されたこともあって,教科に対する全面否定的考え方が弱まり,精神遅滞児教育にふさわしい教科を追究する機運が高まってきた.そして,教科の内容範囲を,発達段階の低い子どもにも適用できるように拡大することになる.教育内容を教科等で選択・組織しても,指導を各教科等に分けずに行えば,生活主義教育は展開できるとして,各教科等に分けずに行う指導のありようを追究することになる.

9.障害の重い子どもへの対応
1965年ごろから,学校教育が,障害の重い子どもを対象にするようになった.このことによって,精神遅滞児教育における生活主義教育に一部修正が余儀なくされた.
教育目標として,「社会自立」を大切にしてきたが,その目標を,障害の重い子どもにも適用できるように,「自立」の概念を拡大し,修正することになった.「自立」を「自立的生活」に置き換えて,「自立的生活」を「自分の力を最大限に活用し,他者から受ける援助を最小限にして取り組む生活」と規定することにもなる.
過去の生活主義教育は,子どもの将来の社会自立を目指し,予想される将来の生活に合わせて現在の学校生活を仕組むことを強調した.しかし,障害の重い子どもに対応するようになって,子どもの現在の状態にふさわしい学校生活にすることをも重要視するようになった.遊びを学校生活に大きく位置づけるようになったのも,そのことを意味する.

10.生活主義教育の課題
生活主義教育では,子どもの生活を大切にする.子どもが望ましい生活に取り組めるように,子どもの生活を整え,適切に援助することを教育と考える.生活を通して,何かを教え込もうとするのではない.子どもの生活に関連づけて,何かを習得させようとするのでもない.子どもがよりよく生活できるように,生活を整えるのである.
子どもの生活を整えるに当たっては,第一に大切にしたい原則は,子どもにふさわしい生活にするということである.第二に大切にしたい原則は,子どもに期待する卒業後の生活に自然につながるように,学校生活を仕組むということである.
子どもの学校生活を望ましい生活にするには,学校生活をどのように仕組み,援助すればよいか,その方法を具体的に明らかにすることが,生活主義教育の基本課題である.


[福祉]

日本における施設入所精神遅滞者の高齢化について

THE AGING OF MENTALLY RETARDED PEOPLE IN INSTITUTIONS IN JAPAN

金築 健夫
松花苑 精神薄弱者更正施設みずのき寮


はじめに

精神遅滞の障害をもつ人達には,一般に,老化がより早期に訪れ,その時期は,おおよそ,40歳頃であるとされてきた.しかし,このことは漠然とした経験に基づく論であって,科学的根拠に乏しい.
日本精神薄弱者愛護協会が,1984年から1986年にかけて行った調査(精神薄弱者加齢の軌跡」―高齢精神薄弱者実態調査研究報告―1987年5月刊)は,従来,不明確であった幾つかの点を解明している.ここでは,その解明されたポイントの一部を紹介し,精神遅滞の障害を持つ人々の実態と問題点について論議を進めたい.

1.調査の概要
本調査は,居住制精神薄弱者更生施設入所者を対象として,次のように三次にわたり実施したものである.

  1. 第一次調査(1984年)
    40歳以上の入所者,3,123名を対象として行った.(59施設,横断的調査)
  2. 第二次調査
    20歳以上の入所者1,424名を対象として調査を行った.(10施設,横断および縦断的調査)
    これは,40歳以下の人達をコントロールグループとして,40歳以上の人達との比較を見ることと,第一次調査の2年後の経年変化を見ることを目的として行ったものである.
  3. 第三次調査(1986年)
    第二次調査対象施設のうちから5施設を選び,入所者599名に対し,実地・面接調査を行った.(主として縦断的調査)

2.調査の結果
上記の三次にわたる調査をまとめて,分析・考察を加えた結果,精神遅滞の障害を持つ人達の老化について,おおむね,次のようなことが明らかとなった.
(1) 日常生活行動(ADL)
横断的に見る限りにおいては,50歳頃から低下の傾向が見られる(図1).しかし,個々の経年変化を見た第二次および第三次の調査では,40歳以上の入所者全体においては,上昇したか,あるいは変わらない者が,85%近くを占め,低下を示した者は約15 %である.特に60歳以上の人について見ると,ADLのその率は約88%対12%である.
(2) 社会適応(SA)
社会適応度と加齢との関係は,40歳代の半ばから 50歳位までは上昇傾向を示し,以後,横這いの状態を維持し,60歳から60歳代の半ばにかけて低下を見せはじめる(図2).

図1 ADL各領域の自立者の加齢による推移I(実地調査)
ADL各領域の自立者の加齢による推移I(実地調査)

図2-1 社会適応度(SA)各領域の推移―男―(第一次調査)
社会適応度(SA)各領域の推移―男―(第一次調査)

図2-2 社会適応度(SA)各領域の推移―女―(第一次調査)
社会適応度(SA)各領域の推移―女―(第一次調査)

(3) 精神機能
精神機能は,おおむね50歳頃をピークとして,以後,下降の一途をたどる(図3).

(4) 体力(片足立ちと握力)

  1.  片足立ち 平衡機能をみる片足立ちでは,約40%が測定不能であったので,その調査結果は詳述を避けるが, 60歳以降は著しい下降を見せる.
  2.  握力 握力の加齢に伴う変化には性差が著しい.すなわち,男子では60歳を過ぎてから,それまでほぼ横這いであったのが急激な下降を示すのに対し,女子においては40代の後半からゆるやかな下降を示している(図4).

(5) 健康状態
健康状態は60歳以降に,目だって低下の傾向を示す.定期投薬等,保険上特別な配慮を要する人は,加齢とともに増加する(図5).
しかし,個別の経年変化を見ると40歳頃までは健康上の配慮を減少させている者が多いのに対し,50 歳代後半から60歳以降は年を追うごとに,その必要度が増加する.
以上を総合すると,50歳代後半でも,ほとんど健康である人達が60%であるのに対し,60歳を越すとこれが変化し,さらに70歳代に入ると,病弱で健康上特別の配慮を必要とする者は70%に達する半面,非常に健康な人が30%と両極化する.これは健康状態においては,その背景となる個人差が著しいものと考えられる.個人ごとの経年変化をさらに追って行くと,加齢とともに身体的機能は,低下の速度を速める.
因みに,本調査の対象となった,40歳以上の精神遅滞者の有病率を,国民健康調査と対比すると4~5倍の高率を示している.

図3 精神機能テストの各領域における成績(実地調査)
精神機能テストの各領域における成績(実地調査)

図4 高齢期にみる握力低下のパターン
高齢期にみる握力低下のパターン

図5 健康上の配慮を要する人の加齢による推移(第二次調査)
健康上の配慮を要する人の加齢による推移(第二次調査)

3.居住制施設サービスと精神遅滞者の老化
最近のアメリカにおける研究では,地域志向のサービスを受けている精神遅滞者は,施設入所者よりも適応行動の到達度が高いと報告されている.しかし,この場合,アメリカにおける施設(institution)と日本の「施設」との定員規模やサービスの質の違いが明確にされなければならない.
本稿で述べた調査報告の結果からみて,例えば,日常生活行動を見ても,総合的には,50歳代後半は上昇している.このような上昇の背景には,施設サービスの積極的な関与があると考えてもよいであろう.
実地調査報告によると,幾つかの居住制施設では, 50~60歳代の人が若い人と一緒に屋外作業をし,しかも,リーダーシップをとっている例を多く見たという.このような人達の握力は,健常者と比べても優れたものであった.人の体力や能力には個人差があるが,生来のものに環境因子がどう作用するかが,加齢に伴う変化の背景にあるようである.同じことは,社会適応度についてもいえよう.精神機能が50歳位まで発達をみせていることも,施設機能のよい意味での刺激があるからだといえよう.精神遅滞の人の有病率は,加齢とともに高まるが,疾病の種類によっては減少の傾向を示しているものもある.有病率は高いが,保健,医療,栄養および運動量等の管理がよく,意外に明るい施設生活を送っていることがうかがわれる.少なくとも,60歳位までの精神遅滞の人にとって,日本の居住制施設は意義のある存在であるといえよう.

4.居住制施設サービスにおける留意点
「精神遅滞者の余命は,一面においては障害の程度により,また他面においては生活上の諸条件とケアの質の良否による.」との指摘がある.ダウン氏症候群等の染色体異常や難治性てんかんを成因とする,精神遅滞者の特異な早期老化現象も見受けられるので,成人病検査や医療等の健康管理の重要性は,今さらいうまでもないことである.
さて,老化防止のために,居住制施設サービス提供上の留意点を幾つかあげてみたい.
心理的側面からいえば,「生き甲斐」の確保・維持が重要であろう.身体的面については,食事・栄養への配慮,保健・医療対策および適当な運動量の確保等があげられる.
人間にとっての最も大きい生き甲斐は,自己の有用感である.そのことを居住制施設において可能とするためには,1)施設生活における文化水準の維持と向上,2)施設と地域社会が直結し,社会的交流が日常的に保たれ推進されること,3)そのことによって,入所者が社会への直接的所属感をもてるよう条件設定がなされること,4)入所者各個人が,真剣に没頭できるような趣味や仕事をもち,その成果が他によって評価され喜ばれるものであること等が,居住施設サービス提供上の留意点としてあげられる.
趣味や仕事についていえば,クリエイティブな活動は,高齢精神遅滞者の生きる意欲をかきたてるのに,極めて効果が高い.

むすび

高齢期における問題は,乳幼児期から児童,青年および成壮年期等の各ライフステージでの援助サービスと連動している.
高齢化の問題をライフサイクルにおけるターミナルステージとして位置づけ,各ライフステージごとの援助対策と一貫性をもたせる必要がある.
居住施設における援助サービスが,その中でどのような位置づけをもち,いかなる役割を果たして行けばよいのか,今後はそのあり方をめぐる実践と研究を深めて行くべきであろう.


[福祉]

日本における精神遅滞者の性の権利と性教育

THE RIGHTS OF SEXUALITY AND SEX EDUCATION FOR PERSONS WITH MENTAL RETARDATION IN JAPAN

山下 勝弘
白河めぐみ園園長


1.はじめに
最近,精神遅滞者の権利擁護と関連して,精神遅滞者の性の権利が,わが国の精神遅滞者福祉において課題になっている.この研究では,最初にわが国,とくに精神遅滞者関係施設における,精神遅滞者の性教育の現状と,性教育にたいする職員の意識と理解の実態を報告する.つぎに,精神遅滞者の性の権利を尊重し,その行使を支援するために開始されている性教育活動の内容や,これからの動向と課題を明らかにすることを目的にしている.

2.性の権利と性教育の概念規定
ここでいう性の権利と性教育は,精神遅滞者が自己の男性であり,女性であるという性の事実を,その年齢や発達段階に応じて尊重され,現実の生活のなかで,性を基盤にした望ましい役割や行動,生活が,個人的にも社会的にも選択する権利のことである.また,性教育は,この性の権利を選択し,行使する当事者能力を育成する教育的活動を意味している.

3.精神遅滞者と性の問題と性教育の現実
わが国の精神遅滞者施設における精神遅滞者の性の問題,さらに性教育の現状を把握するために,アンケート調査を実施した.この調査結果から,下記の実態が明らかになった.

  1. 精神遅滞者と性の問題
    わが国の精神薄弱施設においては,全体の80%の施設が,現在なんらかの意味で性の問題に直面している.その問題の内容は,大部分は,「男女交際のありかた」483件(34%),「自慰」440件(31%)と施設の生活領域での問題で占められている.
  2. 性の問題への対応と職員の研修
    入所者の性の問題に関連して,職員が性教育など特別の研究会を「定期的に開催している」のは50施設(5%)で,問題が発生したときに開催しているのが612施設(61%),開催したことがないが340 施設(34%)である.この結果から見る限り,事前の性教育は実施されていない状況である.
    これに関連して,入所者の性の問題や指導について専門的な助言や指導を受ける専門家(医師等を含む)がいると答えた施設は272施設(28%),いないと答えた施設は714(72%)であった.
  3. 具体的な援助サービスの実態
    具体的な援助サービスとして,施設入所者が結婚する場合,性教育を含めて事前の指導や教育がどのようにおこなわれたかを調査してみると,結婚した人たちの80%は,特別の指導を受けることなしに結婚生活に入っていることになる.

4.精神遅滞者の性教育と職員の意識
つぎに,精神遅滞者の性教育に関連して,職員の性教育観に関する調査結果を見てみよう.

  1. 精神遅滞者性教育の目的
    調査結果では,職員の55%は,精神遅滞者の性教育の目的は,性非行や問題の防止にあると考えている.また,職員の75%は,性の知識は,関心や興味をもたない精神遅滞者へは性の知識を教える必要がないと判断している.しかし,性教育の必要性は, 68.5%の職員が認めている.
  2. 性教育を阻害している要因
    さらに,精神遅滞者の性教育を困難にし阻害している要因として,職員の性教育に対する共通理解に欠如(29.4%),性教育に対する職員の否定的意識(16.0%),職員の性に対する指導力の乏しさ(10.8 %)が上位をしめている.
  3. 性教育を推進する条件
    精神遅滞者の性教育を推進する条件としては,職員全体の性教育への共通理解と意識(35.3%),親や家族の理解や協力(24.6%),職員の性の知識や指導力の向上(12.7%)になっている.

5.精神遅滞者の性教育の動向と展望
これまでに述べた調査結果からも理解できるように,わが国の精神遅滞者施設では,現在,精神遅滞者の性の権利を認知し,これを尊重した援助サービスが開始された段階である.精神遅滞者への性教育も,精神遅滞者の性の感情や意識を理解する調査から出発して,生活指導や健康管理の領域で,積極的にとりあげられている.とくにその内容は,基本的な性の知識の学習や,社会生活に必要な男女交際や役割についての実際的な訓練が中心になっている.今後,わが国において精神遅滞者の性教育は,性教育という固有な名称や領域を確立する方向よりも,生活指導や社会参加訓練の内容として,実際的に教育活動や訓練,援助サービスが強化,推進されると予想される.
その基本的な条件や,環境を整備するためには,精神遅滞者の生活形成に密接な関係をもっている家族や施設職員をはじめ関係者全体が,まず下記の諸点について理解をもち活動をおこなうことが,緊急の課題であり,重要な責務といえる.

  1. 精神遅滞者の性の権利の認知と保障についての共通理解の確立
  2. 精神遅滞者の性教育の目的や内容についての共通理解の実践活動の実施
  3. 精神遅滞者が性の権利を行使できる社会的環境と援助サービス体系の整備,推進

6.おわりに
 わが国の精神遅滞者福祉は,初期の「保護」の理念を基盤に,衣食住を基本にした「生活保障」,さらに「発達保障」理念を加え,現在はノーマリゼーション理念を背景にした精神遅滞者の「権利の保障」,さらに人間としての「尊厳と存在の保障」の理念に基づく施策や制度の整備充実と,実際的な福祉援助の実現が求められる段階に到達している.しかし,この精神遅滞者の「権利の保障」に関連して,理念においてもっとも未確立であり,実際の援助サービスがもっとも貧弱であるのが,性の権利の領域である.
この課題解決への努力が,現在すでに精神遅滞者施設において開始されている.精神遅滞者の性の権利を認知し,尊重した生活様式や生活内容を用意することや,精神遅滞者への性教育活動を実施することである.この援助サービスを提供する努力によって,両親や家族はもちろん,一般社会において,精神遅滞者の性の権利を認知し,尊重する重要性が理解され,さらに精神遅滞者が性の権利が行使できる社会的環境と援助サービス体系の確立を具体的に整備,推進する活動が強化されるといえよう.

〔参考文献〕

山下勝弘著「精神薄弱者のための性教育ガイドブック」(大揚社)1987年


[職業]

重度知的障害者のための職業訓練

JOB SUPPORT PROCEDURES FOR WORKERS WITH SEVERE INTELLECTUAL DISABILITIES IN OPEN EMPLOYMENT

G.M.Lewis
Project Employment〔Perth〕Inc..Australia


はじめに

Project Employment(Perth)Inc.(以下PEと略す―訳)は過去4年余にわたり知的障害をもつ人の職業安定所として活躍している.2年前に活動内容を拡大し,身体,知覚,精神などの障害をもつ求職者にサービスを提供するようになった.障害のある求職者300余人(うち約200人は知的障害者)がPEの活動の直接の結果として一般雇用(wage open employment)を確保した.就職した者の約3分の2が一般雇用のもとで働き続けている.
知的障害のある労働者を分析してみると,その5分の1がIQが境界線上,半分が中度の障害,3分の1が中度ないし重度の障害をもっている.知的障害のある労働者の年令は,14歳から45歳,平均18歳である.3分の2が男性,3分の1が女性である.労働者の大半(80%)が家族と一緒に暮らし,残りはスタッフつきアパート,スタッフなしアパートにほぼ同数で分散し,配偶者のいる者も単身者もいる.知的障害をもつ労働者の3分の1が特殊学級または特殊学校から直接一般雇用に入り,5分の1は特別ワークショップまた活動治療センター出身,残りはほとんどが雇用確保時に未雇用の状態であった(Lewis,Robertson,Lawn and Roberts 1987).
PEがあっせんした知的障害をもつ労働者の成績を分析してみると,大半が生産性と安全性,欠勤,退職といった重要な分野で障害をもたない同僚と同程度またはそれ以上の成績をあげていることがわかる.この成績の水準は,労働者の個々のIQ,年令,性,通勤や伝達,計算,読み書きの能力とは関係なく維持されていた(Lewis 1987).

職業支援の方法

通常の競争環境の中でこれらの労働者が労働力として長期的に成功を収めてきたのは,PEが開発設計した職業支援制度に負うところが大きい(Moore and Lewis 1985年;Lewis,Lawn and Navarro 1987年).
この制度は重度知的障害者を対象とした雇用支援の分野でM.Gold(Gold 1980),T.Bellamy(Bellamy, Horner and lnman 1979;Bellamy,O'Connor and Karan 1979)が開拓した原則と技術を採用したものである.要するにこの制度は配属してから訓練するモデルで,個々の求職者が目標とする仕事をまず見つけて確保し,それから機関の訓練用資源を現場でのサポートに向ける.現場での実践的サポートの経過は以下の節で述べる.

雇用主

職業指導員(Work Trainer)は仕事を始める2日前に会社に出向き,労働者が職務遂行中に接触しそうな主要な人物と会う.監督,主任,中心的な同僚などである.この人達は知的障害のある労働者を雇うことに関与せず,相談もされないとみられ,それが彼が敵意や抵抗感をもたれる原因にもなりかねないし,また知的障害のある人々について画一的で否定的な見方を招きやすい.例えば,この労働者は,機械を安全に運転できないのではないか,とスタッフは考えがちだ.どうやって個人と意志伝達をはかったり,指示を与えたりしたらよいのだろう,と考えるかもしれない.その人が会社にいるためにさらに「付添い」の義務を負わねばならないとか,新しい労働者の生産性の低さを補うためにもっと懸命に働かばならない,と思うだろう.こうした間違った考えはすべて探り出して話し合う必要がある.
次に職業指導員はマネジャーや監督,主任と労働者の職責を明確にしておく必要がある.どんな職責を果たすことを期待されているか,この職責は近い将来変わる可能性があるか,それぞれの職務が遂行される頻度,職務遂行の時期をどのようにして知るか,誰が指示を与えるか,誰が仕事の質をチェックするか,より優先性の高い仕事があるか,仕事が少ない時はどうするべきか,というようなことを確かめておく.
こうした疑問点に十分な答えが出せたら,職業指導員は全当事者が賛意を示しうる詳細な職務報告書を作る.またこの機会を利用して,職場での自分の役割を説明することもできる.自分が単なる「補助的な立場の者」でも代理の監督でも,また会社の「効率向上の専門家」でも個人的な問題を抱える従業員のための福祉担当官でもないことを明確にする.職業指導員は自分の担当する労働者を適切に就職させることのみに専念するものなので,彼のためでなく彼を通して仕事をし,監督の役割を引きうけるのでなく監督の指示に従って行動し,その労働者と同僚の関係を代替するのでなく助けるのである.

職務

職務報告書が出来上ったら職業指導員はその仕事量分析をする.この分析にはスピードと安全性の原則を科学的に適用することをも含む.PEが用いる仕事量分析はModapts Plusと呼ばれる(Heyde1978,1981).仕事量分析が終了し,マネジメントと職務習性について話し合ったら,全職務の任務分析を行う.任務分析は知的障害をもつ労働者の現場訓練で多目的に役立つ.これにより職務は教えやすく学びやすい段階に分解される.
職業指導員は労働者の特定の強さや弱さを正確に計測できるので,訓練目標を正しく定めることができ,職務の提示も一貫できる.また質量データを効率的かつ正確に収集することができ,代替職業指導員が適切な時に適切な方法で訓練を引きうけることもできる.
この職務分析はPEの生産書式に書き移される.これには職務レイアウトや設備資材リスト,品質・安全管理,質量評価チャートも含まれている.

被雇用者

職務報告書と生産書式が出来上ったら,職業指導員は今度は労働者の主な支援グループ(両親,配偶者,ホステル・スタッフ)と会う手順を整える.労働者の職務の詳しい内容や雇用条件について話し合い,支援グループのもつ誤った考え方は修正する.家族に伝えるべき重要な事柄は,労働者は他の労働者と同じように働き,その見返りとして他の労働者と同等の処遇と報酬をうけるとの了解のもとに雇われているということである.つまり,多少の苦痛があっても自動的に休暇がとれるわけでなく,治療や親戚訪問は就業時間外に予定すべきであって,雇用主は就業中に発生する些細な問題にいちいち悩まされてはならないということである.事実,職業指導員は,彼らと雇用主との臨時のコミュニケーションは職業指導員を通して行うべきだとの了解を主要支援グループに求めることになろう.
家族と会社のコミュニケーションの基本原則が確立されたら,職業指導員は次は通勤の問題に目を向ける.労働者がどのようにして信頼できる安全な方法で職場に行くかである.公共輸送を利用する場合は,職業指導員は最も効率的なルートを設定して,労働者が援助がなくても安全に通勤できるようになるまで付き添う.労働者が自身の通勤手段(車,自転車等)を使いたがっている場合は,適当なルートを決め,労働者が自信をもって自分で通勤できるようになるまで,自分も車や自転車で付き添う.
最後に職業指導員は,労働者が時間通りに起床し,きちんと服装を整え,正しい朝食をとってお弁当を詰められるよう,主要支援グループの補助するべきことをリストアップする.職業指導員は労働者がきちんと職場に着いたかを確認するため,毎日主要支援グルーフと連絡をとる.労働者が職業指導員の援助なしに自分で会社の期待にそえるようになるまでこれは続く.

作業環境

労働者が一般雇用で仕事を見つけられるかを決める重要な要因は,仕事継続への動機である.労働者の50 %がPEの見つけた仕事を自らの意志でやめていることを考えると(Roberts,1987年),労働者の動機を持続させることの重要さがわかる.Robert Schalockの観察によると,知的障害のある労働者の雇用を成功させる2つの前提条件は,労働者の動機と家族の支援である(Schalock,個人的コミュニケーション).
仕事や同僚,マネジメント,職場や外界に関する多くの変数が強力な動機として働き,逆に仕事を脅かす要因ともなる.例えば普通は新米従業員の仕事である低レベルの仕事(トイレ掃除など)は,個人的な侮辱だとか正規従業員としての新しい地位にそぐわないと思われるかもしれない.職業指導員は幻滅を感じている労働者に,正規従業員は全部こうした低い仕事を初期雇用の一部としてやっているのであり,それをしなければ「特別」処遇をうけることになると説明する.労働者が同僚と対立することもある.職業指導員は緊急の事態としてこうした状況に対応し,同僚が動機減退要因にならないようにする.現場監督の仕方も労働への動機を左右するもので,これも分析,対応が必要である.温度やホコリ,照明,騒音,すきま風といった職場の環境も動機環退要因になりうる.経験豊かな職業指導員はお金がかからず簡単な改善策を見つけられることが多い.職場を容易にくつろいだ雰囲気にする手段として,写真を数枚置いたりラジオを捉えると職場の魅力が一層高まり,動機づけられる親しみやすい雰囲気になる.労働者を動機づける場合外部の世界も重要である.5回給料を貰えば欲しがって いたバイクが買えると言えば,労働者は元気が出て来るものだ.
強化策も職場環境の重要な側面だ.普通の従業員が手にできる一般の強化策としては物質的なもの(小切手,社用車,クリスマスボーナス),象徴的強化策(建物への鍵,出勤・退社時間の記録の免除,特別な容易な仕事),社会的強化策(監督のほめ言葉,優良労働者としての名声,社会との積極的関係)がある.こうした自然的強化策が就労後最初の数週間で手に入ることは少なく,長い間手に入らない場合も多い.職業指導員はこのことを承知して,一般の強化策が可能になるまで代替的強化策で代用するようにする.また指導員は労働者が人工的強化策に不必要に依存しないよう,これらの一般の強化策を前面に押し出す努力をする.生産訓練について言うなら,初期の強化策の焦点は労働者へのインプット(職務への注意,主導,忍耐,指示への対応,刺激の受容,失敗からの学習)に合わせるべきである.その後焦点は労働者のアウトプット(仕事の質と量)に向ける.

訓練の環境

生産訓練は比較的明確な継続する2つの段階で行われる.質的訓練と量的訓練である.つまり労働者はまず必要な基準(質)で自分に与えられた仕事をこなすよう教えられ,それが出来るようになったらその基準の仕事を必要な速さ(量)で行うよう教えられる.ゆっくりだが正確な労働者は速いが不正確な労働者よりも高く評価される(特に材料費が高い場合)というのが継続訓練の根本にある原則である.訓練する側の立場からみれば,訓練の初期段階で間違いの頻度が減らせ(潜在的動機減退要因),職業指導員の間違い修正への介入の頻度が減らせ(依存のワナ),また肩越しの監視の必要性が少なくなる.
仕事の質的な側面は,ステップ(各職務分析ステップの正しい遂行)とチェーン(各職務分析の正しい継続)の2つの主な要因に分かれる.ステップおよびチェーンの訓練は,総合的職務提示フォーマットを用いて同時に行われる.労働者が3日間続けて3つの試みについて正しい順序で自分で全ステップを踏むことができれば,その仕事の質的要求を満たしたと言える.
それから労働者は量的訓練に入る.職業指導員は労働者のスピードを速めるため,Pacing Promptsと呼ばれる種々の技術を駆使する.まず指導員は生産の遅れが存在する箇所をつきとめる.こうした遅れは,あるステップの遂行に時間がかかりすぎるとか,ステップとステップの間で時間が浪費されている,間に不必要なステップが入っている,などが原因と思われる.生産の遅れが見られる現場の状況次第で,修正策も変わってくる.労働者が数日間続けて3つの試みについて,業界基準のスピードで任務を遂行できれば,彼はその仕事をマスターしたとみられる.職務報告にあるすべての職務が上記の指標にしたがってマスターされれば,労働者は自分の職務をマスターしたとみられる.

訓練後の環境

職務をマスターするまで,職業指導員の現場での支援が常時与えられる.支援はいくつかの指標が満たされるまで続く.労働者は適切な質量水準で職務を遂行せねばならず.また自然的強化策によって支えられる必要がある.会社の社会的ネットワークに組み込まれ,仕事に満足し,雇用主は労働者に満足するようにならなくてはならない.
それから計画的に徐々に支援が少なくなる.職業指導員が現場からいなくなって労働者の生産水準が落ちるようなら,監督はその旨を報告せねばならない.そういう場合は,労働者が会社の水準で職務を遂行していくうえでまだ職業指導員に頼っている証拠である.指導員が現場から引き上げることを考える前に,この問題は解決しておかなければならない.
職業指導員はフルタイム支援からの引き上げ後6カ月間は現場訪問を1週間に1度に減らし,その後は2週間に1度にする.また指導員は隔週ごとに主要支援グループと連絡する.職場および家庭との連絡は,労働者が雇用されている間中,言い換えれば大抵の場合半永久的に続けられる.職業指導員はフォローアップのための訪問が2週間に1度以下の頻度では,職場で表面化してきているような問題についての十分な新しい情報が得られないことがわかった.

要約

知的障害のある200余人の人々を一般雇用にあっせんするというPEの経験から,以下の結論が生まれた.知的障害をもつ人々がキャリアを成功させられるかどうかは,働くことへの意欲,求職者の生活における主要人物の支援,現実的な職業の選択,正確な職務配属,現場教育などにかかっている.現場教育は計画的で規律があり,密度が高く,労働者と主要支援グループ,雇用主および現場の支援スタッフとの間の四方のパートナーシップがなくてはならない.

〔参考文献〕

  1. Bellamy,G.T.,Horner,R.H.and Inman,D.P.(1979).Vocational Habilitation of Severely Retarded Adults:A Direct Service Technology. Baltimore:University Park Press.
  2. Bellamy,G.T.,O'Connor G.and Karan,O.C.(1979).Vocational Rehabilitation of Severely Handicapped Persons:Contemporary Service Strategies.Baltimore:University Park Press.
  3. Gold,M.W.(1980).Try Another Way:Training Manual.Illinois:Research Press.
  4. Heyde,G.C.(1978).The Sensible Taskmaster. Sydney:Heyde Dynamics Pty Ltd.
  5. Heyde,G.C.(1981).Modapts Plus.Sydney: Heyde Dynamics Pty Ltd.
  6. Lewis,G.M.Job Ready... Who Isn't? Kenote Address to the 8th Asian Conference on Mental Retardation,Singapore,1987.
  7. Lewis,G.M.,Lawn,R.W.and Navarro R.E.(1987).Rapid Entry Training:Field Manual. Perth:PE Publications.
  8. Lewis,G.M.,Robertson,S.K.,Lawn,R.W. and Roberts,S.L.A Retrospective Analysis of Project Employment(Perth)Inc after Three Years Operation as an Employment Agency for Job Seekers with an Intellectual Disability. Paper Presented at the 23rd National Conferrence of the Australian Society for the Study of Intellectual Disability,Perth,Australia,1987.
  9. Moore,R.E.and Lewis,G.M.,(1985).Rapid Entry Training:A Manual for Trainig Intellectually Disabled Workers in Open Employment.Perth:PE Publications.

[職業]

日本における精神薄弱者に対する職業リハビリテーション対策

―現状とその課題―

THE DEVELOPMENT OF VOCATIONAL REHABILITAION MEASURES FOR PEOPLE WITH MENTAL RETARDATION IN JAPAN

安井 秀作
日本障害者雇用促進協会職業リハビリテーション部


雇用率制度の導入・強化

障害者の雇用促進策をみると,雇用率制度を採用する国(ヨーロッパ諸国)と,そうした制度を採らない国がある.わが国ではヨーロッパ諸国の例にならい, 1960年に制定された身体障害者雇用促進法によって身体障害者のみを対象とし,一定率以上の身体障害者(精神薄弱者は含まない)を雇用することを事業主に対して義務づける(努力義務)という直接的な手段がとられた.この制度は,公共職業安定所の職業指導,職業紹介機能の強化策,事業主に対する雇用奨励金の支給などの助成措置ともあいまって,高度経済成長の中での大きな労働力需要に支えられ,身体障害者の雇用促進に大きく寄与した.
しかし,その後わが国経済は安定成長へと転換し,大幅な雇用の場の拡大が期待できなくなったことから,雇用率制度を含む雇用促進の強化策が検討された.その結果,1976年の法改正において従来のように身体障害者についての努力義務を改め,事業主は常に一定率以上(1988年4月現在では民間1.6%,特殊法人1.9 %,官公庁1.9%又は2.0%)の身体障害者を雇用することが法的な義務とされた.また,身体障害者の雇用には付加的経費がかかることに着目し,身体障害者雇用納付金制度が創設された.これは,雇用率未達成企業から徴収される雇用納付金(身体障害者を雇用していればその数に応じて減額)を原資として,身体障害者の雇用に必要とされる施設の改善にかかる経費を助成するなどの制度であり,雇用率制度を経済的側面から裏打ちするものとして位置づけられる.
この過程で精神薄弱者をこれらの制度の中にどのように位置づけるかが大きな議論となったが,精神薄弱者については,1雇用に適するかどうかの判断が困難であること,2適職の開発が進んでいないこと,3社会生活の面で特別の配慮を必要とすること,など身体障害者と異なる問題もあることから,この雇用率制度の適用は行われなかった.
しかしながら,このような特徴を持つ精神薄弱者についても身体障害者と同様にその雇用の促進に努めなければならない.このため,雇用納付金制度においては,精神薄弱者を身体障害者とみなして納付金の減額を行うほか,精神薄弱者を雇用する事業主に対しても助成金を支給するなどの特例措置が講じられ,雇用の促進に努められたが,身体障害者に比較すると,精神薄弱者の雇用はなお低調であるという問題が残されている.
ちなみに,労働省の「身体障害者等雇用実態調査」 (1983年)によって精神薄弱者の雇用実態をみると,1精神薄弱者を雇用している事業所は1.5%(身体障害者14.6%)に過ぎないこと,2大企業での雇用が少ないこと,3雇用精神薄弱者の大部分は製造業であること,4勤続年数が短いこと,などの問題が指摘されている.

精神薄弱者の特性に対応した雇用率制度の改善

このような中で,ILOにおいて,1983年に職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約(第 159条)が採択されたことの意義は大きい.同条約においては,障害者(正当に認定された身体的又は精神的障害の結果,適当な雇用に就き,それを継続し,かつ,それにおいて向上する見込みが相当に減退している者と定義されている)に対し,「適当な雇用に就き,それを継続し,かつ,それにおいて向上することができるようにすること並びにそれにより障害者の社会への統合又は再統合を促進する」ため,適切な職業リハビリテーション及び雇用政策を策定,実施すべきとしている.この条約は,障害者雇用対策に関する新しい国際的な基準となるものであり,わが国においても指針とすべきものであることから,その趣旨を体し,かねてから問題になっていた精神薄弱者の雇用率制度上の鳥り扱いの改善方策が検討された.
精神薄弱者についても身体障害者と同様に就職に当たってのハンディをもっていることを考慮するとすべての事業主に対し,身体障害者と同様にその雇用を義務づけることが望ましい.しかし,一方において,精神薄弱者の雇用には継続的な指導が必要とされることから,事業主に過大な負担を負わせることともなる.こうした点を考慮し,当面は,精神薄弱者については,法的にその雇用を義務づけるのではなく現に雇用されている場合には身体障害者とみなして雇用率に含めるなどの法改正がなされ,1988年4月から施行された.

精神薄弱者に対する職業リハビリテーション対策の強化

精神薄弱者については,後期中等教育の実施体制の不備もあって,中学卒業時点(15歳)での就職を希望する者が少なくない.こうした雇用率制度上の改善を有効に機能させるためには他の障害種類に比較し,学校教育から職業への橋わたし対策としての職業リハビリテーションサービス,中でも,職業能力や職場生活能力を高めるための職業訓練を中心としたサービスの充実が非常に重要な要件となる.

1.精神薄弱者に対する職業訓練
職業訓練のサービスを提供する場合,わが国においては,1民間企業を活用し,その中でon the job方式により訓練を実施する方法(職場適応訓練制度など)と2公的訓練施設(障害者職業訓練校)において実施する2つの方式がとられている.
イ)職場適応訓練制度など
この制度は,公共職業安定所の行う身体障害者の就職促進策の1つとして創設されたものであるが,その後,精神薄弱者の雇用を促進する観点から,精神薄弱者もその対象に含められた.具体的には,事業主に委託して,その企業の中で精神薄弱者の能力に適した作業について6カ月から1年間のon the job方式の訓練を実施し,それによって,職場への適応を容易にしようとするものであり,訓練終了後はその事業主に引き続き雇用してもらう制度である.そして,訓練期間中は,精神薄弱者に対しては訓練手当が,事業主に対しては委託費が支給される.この制度は,精神薄弱者の持つ諸問題の解決に資するところが多いことから,その雇用の促進に大きな効果をあげている.
このような民間企業を活用する方式の一環として,導入訓練や作業適応訓練を含む体系的な訓練も実施されている.具体的には精神薄弱者の雇用・訓練にノウハウを持っている民間企業と地方公共団体の共同出資によるいわゆる第3セクター方式の精神薄弱者能力開発センターの設立が促進されている(1988年現在では,3カ所).これらの施設の設置・運営には納付金制度に基づく助成金が支給されているが,とくに運営費については精神薄弱者の特性にかんがみ手厚い措置が講じられており,できる限り多く地方公共団体においてこのセンターが育成されるように努められている.
ロ)障害者職業訓練校
身体障害者に対して体系的な職業訓練を実施する施設としては,「身体障害者職業訓練校」が,設置・運営されてきた.しかし,その名称が示すように精神薄弱者は,主たる対象とされず,一部の訓練校において精神薄弱者に対する訓練が先駆的に実施されてきた.しかし,1988年の改正法の施行によって,従来の「身体障害者職業訓練校」は「障害者職業訓練校」となり,身体障害者だけではなく精神薄弱者を含む精神的な障害をもつ者に対しても,その特性に配慮した弾力的な訓練を実施することとなり,現在その実施体制の整備が進められている.

2.職業準備訓練
しかし,一方において,職業生活に必要な職場の基本的ルールが身についていないなど職業前訓練を十分に実施しなければ職場適応訓練の実施や公的訓練施設での訓練の実施だけでは就職が困難とみられるといった事例が増加してきた.これに対応するため,障害者職業センター(障害者の能力を評価し,職業リハビリテーション計画を策定し,必要な指導を実施するもので,全国で47カ所,職業評価,指導を担当する専門職として障害者職業カウンセラーが配置されている)においては,公共職業安定所との密接な連携の下に,精神薄弱者などに対して職業前訓練サービスを提供するようになってきている.具体的には,センターに「職業準備室」(サン・トレーニング社)を設置し精神薄弱者などに簡易な作業を行わせることを通じ,労働習慣を確立させ,その就職の促進に資するためのものであった.この事業は,一部のセンターにおいて1985年7月から試行的に実施されたが(指導期間は5週間),その結果をみると2年間で約200人の精神薄弱者に対して指導が実施され,高いレベルの就職実績(実施対象者の75%が就職)を上げるに至ったことから,有効な職業リハビリテーションの一手段となる ことが証明された.
1987年からは,試行結果での問題穣を改善した上,次により実施している.
イ)訓練目標
訓練目標は,次のとおりとする.

  1. 職場の基本的ルールを身につけさせること
  2. 適切な作業態度を身につけさせること
  3. 基本的な作業遂行能力を身につけさせること
  4. 職場での適切な対人態度を身につけさせること

ロ)実施の内容
指導カリキュラムには,次の3種類の訓練段階を設定し基礎的な労働習慣を体得させるための訓練を実施する(最長8週間).

  1. 基礎コース 準備事業へのオリエンテーションの実施(概ね2週間)
  2. 集中コース 雇用労働者として継続就労できる基礎的能力を身につけさせる(概ね2~4週間)
  3. 実践コース より実際的な作業場面での作業指導の実施(概ね2週間)

ハ)作業種目
作業種目は,精神薄弱者の特牲に応じ,1技能系及び2事務系の各種の作業が設けられている.
現在,この準備訓練は12のセンターにおいて実施されているが,47の全センターにおいて実施することが計画されている.

3.障害者職業リハビリテーション研究などの推進
以上のような努力とともに,1障害の重度化・多様化,技術革新の進展に対応した新しい,高いレベルの職業リハビリテーション技術が強く要請されていること,2職業リハビリテーション専門職の養成・研修の体制が確立していないことなどの問題に対応するため,上述の改正法の規定に基づいて「障害者職業総合センター」の設置計画が進められている.総合センターは,職業リハビリテーションに関係する諸科学を基礎とし,国際的視野に立って大学,関係研究機関・施設などとの密接な連携のもとに,すべての種類の障害者について,職業リハビリテーション全般にわたる研究及び技術開発を総合的に実施するとともに,これらの成果を基礎とし,障害者職業カウンセラー及び企業において,障害者の雇用管理をはじめとする職業リハビリテーション業務を担当する職業リハビリテーション専門職などに対する体系的な養成・研修の実施,職業リハビリテーション知識・技術の職業リハビリテーション関係施設への普及・指導を実施することにより,わが国の全体的な職業リハビリテーションサービスの向上に資することを目的とするものである.今後は,これを中心として精神薄弱者をはじめとする すべての種類の障害者の特性に応じた雇用管理技法や職業リハビリテーションの方策に関する体系的な研究が期待される.
以上のように法改正によって,精神薄弱者に対する雇用率制度などの改善とあいまって,職業前訓練から体系的な職業訓練までの各種の職業リハビリテーションサービスの充実が進められ,身体障害者に比し,その雇用の改善が十分でなかった精神薄弱者の雇用の促進が図られることが期待されている.


[職業]

知的障害をもつ人々の職業リハビリテーション

VOCATIONAL REHABILITATION OF PERSONS WITH INTELLECTUAL DISABILITY

Klaus-Peter Becker
Humboldt-Universitat zu Berlin,Sektion Rehabilitationspadagogik,GDR


知能はパーソナリティの全体的構造の中で大切な位置を占め,行動習性ばかりでなく社会的習性にも示される.訓練や教育を受ける能力に限界があることから,教育可能な知的障害者(セクションIおよびII)と訓練可能な知的障害者に分類される.
教育可能な知的障害者に支配的なのは,認識活動の障害で,それはパーソナリティの全側面に多少なりとも強い影響を及ぼす.
それでもHilfsschulenのセクションIの知的障害をもつ子供や青少年は,物事の遂行能力や行動の質を伸ばし,それにより社会的自立を強力に促進し,また一般の人々との違いがあまり目立たないようにすることができる.
セクションIの子供や青少年は,教育的リハビリテーションによって,例えば視覚,聴覚および筋肉運動の知覚プロセスにおいて,年令に応じた行動に近づく可能性があるが,セクションIIの生徒の知覚能力には常に顕著な障害があるのが特徴である.
訓練可能とは,器質的原因によるかなりの知能の低下とパーソナリティ全体にみられる障害のため,初等教育のための必要条件をみたすことができない子供や青年のことをさす.しかしながら,彼らは身体的,精神的必要条件は備えていて,体系的な訓練の下で環境に関する初歩的な知識や助けがあれば社会主義社会の生活に参加でき,保護雇用の下で社会のワークプロセスの中での役割を果せるような能力,技能,習慣,社会的行動を身につけることもできる.」(Grundsatze,1975,P.14)
Hilfsschulenの生徒は,理論的知識や特別な行動的特徴を要求する技術的な仕事や活動の訓練をすることはできない.しかし,東ドイツの教育可能な知的障害者には,職業訓練の権利,働く権利そして働く場所の権利がある.HilfsschulenのセクションIの生徒は,特定の熟練を要する職業の部分的訓練を2年間受け,セクションIIの生徒は,簡単な作業の1年間の訓練を受ける.規定には,Hilfsschulenの生徒には一定の訓練を行うこと,その訓練は見習い実習の枠組みの中で行われること,職業訓練期間は2年とすること,理論的訓練は必ず教室で行うこととされている.
重い障害をもつHilfsschulenの生徒は,一定の職業訓練の特別な形として単純作業の訓練を受けること.その訓練は見習い実習の枠組みの中で行われること.訓練契約は,この訓練に準じて適用され,訓練は1年間とする.理論訓練は必ず教室で行うことと述べられている.(Durchfuhrungsbestimmung,1980,P.2).
County Councilの職業訓練機関が長期的特別職業カウンセリングを行っており,学生の適切な職業訓練はすでに保証されている.規定には特に次のように述べられている.Hilfsschulenの生徒は,最終学年の前年の3月に,職業カウンセリングセンターとHilfsschulen の所長から適切な職業訓練のための実習についての通知を受ける」(Anordnung,1982,P.101).職業適性についての医学的判定ののち,工場側は学生との訓練契約に署名できる.職業訓練の期間中,学生は給付金を受ける.
Neumullerは,Hilfsschulen卒業生の75%以上が職業生活に完全に適応し,15~20%が大体適応し,10%が全く適応しないと判定した.全体的には良好な適応性が示された.
東ドイツでは,訓練可能な知的障害者も働く権利を有する.この権利は物質主義的な社会上の配慮からではなく,むしろ労働は精神的発達と特定のパーソナリティの特性形成のために不可欠な条件であるという見地から認められている.
訓練可能者は教育的リハビリテーション機関において,社会的に役に立ち生産的な仕事に向けて継続的に訓練を重ねている.このようにして技術や能力を修得することにより,その個人は一定の条件のもとで労働プロセスの中に場を得ることが可能になる.ある規定には関連基準が設定されている.この規定の下にリハビリテーションを受けているのは最も重度の障害をもち(訓練可能者を含む),普通の労働プロセスの条件下では雇用され得ない人である.この人々にはシェルタードワークでの職業が確保される.シェルタードワークというのは,その個人に保証されている働く権利を考慮して特に設定された状況における活動を意味する.
以下は,訓練可能者を工場内へ配置することに関する要件である:「その働き手の限られた能力への理解を深めること,労働者の仲間に統合させる準備および社会的なサポートをするための対策,例えば住宅条件の整備,寄宿制学校への配置,職場への通勤のための個人用交通手段そして文化的活動やスポーツ行事などを講じること.」(Anordnunguber.die Bildung,1978,P.229).
東ドイツの多くの工場では,以上述べた法的要件に基づいて,訓練可能者がりっぱな,高く評価される仕事を行っている.

〔参考文献〕

  1. Anordnung uber die Bildung und Tatigkeit von Betriebsrehabilitationskommissionen vom 14. Juli1978,Gesetzblatt Teil I,Nr.18,S. 229.
  2. Anordnung uber die Bewerbung um eine Lehrstelle‐Bewerbungsordnung‐vom 5.Januar 1982,Gesetzblatt Teil I,Nr.4,S.95.Breitsprecher,A.(Hrsg.),Welches Kind muβ sonderpadagogisch betreut werden? Berlin:Volk und Wissen Volkseigener Verlag,1982.Durchfuhrungsbestimmung zur Verordnung uber die Systematik der Ausbildungsberufe vom15.Mai 1980.Gesetzblatt Sonderdruck Nr.1036,25.Juli 1980.
  3. Grundsatze uber die Gestaltung der Forderung schulbildungsunfahiger forderungsfahiger Kinder und Jugendlicher vom 31.Dezember1974, Verfugungen und Mitteilungen des Ministeriums fur Gesundheitswesen,Nr.3/75,S.14.

閉会式

閉会式プログラム

日時:9月9日(金) 11:00~12:30
会場:京王プラザホテル コンコード
司会 村田幸子(NHK)
議長 Dr. the Hon. Harry S. Y. Fang(RI前会長)
副議長 道正 邦彦(第16回リハビリテーション世界会議運営委員)
歌 小園 優子
詩の朗読 岩井 奈穂美
RI各賞授与

  • シートン賞 Operation Handicap Internationale
    • 授与者 Mr. and Mrs. Fenmore R. Seton
  • ヘンリー・ケスラー賞 Prof. Veikko Niemi(フィンランド)
    Dra. Teresa Selli Serra(イタリア)
    太宰博邦(日本)
    • 授与者 Mrs. Henry Kessler
    • 授与者 Dr. Kenneth Aitchison
  • RI会長賞 Dr. the Hon. Harry S. Y. Fang
    • 授与者 Dkfm. Otto Geiecher

国連事務総長感謝状贈呈

  • 国際リハビリテーション協会(RI)

組織委員会感謝状贈呈

  • ロータリー財団
  • 国際ロータリークラブ

RI感謝状贈呈

  • 日本障害者リハビリテーション協会
  • 日本障害者雇用促進協会
  • 第16回リハビリテーション世界会議組織委員会
  • 第16回リハビリテーション世界会議会長 太宰博邦

RI会長挨拶 Dkfm. Otto Geiecker
RI新会長就任挨拶 Mr. Fenmore R. Seton
議長挨拶 Dr. the Hon. Harry S. Y. Fang
コーラス 太陽の街合唱団
閉会挨拶 加藤 孝(第16回リハビリテーション世界会議副会長)

挨拶

国際リハビリテーション協会
会長 Dkfm.Otto Geiecker

第16回世界会議の閉会式にあたり,RIの会長として,この世界会議を実現させ,意義ある会議の準備をして下さいました日本の方々にお礼を申し上げます.皆さま方は小さな問題に対しても人間的な誠意をもって効果的な解決に努力を払われました.日本政府のご支援,ご後援の下で本会議の開催をお引受け下さった日本障害者リハビリテーション協会,日本障害者雇用促進協会に対して厚くお礼を申し上げます.
また第16回世界会議の組織委員会の方々が津山直一氏の下に本計画と準備に素晴らしい仕事をされ,成功への下地を整えて下さいました.
そして何よりもまず,勤勉なるスタッフ,ボランティアを常に励まし,その活動の調整をはかり,第16回会議を成功させるという唯一のゴールのために,強力なチームを確立されたのは本大会会長太宰博邦氏の力強い,熱意あふれるリーダーシップのお陰であります.
今,私達に出来ることは,ありがとうございました,本当に素晴らしいお仕事をして下さいました,と申し上げるのみです.
私は東京に到着以来,皆様のお働きに対する尊敬の念は高まる一方で,今後のリハビリテーション世界会議開催国にとってこのようなレベルで行うのは非常に難しいことと危惧されるほどであります.
私が4年前リスボンにおいて国際リハビリテーション協会の会長に選ばれました時に,国際リハビリテーション協会を障害者団体の独立した連合として強化すること,この世界的組織の決定機関に障害者の参加をはかることをお約束しました.
本日ここに第16回リハビリテーション世界会議の幕を閉じるにあたって,これまでの4年間の我々の活動を振り返ってみる時,約束していた多くのことが実現していることに私は限りないよろこびを感じております.
しかし,これらはすべての加盟団体,スーザン・ハマーマン事務総長をはじめとする本部,理事会,そして前会長であるハリー・ファン博士の賢明なご指導があってはじめて可能であったことに思い至るのであります.
ここに,すべての皆様の大きな友情に厚く感謝を申し上げるとともに,この友情が障害を持つ人々のために今後一層強まりかつ継続していくことを願ってやみません.

本会議の終わりにあたり,RI会長としての私の最後の任務は,新たに選出された次期会長をご紹介することであります.
シートン氏は永年にわたってRIの会計担当理事を努められ,また,障害者の福祉に貢献されてきた方であります.同氏の会長就任は,まことに人を得た喜ばしいことであります.
シートンさん,当選おめでとうございます.我々はRIにおけるあなたのお仕事に対して全面的にご協力申し上げることを誓うものであります.
それでは,私の友人であるすべての皆様に再び感謝を申し上げるとともに,神のご加護がありますよう祈って,お別れを申し上げます.

会長就任挨拶

国際リハビリテーション協会
新会長 Mr.Fenmore R.Seton

この歴史的な第16回リハビリテーション世界会議は本日いよいよここに幕を閉じようとしております.新会長として,最後に日本の組織委員長に対し,敬意を表したいと思います.皆様の素晴らしいご尽力により参加者の心はひとつになり,関係者,諸団体のご協力を得ることができ,それは将来世界各地に住む数えきれないほど多くの障害をもつ人々に確かな成果をもたらすに違いありません.
ここで私はRI会長に就任するにあたり,特に力を入れていきたいと思う2つの点について簡単にお話ししたいと思います.
まず第一は普遍性ということです.国際リハビリテーション協会の最もユニークな特徴は常に普遍性を目指して前進しているということです.リハビリテーションの分野において,そのゴールとしている“完全参加と平等”および“障害者の社会的統合”の2つのスローガンの真の意味を組織を通して実行しているわけです.
国際リハビリテーション協会は障害に関するすべての人々,すなわちすべての国々,宗教,人種,職業,そして最も重要なこととしてあらゆるレベルの能力と障害を越えて話し合いの場を提供します.この話し合いの場は加盟団体や常任理事会および国連諸機関,非政府間機関その他との協力関係によって成り立っております.近い将来,人々の生活のあらゆる側面において障害者のことを考えようとした時にこそ国際リハビリテーション協会が生み出した手本が力強い影響力を持ち得るようになるでありましょう.すべての人々に真の“完全参加と平等”をもたらすからこそ,発展を続けるにちがいありません.
大切に育てていけば我々が求めている真の統合への道は開けるでありましょう.

この東京会議での素晴らしい経験の中で,次にここで特に触れておきたいことは先週土曜日のRI総会において決議された1992年ケニア,ナイロビ開催予定第17回世界会議のことです.
私はこの総会の決議に心から賛同するものであります.そして次回の世界会議をアフリカで行うということこそ今後4年間のRIの活動の中で最も有意義な業績となるに違いありません.このような会議こそアフリカに住む数多くの障害を持つ男性,女性,そして子供たちに医療面あるいは技術面の知識をもって手をさしのべるために必要な人々の関心を高めるために役立つのであります.
今回,御出席のケニアの大臣は,アフリカ地域担当RI副委員長と協力されて1992年にはケニアでまたRI世界会議が再び成功させられることでしょう.
私は皆様にお約束したいと思います.国際リハビリテーション協会の新会長としてこの意義深い任務に全力を尽くして取り組んでいきたいと思うのであります.ここにお集まりいただいております皆様方は東京会議がいかに多くの知識を提供してくれたかを改めて感じていらっしゃることでしょう.そして,障害をもつ人々のために献身的に取り組まれることに新たな誇りをもってそれぞれのお国に帰られることをお祈りいたします.

閉会の挨拶

日本障害者雇用促進協会
会長 加藤 孝

国際障害者年の10年の折り返し点に立ち,今後の障害者対策の発展,とりわけアジアをはじめとする開発途上国における障害の予防と,リハビリテーションの前進と,国際協力の一層の強化を願って開かれました第16回リハビリテーション世界会議も,今幕を閉じようといたしております.
5日間の会議はまさに熱気溢れるものでございました.93の国および地域から2,000人を超えるさまざまな分野の専門家や障害者の方々にお集まりいただきました.そして,それぞれの体験と研究に基づく最新の成果を発表され,さまざまな問題が討議されました.映画祭や美術・機器の展示,諸施設の見学なども問題を広い視野に立って理解する上で大きく貢献したことと思います.私共主催者といたしましては,何よりも,参加された方々がそれぞれ抱えておられる具体的問題の解決に役立つものを少しでも多く学びとり,持ち帰って下さる会議とすることを念願いたしておりました.幸い,この会議が皆様に御満足いただけたとするならば,ひとえにRI本部の適切なご指導と,皆様のご努力,ならびにボランティアを含む内外の多くの関係者のお力添えの賜物であり,心からお礼を申し上げたいと思います.

明日からは,日本各地でポスト・コングレスが開催されます.いずれも今日までの会議と密接に関連し,その成果を地域レベルでさらに発展させようとする国際交流集会であります.皆様が日本の秋を楽しみつつ,積極的にご参加下されば大変嬉しく存じます.
さて,私達は今日21世紀への展望を語りうるまでになりました.いかなる時,いかなる場所においても,総合リハビリテーションに関する情報が適切かつ速やかに与えられ,必要な行動をおこすことができるよう,私達は地球的規模で足取りを速めなければなりません.

「4年後,より大きな自信を持って,ナイロビでまた会いましょう.」これを合い言葉に閉会のご挨拶といたします.
どうもありがとうございました.

関連プログラム

ポスターセッション

総会・分科会と並行してポスターセッションが行われた.教育,医学など各テーマごとに分かれたセッションでは,あらかじめ作成されたポスターを前に発表が行われ,発表者と参加者との間で活発な質疑応答が行われた.

プログラム

(名前は,各セッションの座長)
プログラム

ポスターセッション発表論文

職業リハビリテーション

Correlates of Work Adjustment among the Mentally Retarded
Hua‐Kuo Ho(Chinese Taipei)

Seeking Independence
Yukiko Kobayashi(Japan)

The Significance of a Special Institute for Vocational Training
Ton Bergers(The Netherlands)

The Use of a Vocational Evaluation Laboratory as the Center for Training in Rehabilitation at the Masters Level
Chrisann Schiro‐Geist,E.D.Broadbent(USA)

Equalization of Opportunities in Employment of People with Disabilities
Paul Thomaschewski(FRG)

教育リハビリテーション

Sense Consolidation by the Facilitation Ball
Yoriko Taniguchi(Japan)

Thinking about Playthings‐For Children with Profound and Multiple Handicaps
Suzie J.Mitchell(UK)

The Influence of the Motor Stimulations on the Psychophysical Development of the Moderate Mentally Retarded Children
Ahmed Faiz Nammas(Libya)

Hearing Impaired Children in Primary Schools in Finland
Onerva M.Maki(Finland)

Developmental Rehabilitation and Social Integration of the Mentally Handicapped Infants and Children
V.Hari Prasad Thakur(India)

Recent Trends in Special Education in Tokyo
Marilyn P.Goldberg(USA)

自立生活

A Small but Valuable Step toward Independent Living of the Disabled
Tsukasa Abe(Japan)

A Facility Providing Training for Independent Living
Yoshimichi Ogawa,Y.Fujimura,A.Tanaka,Y.Terada(Japan)

The Future of the Disabled in the United States
Rebecca Lindsay(USA)

Japanese Concept of Independent Living of the Seriously Physically Disabled
Akihiro Taniguchi(Japan)

精神障害

A Family Program for Rehabilitation of Female Alcoholics
Keiko Nakamura,T.Takano,T.Iguchi(Japan)

Tokyo Metropolitan Comprehensive Mental Health Center of Central District
Tamao Hishiyama(Japan)

Activities and Organizations of Families of the Mentally Disabled in Japan
Takehisa Takizawa(Japan)

Community Life and Small Scaled Workshops for Disabled Persons in Japan
Katsunori Fujii(Japan)

社会リハビリテーション

Social Rehabilitation Half and Half‐The Way through Recreational Therapy
Francisco Vano,M.Contreras(Spain)

The Present State of Social Rehabilitation in Traumatic Injury to the Brachial Plexus

Tetsuya Hara,Ho saeng Choi,K.Shiina,U.Nakaki,T.Suzuki(Japan)

Rehabilitation of Leprosy Patients in the Indian Context
Tungar Waman(India)

Prevention and Medical Treatment of Impaired Glucose Tolerance in Kurhaus
Michio Ohkido,T.Wakabayashi(Japan)

Barriers of Socio‐Economic Integration of the Disabled People in the Developing Countries
Monsur Ahmed Choudhuri(Bangladesh)

The Effect of War on Rehabilitation Program
Munira W.Solh(Lebanon)

“Different but not Strange” Disability Education:The Next Rehabilitation Challenge
Emanuel Chigier(Israel)

The Environmental Advisory Service
Joseph Kwan(Hong Kong)

Accessible Bathrooms‐With Particular Emphasis on Vinyl‐Floored Wet Area Showers
Graham Booth(New Zealand)

Sexuality and Family Life Education for Vulnerable Adults with Developmental Disabilities
Elaine Theresa Jurkowski,L.Ring,A.Urquhart(Canada)

My Concept of a“Society of Friends of the Physically Handicapped”
Yoshio Akita(Japan)

Institutional Factors in the Netherlands for Improving Accessibility
Roy R.van Hek(The Netherlands)

Centers of Rehabilitation for Handicapped Children in Chile
Ana Maria M.Urrutia(Chile)

老人リハビリテーション

The Development of Occupational Therapy in the People's Republic of China
Christine K.Brassington(Australia)

Usefulness of Daily Low‐Intensity Exercises to Maintain Bone and Joint Functions for the Active Life in the Elderly
Yasufumi Hayashi,S.Kusano,M.Niimi(Japan)

The Organization of Stroke Care in China
Wang Mao‐Bin,Wang Li,Jia Zi‐Shan(China)

医学リハビリテーション

Immunologic Rehabilitation of Patients with a Cerebral Infraction
TS.SH.Chkhikvishvili,YU.A.Malashkhia,R.SH.Lukava(USSR)

Integrated Care for Urinary Disturbance of Postapoplectic Patients
Haruumi Takehira,H.Sako,K.Kawahira,N.Tanaka(Japan)

Psychological Factors in the Management of Stroke Patients Affecting Independence in Daily Living
Anne M.Jobbins,C.R.Gillespie,E.D.Sever(UK)

Improvement of Visuospatial Perception by Occupational Therapy in Postapoplectic Patients
Nobuyuki Tanaka,K.Kawahira,T.Ono(Japan)

Malposition and Abnormal Configuration of the Patella in Cerebral Palsied Children
Tetsuto Sasaki,T.Takahashi,H.Yokozawa,E.Uchiyama(Japan)

Living Status and Cardiopulmonary Function of Persons with Severe Cerebral Palsy
Tomitaro Akiyama,H.Senjyu,M.Fujita,N.Matsusaka(Japan)

The Characteristics of Aging and Complications of the Handicapped
Ryoichi Hanakago,F.Isa,Y.Kihara,Yinhua Wang(Japan)

Disability Evaluation in Neurological Degenerations
Yukio Mano,T.Takayanagi(Japan)

The Useful Clinical Evaluation Score of Parkinson's Disease
Fuminori Segawa,M.Kinoshita,Y.Murakami(Japan)

Biofeedback Assisted Approach to Aged Subjects with Idiopathic Oral Dyskinesia
Iwao Saito(Japan)

Principles of Immune System Rehabilitation
R.I.Sepiashvili(USSR)

Rehabilitation Management‐A Newer Approach through Interplay of White & Gray Matter
Rajul Vasa,N.Chhabria(India)

Rehabilitation of Neurologic and Immune Disturbances in Patients with Polyradiculoneuropathy
Yuri A.Malashkhia,V.YU.Malashkhia(USSR)

Changes in Upper Limb Mobility in Stroke Patients Following Neuromuscular Stimulation
Nobuko Shindo,T.Steiner,R.Jones(UK)

Functional Splinting for the Hemiplegic Shoulder
Paul van Lede(Belgium)

Disturbance and Restoration of the Respiratory Function in Hemiplegic Patients
Tetsuro Tashima,T.Ono,Y.Horikiri,K.Kawahira,N.Tanaka(Japan)

Quality of Life of Elderly Stroke Patients:Going Out
Keiko Nakamura,N.Tokura,R.Niki(Japan)

The Progression of Muscle Damage in Duchenne Muscular Dystrophy(DMD)‐Quantitative Evaluation Using a Computerized Tomographic(CT)Scan
Meigen Liu,M.Takahashi,T.Ishihara,S.Yoshitake,T.Aoyagi,N.Chino(Japan)

Responses to Exercise Therapy in Group of Patients with Duchenne Type Progressive Muscular Dystrophy
Kamuran Yucel,C.Aksoy,O.Sengir(Turkey)

Home Care of Duchenne Muscular Dystrophy Patients with Respiratory Failure
Tadayuki Ishihara,S.Gomi,M.Miyagawa,M.Liu,S.Yoshitake,T.Aoyagi(Japan)

The Spinal Movements Observed in Scoliosis Children
Seiki Kaneko,H.Yano(Japan)

A Study of the Location of the Line of Gravity in the Relaxed Standing Position
Takashi Harada,M.Motegi(Japan)

Muscular Atrophy and Strength in Medical Rehabilitation
Ryoichi Kanie(Japan)

Difference in Elbow Flexion Torque Measured Concentrically and Eccentrically Using an Isokinetic Dynamometer
Toshihiko Konishi,Y.Mano,T.Takayanagi(Japan)

Effects of Rehabilitation on Neurocognitive Function in Cerebrovascular Disorder ‐Its Evaluation by Studying P300-
Mikio Osawa,S.Yamori(Japan)

Rehabilitation of the Paralyzed Shoulder
Takao Iwasaki,Y.Higuchi,N.Takagishi(Japan)

Social Survey of Discharged Patients of Spinal Cord Injury
Tetsuko Okuno,A.Inoue(Japan)

Oriental Medicine in Rehabilitation
Eymard S.I.C.(India)

Rehabilitation for Respiratory Failure
Toshihiko Haga,K.Machida,Y.Kawabe,N.Nagayama,Y.Ohtsuka(Japan)

A Novel Glucose Sensing Device Developed for Diabetic Retinitis Patients
Shigeru Yamauchi,N.Teshima,M.Yaoita,Y.Hatsuyama,T.Hasegawa,Y.Moriyama(Japan)

Easing of Restrictions Against Color Defective People and a Countermeasure of Aid to Color Defective People
Yasuyo Takayanagi,Y.Nagaya & Other Members(Japan)

Patient Management Problems:Use in the Physical Medicine and Rehabilitation Education of Medical Students

Martin Grabois(USA)

心理リハビリテーション

A Psychotherapeutic Approach to Severe Multiple Handicapped Children with Visual Disturbance
Akemi Egi,S.Shimabukuro,K.Kodama(Japan)

Application of Voluntary Motor Action(“DOSA”Training in Handicapped Dentistry
Eiko Takayama(Japan)

Rehabilitation of Personality in Sports Champions
R.M.Zagainov(USSR)

An Attempt of Sensory Integration at a Care‐Home for Multiple Disabled
Yoshio Hamada,T.Ishikura,S.Matsumoto,F.Yamamoto,Y.Osada,C.Amano,S.Furukawa, J.Leveille,M.Abe,K.Zaima(Japan)

Temperament of Preschool Age Visually Handicapped and Sighted Children:A Comparison

TEJ Bahadur Singh(India)

リハビリテーション工学

Rehabilitation Engineering Activities in Singapore
J.C.H.Goh,K.Bose(Singapore)

Application of Seating System to Bed‐Ridden Severely and Profoundly Handicapped Children
Shunsaku Tada,Y.Jyosaki,T.Kubota,H.Matsueda,H.Arizono(Japan)

Overseas Marketing of Wheelchairs between Japan and the United States
Paul D.Andrew(Japan)

Development of a Newly Conceived Foot‐Driven Wheelchair and Its Clinical Application
Hiroaki Ochiai,T.Takahashi,T.Sasaki,S.Nishimura,T.Hatta(Japan)

Binaural Hearing Aid for Developing Countries
Ole Bentzn(Denmark)

Application of a Microcomputer Technology to the Monitoring of Activity in Daily Life
Masaaki Makikawa,Y.Takenaka,K.Schichikawa,T.Hasegawa,H.Horio(Japan)

Technological Progress in Rehabilitation of Locomotion of Paretic Patients Using Electrical Stimulators
Ruza Acimovic‐Janezic,N.Gros,B.Pangrsic,M.Kljajic,U.Stanic,J.Rozman,M.Malezic, J.Stefan(Yugoslavia)

A Knowledge‐Based Gait Analysis Supporting System(GAITS)
Koji Ito,T.Kitada,Y.Kurose,Y.Umeno(Japan)

Singapore Cane Leg
K.Widjaja Laksmi,P.Balasubramaniam,K.G.Ho(Singapore)

Permanent Artificial Limbs with Hydroxyapatite Ceramics Interface
Hideo Yano(Japan)

地域リハビリテーション

The Practice of Day‐Care Welfare Facility for Profoundly Handicapped Persons
Hironobu Sashika,M.Hiura(Japan)

Community‐Based Rehabilitation in Remote Islands
Satoshi Fujino(Japan)

From Institutional Care to Community‐Based Rehabilitation
Desta Asfaw(Ethiopia)

When There is Nothing,Where Do You Start?
A.I.Ogilvie(Pakistan)

A Prospective Model of Urban Community‐Based Rehabilitation in China...CBR in Jin Hua Street,Guangzhou
Dahong Zhuo(China)

Community‐Participating Community‐Based Rehabilitation:A Malaysian Experience
Zaliha Omar,Ranjit Kaur(Malaysia)

International Cooperation between Japan and Philippines in the Field of Rehabilitation for Handicapped Children(No.1)
Masakazu Fukushima,M.Kamegaya,M.Kawamura,J.O.Flordelis(Japan)

Community‐Based Rehabilitation of Disabled Children by“Health for One Million”Programme
Lawrence Mar Ephrem and Eymard(India)

Duties of the Rehabilitation Center for Disabled Children in the Community
Yukio Shichinohe(Japan)

Approach from the Specialized Institute for the Severely Handicapped Children who Stay at Home and Need Intensive Daily Care
Hajime Tomosada,I.Takemura(Japan)

Activities of Community Based Rehabilitation in Lagos,Nigeria‐The Challenges Ahead
M.O.Ogungbesan(Nigeria)

Community Based Rehabilitation‐The Malawian Experience
Ronald J.Mbekeani(Malawi)

法行政

Rehabilitation Services in the Context of the Workmen's Compensation Act in Zambia
A.S.Kalaba,G.S.Chimanga(Zambia)

Rehabilitation for Disabled Children and Young People in Sweden
Helene Wahlgren(Sweden)

Perspectives of Modifying the 1980 Law for the Welfare of the Handicapped in Chinese Taipei
Wu‐Tien Wu(Chinese Taipei)

Socio Legal Provisions for the Physically Handicapped in India‐A Review
Tungar Waman(India)

Structure and Tasks of Rehabilitation in GDR

Werner Schunk(GDR)

特別分科会

9月7日(水)には,各専門団体等の主催による特別分科会が下記のとおり開催された.

○ニード別課題 精神薄弱 詳細は本文P.427~P.448

○第3回アジア理学療法学会

  • ◆会長講演
    • 座長 Dr.Kim Yong Joo
      • Director,Rehabilitation Institute Ushin Medical Foundation(Korea)
    • 講演 松村 秩
      • 東京都立医療技術短期大学教授
  • ◆テーマ別セッション
    • 脳性麻痺
      • 座長 今川 忠男
        • 南大阪療育園
      • 古沢 正道
        • ボバース記念病院
    • サイベックス・その他
      • 座長 谷岡 淳
        • 自治医科大学病院
      • 森永 敏博
        • 京都大学医療技術短期大学部
    • 運動学
      • 座長 奈良 勲
        • 金沢大学医療技術短期大学部
      • 伊藤 二郎
        • 東京都立墨東病院
    • 運動・生理
      • 座長 松瀬 多計久
        • 北里大学病院
      • 藤原 孝之
        • 信州大学医療技関短期大学部
    • 失調症
      • 座長 渡邊 京子
        • 亀田総合病院
      • 田村 美枝子
        • 国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院
    • その他
      • 座長 田口 順子
        • 七沢リハビリテーション病院
      • 富田 昌夫
        • 七沢リハビリテーション病院
    • 地域・調査
      • 座長 荻原 新八郎
        • 金沢大学医療技術短期大学部
      • 江原 晧吉
        • 東京都立医療技術短期大学
    • パネルディスカッション
      • 司会 Dr.Paul Andrew
        • ボバース記念病院

○国際作業療法会議―アジア・太平洋地域を中心に―

  • ◆基調講演
    • Ms.Maria Schwarz
      • Vice‐President of WFOT(Switzerland)
    • Prof.Charlotte A.Floro
      • College of Allied Medical Professions, University of the Philippines(Philippines)
    • 矢谷 令子
      • 日本作業療法士協会会長
    • 司会 佐藤 剛
      • 札幌医科大学衛生短期大学部
    • 富岡 詔子
      • 信州大学医療技術短期大学部
  • ◆研究発表
    • 座長 Ms.F.O.Osikoya
      • National Orthopaedic Hospital(Nigeria)
    • 木村 信子
      • 京都大学医療技術短期大学部
  • ◆シンポジウム
    • 座長 Ms.Maria Schwarz
      • Vice‐President of WFOT(Switzerland)
    • 矢谷 令子
      • 日本作業療法士協会会長

○障害児:生存と発達

  • 座長 Dr.V.Ramalingaswami
    • Special Advisor to the Executive Director(UNICEF)
  • 副座長 Ms.Gulbadan Habibi
    • Programme Officer,RI/UNICEF Programme of Technical Support
  • ラポラチュア Mrs.Barbara Kolucki
    • Media Consultant(Hong Kong)

○余暇・レクリエーション・スポーツ

  • 座長 Mr.Finn Christensen
    • Chairman,RI Commission on Leisure, Recreation and Sports(Denmark)

○社会保障における障害給付

  • 座長 Dr.Malcolm Morrison
    • Director,Division of Disability,Social Secutity Administration(USA)
  • 副座長 Prof,Monroe Berkowitz
    • Bureau of Economic Research,Rutgers University(USA)

○リハビリテーション専門家・情報の国際交流

  • 座長 Ms.Diane Woods
    • World Rehabilitation Fund(USA)

○RI医学委員会-能力と障害の評価

  • 座長 Dr.Gunnar Schioler
    • Chief Physician,The National Health Board (Denmark)

○自立生活と介助サービス

  • 座長 Dr.Adolf Ratzka
    • Research Economist,Royal Institute of Technology(Sweden)

○福祉機器の供給システム

  • 座長 Dr.Han Emanuel
    • Secretary,Foundation for International Studies on Social Security(The Netherlands)

リハビリテーション機器展示会

今回のリハビリテーション世界会議では,海外からの参加者が,日本の科学技術に大きな関心を持っていることを推察し,「ニューテクノロジーと障害者」というテーマのもとに,先端技術を駆使した機器展示を会議の期間を通じて行った.
内容は,ニューテクノロジーの中で特にエレクトロニクスに焦点を当て,エレクトロニクスが現在のリハビリテーションにどのような形で応用されているのか,また,これからどのような方向に進展するのかを理解してもらえるよう,展示とパネルを3つのグルーブに分けた.
第一のグループは,この分野において日本のリハビリテーション関連の研究機関がどのような体制で福祉機器の研究を進めているかを海外の参会者に理解してもらい,かつ具体的に研究開発された,あるいは開発途上の福祉機器を展示した.
第二のグループは,コミュニケーション機器の展示を行った.障害によって意志伝達ができない場合,あるいは遠隔地へのコミュニケーションがむずかしい場合があり,現状では対応が不十分である.エレクトロニクスは,これらを可能にし,今後の飛躍的な発展が期待されている.
第三のグループは,最新の福祉機器のホームオートメーション機器を使用して重度障害者が自立生活できるようなモデル住宅の一部を展示した.
日を限定して外部からの入場を受け入れたこともあり,参加者数は延べ1,500人にのぼった.

出展者一覧

I 国の研究開発体制および研究の現状
海外参加者に,我が国の研究開発体制および研究の現状・将来のビジョンについて紹介した.

国立職業リハビリテーションセンター

  • 弱視者のためのディスプレイ文字等拡大装置
    「PC‐WIDE」

国立身体障害者リハビリテーションセンター

  • 視覚障害者用ワープロ,聴覚障害者のコミュニ
    ケーションエイドのための速記タイプライターシス
    テム,ビジョンスキャナー

通商産業省工業技術院

  • 盲人読書器,体温自動調節器,植込型人口中耳
    (超小型補聴器),言語障害者用発生発語訓練装
    置,介助移動装置,三次元いす

II 新しいコミュニケーション技術
進歩著しいコミュニケーション技術が,リハビリテーション分野にどのような利便をもたらすか,その可能性を探った.

エヌ・アイ・エフ株式会社

  • パソコン通信サービスNIFTY‐ServeCompu‐Serve

東京都社会福祉総合センター

  • 東京都における福祉情報サービスシステム(パソコン)

日本電気株式会社

  • 視覚障害者誘導システム(HAMMYO)みちしるべ点字ワープロ&パソコン点訳,静止画テレビ電話

早稲田大学大照研究室

  • 楽譜自動点訳システム

III重度障害者の自立生活
重度障害者が,先端技術の応用によってつくられたさまざまな機器を駆使し,生活する様子をモデル住宅コーナーをつくって紹介した.

サンウェーブ工業株式会社

  • キッチンセット

東陶機器株式会社

  • 洗面台,便器,浴槽

パラマウントベッド株式会社

  • ベッド

松下電器産業株式会社

  • HALSシステム,自動通報機,カメラドアホン,テレビ,エアコン,冷蔵庫,電話

明電興産株式会社

  • 身障者用トランスファーシステム「パートナー」

(株)ウエヤマ

  • 浴用マット

来場者アンケートから

1.アンケート回収数

国内 海外 合計
アジア ヨーロッパ 北米 オセアニア 中南米 アフリカ 中近東 その他
174 32 29 8 7 6 4 3 9 98 272

2.来場者の職業分野

来場者の職業分野(グラフ)

3.関心を持った出展コーナー

関心を持った出展コーナー(グラフ)

4.機器展全体の評価

機器展全体の評価(グラフ)

美術とパフォーマンス

特設の多目的ホールで,障害者の作品とパフォーマンスによる「美術とパフォーマンス」が期間中開催された.施設・作業所などで製作された織物,彫刻,絵画など,すぐれた作品が展示され,組紐,さをり織りなど日本独特の民芸品の製作実演も行われた.
9月6日(火)には下記の出演グループによるさまざまなパフォーマンスが行われ,ステージと観客が一つになって交流する姿が見られた.

出展・出演者一覧

○出演者

  • しんじゅく'88
    • 障害者グループによる楽器演奏
  • 長崎リハビリハウス
    • 精神障害者による人形狂言「きのこ山伏」
  • 日本舞踊「高沢流」
    • 日本舞踊によるリハビリテーションを実施しているグループの日本舞踊と歌舞伎を楽しむパフォーマンス
  • ハイビスカスの部屋
    • 神奈川県の聴覚障害児と親のグループによるミュージックバラエティショー「ようこそ日本へ」
  • さをり広場
    • 精神薄弱者グループが自分たちで製作した服を着て自演するファッションショー
  • 東京ミュージックボランティア協会
    • 全米音楽療法士協会のジュアン・ロビンさんの音楽療法の理論の講演と障害者グループによるデモンストレーション

○出展者

  • おもちゃの図書館全国連絡会
    • 心身障害児のためのおもちゃの展示
  • タイ国障害者のための財団
    • タイ国の障害者の絵画の展示
  • 心身障害者福祉協会
    • 国立コロニーのぞみの園の重度精神薄弱者が製作した陶器などの展示
  • 弘済学園
    • 神奈川県にある精神薄弱者施設の入所者が製作した木彫,陶器など
  • 松花苑・みずのき寮
    • 京都府にある精神薄弱者施設の入所者が描いた油絵の大作
  • 桑の木園
    • 島根県にある精神薄弱者施設の入所者が製作した和紙による神楽面など伝統工芸品
  • ゆたかホーム
    • 東京の身体障害児の親が開いた作業所の作品.木彫,組紐などの展示と実演.
  • さをり広場
    • 精神薄弱者たちの手織りの「さをり織り」の展示と実演.
  • 障害者の道具と環境を研究する会
    • 「でく工房」などによる障害者のための生活用具の開発と作品展示
  • 手で見るギャラリー・TOM
    • パリのポンピドー芸術文化センターとの提携による「触覚と芸術」のデモンストレーション

映画祭

この映画祭は,世界各国から集められたリハビリテーション関係の優秀作品を一挙に上映するもので,4年ごとのリハビリテーション世界会議で毎回開催されている.
今回は,障害の予防,リハビリテーション,障害者の機会の平等などをテーマに,ドキュメンタリー,ドラマ,広報,学術・臨床,児童の5部門に分け,16mmフィルムとビデオ作品を各国から募集した.
応募作品は世界17ヵ国から61本におよび,1988年4月25,26日にニューヨークのRI事務局で行われた国際審査会において,入賞作品10本が選定され,その中から「ジェフリー・テート」がグランプリを獲得した.
映画祭では,これら入賞作品10本を中心に,審査員推薦作品,参考作品,特別参加作品などを加えて会議中上映されたが,連日立ち見のでる盛況で,映画に関する問い合わせも数多くあった.
また,会議会場での映画祭に先駆けて,9月3,4日の2日間,東京・有楽町の朝日ホール(マリオン)で福祉映画祭が開かれた.ここでは,前記のグランプリ受賞作のほか,最近の障害者関係の話題作を上映,一般公開を行った.

上映作品一覧

タイトル 国名 制作年度 ビデオ/16mm 上演時間
【グランプリ受賞作品】
「ジェフリー・テート;あえておおいなる賭を」
“Jeffrey Tate;Let's Take That Infernal Risk!”
イギリス 1987年 ビデオ 65分
【ドラマ部門】
第1位
「このような子どもたち」
“Kids Like These”
アメリカ 1987年 ビデオ 120分
第2位
「天が与えた姿」
“Born to Live”
香港 1984年 ビデオ 95分
【ドキュメンタリー部門】
第1位
「ジェフリー・テート;あえておおいなる賭を」
イギリス 1987年 ビデオ 65分
第2位
「アクセス・ゲーム」
“The Access Games”
オースト
ラリア
1987年 ビデオ 27分
第3位
「マスク」
“Skin‐Deep”
オランダ 1985年 ビデオ 47分
【児童部門】
第1位
「エマとボボ」
“Emma and Bobbo”
スウェー
デン
1987年 ビデオ 74分
第2位
「蛍舞い―自然に学ぶ」
“The Dance of Fireflies”
日本 1984年 16mm 45分
【学術・臨床部門】
第1位
「こんなに簡単です」
“It's So Easy”
オースト
ラリア
1987年 ビデオ 19分
第2位
該当作品なし
【広報部門】
第1位
「ろうの人々」
“Deaf‐people”
オランダ 1985年 ビデオ 60秒
第2位
「アルハムブラ」
“Alhambra”
オランダ 1987年 ビデオ 30秒
【開発途上国作品】
「ナスコー」
“NASCOH‐Zimbabwe”
ジンバ
ブェ
1986-7年 ビデオ 120分
「決心」
“Determination”
クウェー
ビデオ 30分
【その他の参加作品】
「指先の世界」
“The World at His Fingertips”
アメリカ 16mm 29分
「ろう文化は別のもの」
“Deaf‐Culture is Something Different”
スウェー
デン
ビデオ 30分
「おこりんぼは何と言った」
“What did The Wasp Say!”
スウェー
デン
ビデオ 22分
「ハンデイキャップ人間像」
“Handicupiture‐(Handicapbillender)”
デンマー
ビデオ 40分
「車椅子でダンス」
“Dancing in The Wheelchair”
エストニ
ビデオ 35分
「勝利者たち」
“The Winners”
フィンラ
ンド
ビデオ 26分
「思いやりのない世界」
“Senseless World”
オースト
リア
ビデオ 31分
「自分で働いて生きるために」
“Working Lives of The Retarded”
日本 16mm 40分
「がんばれ,ヒロくん(3)」
“Hiro,Walk Tall.(Part3)”
日本 16mm 30分
「さわやかボランティア」
“Volunteer Work;Light and Easy”
日本 ビデオ 2分
「みずはともだち」
“Water's Friends”
日本 16mm 37分
「腕神経叢引抜き損傷」
“Brachial Plexus Injuries of Root Avulsion Type”
日本 16mm 27分
「日本のリハビリテーション」
“Rehabilitation of Disabled Persons in Japan”
日本 16mm 20分
「たびだちのとき」
“Starting”
日本 ビデオ 32分
「精神薄弱者の指導,訓練」
“Rehabilitation of The Retarded in Japan”
日本 16mm 30分
「日本の障害者雇用」
“Employment of the Disabled in Japan”
日本 16mm 20分

施設見学

会議3日目の9月7日(水),特別分科会と平行して施設見学が行われた。参加したのは会議の海外参加者およびその同伴者約400名。来日の機会を利用して,会議開催地の東京周辺にある障害者福祉関係施設や障害者雇用企業,教育関係施設を訪問し,日本の障害者福祉制度や障害者雇用,教育制度などをより深く理解してもらうことを目的としたものである。参加者は下記の12コースに分かれ,各2~3カ所を見学した。

コース名 訪問先 参加者
A.視覚障害 日本点字図書館(東京・新宿区)
日本盲人職能開発センター(東京・新宿区)
国際保健福祉機器展(東京・港区)
19名
B.聴覚障害 国立筑波大学附属聾学校(千葉・市川市)
国際保健福祉機器展(東京・港区)
17名
C.精神障害 東京都立中部総合精神保健センター(東京・世田谷区)
あさやけ第2作業所(東京・小平市)
救護施設あかつき(東京・小平市)
17名
D.雇用 日本理化学工業株式会社(神奈川・川崎市)
東京都ビジネス・サービス株式会社(東京・江東区)
36名
E.らい 国立療養所多摩全生園(東京・東村山市) 12名
F.老人のリハビリテーション 板橋ナーシング・ホーム(東京・板橋区)
東京都老人医療センター(東京・板橋区)
13名
G.総合リハビリテーション 神奈川県総合リハビリテーションセンター(神奈川・厚木市) 82名
H.肢体不自由児の医療と教育 心身障害児総合医療療育センター(東京・板橋区)
国立筑波大学附属桐が丘養護学校(東京・板橋区)
国際保健福祉機器展(東京・港区)
40名
I.職業訓練と雇用 (株)東京都データシステムズ(東京・日野市)
東京障害者職業訓練校(東京・小平市)
63名
J.重症心身障害児ワーク・アクティビティ 島田療育園(東京・多摩市)
つくし作業所(東京・多摩市)
12名
K.総合リハビリテーションセンター 国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉・所沢市)
国立職業リハビリテーションセンター(埼玉・所沢市)
52名
L.障害者向きの住宅 東京都心身障害者福祉センター(東京・新宿区)
国際保健福祉機器展(東京・港区)
45名

主題:
第16回リハビリテーション世界会議 No.11 427頁~472頁

発行者:
第16回リハビリテーション世界会議組織委員会

発行年月:
1989年6月

文献に関する問い合わせ先:
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone:03-5273-0601 Fax:03-5273-1523