盲ろう者のパソコンとネットワーク利用に関する研修会
2-3) 盲ろう者のパソコン研修
静岡盲ろう者友の会 牧田 紀子
1.パソコン研修会開催のきっかけ
静岡盲ろう者友の会では、昨年社会福祉・医療事業団の助成を受けて、パソコンおよび周辺機器(点字ディスプレイ、音声装置、点字プリンター、各種ソフト)を購入しました。
助成金の予算の中には、盲ろう者のパソコン研修会開催のための費用も含まれていました。
かねてからパソコンを使えるようになりたかったこと、友の会の仕事をするうえで必要性を感じていたこと、他に希望者がいらっしゃらなかったこともあり、昨年は私ひとりが受講させていただきました。
2.研修会実施について
講師の先生は、視覚障害者にパソコン指導をされていらっしゃる方にお願いしました。
ソフトのインストールは販売業者の方がやってくださいましたので、講師の先生にはさらに細かい設定をしていただきました。
購入したパソコンを私の自宅に設置し、毎回の研修会当日には、講師の先生にわが家まで足を運んでいただき、ご指導いただきました。
研修会中のコミュニケーションですが、指点字と音声を交えて行いました。
私の場合、マンツーマンの場合は比較的ゆっくり話していただければ通じますし、講師の先生ご自身が指点字のできる方でしたので、特別通訳の必要はありませんでした。
研修回数は4回(1日4時間)でした。
今回は研修回数が少ないこともあり、最も覚えたいことに絞って研修しました。
電話やFAXを自力で受信できない私たち盲ろう者にとって、通信関係のことを覚えることがとても大切だと感じましたので、通信関係のことに絞ってご指導いただきました。
私は研修会開催の数カ月前、個人用のパソコンを購入し、ワープロやベースの使い方を独学でできるようになっておりましたので、いきなり通信関係のことからご指導いただけたのです。
講師の先生の懇切丁寧なご指導のおかげで、電子メールの送受信ができるようになりました。
その他メールデータの点字変換の方法、メールデータのコピーのしかた、メールデータの整理のしかた、FAXの送信方法なども教えていただきました。
3.研修にあたっての配慮
- (1)盲ろう者のパソコン指導は、マンツーマンで行うのが望ましい。
- (2)信頼できる講師を確保すること。
実際に、視覚障害者あるいは聴覚障害者のパソコン指導を行っている人が望ましいと思われる。 - (3)研修中のコミュニケーションをはかるために、その盲ろう者のニーズに合った通訳者を確保できること。
- (4)初めてパソコンに触れる人に対しては、最初に機械の全体を触らせて、機械の大きさ、形などを確認させる。
その後で、モニター画面、キーボード、点字ディスプレイなど、部分的に触れさせるのが良いと思われる。 - (5)キーボードのキーの説明について。
最初からすべてのキーを覚えさせないこと。必ずホームポジション(基準になる)キーを定める。そのホームポジションを基準にして、"j"の上のキーは何、右下のキーは何、また1番下で右端のキーは何、その上のキーは何、というように、一つずつ必要に応じて教えていただくことが望ましいと思う。 - (6)パソコン用語の説明について。
例え話を使って説明すると分かりやすい。
例えばメモリーというのは作業机のこと。「メモリーが足りない」というのは「作業机が足りない」ということ。ハードディスクは倉庫、ソフトウェアは道具箱、カーソルはペン先、というような例えを使うと、イメージがわいて分かりやすいと思う。 - (7)1回の研修時間を少し長めに取るのが良いと思われる。
盲ろう者の場合、通訳の時間もとても大切。また時間をかけたほうが中身の濃い研修ができる。講師の先生も開催回数が多いよりも、1回の時間数が多い方が負担が軽いのではないかと思われる。
4.パソコンを活用して思うこと
パソコンでは、墨字、点字の文書作成、データ管理、ゲーム、辞書検索、通信、音楽演奏など、いろいろなことができます。
その中でも、パソコン通信、インターネットによる情報摂取は盲ろう者にとって最も必要性の高いことだと思います。 私自身、メールの送受信ができるようになったおかげで、いろいろな情報をピンディスプレイを使いながら自力で摂取できるようになり、以前の何倍も世界が広がりました。
パソコン購入、パソコン研修に関しては、いろいろ問題があろうかと思いますが、一人でも多くの盲ろうの方が、パソコンを使って自力で情報摂取ができるようになっていただきたいと願っております。