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盲ろう者のパソコンとネットワーク利用に関する研修会

3-3) 私のパソコン奮闘記

静岡盲ろう者友の会 牧田 紀子

 パソコンを使いだして、この3月で1年が経過しようとしています。
 この間に社会福祉・医療事業団から受けた助成金の一部を使って、パソコン研修を受けることができました。
「どんなことやったの」
 即座にそんな声が聞こえてきそうです。
 まあまあそうせかしなさんな。
 これから順々に話しますから。というわけで、パソコン研修のことも含めてパソコンとの奮闘ぶりを少し紹介してみたいと思います。

1 ようこそぱこちゃん(パソコンのニックネーム)

「3月下旬ごろにはそちらにパソコンが届くように送ります」
 昨年の2月のある日、このような連絡を受けた。
 わが家ではパソコン設置のためのスペースを作るべく、部屋の模様替えをしたり、通信を行うために電話回線工事をしていただいたりなど、準備をしました。
 そして3月下旬、ぱこちゃんが遠路はるばる東京からやってきました。
「今日からこの家の家族。宜しくね」
というように、私の治療室の机の上に、どしんとお行儀よく乗りました。
 その数カ月後、今度は社会福祉・医療事業団の助成を受けて、友の会で購入したパソコンと点字プリンターが横浜から船にゆられてやってきました。
「私たちも仲間に入れてね」
というように、これまた治療室の一角にどしんと収まりました。
 これら2台のパソコンの中には、パソコンを動かすためのソフト「MS-DOS」、墨字文書の作成などのためのワープロソフト「でんぴつ」、点字文書の作成などのための「ベース」、「ブレイススターIII」、モニター画面の文字を音声や点字に変換するソフト「VDM」、漢字変換ソフト「ATOK」(これが入っていると、かな文字を漢字に変換して入力できます)、点訳ソフト「エクストラ」、点字入力ソフト「ニューブレイル(NewBRL)」(これが入っているとワープロで墨字文書を作成するときも、ベースで点字データを作成する場合にも、普通に点字タイプライターで点字を打つようにタイプすれば、必要に応じた文字が入力できます)、これらのソフトが入っています。

2 パソコン研修

 9月から11月の2ヶ月あまり、社会福祉・医療事業団の助成金の一部を使ってパソコン研修を受けさせていただきました。
 講師は静岡盲学校の教師で、視覚障害者にパソコン指導をなさっておられる方です。
 さてどのようなことを研修したのでしょうかねえ。
 ワープロやベースは独学である程度使えるようになっておりましたので、いきなり通信関係のことについて教えていただきました。
 以前から周囲の人々に、
「パソコン来た? はよう通信始めんかいな」
と、やじを飛ばされ、せかされていたこともありますが、電話やFAXを自力で受信できない私にとっては、メールの送受信を真っ先にできるようにしたかったのです。
 あらかじめプロバイダ(接続業者)への登録手続きを済ませ、講師の先生に通信ソフトの設定などをしていただいたあと、いよいよ本番。
 操作方法を教えていただきました。
 私の場合はある字(3文字)を入力すると自動的にプロバイダとつながり、送受信が同時にでき、さらに自動的にエクストラに切り替わる自動マクロを設定していただきました。
 エクストラで点訳するときは、いくつかのキーを操作して行います。
 送信データ、受信データは、ある決められた箱の中に保管されます。
 データを読みたい場合は、データが保管されている箱の名前を、キーボードを使って入力して、箱を開いて読みたいデータを探し、ピンディスプレイに表示されるメッセージを読めば良いわけです。
 このほか、メールデータファイルの名前の変え方、データのコピーのしかた、データの整理のしかた、FAXの送信方法、メールデータの削除のしかたなどなど、懇切丁寧に教えていただきました。
 そのおかげで、頭の中身がからっぽの私にも、どうにかメールの送受信ができるようになりました。

3 ぱこちゃんと仲良く

 しかし、ずっと順調に進んできたわけではありません。
 メールを送ってくれなかったり、受信データを読んでくれなかったり、こちらの言うことを聞かずそっぽを向いたり、とんでもない仕事をしたりなどなど、さまざまなハプニングの繰り返しでした。
 あるときなどは、ぱこちゃんのお腹の中にメールが450通も入っていて苦しがっているにも関わらず、メールを詰め込もうとしたら、もうパンク寸前とばかりにメールデータを受け付けませんでした。
 思い切ってデータをすべて削除してみました。とたんに、
「ああ、やっと楽になったあ」
というように元気に動き出したのです。やれやれ。
 やはり、ぱこちゃんとも調子を合わせないと、うまく付き合っていけないことを感じました。
 今ではすっかり仲良くなって、通信はもちろんのこと、保管しておきたいデータ(カルテ、会報、その他)の管理、データのコピーなど、毎日ほどほどに、ぱこちゃんとつきあっています。
 まだまだ覚えることがたくさんあって、限りなく夢が広がっていくのを感じます。
 みなさんも、ぜひパソコンにチャレンジしてみませんか。
 きっと世界が広がるはずです。
(以上)