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第22回総合リハビリテーション研究大会
「地域におけるリハビリテーションの実践」-総合リハビリテーションを問い直す-報告書

【 分科会 1 】地域生活の実現と支援ネットワーク:地域生活の実現と支援ネットワーク

かさはら医院
笠原 吉孝

*  地域生活とは

…地域の生活とは、所謂「娑婆」での生活と考える。娑婆とは、ある国語辞典には「一般の人の暮らす自由な世界」となっている。
 地域生活を支援する福祉を、在宅支援の福祉と書き換えた時に、地域=在宅として、生まれ育った場所即ち親元での生活と混同する場合が多い。事実今尚多くの入所施設で夏休みや正月と称して長期間強制的に親元に障害者を帰している。私でも成人して長期間親元に帰ることは無かった。お互い息苦しい。2、3日で故郷は味わえる。長期帰省、これが一般人・福祉人を含めた多くの人に、地域・在宅福祉のイメージを歪めさせる基になっている。
 私は敢えてここで地域生活を娑婆生活と言い換えたい。娑婆という言葉は、刑務所生活から釈放されて戻る時によく使うので、些か下品な言葉にみえる。しかし、日本の現状での福祉を考える時に、在宅を娑婆と夢見たい。
 「自由な世界で暮らす」意味は、30才や50代の障害者にとっても即親元で暮らす世界とはならない。入所生活が務所と感じることがあれば、親元以外でも本人が自由を味わえる生活の場を探さなければならない。

*  現実を阻害するもの

…娑婆生活の実現を阻害するものは、様々な要因があろうが最大のものは本人の障害が現状の社会構造で受け入れられないことにある。在宅障害者の生活を支援する社会的資源が薄いと考えられている。その状態で娑婆生活を強行しても自由は得られない。確かに長い歴史から入所施設での生活支援に比べて、地域社会には障害者支援の要素は薄い。  だが、我々は今何故地域社会の社会資源として、入所施設資源を除外するのだろうか。除外はしていないとの反論はあろうが、決して大いに使っていない。もし、入所施設が障害者の支援に得意なら、これを娑婆支援にも使えば良い。
 しかし、この論理を遂行するには関係者の抵抗が強い。日本の所謂関係者に福祉(幸せ)の遂行よりも、形態の保守に向いている人が多いのではないか。ネットワークを組む前に、この論議を先に済ませなければ進まない。

*  障害者支援と医療

…私の立場からこの問題に触れなければならないが、まだ当たり前の世界に成っていないのは恥ずかしい。もう20年も前に福祉に携わった時に申しましたが、医療は福祉の一部だと思う。人間の幸せを得るのには健康は基本になる。即ち、医療は福祉の一要素。この分野の支援が遅れているのは、隔離・分離の福祉が先行して、一般医療界に障害が接しなかったことにある。多くの医療関係者は障害にどう対処すれば良いのか分かっていない。相手を理解できずに、診療に時間がかかるのも逃げる要因。これらを越えなければならない。


日本障害者リハビリテーション協会
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