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第22回総合リハビリテーション研究大会
「地域におけるリハビリテーションの実践」-総合リハビリテーションを問い直す-報告書

【 分科会 3 】:自立生活に向けたピアサポートの実践

報告者 赤塚 光子
(立教大学)

 はじめに

 第3分科会のテーマは「自立生活に向かうピアサポートの実践」ということで、これを受けて地域におけるリハビリテーションの実践を行う分科会。自立生活に向かう支援と、ピアサポートという形で仲間が支援する、という二つがキーワードで、障害がある人の支援でピアサポートを考える。また、ピアサポートの実践、つまり当事者支援の実践のなかで蓄積し、また、解明した支援の仕方について、リハビリテーション関係者が考えなければならないことがいろいろあるのではないか。これが、分科会の私の問題意識だし、また参加者もそうした課題をもって参加していただいたろうと思います。

 チャンピオン・レポートから

 昨日のレポートのなかで、自立センターが作られた経緯とか実績について、また概念について話されました。そして、ビデオを見て、支援の実際を見ました。そこでは、自立生活、これは自己決定にもとづく地域生活ですが、これを望む人に、ピアサポートが、まずその人の必要に応じて提供される。二つ目には、その人が生活を作りながら提供する。三つ目には、あくまでも本人がどうしたいのかということを出発点にして、継続的な支援もこの考えにもとづいて提供されると。こういうことが示された。そして、ご自分の自立生活においても、また支援のなかでも、呪文のようにとなえる10項目があります。そのなかに、「自分のやりたいことを人を使ってやり、それを自分でしたことにする権利」をめぐって議論がありました。分科会で議論していこうということで今日につながりましたが、このことは、リハビリテーションの根幹、あるいは支援の根幹にふれるということで、多くの参加者で熱気にあふれた、というか、ほんとに暑かったんですが。いろいろ議論がありました。

 第3分科会の流れ

 最初に、分科会の流れですが、今日は堤さんのほかに、メインストリーム協会の佐藤聡さん、埼玉県立大学の丸山さんにお話をいただきました。佐藤さん、堤さん、丸山さんの順で、佐藤さんには、「別の自立センターではどうか」、堤さんには「実際に事例を通して具体的なこと」を、丸山さんには「ピア・カウンセリング」について。また前のお二人への質問なども。若干そのなかで印象に残ったことを紹介します。
 メインストリーム協会も自立センターで、現在15名くらいいますが、介助者を教育してはいけないんだ、というのが最初のほうに出てきました。本人が自分の生活を決める。それを大切にする。制度が整ってきてもそこにのらない障害者のために、メインストリーム協会ではきっかけを作って、知識を得るチャンスを作って、そして自立生活を支援する。そのなかで、全部うまくいくかというとそうでもない。何が問題かというと、社会性がない。生活力というところに問題がある。特に、お金の管理の問題、あるいは人間関係、介助者との関係も出てくるので、自立生活プログラムということで援助しています。本人が自立生活をしたいときに、家族というのはたいがい一度はいちばん邪魔をするかもしれません。そこにもサポートしながら支援をしている様子が紹介されました。

 町田市の事例と所得保障

 堤さんからは、親から離れてのひとり暮らしの事例、施設を出てひとり暮らしをする人の事例。資料集にもありますが、最初の事例ではコミュニケーション障害があって、言葉での意思疎通が難しい方です。その方も、自立されていますが、介助者を選ぶときの話が印象的です。面接に立ち会うのですが、候補者が、介助を受ける人の目を見ているか。そして、コミュニケーションがあるけど、話を聞こうとしているか。これがポイントになると。
 そのほか、制度についての話がありました。東京都町田市ですが、所得保障としては、東京都では重度身障者手当を含めて、年金手当は18万円ちょっと。所得保障ですね。それから介助の問題もあり、東京都の全身性障害者看護人派遣制度、ホームヘルパーの事業、合わせると町田では24時間介護ができている。そしてそこで、受け取る介護料を介助者に給金として払っているということでした。町田でも、自立センターが仲介するともらえるけど、一人で行くともらえない。所得と介助保障の問題。これは東京だからかもしれませんが、そういうふうにいってはいられないわけで、この問題は大きな問題です。

 ピアカウンセラーのはしりは

 丸山さんのお話。今まで、自立生活センターとか、ピア・カウンセリング、ピアサポートがなかったわけではないが、福祉事務所とか、リハビリテーション法としての身体障害者福祉法ができたとき、障害をもつ人自身をカウンセラーとして配置したこともあるし、1967年には相談員制度ができて、当事者や親が相談員になっている。障害団体も、ピア・カウンセリング、あるいはピアサポートなどもしている。また、順天堂大学のカウンセラー、盲人の松井新次郎さんがやっていて、いろいろ拡大の貢献もあった。丸山さんからは、当事者がやっているサポートと専門家のサポート、それから従来のピアサポート、どこが違うのかという問いかけがあって2人から返事がありました。

 議論異論「障害」の受容論

 昨日の議論で、「やりたいことは人を使ってやってもいい」というのは、大人にはいいけど子どもには違うんじゃないか。結論として、大人と子どもは違う、という意見がありました。子どもは人格形成の途中だから判断力がまだついていないし、人を頼むということを安易に認めるべきではない。また、リハビリテーションは、可能性を見ることで、生活における選択肢を広げていくことだ。本人の価値を認めることで、それは大人も子供も同じ。また訓練が重要だということもある、という意見もありました。当事者の方から、小さい頃から、足を使うな、上肢を使えと言われて、もっと大きくなったら、足を使いなさいと、その一貫性の無さの話。またインドネシアの方で、小さいときの訓練が強制的であったと。そして堤さんの発言ですが、判断力が充分でないからこそ、慎重におこなってほしい、と。子どもというのは、甘える、なまけると大人が簡単に判断しなくても、いいくらいの力をもっている。で、もっと子供の可能性を探ることをお願いしたい。皆さんはどうお考えでしょうか。 そのほか、自立支援でのピアサポートの効果ですが、障害の重軽ではなく、社会生活力が重要で、サービスが適宜提供されることが大事で重要。また、ピア・カウンセリングについては、言葉にできない問題が障害をもつ人にはある。それを吐き出すピア・カウンセリングが重要と、再確認しました。自分を甦らせ、新しい自分を発見する、というのが大事。丸山さんから言われた当事者が提供するサービスと、従来のサービスの違い。このへんは、リハビリテーションの進展によって違ってきている。
 その前提のなかで、ひとつは障害のとらえ方が違う。堤さんは障害を肯定するか否定するかと表現されました。障害というのは、打ち勝ったり克服したり、負けないでがんばるものではなく、ありのままに認めて、できないところを支援する、という考え方でした。
 二つ目。障害のある人の意思が、リハビリテーションの過程においてどう尊重されるか。小さいことでも大きいことでも。本人がどうしたいのか、それがきちんととらえられる必要がある。もっといろいろありますが、この自立センターの支援から学ぶものがあるのではないか。パイオニア的な存在です。しかし当事者と専門家の距離が悲しいくらいある。ここをもっと埋めるような努力が必要じゃないかという発言もありました。これに対して堤さんは、「私はたちはリハビリテーションに対していろいろな思いがある」と。私たちはどう受け止めたらよいのか。

 当事者vs専門家

 このリハビリテーション研究大会において、当事者の方に参加していただきました。かなり前から「あなたの受けたリハビリテーションはどうですか?」ということはあった。いよいよ当事者がリハビリテーションという言葉を使うかどうかは別にして、地域生活支援をおこなっているそのやり方、考え方について、私たちは何なんなのかということをもっと知りたい。もっといえば専門家が同じようにできるのか、あるいはできないとしたら、どう役割分担するのか。リハ全体でどう関係をもち支援をするのか、これらが今後の大きな課題だたろうと思います。
 国際障害者年以降、また障害者プランでも、施策、政策過程への当事者の参加が重要視されているが、これもままならないと発言がありました。
 リハビリテーションの過程、生活作り、当事者の参加、これをしっかり考えていかなくてはならない。これを私の報告とします。

指田/ありがとうございました。いま1~3までの分科会の司会者からそれぞれ盛りたくさんの発表でした。
 以上で分科会の報告を終了します。どうもありがとうございました。


日本障害者リハビリテーション協会
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