あいち8か年福祉戦略
No.2
愛フルプラン
平成5年7月
愛知県
第5部 生涯現役の維持と安心して暮らせる生活の確保をめざして
第1章 若い時からの健康づくり
第2章 働く機会の確保
- 雇用の継続・再就職
- 生きがい就労
- 農山漁村高齢者
第3章 社会参加の促進
- 学習活動
- 社会活動
- 能力活用と交流
第4章 援護を必要とする高齢者への援助
- 保健・医療
- 在宅福祉
- 施設福祉
第5章 老人保健福祉計画における圏域設定のガイドライン
【進む人口の高齢化】
平成2年における本県の65歳以上人口は、総人口の9.8%であり、全国値の12.1%に比して、2ポイント程低く、全国に比べ10年程度遅い進行になっています。
これは、本県において、昭和30年代、40年代の高度成長期に若年層が他府県から流入したことによります。しかし、先に流入した若年層が今後高齢者の仲間入りするにつれて、高齢化のスピードが速まり、2000年には14.3%、2010年には19.4%と急速に進行していきます。
とくに、援護を必要とする割合が高くなる75歳以上の後期高齢者については2000年以降急速に増加していくため、その対応を準備していく必要があります。
県の65歳以上人口の推移 (単位:千人)
- | 1990年 | 2000年 | 2010年 |
---|---|---|---|
65歳以上 | 656 | 1,012 | 1,441 |
75歳以上 | 259 | 382 | 609 |
総人口 | 6,691 | 7,097 | 7,410 |
(資料)1990年(平成2年)は総務庁「国勢調査」、2000年(平成12年)以降は厚生省人口問題研究所推計(平成4年10月推計)
【元気な高齢者の増加と自立した生活への支援】
65歳以上人口のうち、ねたきり、痴呆性、虚弱老人といった援護を必要とする高齢者は、9%程度であり、残りの大多数は元気な高齢者です。
こうした元気な高齢者にとっては、1健康づくり、2働くこと、3地域等で活動することの3つを充実していくことが重要であり、そのための支援をしていくことが必要です。
【援護を必要とする高齢者の増加と在宅・施設のループ】
援護を必要とする高齢者のうち、ねたきり老人の比率は、今後各種施策の充実などにより下がることが予測されます。また、痴呆性老人の比率は、後期高齢者の増加に伴い高まるものの、全体では、その比率は変わらないものと予測されます。
今後、10年の間に両者を含めて約31,000人増えると予測され、県全体の総人口の伸びが1.1倍なのに比べ、約1.5倍と高い伸びとなっています。
一方で、家庭の介護力は、ひとり暮らし老人の増加や世帯の核家族化の一層の進行に伴い、弱まっていくものと思われます。
県における世帯の状況 (単位:世帯)
区分 | 一般世帯数 | うち65歳以上の高齢者のいる世帯数 | 一般世帯1世帯当たり人員 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
- | うち高齢者 夫婦世帯 |
うち高齢者 単身世帯 |
||||
昭 50 |
一般世帯数 構成比 |
1,583.615 100.0% |
295,644 18.7% |
31,415 2.0% |
18,112 1.1% |
3.31 |
平 2 |
一般世帯数 構成比 |
2,160,791 100.0 |
481,000 22.3 |
87,364 4.0 |
59,324 2.7 |
3.06 |
(資料)国勢調査
こうした状況の中で、高齢者が体が弱っても、住み慣れた地域で暮らせる条件づくりが大きな課題となっています。
このため、特に、施設を「生活の場」として機能させるだけでなく、在宅者の「利用の場」、「通所の場」として整備を進め、在宅──施設──在宅というサイクルを、保健・医療・福祉との連携を図りながら、つくり出す必要があります。
在宅と施設福祉との関連図
【家庭の介護力の維持とその支援】
平成2年の国勢調査では、県における住宅の「一世帯当たりの延べ面積」(86.2平方メートル、全国平均83.9平方メートル)及び「一世帯当たり人員」(3.06人、全国平均2.99人)は大都市圏の中では比較的多く、また、「三世帯同居率」も44.1%(全国平均36.4%)と全国的に高い方にあります。
家族がねたきりになった場合の介護方法
区分 | 愛知県 | 東京都 |
---|---|---|
在宅のまま家族が世話 | 72.9% | 46.5% |
病院に入院 | 11.7% | 30.7% |
特別養護老人ホーム等施設に入所 | 8.7% | 3.8% |
その他 | 6.6% | 1.0% |
(資料)愛知県-平成4年度県政モニターアンケート結果
東京都-東京都社会福祉基礎調査結果(平成2年度)
また、平成4年度に実施した県政モニターアンケート調査によっても、家族がねたきりになった場合に、「家族で面倒をみる」という意見が圧倒的に高い結果となっているなど家族を中心とした相互扶助を行う条件が比較的整っているのが、本県の福祉風土の特徴といえます。
こうした「家族構造」の地域性の特徴については、次図のように最近の研究においても実証的に説明されており、日本全体を4つの分類に分けた分析がなされています。
この中で、本県は「人口高齢化の進展と『老人核家族的世帯化』が緩慢な地域」に位置づけられています。
しかしながら、今後、家庭介護力が低下し、福祉需要が顕在化し、拡大してくることも事実であります。
このため、家庭介護力に対する現代的な評価を検討するとともに、家族の負担を軽減するため、家庭奉仕員の派遣、デイサービスなど在宅福祉を中心とした行政的援助を強化することが必要です。
老年人口比率と老人核家族的世帯率の地域差(昭和60年)
注) 老年人口比率=65歳以上人口/総人口×100
老人核家族的世帯率=老人核家族世帯率+老人単独世帯率
(資料)総務庁統計局「国勢調査」
類型分類
- 「鹿児島・高知型」-人口高齢化の進展と「老人核家族的世帯化」の進展が著しい地域
- 「山形・富山型」-人口高齢化の進展は著しいが「老人核家族的世帯化」の進展は緩慢な地域
- 「東京・大阪型」-人口高齢化の進展は緩慢であるが「老人核家族的世帯化」の進展は著しい地域
- 「宮城・茨城型」-人口高齢化の進展と「老人核家族的世帯化」が緩慢な地域
- (資料出所)高齢化社会と家族構造の地域性(清水浩昭著)
→用語解説
- ねたきり老人
ねたきりで3か月以上を経過し、日常生活を行う上で介護を必要とする老人をいいます。 - 痴呆性老人
脳の器質的障害により痴呆(いったん獲得された知能が持続的に低下すること)を示している老人をいいます。 - 虚弱老人
特定の疾患に罹患しているわけではないが、老化等の要因により病気にかかりやすく、罹患すると悪化しがちで治りにくい老人をいいます。 - 三世帯同居率
世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯の率を表わします。
第1章 若い時からの健康づくり
1 現状と課題
現状
- 誰でも心身ともに健やかであることを望みますが、人生80年時代には、「一病息災」という健康観に立ち、一人ひとりが健康づくりに取り組むことが必要となってきています。
- 健康は若い時からの生活習慣により形作られるものであり、年をとってもそれをできるだけ維持していくための健康管理と健康づくり運動が大切です。
- このため、市町村では、市町村保健センターが中心となって老人保健法に基づき、40歳以上の者を対象に、健康教育、健康相談、健康診査等の「保健事業」を実施しています。
- 県では、「保健事業」の着実な推進を図るため、保健事業費に対する負担金の交付、健康診査に要する費用への助成等を行っているほか、保健所において健康相談、循環器系健康診査等を実施しています。
老人保健事業の実施状況(平成4年度)
手帳交付 | 240,063人 |
---|---|
健康教育 | 7,860回 |
健康相談 | 12,517回 |
健康診査(受診率) | ||
---|---|---|
基本診査 | 328,912人 | 37.5% |
胃がん | 110,450人 | 12.0% |
子宮がん | 97,409人 | 12.4% |
肺がん | 201,229人 | 21.8% |
乳がん | 71,257人 | 9.0% |
大腸がん | 98,876人 | 10.6% |
(資料)県衛生部調べ
注)
- 受診率=受診した者を対象者(国保加入者、国民年金の第3号被保険者等健診を受ける機会がない者)で除したもの
- 子宮がん、乳がんは30歳以上の女性、その他は40歳以上の対象者
- さらに、県総合保健センター及び三河総合保健センターでは、全国に先がけ、総合健診(人間ドック)や体力検査を実施し、検診データー管理及び事後指導により疾病の早期発見・予防に努めており、全国の機械化健診業務の指導的役割を担っています。
県総合保健センターの健診等状況(平成3年度) (単位:人)
区分 | 県総合保健センター | 県三河総合保健センター | ||
---|---|---|---|---|
受診者延数 | 1日当たり受診 | 受診者延数 | 1日当たり受診 | |
総合健診(Aコース) | 23,293 | 95.1 | 9,196 | 37.5 |
総合健診(Bコース) | 4,180 | 17.1 | 1,467 | 6.0 |
成人病検診 | 42,025 | 153.9 | 11,674 | 42.8 |
体力・運動機能検診 | 2,194 | 8.0 | 832 | 3.0 |
聴力音声言語検診 | 13,387 | 49.0 | - | - |
視力検診 | 16,603 | 60.8 | - | - |
精神保健相談指導 | 1,378 | 5.0 | - | - |
(資料)県衛生部調べ
- 県は、昭和53年度から、全国に先がけて、運動を中心とした健康づくりの実践指導を開始してきましたが、61年4月に健康づくりの中核的指導団体として、(財)「愛知県健康づくり振興事業団」を設立、さらに63年度には、県下の8保健所に科学的機器を整備した「健康増進室」を設置して、全国有数の規模で総合的な健康づくり支援事業を展開しています。
- 事業団では、全国に例を見ない、高齢者の健康づくり指導メニューを独自に開発し、現在各地で積極的な指導を展開しています。健康づくりの実践活動指導援助、キャンペーン、基盤整備の三つを基本に「動機づけ」「健康チェック」そして「実践活動」へと各段階での積極的な支援、活動を展開しています。
- 具体的には、1テレビ、ラジオ、新聞等のマスメディアによる県下全域への広範な普及啓発、2職域及び地域に対する運動、栄養処方指導の実践、巡回指導、3健康づくりリーダー等の指導者養成、4健康づくりの指導方法の開発など総合的に事業を実施しています。
- 楽しみながら健康づくりが体験でき、普及させるためのイベントとして59年から県下38の構成団体からなる実行委員会の主催により毎年「健康フェスティバル」を開催しています。
- 生涯自分の歯でおいしく食べ、豊かな人生を送るための「8020運動」(80歳で20本以上の歯を残そうという運動)を推進するため、若い時からライフステージにあった歯科保健事業に努めます。
- 県の健康づくりの中心施設として、また、保健・医療・福祉・生きがいなどの総合施設として「あいち健康の森(仮称)」の整備を進めています。この森の中核施設として「長寿医療センター」があります。これは世界一の長寿国となったわが国の実情を背景に長寿科学の研究に対し大きな期待がよせられており、国が平成7年度の運営開始をめざして整備を進めています。
県の施設としては、健康ゾーンに整備する健康開発センター、健康科学教育館などを整備し、県民の健康づくりの拠点としています。
また、運動ゾーン、健康ゾーンは、国のテーマパークとして採択された都市公園「あいち健康の森公園(仮称)」として整備しています。同公園内に特色ある薬草園の設置も計画しています。
課題
- 健康づくりは、「自分の健康は自分で守る」との認識で高齢になる前から積極的に取り組むことが必要です。このため、個人の状況にあった実践活動への支援体制を強化する必要があります。
- 保健事業の健康診査の受診率は、全体的にゆるやかに伸びているものの、さらに向上を図る必要があります。
- 「あいち健康の森(仮称)」の整備を一層推進していく必要があります。
2 今後の目標
- 健康教育、健康増進、疾病予防等の保健予防対策の積極的推進を図り、健康で生きがいのある「いきいきヘルシーあいち」の実現をめざすため、健康診査等保健事業の拡充(保健事業第3次8か年計画の達成)を図ります。
- 地域の指導的・実践的機関としての保健所機能の強化を図ります。
- 「健康増進」と疾病の早期発見、予防などの「健康管理」を平行して推進する必要があることから、総合健診(人間ドック)の充実を図ります。
- 健康づくりの実践活動指導援助、キャンペーン、基盤整備を推進するため、中核的指導団体としての(財)愛知県健康づくり振興事業団の組織の強化、支援を推進し、指導体制の強化を図ります。
- 中高年期からのライフスタイルに応じた健康知識の普及が必要であることから、気軽に参加できる健康フェスティバルを中心とした各種イベント及び健康番組等による健康づくりキャンペーンの強化・普及啓発の充実を図ります。
- 8020運動推進事業の積極的な展開を図るため、運動を推進する者の養成を行う等普及啓発の充実を図ります。
- 21世紀を健康で生きがいに満ちた長寿社会にするため、保健・医療・福祉などの総合的な拠点施設として「あいち健康の森(仮称)」の整備を推進します。
- 長寿科学に関する研究を促進するため、シンポジウムの開催などを行います。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | ||
---|---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | ||||
老人保健事業の拡充 | 基本健康診査 | 市町村 | 受診率 37.5% | 受診率 50.0% | 保健事業第3次計画の達成のため、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、健康診査等を充実 |
胃がん検診 | 受診率 12.0% | 受診率 30.0% | |||
子宮がん検診 | 受診率 12.4% | 受診率 30.0% | |||
肺がん検診 | 受診率 21.8% | 受診率 30.0% | |||
乳がん検診 | 受診率 9.0% | 受診率 30.0% | |||
大腸がん検診 | 受診率 10.6% | 受診率 30.0% | |||
あいち健康の森 | 研究ゾーン | 国・県・民間 | 着工 | 7年度運営開始 | 健康・長寿のシンボル拠点として整備 |
健康・運動ゾーン | 設計・用地買収 | 9年度一部運営開始 | |||
福祉・生きがいゾーン | 検討中 | 完成 |
→用語解説
- 保健事業第3次8か年計画
平成4年度から11年度までの8年間において達成するための国の基本方針及び事業目標を定めたもので、成人病による死亡率を低下させ、寝たきり老人を大幅に減少させることを目的として、保健事業の充実強化を図るものとして策定されています。 - 8020運動
歯が20本以上あれば、なんでもおいしく食べることができるといわれています。女性の平均寿命は80歳を越え、世界一の長寿国となっております。
80歳で20本以上の歯を残す意味から、8020運動と呼ばれています。 - テーマパーク
資源、自然、歴史、文化等地域の固有の特性をいかした特定のテーマのもとに、多様な施設を整備し、高品位な空間を創出するとともに、運営等ソフトな面でも充実したサービスを提供するものです。
第2章 働く機会の確保
(1) 雇用の継続・再就職
1 現状と課題
現状
- 平均寿命が伸び、元気な高齢者が増え、働けるうちは働くという高齢者が増えています。
(資料)愛知県高齢者生活実態調査報告書(平成2年3月)回答者の年齢 就労の目標年齢 70~74歳 75歳以上 働けなくなるまで 65~69歳 13.1% 10.6% 69.1% 70~74歳 - 19.2 71.2 75~79歳 - - 83.2
- このため、雇用の延長や生きがい就労など高齢者の状況にあった働くことのできる場の整備が必要となっています。
- 定年制については、定年制をとっている県内企業のうち8割以上が60歳以上の定年となっています。
- また、再雇用制度または勤務延長の最高雇用年齢は、7割以上の企業が65歳以上となっています。
(資料)愛知県労働時間制度等実態調査報告書(平成5年2月)最高年齢 57~59歳 60~64歳 65歳以上 計 再雇用制度 3事業所
(0.7%)109事業所
(25.9%)309事業所
(73.4%)421事業所
(100.0%)勤務延長 2
(1.1)53
(28.5)131
(70.4)186
(100.0)
- 県では、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の趣旨に沿って、1 60歳台前半層の雇用就業の推進、2 高年齢者の再就職の促進、3 高年齢者雇用対策推進体制等の整備を柱に国の施策に呼応しつつ、各種奨励金制度など県独自の施策を推進しています。
とくに、中小企業を対象にした「60歳台前半層雇用促進奨励事業」、「継続雇用制度導入奨励事業」、「高年齢者雇用開発奨励事業」等県独自の事業は、全国トップレベルとなっています。
(資料)県労働部調べ区分 平成4年度 60歳台前半雇用促進奨励事業 948事業所 継続雇用制度導入奨励事業 7件 高年齢者雇用開発奨励事業 165事業所
- 再就職を希望する高年齢離職者のためには、公共職業安定所に設置したファクシミリによる最新の雇用情報を事業主に提供するシステムを運営しているほか、安定所に準ずる機能をもつ高年齢者職業相談室を県下18か所に設置するとともに、65歳以上の高齢者を対象に仕事のあっ旋等を行っている高齢者能力開発情報センターを県下12か所に設置するなど再就職の促進に努めています。
- さらに、定年退職者や転職を希望する高年齢者については、7つの県立高等技術専門校において、再就職のための技能を得る職業訓練を実施し、そうした意味合いから平成5年4月に全国有数の施設として移転開校した名古屋高等技術専門校においては離転職者を対象とした職業訓練を4科目から8科目に増設し、その充実に努めています。
- 企業が従業員に対して定年退職後の再就職の円滑化のための教育訓練等を実施する場合には「生涯能力開発給付金制度」による助成を実施しています。
課題
- 60歳以上定年の定着化を図るとともに、同一企業または同一企業グループ内において65歳までの継続雇用を一層推進していく必要があります。
- 県立高等技術専門校の訓練科目を社会のニーズの変化にあわせていく必要があります。
2 今後の目標
- 60歳未満の定年制を採用している企業に対し「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づく行政指導を強化し、60歳定年の早期完全定着に努めていきます。
- 60歳定年を基盤とし、希望者全員を65歳まで継続雇用する制度の促進に向けて啓発、指導や援助措置の充実に努めていきます。
- 再就職を希望する高年齢離職者の早期就職を促進するため、職業相談体制の強化や迅速な雇用情報の提供等、各種援助措置の活用に努めていきます。
- 職業訓練をより効果的に実施するため、社会のニーズにあった科目を重点的に行うよう努めていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
60歳定年延長指導 | 県 | 実施企業の割合 88.8% |
完全定着 | 行政指導を強化し、完全定着を図る |
継続雇用制度促進指導 | 県 | 65歳継続雇用実施企業の割合 2割程度 |
顕著な増加 | 継続雇用制度の促進を図る |
職業転換訓練 | 県 | 7校、23科 945人 |
訓練内容の充実 | 高齢者向け訓練の実施 |
(2) 生きがい就労
1 現状と課題
現状
- 定年退職後、「常時雇用は望まないが、生きがいのため働くことを希望する」高齢者に対し、仕事を作りだす必要があります。
- このため、県下には「シルバー人材センター」が68市町村(名古屋市を含む)に71団体が設置され、登録会員は約17,000人となっています。
この事業は、県が国に先がけて高齢者能力活用推進事業として昭和54年度に新設したもので、翌年度から国が制度化を図りました。
県ではその後も引き続き、独自に手厚い助成制度を実施しており、その結果、団体設置数は全国一、会員数は3位と活発に活動しています。
シルバー人材センターの状況(平成4年度末現在)
(資料)県民生部調べ(名古屋市を含む)区分 技術群 技能群 事務整理群 官理群 外交折衝群 軽作業群 サービス群 その他 計 家庭教師
・
経理事務大工
・
左官
・
植木剪定筆耕
宛て名書き建物施設管理
・
駐車場管理パンフレット配付 除草
樹木消毒家事手伝い - 男 人
466人
1,880人
1,492人
1,192人
169人
5,028人
83人
101人
10,411女 60 141 584 123 55 4,867 960 55 6,845 計 526 2,021 2,076 1,315 224 9,895 1,043 156 17,256 比率 %
3.0%
11.7%
12.0%
7.6%
1.3%
57.4%
6.0%
1.0%
100.0
- 地域社会の中で高齢者が豊かな生活を送れるようにするため、就労、健康づくり、憩い、地域交流などの機能を備えた場が必要です。
県では、国に先がけて、こうした場を確保するため、「高齢者生きがい活動推進施設」設置事業を60年度から始めています。これには、屋外型、屋内型の施設がありますが、現在、33市町において37か所整備され、多くの高齢者の生きがいの場として活用されており、全国に誇る事業といえます。
施設の状況(平成4年度末現在)
(資料)県民生部調べ区分 屋内型 屋外型 屋内・屋外型 計 か所数 31 1 5 37 設置市町 27 1 5 33 内容 自動車配線加工、封筒詰作業、おおばの仕分、自動車部品バリ取、ダンボール組み立て、障子襖張り、木工 花き栽培 ミツバ水耕栽培、温室作業、自動車部品加工バリ取、食品加工、電気部品加工
課題
- シルバー人材センターの設置を促進する必要があります。
- シルバー人材センターの活動範囲の拡大と就労条件の緩和、会員に対する技能訓練、研修等を充実するとともに、会員の運営への参加等により、自主性を高めていく必要があります。
- 「高齢者生きがい活動推進施設」の建設を推進する必要があります。
2 今後の目標
- シルバー人材センターの県下市町村への拡大を図ります。
- シルバー人材センターの活動条件等の拡大を図るとともに、会員の運営への参加等により、自主性を高めていきます。
- シルバー人材センターは多様な職種に対応できるよう、また、発注された仕事を適切にこなせるよう、会員の研修を実施します。
- 「高齢者生きがい活動推進施設」は、地域特性を踏まえて、未設置市町村での設置を進めるほか、市町村の意向に基づき、同一市町村への複数設置についても検討します。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
シルバー人材センター | 市町村 | 71団体 | 全市町村に設置 | 全県域で高齢者の生きがい就労活動を推進 |
高齢者生きがい活動推進施設 | 市町村 | 37か所 | 80か所 | 市町村における生きがい活動の拠点施設整備を推進 |
(3) 農山漁村高齢者
1 現状と課題
現状
- 本県の農業就業人口の高齢者率は、平成2年2月には男子で63.1%、女子では44.9%となっています。
また漁業就業者の高齢者率は、昭和63年11月に初めて20%を超え、平成3年11月には28.6%となりまた。
林業就業者についても、平成元年において60歳以上が51.7%を占めています。 - 農業就業者の高齢化に伴い、県では高齢者等の健康管理・作業能力・作業の安全性に配慮し、その役割が十分発揮できるような営農を確立するとともに、高齢者の生きがいの場とする「健康管理型集団営農モデル策定事業」を平成4年度から実施しています。
- また、2年度から農村の高齢者に対して、就農状況や今後の営農意向に対する調査の実施や高齢者受入促進施設整備、交流文化拠点整備、地域環境施設整備などを行う「高齢化地域農村活性化モデル事業」を進めてきました。現在まで2か所で完了し、現在も1か所で継続しています。
- 漁業就業者の高齢化の進展に対応し、高齢者が持っている知識と技術を地域で活用し、高齢者の生きがいと地域漁村の活性化の促進を図っています。
- 実年者の林業への就労を促進し、生きがいの向上と森林の適正な管理を図るため、「地区林業研修講座」に実年者コースを設けています。
- 高齢化率の高い三河山間地域については、「過疎地域活性化計画」「山村振興計画」を策定し、各種事業を実施しています。
課題
- 高齢者が生産労働の場で働けるようなシステムを考えていく必要があります。
- 高齢化、過疎化が進行している山間地では、高齢者や定年退職者等が農林業の担い手として活動できる組織の育成を図り、山村の特産物・加工品づくりによって高齢者の役割向上や地域の活性化を進める必要があります。
2 今後の目標
- 農村の高齢者の就農実態や営農意向調査を行いながら、都市部及び農村部の高齢者等の人材を有効に活用し、地域の活性化を図るとともに地域農業システムの確立を図っていきます。
- 高齢者等の健康管理・作業能力・作業の安全性に配慮し、その役割が十分発揮できるような農林水産業の場を整備し、高齢者の生きがいの場づくりを推進します。
- 「過疎地域活性化計画」「山村振興計画」の具体化により、地域の活性化を総合的に進めていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
山村振興計画の推進 | 県・町村 | 計画の作成、推進 | 計画の推進 | 毎年度順次関係町村分の振興計画を作成し、その推進を図る |
第3章 社会参加の促進
(1) 学習活動
1 現状と課題
現状
- 人生80年時代をいきいきと張り合いを持って暮らしていくために、生涯を通じての学習の必要性が高まっています。
- 県では、総合講座をはじめ33講座にのぼる「県民大学講座」を開催し、平成4年度は年間2,846人が受講しています。このうち高齢者が占める割合は、昭和63年度の21%から平成4年度には47%まで上昇しています。
また、地域における多様な学習機会を提供する「高等学校開放講座」は、24校で24講座が開催され、831人が受講しています。 - また、(財)愛知県長寿社会振興協会が実施しているシルバーカレッジは「高齢者大学」ともいうべきものであり、県内4地区300人が、様々な学習活動を展開しています。
- 市町村が開催する「高齢者教室」は、4年度において42市町村で120教室が開催されました。県はこの事業に助成するほか生涯学習のまちっくり推進事業を実施しています。
課題
- 生涯学習に関する各種情報の提供や学習相談、指導者研修等を実施する拠点施設の整備を図ることが必要です。また、今後、元気な高齢者の増加が見込まれるため、シルバーカレッジの拡充など高齢者を対象とした学習の提供機会を充実する必要があります。
- 高学歴化の高齢者が増えてくることが見込まれるため、生涯学習内容の多様化と質の高度化が必要になります。
2 今後の目標
- 高等学校開放講座など、高齢者の生涯学習を受ける機会の一層の充実を図ります。
- 各市町村に設置された生涯学習を実施している施設との連携を図るため、生涯学習情報ネットワークの構築を図ります。
- 生涯学習活動に係る相談、指導者研修等を実施し、生涯学習情報ネットワークの中核施設となる生涯学習推進センターの整備を図ります。
- あいちシルバーカレッジについては、高齢者に公平に学習活動の機会を提供するとともに、増大する高齢者の需要に応じられるよう学科の充実、定員増、専用会場の確保等を図り、拡充していきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
生涯学習情報ネットワークの構築 | 県 | - | 構築 | 県下の生涯学習施設をコンピュータでつなぎ、さまざまな情報のネットワーク化を図る |
生涯学習推進センター | 県 | - | 設置の検討 | 生涯学習を推進する中核施設の整備を検討 |
あいちシルバーカレッジの拡充 | 県長寿社会振興協会 | 2 学科 定員300名 |
学科の充実 定員増 専用会場の確保 |
高齢者の学習機会の拡充 |
(2) 社会活動
1 現状と課題
現状
- 高齢期をいかに明るく、豊かにしていくかは、県民一人ひとりの自助努力に負うところが大きいといえます。
- 現在、高齢者の社会活動としては、趣味、文化・スボーツ、学習、福祉などさまざまな活動が活発に行われています。
- 県では市町村とともに、高齢者が地域のさまざまな活動を組織し、あるいは参加し生きがいを高めていくような条件づくりを進めています。
- (財)愛知県長寿社会振興協会では、高齢者スポーツ・カルチャーフェスティバルの開催(平成4年度参加者3,000人)などをはじめ、「あいちいきいき人生」の発刊やテレビ放映など高齢者の社会活動に係わる各種啓発等を実施しています。
- 高齢者のスポーツ活動は、生きがいだけでなく、健康づくりのためにも有効であり、ゲートボール、ペタンク、グランドゴルフなどのスポーツも行われています。
また、ニュースポーツの紹介や指導者等の養成を行っています。 - 高齢者のスポーツ活動、文化活動の高揚を図るため、全国の高齢者が参加・交流する「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」が昭和63年度に兵庫県で開催され、以後各県持ち回りにより毎年開催されています。5年度は京都府・京都市との共催で、第6回大会が開催されますが、現在、第10回(9年度)大会まで開催地が決定されています。
- また、高齢者の社会参加を促進し、生きがいを高めるために「老人クラブ」が結成されていますが、3年度末現在、クラブ数4,693クラブ、会員数342,596人で、これは、ともに全国第2位となっています。
老人クラブの状況(平成3年度)
(資料)平成2年国勢調査及び厚生省報告例区分 60歳以上人口 クラブ数 会員数 加入率 愛知県 人 642,602 クラブ 4,693 人 342,596 % 53.3 名古屋市 329,042 2,167 129,504 39.4 合計 971,644 6,860 472,100 48.6
- 老人クラブの活動としては、親睦活動のほかに「社会奉仕活動」、「教養講座」、「健康増進活動」などがあげられますが、ゲートボールで代表されるように「健康増進活動」の占める比率が高くなっています。
- また、地域の高齢者が気軽に利用できる囲碁や将棋等の文化活動やレクリエーションなどの場の確保も重要であり、「老人福祉センター」「老人憩の家」などの整備を図っています。
4年度末現在、老人福祉センターは73か所、老人憩の家が234か所設置されていますが、これは東京都、滋賀県、大阪府についで全国第4位なっています。 - さらに、高齢者の保養、安らぎの場として景勝地、温泉地等に湯谷、勘八峡、南知多、永和荘の4つの「県立老人休養ホーム」を設置していますが、4年度では92千人の利用がありました。
課題
- 高齢者の社会参加活動やスポーツ活動に対して機会の提供、環境の整備など側面的な援助を更に強化していく必要があります。
- 老人クラブの加入率が年々低下してきているので、その加入促進と活動の活発化を図っていく必要があります。
とくに、高齢者による高齢者のための活動や社会奉仕活動など地域に寄与する活動を積極的に展開し、魅力ある組織として発展していくことが必要です。 - 老人福祉センター、老人憩の家の整備を進める必要があります。
2 今後の目標
- (財)愛知県長寿社会振興協会が行う事業を積極的に支援するなど高齢者の学習、スポーツ、ボランティア、趣味活動の機会の拡大を図っていきます。
- 高齢者のスポーツと文化の大規模な祭典を開催するなどスポーツ、文化活動の活発化を図っていくとともに、その活動の成果をもとに全国的な交流を図るため、「全国健康福祉祭」の誘致を進めます。
- 地域活動の推進母体である老人クラブが魅力ある組織として発展するよう、クラブ活動の活性化を支援していきます。
- 高齢者の健康の増進やレクリエーションの場を確保するため、老人福祉センター、老人憩の家の整備を促進するとともに、要援護老人の施設として活用するため、介護機能の付与、強化に努めていきます。
- 老人休養ホームについては、南知多老人福祉館を6~7年度にかけて改築するほか湯谷老人福祉館、勘八峡老人福祉館について高齢者のニーズを踏まえ、新しい機能の付与を検討しながら、順次、計画的に改築を進めていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
老人福祉センター | 市町村 | 73か所 | 97か所 | 高齢者の社会活動の場を順次整備 |
老人憩の家 | 市町村 | 234か所 | 290か所 | 高齢者のより身近な社会活動の場を順次整備 |
(3) 能力活用と交流
1 現状と課題
現状
- 高齢者の中には、その長い人生の間に培った優れた技能あるいは知識を持っている人が多数います。その技能や知識を社会に生かし、さらには青少年に教え、伝えていくことは、青少年の育成にとっても、また、社会にとっても重要なことです。
- 県では健康でボランティア意識の高い高齢者を社会教育指導者として、生活・伝承文化、健康増進、社会奉仕活動、教養の向上・学習、生活文化・生活技術の5分野ごとに登録し、これらの指導者を通して社会教育活動の活発化を図っています。
その登録者は4年度末現在約300人です。 - また、「高齢者人材海外派遣事業」により、友好提携を結んでいる中国江蘇省へ、昭和62年度からおおむね60歳以上の退職技術者を毎年4人派遣しており、高齢者の生きがいの向上に大いに役立っています。
- さらに、高齢者が製作した作品を展示・販売する「老人作品展示即売会」が、(財)老人クラブ連合会の主催により実施されており、県ではこの開催に助成しています。
- 世代間交流という面では、子どもに高齢者へのいたわり、思いやりのこころを芽生えさせ、その情操を高めるため、児童館等を活動の拠点として、高齢者と子どもの地域ぐるみでの交流事業を実施しています。
- また、公立幼稚園・小・中学校では、地域の高齢者から生活体験や民話等を聞く会等の活動を実施しています。
課題
- 社会教育指導者の登録者数の増加を図る必要があります。
- 高齢人材海外派遣事業については、派遣希望者の有する技術と中国江蘇省側の希望技術を合致させる仕組みを考えていく必要があります。
- 高齢者と子どもとの交流の場や機会を提供していく必要があります。
2 今後の目標
- 今後、優れた知識・技能を有する高齢者がますます多くなるため、活用方法等を検討のうえ、社会教育指導者の登録者数の増加を図ります。
- 中国江蘇省への高齢技術者の派遣は、江蘇省の期待も大きく、また、派遣された技術者にも好評であるため、県民への周知の徹底を図り、関係機関との連携を進めます。
- 児童館等地域における世代間交流の場の整備を進めていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
高齢者人材活用 | 県 | 対象人員 300人 | 充実 | 地域の社会教育活動の活発化を図るため、登録者数の増加を図る |
第4章 援護を必要とする高齢者への援助
(1) 保健・医療
1 現状と課題
現状
- 援護を必要とする高齢者のなかには疾病の状態が安定しており、入院でなく家庭で療養できる高齢者も多く、こうした在宅の高齢者に対し、保健婦が保健指導等を行っています。
- 市町村では、老人保健法に基づき、40歳以上の者を対象に、訪問指導、機能訓練の「保健事業を実施しています。
老人保健事業の実施状況(平成4年度)
(資料)県衛生部調べ機能訓練 79か所 訪問指導被指導入員 18,190人
- 県では、退院後の脳卒中患者が在宅においてねたきりになることを防止するため、市町村による適切な保健・福祉サービスが受けられるような体制をつくるための脳卒中情報システムを整備するとともに、痴呆予防対策の一環として脳卒中患者登録事業を実施しています。
- 県では、ねたきり老人ゼロをめざして、「ねたきりは防止できる」ことについての普及啓発活動等を県民に対し、積極的に行うとともに、ねたきり防止のための施策を総合的かつ効果的に展開するため、平成4年度に「寝たきりゼロ推進本部」を設置し「寝たきり老人ゼロ作戦」を推進しています。
- また、在宅看護の必要性から、昭和61年度から「老人等在宅看護推進事業」を実施し、2病院でモデル事業を実施しました。
訪問看護のための人材の確保が必要であることから、その養成講習会を(社)愛知県看護協会に委託実施しています。 - こうした取組を制度化するものとして、4年4月から老人保健制度の改正により老人訪問看護制度が実施されています。
これは、新たに設置される「老人訪問看護ステーション」から在宅のねたきり老人等に医師の指示により看護婦等が訪問して看護サービスをするものです。
その費用は、老人訪問看護療養費として保険適用となります。
老人訪問看護ステーションは、地方公共団体、医療法人、社会福祉法人等が都道府県知事の指定を受け設置するものであり、4年度末現在2か所設置されています。 - また、家庭の主婦等を対象として在宅ケアに必要な看護等に関する知識、技術の習得も必要であることから、各保健所において「在宅看護教室」を開催しています。4年度においては115回、約6,900名の参加を得ています。
- 県医師会では、「在宅ケア」と「施設ケア」の両者を包含し、地域の中で高齢者等に保健・医療・福祉サービスを連続的に効果的に提供していく「地域ケア・システム」を名古屋市、一宮市、豊田市で構築しています。
- 県及び市町村では、老人保健法による医療の対象にはならない68歳及び69歳の高齢者を対象として、医療保険の自己負担額を公費で支給する事業と付添看護の慣行料金と医療保険による支給額との差額を公費で支給する事業からなる老人医療費支給制度を実施しており、全国的にトップレベルにあります。
また、老人保健法の医療及び老人医療費支給制度の対象者で、自己負担額の支払いが困難な身体的、環境的に恵まれない者に福祉給付金を支給しています。
これらの県費助成額は4年度で約67億円となっており、そのうち、付添看護料は約35億円となっています。 - 在宅のねたきり老人に対する歯科医療への要望に応えるため、全国に先がけて60年度から県歯科医師会が中心となって往診歯科診療を実施しており、県では毎年この事業に助成しています。
課題
- 保健事業は、在宅サービスの基礎であるので、その拡充(保健事業第3次8か年計画の達成)を図るとともに他の看護、介護等との連携をより強化する必要があります。
- 在宅における医療・看護制度は、福祉サービスとの連携を図りながらその拡充を図っていく必要があります。
2 今後の目標
- 保健婦の訪問指導活動については、在宅のねたきり老人に対して年12回、痴呆性老人に対しては年3回、虚弱老人に対しては年6回を目途に拡充を図っていきます。
- ねたきり老人、痴呆性老人及び虚弱老人で訪問看護サービスを希望する者に対して、週1回または2回を目途に実施できるよう努めます。
- 在宅のねたきり老人及び虚弱老人に対して、訪問口腔衛生指導及び訪問栄養指導を各年1回を目途に実施できるよう努めます。
- 老人訪問看護ステーションは、原則として市町村1か所の設置を進めます。
- 機能訓練については、40歳以上で必要な人を対象におおむね6か月程度の問において週2回を目途に実施できるよう努めます。
- 在宅医療・看護制度の拡充を図り、幅広い支援体制を確立します。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
老人訪問看護ステシーョン | 市町村・民間 | 2か所 | 全市町村に設置 | 全県域での老人訪問看護サービスの提供を推進 |
→用語解説
- 脳卒中情報システム
脳卒中などで入院した医療機関から県・保健所を通じて患者の住所地の市町村に情報を提供し、退院後に適切なサービスが円滑に受けられるようにする仕組みをいいます。 - 寝たきり老人ゼロ作戦
ねたきり老人ゼロをめざし、県、市町村及び関係団体が連携を図りながら、老人のねたきり状態を予防するための保健事業をはじめとする各種施策をより効果的・効率的に推進することを目的としています。
(2) 在宅福祉
ア 在宅三本柱の拡充
1 現状と課題
現状
- 高齢者が長年住み慣れた地域で安心して暮らせる生活をしていくために、1家庭奉仕員(ホームヘルパー)派遣事業、2短期介護(ショートステイ)事業、3デイサービス事業の在宅三本柱を中心として在宅福祉の充実に努め、成果をあげてきております。
しかしながら、厚生省の老人保健福祉マップによると、平成3年度では本県の在宅三本柱の利用状況はいずれも全国水準に比較して低い状況にあります。 - 家庭奉仕員派遣事業は、日常生活を営むのに支障のある高齢者のいる家庭に家庭奉仕員を派遣し、入浴介護、身体の清拭、洗髪などの身体の介護サービス、調理、洗濯、清掃等の家事援助サービス、及び相談等を行うものです。
- 家庭奉仕員は、4年度末現在1,673人(障害者分含む)が市町村等に配置されており、派遣世帯数は5,196世帯となっています。
4年4月の調査では、派遣回数は下の表のようになっています。
家庭奉仕員(ホームヘルパー)派遣事業(各年度末)
(資料)県民生部調べ区分 2年度
13年度
24年度
32/1 3/2 家庭奉仕員数 1,002人 1,339 1,673 1.3倍 1.2 訪問家庭数 4,018世帯 4,593 5,196 1.1 1.1
家庭奉仕員の派遣回数(平成4年4月現在)
(資料)県民生部調べ週1日 週2日 週3日 週4日 週5日以上 計 2,250
(53.1)1,481
(34.9)344
(8.1)63
(1.5)102
(2.4)4,240世帯
(100.0%) - 短期介護事業は、在宅のねたきり老人や痴呆性老人等を一時的に老人ホームに預かることにより、介護家族等の負担の軽減を図るものです。
この事業は、元年度から私的理由、社会的理由の区分がなくなり、どんな理由であれ、介護者の都合で介護できない時にお預かりする制度になりました。 - 短期介護の利用状況は、4年度末で利用延人員は7,221人で、利用延日数は57,056日となっており、3年度の1.6倍になっています。
短期介護(ショートステイ)事業(各年度末)
(資料)県民生部調べ区分 2年度
13年度
24年度
32/1 3/2 利用延日数 24,806日 36,536 57,056 1.5 1.6 利用延人員 2,897人 4,667 7,221 1.4 1.5 利用1回当たりの利用日数 8.6日 7.8 7.9 1.0 1.0 短期介護専用居室数 282床 412 496 1.5 1.2
- 短期介護事業の推進を図るため、県では国の制度に先駆け、昭和58年度から専用居室の整備に助成するとともに、県立特別養護老人ホームでも整備してきました。61年度から国が助成対象にして以来、特別養護老人ホームの新設に際しては、合わせて20床の専用居室を整備するよう指導しています。
- また、「ショートステイ利用手帳」を発行し、利用手続を簡便にし、利用手続を図るとともに、専用居室が20床未満の国庫補助対象外の施設が実施する送迎に対し助成しています。
- デイサービス事業は、在宅の虚弱老人やねたきり老人等を送迎用リフトバス等によりセンターに来所させ、または施設から居宅に訪問して、入浴、給食等の各種サービスを提供することにより、心身機能の維持を図り、介護している家族の負担の軽減を図る事業です。4年度末までに93か所設置され、このうち77か所が4年度中に運営しており、利用延人員は169,459人でしたが、これは3年度の1.3倍になります。
デイサービス事業(各年度末)
(資料)県民生部調べ区分 2年度 3年度
24年度
32/1 3/2 運営施設数 34か所 59 77 1.7 1.3 年間利用延人員 77,062人 130,320 169,459 1.7 1.3
- デイサービスセンターは、特別養護老人ホーム、老人福祉センターの新設、養護老人ホームの改築に当たっては、必ず併設するよう指導しています。
- 既存の社会福祉施設等に新たにデイサービスセンターを併設することや、利用者が主に虚弱老人である軽介護型(C型)の整備を推進しています。
また、運営形態についても過疎地・都市部等の小規模型(D型)及び痴呆性老人を対象とした痴呆型(E型)の整備の推進を図っています。 - さらに、民間業者等に委託して入浴サービスを訪問または特別養護老人ホームに移送して行う高齢者在宅福祉補助事業を実施しています。
この事業は70市町村で実施され、4年度41,206人の利用延人員となっています。この利用者も年々増加し、在宅でねたきりの高齢者や家族に大変喜ばれています。 - 「在宅介護支援センター」は、在宅のねたきり老人等の総合的な相談に応ずるとともに、保健・福祉サービスが総合的に受けられるよう市町村等関係行政機関などとの連絡調整を行うものです。4年度末で17か所が設置されています。
課題
- 在宅福祉サービスの三本柱については、国のゴールドプランを念頭に置いた市町村での計画的かつ積極的な整備が必要です。
- 在宅サービスに対する潜在化している需要を掘り起こすことも必要であり、在宅福祉事業の周知徹底とサービスの利用に対する抵抗感や偏見などといった意識を取り除いていく必要があります。
- 家族が介護しやすいような側面的支援を行政、企業等社会全体が進めていく必要があります。
2 今後の目標
- ホームヘルプサービスを必要とする要介護老人に対して週3回以上、虚弱老人に対して週1回以上派遣できるよう家庭奉仕員の大幅な増員を図っていきます。
- 短期介護を必要とする要介護老人に対して年6回以上、虚弱老人に対して年1回以上利用できるよう専用居室の整備を図っていきます。
- デイサービスを必要とする要介護老人に対して週2回以上、虚弱老人に対して週1回以上利用できるようデイサービスセンターの整備を図っていきます。
- 入浴サービスは今後ますます必要とされるので、民間事業者に委託して行う高齢者在宅福祉補助事業の充実を図っていきます。
- 在宅三本柱の利用促進を図るため、普及啓発活動を推進していきます。
- 在宅介護の拠点として、在宅介護支援センターを特別養護老人ホームや老人保健施設等に併設しながら積極的に整備していきます。
- 県民に対し、介護技術等の普及を図るための体制を強化していきます。また、介護休暇制度の普及を図っていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
家庭奉仕員派遣事業 | 市町村 | 1,606人 | 3,200人 | 要介護老人に対して週3回以上、虚弱老人に対して週1回以上派遣できるよう増員 |
短期介護専用居室 | 法人・市町村 | 496床 | 1,500床 | 要介護老人が年6回以上、虚弱老人が年1回以上利用できるよう整備 |
デイサービスセンター | 市町村 | 93か所 | 302か所 | 要介護老人か週2回以上、虚弱老人が週1回以上利用できるよう中学校区に1か所整備 |
在宅介護支援センター | 市町村 | 17か所 | 302か所 | 中学校区に1か所整備 |
介護実習・普及センター(仮称) | 県 | - | 設置 | 県民に対し、介護技術、介護機器の普及、さらには福祉に対する啓発を実施する中核組織を設置 |
→用語解説
- 老人保健福祉マッフ゜
各都道府県・指定都市の老人の保健・福祉事業の事施状況をまとめた資料で厚生省が毎年出しています。 - 送迎用リフトバス
高齢者などが車いすに乗ったままでも乗車することのできるバスで、デイサービスセンターへの送迎の際に使用します。 - ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)
21世紀の高齢社会を国民が健康で生きがいをもち、安心して過ごせる社会とするため、高齢者の保健福祉の分野における公共サービスの基盤整備を図るもので、平成2年から平成11年までのサービスの整備目標を盛り込んだ計画です。 - 介護休暇制度
介護を必要とする父母、配偶者等のいる労働者の申し出により、その労働者が介護のため一定期間休業することを認める制度で、介護に関する企業内福祉制度の一つです。
イ その他のサービスの充実
1 現状と課題
現状
- 在宅三本柱のほか、日常生活用具の給付、給食サービスなど基礎的サービスの充実も不可欠です。
- ねたきり老人やひとり暮らし老人に対して日常生活の便宜を図るため特殊寝台等の日常生活用具を給付または貸与していますが、平成4年度の給付件数等は3,100件でした。
使用頻度の多いものは、特殊寝台994台、車いす739台、緊急通報装置666台となっています。
また、種目は必要に応じて追加し、4年度には移動用リフトを対象にし、15種目となっています。 - 日常生活での基礎的な福祉サービスについては、地域的な不均衡が生じないよう県下全域で実施される必要があります。
このため、県では給食サービス事業、寝具・洗濯乾燥サービス事業、緊急通報システム整備事業について市町村に助成しています。
高齢者在宅福祉補助事業実施状況
(資料)県民生部調べ区分 4年度 給食サービス事業 17市町村 寝具・洗濯乾燥サービス事業 43市町村 緊急通報用機器設置台数 238台(累計2,129)
- また、市町村が地域の特色を生かし、その実情に応じた事業を選択実施できる「社会福祉総合助成事業」いわゆるメニュー事業も実施しています。
事業内容としては、家庭訪問員設置、インターホン設置、福祉電話・ファックス等運営の助成、ねたきり老人等理髪などです。 - さらに、在宅のねたきり老人に対しては、昭和48年度から「在宅ねたきり老人手当」を支給し、高齢者本人への慰労、激励とともに、介護する家族への経済的負担の軽減を図ってきました。
また、4年度からは痴呆性老人も支給対象とし、「在宅ねたきり老人等福祉手当」としてその充実を図りました。
4年度の支給者は、月平均約13,200人です。
こうした手当は、22都道府県で実施されていますが、1痴呆性老人を対象にしていること、2支給対象を3か月以上のねたきリまたは痴呆の状態にある者としていること、3全額県費により年82,800円(4年度)を支給していることなどを勘案すると、全国でもトップレベルとなっています。
在宅ねたきり老人等福祉手当の支給状況(平成4年度)
(資料〕県民生部調べ月平均受給者数 支給延人員 手当年額 支給総額 13,216人 158,597人 82,800円 1,094百万円
課題
- 日常生活用具の給付など基礎的サービスが重要になってくるので、全市町村で実施されるよう制度の普及を図っていく必要があります。
- 特別養護老人ホーム等の入所者には1人月平均約20万円余の経費がかかっていることを考えると、在宅対策の充実のため手当額のアップを図っていく必要があります。
2 今後の目標
- 日常生活用具の給付については、在宅介護を補完するうえで重要な事業であり、種目の増設、基準額の増額などその充実と合わせて全市町村で実施するよう普及啓発を図ります。
- 給食、洗濯等日常生活サービスなど基礎的なサービスについては、地域的な不均衡が生じないよう制度の普及啓発を行っていくとともに、その質の充実を図ります。
- 在宅ねたきり老人等福祉手当については、在宅福祉と施設福祉とのバランス、年金制度の成熟度あるいは在宅福祉サービスの充実の度合いなど総合的に勘案しながら充実に努めていきます。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
日常生活用具給付等 | 市町村 | 15種目 | 種目の増設 全市町村での実施 |
ねたきり老人等の利用ニーズに対応し、全県域での実施を図る |
在宅ねたきり老人等福祉手当 | 県 | 年額 82,800円 | 充実 | 経済的負担等の軽減を図るための手当を増額 |
→用語解説
- 特殊寝台
ねたきりの老人等が自立した生活ができるように、また、介護者が世話しやすいように背中の部分を上げたり、ベッドの高さを手軽に変えられるように工夫されたベッドです。 - 緊急通報装置
ひとり暮らし老人等が常時身につけているペンダントが発信器となっており、緊急時にボタンを押すことによって消防署等に連絡が行くよなっている装置をいいます。 - 移動用リフト
福祉機器の一種で身体の不自由な人の移乗動作を補助するための機械です。 - 福祉電話・ファックス
難聴者、ひとり暮らし老人または、外出困難な人であって、コミュニケーション、緊急連絡等の手段として必要が認められた人に貸与する電話・ファックスをいいます。
(3)施設福祉
ア 整備
1 現状と課題
現状
- 長年住み慣れた住居で生活したくても、本人及び家族の事情により、在宅では生活できない場合には、入所施設が必要になってきます。
- こうしたことから、軽費老人ホーム、ケアハウス、養護老人ホーム、特別養護老人ホームなどの施設は、介護を必要とする高齢者が増加する中で人所者の「生活の場」として重要な役割を果たしています。
- とくに、特別養護老人ホームは、65歳以上で、身体上または精神上著しい障害があるため常時の介護を必要とし、居宅において適切な介護を受けることが困難な高齢者が入所する施設ですが、これからますますそのニーズが増大してくることから積極的な整備の推進を図っています。
- 特別養護老人ホームは、高齢者のニーズを考慮しながら整備を進め、平成4年度末現在、48か所、定員4,280人となっています。
しかしながら、厚生省の老人保健福祉マップによる定員率(定員÷65歳以上人口)をみると、3年度では本県は全国水準よりかなり低い状況にあります。 - 県では、社会福祉法人が特別養護老人ホームを整備する場合、3/4の国・県費助成のほか、残りの法人負担分1/4に対し3/4の県費助成を行っており、法定分を合わせると15/16という高率の助成を行っています。
これは、全国にも例のない制度です。 - 特別養護老人ホームは、入所施設としてだけでなく、そこで蓄積された高度の専門的技術と知識を地域の在宅福祉サービスに活用することが重要であり、開かれた施設としての整備が進められています。
そのため特別養護老人ホームを整備する場合、入所定員の4割を痴呆性老人の入所のために確保するとともに短期介護専用居室を20床設置するよう指導しています。また、デイサービスセンター、在宅介護支援センターの併設についても指導しています。 - 県立の特別養護老人ホームは、昭和39年に東郷寮を整備して以来、40年代を中心に11か所を整備してきました。また、高齢化率の特に高い三河山間地域における基輊的な施設の必要性を踏まえ、「やまゆり荘」を建設し、5年5月から開所いたしました。
県立施設の設置数は12施設で全国一となっています。しかし、その多くで老朽化が進み、また、現在要請されている機能を付与する必要があるため、まず、東郷寮を改築しました。 - 養護老人ホームは、65歳以上で、身体上もしくは精神上または環境上の理由及び経済的な理由により居宅での生活が困難な高齢者が入所する施設ですが、入所者の生活の向上のため、改築に合わせて大部屋解消の整備を図るよう指導しています。
- ケアハウスや過疎地等の高齢者を対象とした高齢者生活福祉センターなど新しい施設の整備も図っています。
福祉施設整備の状況(平成4年度末現在)
(資料)県民生部調べ区分 か所数 定員 区分 か所数 定員 特別養護老人ホーム 48 人
4,280短期介護専用居室 46 人 496 養護老人ホーム 25 1,410 デイサービスセンター 93 - 軽費老人ホーム 5 340 在宅介護支援センター 17 - ケアハウス 4 190 老人福祉センター 73 - 高齢者生活福祖センター 4 35 老人憩の家 234 -
- 老人保健施設は、医療ケアと日常生活サービスを合わせて提供し、高齢者の家庭復帰をめざすための施設ですが、4年度末現在、16施設、定員1,818人となっており、定員数からみて全国的に高水準にあります。
- また、最近では福祉の拠点整備、施設間の連携強化を図るため、福祉村構想を策定している市町村が見受けられます。
福祉村構想を策定している市町村の状況
(資料)県民生部調べ市名 豊川市 春日井市 小牧市 東海市 豊田市 名称 豊川市福祉村(仮称) 春日井市福祉の里 小牧市福祉の郷 東海市しあわせ村 豊田型シニアハウス 事業の概要 195,570平方メートル 101,000平方メートル - - 約10,000平方メートル 計画年度 平成4~11年度 平成4~6年度(1期) - - 平成4~7年度 計画施設 ・養護老人ホーム
・ふれあいセンター・生きがい農園
・多目的市民広場
・心身障害者職場訓練所
・心身障害児簡易通園施設
・精神薄弱者更生施設
・特別養護老人ホーム
・老人保健施設、リハビリセンター・春日井市福祉の里センター(老人福祉センター、生きがい活動推進施設)
・メモリアルパーク
・ふる里歴史公演
・水辺広場など・特別養護老人ホーム
・養護老人ホーム
・ケアハウス
・老人保健施設
・有料老人ホーム
・精神薄弱者更生施設
・デイサービスセンター
・高齢者生きがい活動センター・保健福祉センター
・健康ふれあい交流舘
(検討中)・有料老人ホーム
・疾病予防運動センター
・在宅介護サービスセンター
・高齢者総合福祉センター
(民間事業者により検討中)
課題
- 高齢化の進行により施設に対するニーズも増大してくると見込まれるので、引き続き施設整備を推進していく必要があります。
- とくに、特別養護老人ホームは、痴呆性老人のための施設整備も含め入所者の生活の場として機能の充実に努め、地域の配置に考慮して計画的な整備を図っていく必要があります。
- ケアハウスについては、市町村の在宅福祉サービスあるいは住宅対策との連携を図りながらその整備を進めていく必要があります。
- 施設の整備に当たっては、公共用地の確保が難しい都市部での土地の高度利用あるいは既存の社会資源の有効活用といった面から、施設の用途変更による福祉施設としての活用を進めていく必要があります。また、高齢者と子どもとの交流といったことからも、学校施設などとの併設や一体的な建設を考えていくことも必要です。
2 今後の目標
- 特別養護老人ホームは、65歳以上人口の1%強の定員を確保するよう地域の配置等を考慮しながら整備を推進します。
- 特別養護老人ホームの整備に当たっては、今後増加が予想される痴呆性老人のための対策として、将来の定員枠を4割から5割に上げることを検討します。
また、整備に当たっては、ショートステイ専用居室、デイサービスセンター、在宅介護支援センターの併設を指導していきます。 - ケアハウスは、需要が小さいため、市町村の在宅福祉サービスあるいは住宅対策を考慮しながらより長期的に65歳以上人口の0.5%程度を目安に整備を進めていきます。
- 高齢者生活福祉センターは、該当町村の在宅福祉サービスあるいは住宅対策の状況を踏まえ、必要に応じ整備を図っていきます。
- 県立の老人福祉関係施設は、必要に応じて在宅福祉機能の強化を図る形で計画的に改築を進めていきます。
- 養護老人ホームは、改築に合わせ大部屋の解消を図っていくとともに、必要に応じてデイサービスなどの在宅福祉機能を付与していきます。
- 老人保健施設は、地域の配置等を考慮しながら65歳以上人口の1%強の定員を確保するよう整備を推進します。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
特別養護老人ホーム | 法人・市町村等 | 4,280人 | 7,000人 | 65歳以上人口の1%強の定員を確保 |
ケアハウス | 法人・市町村等 | 190人 | 3,300人 | 65歳以上人口の0.5%程度を目安に整備 |
高齢者生活福祉センター | 法人・市町村等 | 4か所 | 11か所 | 過疎地域等該当町村に設置 |
老人保健施設 | 法人・市町村等 | 16施設 定員 1,818人 |
7,000人 | 65歳以上人口の1%強の定員を確保 |
イ 施設運営・機能の充実
1 現状と課題
現状
- 特別養護老人ホームは、昭和58年の老人福祉法の一部改正により「収容」の施設から「入所」の施設に変更され、入所者の処遇向上が大きく考えられるようになりました。このため、処遇をはじめとしていくつかの施設運営指針が全国社会福祉協議会から出されており、これらを基本としながら、入所者の生活の質の向上を考えた施設運営が行われています。
- また、最近では、ねたきりにさせないことをめざして、離床の促進を図っており、処遇上での一般的なリハビリはもちろんのこと、とくに、県では理学療法士または作業療法士の派遣による専門的リハビリテーションができるように助成を行っています。
平成4年度では、21の特別養護老人ホームで実施されています。 - 特別養護老人ホームや養護老人ホームに入所している高齢者のうち無収入の人に「老人ホーム入所者補給金」制度によって、月額7,500円を支給しています。また、軽費老人ホームの入所者で経済的困窮者にはその利用料の一部を助成しています。
- 施設職員の処遇改善は入所者にとっても重要ですが、県では、民間社会福祉施設運営助成事業により、種々の助成を行っています。
主なものは、民間施設職員に県職員並みの給与支給を行うために、措置費事務費(人件費)との差額分の援助と直接処遇職員の1名の配置強化のための助成です。この金額は施設数の増加、職員の高年齢化とともに年々増大の傾向にあり、4年度では約16億円にのぼっています。施設整備への助成と合わせ、これだけ手厚い制度は全国でもトップレベルの水準といえます。 - また、重度痴呆性老人の介護体制の充実を図るために国の助成制度のほかに、さらに、県では10人以上の重度痴呆性老人が入所している施設に対して職員の配置強化のための助成を行っています。
- 特別養護老人ホームは、施設の持つ高い専門技術や高度な設備を生かして在宅の援護を必要とする高齢者への支援をしていくことが必要です。
このため、デイサービスセンターや短期介護専用居室あるいは在宅介護支援センターの併設を進めているところですが、さらに痴呆性老人やねたきり老人を3週間程度預かり、その間に寮母等の観察判定に基づき介護方法等を家族に指導する「在宅介護援助事業」も実施しています。 - また、県立の特別養護老人ホーム大府寮においては、電話相談による介護110番を行っていますが、他の特別養護老人ホームにも地域の相談拠点でもある在宅介護支援センターの設置が進められています。
- このほか、各入所施設は、専門的な痴呆性老人介護研修を行ったり、また、社会福祉士、介護福祉士、家庭奉仕員の養成等における実習の場として大きな役割を果たしています。
- さらに、施設の特殊浴槽を利用し、在宅のねたきり老人等の入浴サービスを各施設で実施しています。
- 最近では、MRSA等の感染症の問題が改めて見直されており、施設長、担当者等を対象とした研修を実施しています。
課題
- 施設の運営に当たっては、高齢者の生活の場として、入所者の人格を重視し、入所者が心豊かに暮らしていけるような処遇の向上を図っていくことが必要です。
とくに、特別養護老人ホーム等では、ねたきりにさせないため、食事、入浴、排便などの基本動作を、できるだけ本人が行えるようにする処遇が大切です。 - 地域に開かれた施設として機能の拡充を図っていく必要があります。
2 今後の目標
- 入所施設は、高齢者の生活の場という観点から心豊かな生活を送るための質の向上をめざし、民間社会福祉施設運営助成事業を充実するなどして処遇の向上を図ります。とくに、特別養護老人ホーム等においては、サービスを評価したうえで、水準の向上を図っていきます。
- 特別養護老人ホームでの基本的処遇の徹底とリハビリテーション機能を充実し、入所者離床推進事業の拡充を図っていきます。
- 施設の持っている高度な技術や設備を生かした在宅介護のための支援策を引き続き実施していきます。
- MRSAなどの感染症に対し、自動手指消毒器の設置を促進するとともに研修等の充実を図ります。
3 主要施策・事業
施策 | 実施主体 | 目標水準 | 事業内容 | |
---|---|---|---|---|
平成4年度 | 平成12年度 | |||
特別養護老人ホーム入所者離床推進事業 | 県 | 21施設 | 全施設 | 県下のすべての特別養護老人ホーム(名古屋市を除く)において、各種のリハビリを実施し入所者のねたきり防止を図る |
→用語解説
- 措置費
法律に基づいて市町村がとる福祉の措置に必要な経費をいいます。措置費は、事務費(施設運営のための職員の人件費及び施設管理費)と事業費(入所者の生活費)からなっています。 - 社会福祉士
社会福祉士登録簿に登録することによって資格を得る福祉専門職をいいます。身体上、精神上の障害等により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行います。 - 介護福祉士
介護福祉士登録簿に登録することによって資格を得る福祉専門職をいいます。身体上、精神上の障害等により日常生活を営むのに支障がある者の入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、その者及びその介護者に対して指導を行います。 - 理学療法士
厚生大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示のもとに、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることを業とする人をいいます。 - 作業療法士
厚生大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示のもとに、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることを業とする人をいいます。 - MRSA
「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」の略です。多くの種類の抗生物質はMRSAに対して無効であるため、病弱者、手術後患者、乳幼児、老人など抵抗力の弱い人が感染すると、難治化・重症化する事があります。MRSAによる院内及び施設内感染例の増加は、近年社会的な問題となっています。
主題:
あいち8か年福祉戦略 No.2 43頁~74頁
-愛フルプラン-
発行者:
愛知県民生部社会課
発行年月:
1994年7月
文献に関する問い合わせ先:
名古屋市中区三の丸3-1-2
TEL 052-961-2111