音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

障害者対策の今後の方向-第二次長期行動計画-〔改訂版〕

平成10年3月

三重県

第2節 保健・医療

『基本的な考え方』

 人が家庭や社会において自立した生活を送るためには、心身の健康が保たれていることが大切です。
 そのためには、障害の発生を防止するとともに、これらを早期に発見し早期に適切な療育・治療・訓練を行う必要があります。保健・医療は、そのために極めて大きな役割を担っています。
 特に高齢者の増加とともに、脳卒中をはじめとする生活習慣病の患者数が増えてきており、保健・医療対策はますます重要となっています。また、医学が進歩した今もなお原因不明、治療方法が確立されていない難病患者への対策も重要です。
 障害の発生から予防そして障害の程度の軽減・機能維持のための取り組みを実施するため、この節では次の事項を重点目標とします。

1 障害の発生予防対策の充実

2 早期発見・早期療育体制の推進

3 保健・医療の充実


1 障害の発生予防対策の充実


『現状と課題』

 障害の発生は、先天的なものと、交通事故・労働災害や生活習慣病の疾病による後遺症など後天的なものとがあり、障害の発生予防は、先天的・後天的の両面から幅広く取り組んで行かなければなりません。
 先天性障害の発生予防には、母子保健に関する知識の普及、啓発、指導が重要であり、母子保健対策を充実し、健康な子を生み育てて行くための施策の充実を図る必要があります。また、後天性障害の発生予防は、事故の発生防止あるいは生活習慣病をはじめとする後天性疾患の発病予防とその後遺症による障害の程度軽減のための施策の充実を図る必要があります。
 生活習慣病は、個人の長期間に及ぶ日常生活習慣が大きく関与しており、健全な生活習慣を確立することにより、これらの疾患の発生を予防していくことは十分可能です。
 そのためには、県民の一人ひとりが「自分の健康は自分で守る。」という自覚を持ち自らが健康管理に積極的に取り組み、健康的な生活スタイルを確立していく必要があります。
 また、寝たきりについては、「寝たきりは予防できる。」という意識を高揚し、寝たきりを防止するための正しい理解や知識を普及するとともに、寝たきりの大きな原因となる脳卒中や骨粗しょう症の対策を講じていく必要があります。
 さらに、中途失明の主な原因となる糖尿病対策も推進しなければなりません。
 また、生活環境の複雑多様化や高齢化社会の進む中で、精神保健に対する考え方も大きく変化しており、職場のストレス問題やアルコール関連問題、登校拒否等の児童思春期精神保健など「心の健康」対策や老人性痴呆疾患対策等、精神保健対策はこれまで以上に幅広く、ライフサイクルを通じた適切な施策の展開が求められています。
 いずれにしても、障害の発生予防対策は、母子保健、生活習慣病予防、交通事故、労働災害など発生原因の実態に即した総合的かつ一貫性のある対策の確立が必要です。


『施策』

① 健康増進対策の推進

  • 県民一人ひとりが生涯を通じた健康的なライフスタイルを確立するよう、各種の広報媒体を活用し、健康づくりの啓発活動に努めます。
  • 食生活を通じた健康づくりを進めるために、食生活改善推進員の養成と活動の強化に努めます。
  • 県民の健康づくりを推進し、地域に密着した保健サービスの提供及び地域住民の自主的な保健活動の場の拠点として、市町村保健センターの整備の促進を図ります。

② 母子保健対策の推進

  • 安心して子どもを生み育てることのできる、周産期医療体制のシステムづくりを推進します。
  • 妊婦及び乳児の健康診査、3歳児健康診査等が市町村で一元的に実施されることから、保健所においては長期に療養を必要とする児に対して、保健婦等による訪問指導や関係機関との調整を行い、在宅における病児及び家族の生活の質(QOL)の向上に努めます。
  • 養育医療、育成医療、小児慢性特定疾患治療研究事業等により、病児に対して適切な医療の確保を行い、健全な育成を支援するとともに、保護者の医療費の負担軽減を図ります。

③ 成人・高齢者保健対策の推進

  • 壮年期からの健康づくりと生活習慣病の予防・早期発見のため、老人保健法により総合的な保健事業を推進し、県民の老後における健康の保持に努めます。
  •  この保健事業として、寝たきり、骨粗しょう症、糖尿病等を予防するための健康教育や糖尿病に関する健康相談、生活習慣病の予防と早期発見のための健康診査や生活習慣改善指導、寝たきり者に対する訪問指導、心身の機能が低下している者に対しては機能訓練を行い、その発生と予防、さらには心身機能の維持回復に努めます。
  • 高齢者保健福祉計画に基づき、高齢者に対する保健福祉サービスの計画的・一体的な提供を推進します。
  • 寝たきりについては、「寝たきりは予防できる。」という意識の高揚を図り、「寝たきり予防10か条」を普及するため、ポスター・リーフレット等による啓発活動を行い、寝たきり高齢者ゼロを目指して運動を展開していきます。
  • 脳卒中患者等が家庭に帰った場合に、医療機関から保健所を通じて市町村に情報を提供する脳卒中情報システムを充実し、保健・医療・福祉の連携のもとに、円滑な保健サービス・福祉サービスを提供することにより、寝たきりの防止を推進します。

④ 精神保健福祉対策の推進

  • ライフサイクルに応じた精神保健福祉ニーズに対応するため、保健・福祉と医療が一体となった取り組みを進めます。
  • 地域精神保健福祉は、保健所で精神保健福祉相談員を中心に各種の相談援助、訪問指導を行い、保健所で対応困難な専門的な事例は三重県こころの健康センターで行うなど充実を図り、精神保健福祉に関する知識の普及啓発を促進します。
  • 回復途上にある精神障害者の社会適応と社会復帰を促進するため、精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション事業)等の充実を図るとともに、精神障害者社会復帰施設の設置を促進します。
  • 精神障害者保健福祉手帳制度を周知し、手帳の取得を促進します。
  • 老人性痴呆疾患患者等の保健医療、福祉サービスの向上を図るため、保健医療、福祉機関と連携を図りながら、老人性痴呆疾患患者の専門医療相談、鑑別診断・治療方針選定、救急対応を行うとともに、地域保健医療、福祉関係者に技術援助等を行う老人性痴呆疾患センターの設置(指定)を推進します。

⑤事故防止対策の推進

  • 交通マナーと交通安全意識の定着を図るため、関係機関・関係団体と連携を深め、幼児から高齢者に至る体系的な交通安全教育を推進します。
  • 安全で快適な交通道路環境の整備を図るため、交通安全施設、交通管制システム等の充実に努めます。
  • 県民の交通事故防止と交通安全確保のため、交通安全施設等整備事業に関する七ヵ年計画(平成8年度~平成14年度)及び実施計画に基づき、関係機関・関係団体との相互の連携を図りながら、総合的かつ計画的に交通安全施設の整備改善、交通指導取締り、交通安全思想普及徹底を図ります。
  • 労働基準局、関係団体等との連携を密にしながら、作業現場における安全管理体制の充実、機械設備の安全確保及び安全教育の計画的な推進を図ります。


2 早期発見・早期療育体制の推進


『現状と課題』

 乳幼児の身体発育及び精神発達の異常の発見と指導のため、乳幼児健康診査・新生児や未熟児の訪問指導等を実施していますが、これらの母子保健対策が障害の早期発見に果たす役割は大きいものがあります。
 障害の発生予防に加え、早期発見、早期療育体制の整備は欠かせません。
 障害の多くは、乳幼児期にその発見が可能であることから、早期に異常を発見し適切な治療あるいは療育を行うことにより、障害の発生防止・軽減、健全な育成を促すことが必要です。
 また、早期療育を効果的に行うため、障害児が発見された場合、保健所、児童相談所、市町村、関係医療機関及び障害児施設等との連携のもとに、一貫した体制づくりをすることが必要です。


『施策』

① 健康診査体制の推進

  • 新生児を対象にフェニールケトン尿症等の先天性代謝異常及び先天性甲状腺機能低下症の検査を実施し、異常の早期発見、早期治療による障害の発生防止に努めます。
  • 障害を早期に発見し、早期治療、早期療育を行うため、関係諸機関の連携を密にし継続的な指導体制を強化します。
  • 常時車いすを使用している在宅の障害者を対象に、二次障害を防止するため市町村に対し健康診査事業の実施を指導します。

② 早期療育の充実

  • 児童相談所が持つ専門的機能を生かした各種事業の充実を図ります。
  • 乳幼児健康診査等により発見された障害児に適切な治療、療育を行うため、児童相談所、保健所及び関係医療機関等との連携の強化を図ります。
  • 未熟児の退院後の養育指導を行うため家庭訪間を実施します。
  • 身体障害児や身体の機能障害を招来するおそれのある児童に対し早期に適切な治療上の指導を行い、障害の治療若しくは軽減を図るよう、乳幼児発達相談等実施保健所において療育指導の実施・強化を図ります。
  • 在宅の障害児が身近な施設に通うことが可能となるよう、各障害保健福祉圏で通園事業を進めます。整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 〔平成14年度〕 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕
○障害児通園(デイサービス)事業 8か所 10か所 16か所
○重症心身障害児(者)通園事業 0か所 5か所 9か所


3 保健・医療の充実


『現状と課題』

 高齢化の進展に伴う疾病構造の変化などにより、病気や障害を持つ中高年や要介護高齢者・痴呆性高齢者が増加しており、また、生活様式の変化や医学技術の進歩などにより、県民の医療に対するニーズはますます高度化しています。
 また、看護婦(士)、理学療法士、作業療法士をはじめとする医療従事者は全県的に不足傾向にあるため、必要数の確保を図るとともに、高度化、専門化する医療に対応するため、資質の向上を図る必要があります。
 障害児(者)に対する歯科医療については、専門的技術、知識を要すること等から、歯科治療の機会が限られていると言えます。このため、口腔保健センターにおいて障害児(者)歯科治療を実施するなど、歯科治療の確保に努めていますが、それた加え、治療に至る前の歯科疾患の予防、口腔機能の保持増進等、より一層の歯科保健医療体制の確保・充実を図る必要があります。
 さらに、人口の高齢化や社会環境の変化に伴い、循環器系疾患、脳血管性疾患や交通災害等の後遺症、精神障害者に対するリハビリテーションの需要が増大しており、治療時における早期リハビリテーション、治療後の後遺症に対するリハビリテーション等を提供できる体制の整備が課題となっています。
 特定疾患及び小児慢性特定疾患については、対象疾患の拡大、治療研究の推進が図られていますが、一層の充実を図っていく必要があります。また、長期療養を必要とするうえ、介護等家族の負担も大きいことから、医療相談、訪問診療等在宅ケア支援体制の整備・充実を図っていく必要があります。
 精神障害者の保健・福祉・医療体制については、「入院中心の治療体制から地域におけるケア体制へ」という流れの中で、精神科デイケア事業等のリハビリテーション医療の充実や老人性痴呆疾患センターの充実、精神科救急医療体制の整備、社会復帰施設の設置促進を図っていく必要があります。
 障害の程度を軽減し、また、心身の機能を維持していくためには、リハビリテーションの充実が重要であり、理学療法士、作業療法士等の専門職員の確保を図るとともに、治療的及び維持的リハビリテーションを総括した総合的なリハビリテーション対策を講ずる必要があります。
 また、寝たきりゼロを目指して、寝たきりの原因の多くを占める脳卒中後遺症患者に対するリハビリテーションを充実する必要があります。
 さらに、寝たきり高齢者に対する在宅ケアを推進する必要性が高くなってきています。


『施策』

① リハビリテーション機能の充実

  • 就労の機会を得ることが困難な在宅重度障害者が通所により創作活動や機能訓練、社会適応訓練を行い、自立と生きがいを高める日帰り介護・活動(デイサービス)事業の充実を図ります。
  • 老人保健施設の計画的な整備を促進するとともに、適正な配置に留意します。
  • 脳卒中患者が退院後に、医療機関から保健所を通じて市町村に情報を提供する脳卒中情報システムを充実し、老人保健法による機能訓練を充実し地域におけるリハビリテーションの一層の推進を図ります。
  • 医学的リハビリテーション機能の整備、充実を促進するとともに、理学療法士、作業療法士等養成校の新設支援、修学資金の貸与などにより、専門職員の確保に努めます。
  • 精神障害者の社会復帰を促進するため、三重県こころの健康センター、保健所における社会復帰相談指導事業の充実を図るとともに、生活訓練施設(援護寮)、福祉ホーム、授産施設等の社会復帰施設の設置の促進を図ります。
  • 精神障害者の社会復帰を促進するため、精神科デイケア施設の整備、精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション事業)の充実を図ります。整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 〔平成14年度〕
○精神科デイケア施設 9か所 18か所
○精神障害者社会適応訓練事業
(通院患者リハビリテーション事業)
45か所 90か所

② 医療体制の整備

  • 県民一人ひとりがそれぞれの地域で、健康増進から疾病の予防、治療、リハビリテーションに至る一貫した保健医療サービスが受けられるよう、医療機関相互の機能分担と連携の強化など、医療資源の効率的な活用に配慮しながら、二次保健医療圏ごとに策定した地域保健医療計画の推進を図るとともに、適正な医療提供体制の整備を進めます。
  • 初期救急医療を担当する休日夜間急患センターの診療体制や在宅当番医制、第二次救急医療を担当する病院群輪番制病院などの充実に努めます。
  • 県立総合医療センター及び山田赤十字病院に併設されている救命救急センターの機能強化を促進し、重篤救急患者に対する第三次救急医療体制の充実を図ります。
  • 救急医療体制の効率的な運用を図るため、広域災害・救急医療情報システムの充実を図ります。
  • 県立病院は、現在、地域における基幹、中核病院として、一般診療のほか、民間病院では困難な高度、特殊、不採算、救命救急医療などを担っています。そのあり方については、今後とも検討を続け、患者の立場に立った効率的な医療サービスの提供に努めます。
  • 障害児(者)に対する歯科疾患予防、口腔機能の保持増進から総合的な健康づくりを図るため、障害児対象の歯科保健教室を実施するなど、その必要性の普及・啓発を進めるとともに、三重県歯科医師会に委託実施している口腔保健センター障害者歯科診療事業を継続していきます。
  • 視力障害、腎不全で悩む人達が一人でも多く移植手術が受けられるよう、提供登録者の拡大等、(財)三重県角膜・腎臓バンク協会の充実のための支援を行っていきます。
  • 老人性痴呆疾患センターの指定や老人性痴呆疾患治療(療養)病棟の整備等老人性精神疾患に対する医療体制の整備、精神科救急医療体制の整備を図ります。
  • 老人保健法による訪問指導の中で、在宅寝たきり高齢者に対する口腔衛生指導を実施します。

③ 在宅看護体制の充実

  • (老人)訪問看護ステーションによる、在宅の寝たきり高齢者に対する在宅看護サービスを促進します、
  • 難病患者の在宅療養を支援するため、疾病や日常生活にかかる医療相談、訪問診療、患者・家族教室、家庭訪問等の充実を図ります。
  • 保健所を核として難病患者の地域ケアシステムを構築し、地域の受け皿を拡充するよう努めます。

④ 医療費助成制度の充実

  • 更生医療等の各種医療給付制度の充実について、引き続き国に要望していきます。
  • 更生医療指定医療機関の充実・整備に努めます。
  • 身体の機能に障害のある児童のうち、確実な治療が期待できる児童に対し必要な治療を受けるための医療費助成の充実を図ります。
  • 発病原因が不明で治療法が確立されていない難病(特定疾患)については、長期療養を必要とするうえ、医療費も高額となるため、医療費助成の充実を図ります。
  • 小児慢性特定疾患は療養が長期にわたるうえ、医療費も高額となるため、医療費助成の充実を図ります。
  • 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく措置入院及び緊急措置入院患者については、その医療費(保険者負担分を除く。)を公費負担します、
  • 精神障害者の通院医療の適正な普及を図り、社会復帰を促進する観点から、申請に基づいて、通院医療費の95%(保険者負担分を除く。)を公費負担します。
  • 重度心身障害者に対する医療費を軽減するために実施している県単独医療費助成制度については、他の医療費公費負担制度との整合を図りつつ、引き続き実施に努めます。

主題:
障害者対策の今後の方向
-第二次長期行動計画-
  〔改訂版〕

発行者:
三重県

発行年月:
1998(平成10)年3月

文献に関する問い合わせ先:
三重県津市広明町13番地
三重県健康福祉部障害福祉課