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障害者対策の今後の方向-第二次長期行動計画-〔改訂版〕

平成10年3月

三重県

第3節 教育・育成

『基本的な考え方』


 障害児(者)の社会参加や自立を目指す教育を進めるためには、その障害の内容・程度に応じた適切な教育が、成長のあらゆる段階において受けられるような環境整備が必要です。そのためには、障害児(者)の障害の状況・特性等を十分考慮し、その可能性を十分伸ばせるような教育の場が準備されることが重要です。
 一方、障害のある者もない者も共に社会を構成する一員であり、互いに手を携えてより豊かな社会づくりを行う仲間であるという認識を深めていくことも大切で、そのためには学校と地域との連携強化を進めていく必要があります。
 この節では次の事項を重点目標にします。

1 早期教育の充実

2 障害児教育の質的充実


1 早期教育の充実


『現状と課題』

 障害を早期に発見し、早期から治療・訓練・教育を行うことは、障害を改善し望ましい発達を図るうえで重要です。
 現在、心身に障害のある幼児の養育・教育は、保育所、幼稚園及び聾学校の幼稚部と乳幼児教室を中心に行われています。また、障害のある児童の教育相談は、盲学校、聾学校、養護学校、総合教育センター、児童相談所等で行っています。
 しかし、学齢前(3、4、5歳)の幼児で、障害児保育を必要とする幼児の障害の程度や指導状況については実態把握が困難な面があります。また、心身に障害のある幼児の保護者及びその家庭においては、幼児の実態及びその保育のあり方について様々な思いがあり、十分な話し合いを持つ必要もあります。そして、それに応える教育諸条件の整備を図らなければなりません。


『施策』

① 早期教育体制の整備

  • 盲、聾、養護学校において、早期からの教育相談に応じられるよう、定期的な教育相談事業の充実を図るとともに、保健所、幼稚園、保育所等との連携を密にして、早期教育を総合的に推進します。
  • 聾学校幼稚部における指導を充実させ、早期からの言語環境の整備を図ります。
  • 幼稚部に在籍する幼児に対して、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるための交流教育の充実を図ります。

② 就学指導の充実

  • 県障害児就学指導委員会を開催し、県内の障害児教育の現状や市町村障害児就学指導委員会から通知を受けた事例等を検討し、盲、聾、養護学校への適正就学を図ります。
  • 市町村障害児就学指導委員会連絡会議を開催し、各市町村における就学指導の実情交換、問題点等の検討を行い、適正な就学指導がなされるよう努めます。
  • 障害児巡回教育相談及び啓発活動を実施し、保護者を対象に早期からの就学相談の取り組みに努めます。


2 障害児教育の質的充実


『現状と課題』

 盲・聾・養護学校に就学する児童生徒の障害は、重度・重複化の傾向にあり、一人ひとりに応じた指導や配慮が一層必要になってきています。
 このことから、一人ひとりに応じた教育課程を弾力的に編成するとともに、指導方法の改善、教材教具の工夫をする必要があります。
 高等部については、職業教育、進路指導の充実等、多様化する生徒の実態に応じた施設・設備の充実と指導内容・方法の工夫が必要です。
 軽度の障害児の教育は、これまでの障害児学級における教育に加え通級による指導を実施しています。通級による指導とは、小・中学校の通常の学級に在籍する心身に軽度な障害のある児童・生徒に対して、各教科等の指導は通常の学級で行いつつ、心身の障害に応じた特別の指導(養護・訓練等)を特別の指導の場で行うことを言いますが、障害児学級が比較的固定的な障害児教育の形態であるのに比べ、柔軟な教育の形態であると言うことができます。
 このように、児童・生徒の障害に応じた適切な教育の機会と場を用意することが大切であり、一人ひとりの特性に応じた教育を進めることが必要です。


『施策』

① 盲・聾・養護学校の条件整備

  • 障害のある生徒の後期中等教育のニーズが高いことから、県内の盲・聾・養護学校の配置状況、児童生徒数等を踏まえ、盲・聾・養護学校の教育環境の整備を推進します。
  • 盲・養護学校に就学する児童・生徒に対して通学上の便宜を図るため、今後ともスクールバスの配置等について検討を進めます。
  • 時代の要請に応じた教育用コンピュータの整備及び教育施設等の充実を図ります。

② 教育内容の充実

  • 障害の重度・重複化・多様化に対応した専門的指導の充実に努め、一人ひとりの児童・生徒が可能な限り社会参加・自立ができるよう、早期教育、交流教育、体験学習及び進路指導などきめ細かな教育を進めます。
  • 教材教具の工夫・開発等を進め、児童・生徒の発達段階に即した指導の充実に努めます。
  • 障害児教育に関する情報の収集や新しい指導方法の研究など、外部の関係機関との連携を深め、一人ひとりの児童・生徒に適した指導に努めます。
  • 効果的な教育活動を推進するため、県総合教育センターにおける教員の研修内容の充実を図ります。

③ 障害児学級及び通級による指導の整備・充実

  • 児童・生徒の障害の状態及び能力・適性等に応じて障害児学級の適正配置や通級による指導の充実・整備に努めます。
  • 障害の状態や発達段階、特性等に応じた教育課程の編成に努めます。

④ 適切な進路指導体制の確立

  • 一人ひとりの特性を生かした適切な進路指導がなされるよう進路開拓、現場実習、追指導等の推進を図るため、関係諸機関との連携を強化します。
  • 盲・聾・養護学校等における進路指導に関する協議会を開催し、教育・保健・医療・福祉等関係諸機関との連携を密にして、進路指導の体制の整備に努めます。
  • 多様な進路の選択が可能となるよう受入れの場の拡大に努めます、
  • 大学等上級学校への進学ができるよう、学力の向上を図るための条件整備に努めるとともに、受験機会の確保についても関係機関に対して協力を求めていきます。



第4節 雇用・就労

『基本的な考え方』

 障害者の社会的自立を図るため、就労の場の確保は最も重要な課題の一つとなっています。
 国際障害者年を契機として、社会一般の関心が高まる中で、障害者の雇用については、着実に改善されてきているものの、まだ改善すべき点も多くあります。
 障害者の方々が働く場を得て、社会の構成員として社会経済活動に参加し、働く喜びや生きがいを見出していくという『ノーマライゼーション」の理念に基づく社会を実現するため、事業主をはじめ、県民一般の障害者雇用にかかる気運の高揚に努めるとともに、障害者雇用対策を一層充実・強化していく必要があります。
 この節では次の事項を重点目標にします。


1 雇用の促進

2 福祉的就労の場の整備

3 職業能力の開発


1 雇用の促進


『現状と課題』

 障害者の雇用対策については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、その雇用促進についてきめ細かい諸対策が推進されてきているところです。
 1981年(昭和56年)の国際障害者年を契機として、障害者問題への社会的関心が非常に高まってきており、障害者の自立意識の高まりと、ノーマライゼーション理念の社会全体への浸透と相まって、障害者全般の雇用は着実に進展し、本県における障害者雇用率は1.6%(平成9年6月1日現在)を達成しています。
 しかしながら、法定雇用率未達成企業の数は、依然として半数近くにのぼっており、重度障害者を中心になお一層の雇用促進を図っていく必要があります。また、平成9年4月、「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、知的障害者を含めた法定雇用率1.8%が平成10年7月1日から適用されることから、障害者の雇用を促進するためには、引き続き雇用率制度の厳正な運用を図り、事業主に対する相談、指導、援助機能の強化に努め、企業の取り組み体制の整備を促すほか、職業紹介の積極的な推進と、障害者雇用の安定を図るため、障害者雇用促進月間(9月)を中心に障害者雇用問題の啓発指導を継続的かつ強力に推進する必要があります。
 また、重度障害者の雇用の場を確保するために民間企業の活力とノウハウを活かした第三セクター方式企業を充実していく必要があります。
 このような取り組みを効果的に推進するためには、障害者福祉施設や三重障害者職業センター、(社)三重県障害者雇用促進協会等の関係団体・機関等との密接な連携を一層深める必要があります。


『施策』

① 職業相談、指導体制の充実

  • 三重県身体障害者総合福祉センター、授産施設等の機能強化に努めるとともに、障害者就労相談の充実を図ります。
  • 障害者の職業相談、職業指導に当たっては、盲・聾・養護学校、更生援護施設、授産施設等関係諸機関との連携を深め、障害者のより的確な情報及びニーズの把握に努めるとともに、障害者訪問相談員、障害者担当職業相談員、手話協力員等と協力し、職場実習、職場適応訓練等を推進します。
  • 三重障害者職業センターとの連携を密にし、職務評価、職務試行、職業準備訓練、職業開発援助事業等、同センターの持つ機能の有効活用により、職業相談、職業指導の一層の充実を図ります。
  • 職業能力の開発・向上、就職の促進や職場定着を高めるため、職場実習、職場適応訓練制度等の積極的な活用を図ります。θ就職が特に困難な障害者の職業的自立を図るため、地域レベルで福祉部門と雇用部門が連携を図りながら、就職から職場定着に至るまでの相談、援助を一環して行うような人的援助システムを具現化する組織として「障害者雇用支援センター」の設置促進を図っていきます、

② 法定雇用率達成指導の強化

  • 法定雇用率未達成企業に対して、障害者雇い入れ計画作成命令及び同計画の適正な実施に関する勧告の発出を厳正に行い、雇用率の達成指導に努めます。
  • 市町村等の機関は、民間企業に率先して障害者雇用を推進すべき立場にあることから、これらの機関に対しては、早期の雇用率達成のため適切な指導に努めます。
  • 障害者重点公共職業安定所を中心に、障害者求職情報の一括集中管理システムを有効活用し、法定雇用率未達成企業への積極的かつ恒常的な情報提供に努めます。
  • 法定雇用率達成目標を次のとおりとします。
〔平成8年度(6月1日現在)〕 〔平成14年度〕 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕
○身体障害者雇用率達成企業割合 53.4% 70% 100%

③ 雇用機会の拡大

  • (社)三重県障害者雇用促進協会、三重障害者職業センター等と協力し、障害者雇用にかかる機械設備の改善、指導員の配置、教育訓練等の諸問題を巧みに克服し、職場定着に成功している事例を障害者雇用好事例集として編集発行し、関係事業主へ配付するなど障害者雇用の促進に努めます。
  • 障害者の作業を容易にするための施設設備の設置、職場適応措置や特別な雇用管理等にかかる各種助成金の有効活用を指導し、雇用機会の創出・拡大に努めます。
  • 障害者が在宅のまま就労できる在宅勤務を促進するため、障害者在宅勤務支援システムを開発・運用し、雇用機会の拡大を図ります。

④ 雇用の奨励と啓発

  • 障害者雇用にかかる事業主の費用負担を軽減し、その雇用を促進するための奨励制度、援助制度の周知と活用指導に努めます。
  • (社)三重県障害者雇用促進協会が行う障害者雇用促進のための自主的な活動の育成・援助に努めます。
  • 障害者雇用の促進と障害者の職業的自立の向上を図るため、障害者雇用優良事業所・優良勤労障害者の表彰を行います。
  • 障害者雇用を促進するため、障害者雇用促進月間(9月)を中心に、広く県民に対して積極的な啓発活動を展開します。


2 福祉的就労の場の整備


『現状と課題』

 働く意思と能力のある障害者は、その障害の程度にかかわらず、就労の場の提供を受け、生きがいのある生活を営むことを望んでいます。
 そのためには、障害者の身近で自立意欲、作業能力を生かす福祉的就労の場である授産施設、小規模授産所等の整備を促進する必要があります。
 授産施設については分場方式も取り入れながら、さらに整備の促進を図る必要があります。
 小規模授産所については、認可授産施設の分場方式の活用、日帰り介護・活動(デイサービス)事業への移行による認可施設(法定事業)化を推進しつつ、さらに整備の促進を図る必要があります。
 福祉的就労の場で就労している障害者の生活の安定や意欲を高めるため、授産所での新たな製品の開発、受注及び販路拡大のための施策が必要です。
 また、通常の雇用契約による就職の困難な精神障害者を対象として協力事業所に一定期間通わせ社会適応訓練を行い、再発防止と社会的自立を促進する精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション事業)の充実や授産施設の整備、拡充が必要です。


『施策』

① 授産施設等の整備

  • 身体障害者、知的障害者及び精神障害者に働く場、活動の場、訓練の場を提供するため、授産施設等の整備を促進するとともに、機能強化に努めます。整備目標は次のとおりとします。
(身体障害者・知的障害者向け) 〔平成8年度末〕 〔平成14年度〕 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕
○通所授産施設・通所更生施設 564人分 900人分 1,250人分
(精神障害者向け)
○授産施設 入所型 -
通所型2か所

1か所
5か所

3か所
9か所
○福祉工場 1か所 1か所
○共同作業所 12か所 22か所 37か所
  • 就労している障害者が独立した生活を営むことができるよう、生活支援の機能を持つ住宅である、地域生活援助事業(グループホーム)、生活ホーム、福祉ホーム、通勤寮の整備を促進します。整備目標は次のとおりとします。
(身体障害者・知的障害者向け) 〔平成8年度末〕 〔平成14年度〕 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕
○地域生活援助事業(グループホーム)
・生活ホーム・福祉ホーム・通勤寮
131人分 250人分 450人分
(精神障害者向け)
○地域生活援助事業(グループホーム) 3か所 13か所 27か所
○福祉ホーム 1か所 4か所 9か所
  • 就労の困難な在宅の心身障害者の身近な場所で、働く場、活動の場を提供し、生活指導を行う、作業型日帰り介護・活動(デイサービス)事業等の小規模授産所等の設置を促進します。
  • 知的障害者を一定期間職親のもとに預け、生活指導、技能習得訓練を行う、職親委託制度の充実を図ります。
  • 精神障害者の社会復帰を促進するため、就労を通じて社会復帰適応訓練を行う、精神障害者社会適応訓練事業(通院患者リハビリテーション事業)の充実を図ります。

② 就労の場の拡充・整備

  • 障害者の自営の場を得やすくするため、公共団体等の施設における売店設置等について、関係機関との連携を密にして優先措置を図っていきます。
  • 障害者の内職について、相談体制の充実を図ります。
  • 視覚障害者に対する三療師の機能訓練の充実を図ります。


3 職業能力の開発


『現状と課題』

 障害者の就労の場を拡充するためには、それぞれのニーズに応じた職業能力開発の訓練機会を確保することが重要です。
 近年、障害者が自ら技術を習得し就労しようとする意欲が高まってきており、これらのニーズに対応するため、職業訓練の拡充を図るなど多様な施設が必要となっています。

『施策』

① 障害者の技能向上

  • 障害者の職業能力を開発するため、県立の職業能力開発校又は雇用促進事業団立校への積極的な受け入れと、環境の整備を図ります。
  • 訓練生に対し、訓練手当を支給します。
  • 障害者に対する企業内訓練を促進するための指導をします。
  • 身体障害者技能競技大会への積極的な参加を促します。

主題:
障害者対策の今後の方向
-第二次長期行動計画-
  〔改訂版〕

発行者:
三重県

発行年月:
1998(平成10)年3月

文献に関する問い合わせ先:
三重県津市広明町13番地
三重県健康福祉部障害福祉課