障害者対策の今後の方向-第二次長期行動計画-〔改訂版〕
平成10年3月
三重県
第5節 社会福祉サービス
『基本的な考え方』
障害者の福祉の目標は、障害のある者もない者も共に生きる地域社会の実現、いわゆる「完全参加と平等」及びノーマライゼーションの実現です。
そのためには、所得の保障や経済的負担の軽減に配慮した生活の安定や、家庭及び地域での自立した生活を可能にするための在宅福祉サービス、さらには、障害者の態様に即した各種の施設が整備された施設サービス等の体制づくりを推進していくことが必要です。
障害者のニーズは、多様化、複雑化し、量的にも増大していることから、必要な社会福祉サービスが的確に提供されるよう、サービスの質的量的な拡充を図るとともに、きめ細かな障害者福祉施策の展開が必要です。
また、寝たきり高齢者等に対する介護サービスを総合的に提供するため、2000年(平成12年)に導入される介護保険制度について、円滑な導入と適正な運営に向けての取り組みを進めなければなりません。
この節では次の事項を重点目標にします。
1 在宅福祉サービスの推進 2 施設福祉の充実 3 地域福祉活動の充実 4 生活の安定確保 |
1 在宅福祉サービスの推進
『現状と課題』
障害者等が、住み慣れた家庭や地域社会の中で自立した生活を送るためには、物心・両面からの援助が必要です。
これらの援助を適切に行うためには、障害者等の日常生活上生じる様々な問題について、いつでも相談等に応じられる体制づくりに努めるとともに、多様化・複雑化する障害者等のニーズに的確に対応できる、各種のサービスの充実を図っていく必要があります。
また、障害者や寝たきり高齢者等の障害を軽減するとともに、日常生活能力を向上させ、さらに介護者の負担を軽減するうえで、福祉機器の役割は大きなものがあります。
人口の高齢化や核家族化が進む中、福祉ニーズに対応できるきめ細かな在宅福祉サービスの充実が重要になっています。
『施策』
① 相談活動の充実
- 障害者に対し、総合的な相談・生活支援・情報提供及び療育指導等を行う事業の各障害保健福祉圏での実施を促進します。整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | ||
○市町村障害者生活支援事業 | - | ⇒ | 12か所 |
○精神障害者地域生活支援事業 | 1か所 | ⇒ | 10か所 |
○障害児(者)地域療育等事業 | 8か所 | ⇒ | 9か所 |
- 身体障害者相談員、精神薄弱者相談員及び民生・児童委員に対する研修会の充実を図り、資質の向上に努めます。
- 障害者の人権(問題)に関する常設の相談窓口を開設する「障害者110番」を運営し、障害者への相談支援に努めます。
- 身体障害者更生相談所及び精神薄弱者更生相談所の相談、判定機能の強化に努めます。
- 重症心身障害児(者)の家庭療育等に関する相談事業の充実に努めます。
- 知的障害者等自己の意思表示の困難な障害者にかかる権利擁護のあり方を検討していきます。
- 訪問介護員(ホームヘルパー)が家庭訪問時に的確に相談・助言ができるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)研修の充実に努めます。
- 高齢者総合相談センターの相談体制の充実を図ります。
- 在宅介護支援センターの増設及び機能の充実を図り、身近なところで介護相談等ができるようにします。
- 在宅の老人性痴呆疾患患者に対応するため、専門医療相談等を行う、老人性痴呆疾患センターを指定し、地域の老人性痴呆疾患患者等の保健・医療・福祉サービスの向上を図ります。
- 精神障害者の社会復帰を促進するため、保健所における訪問指導事業の充実を図ります。
- 三重県こころの健康センターや保健所における各種の精神保健福祉相談、訪問指導の充実を図ります。
② 各種サービスの充実
- 障害者のニーズに対応した在宅サービスの提供を図るため、高齢者施策等との連携を図りながら、在宅介護支援体制の確立に努めます。
- 外出介護(ガイドヘルプ)等障害者特有のニーズにも配慮しながら、身体介助や援助を必要とする者に訪問介護(ホームヘルプサービス)が的確に提供できるよう訪問介護員(ホームヘルパー)の増員を図るとともに、登録ヘルパー制度、チーム運営方式等を推進し、24時間サービス提供体制等サービスの充実を図ります。
訪問介護員(ホームヘルパー)の増員目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕 | |||
○ | 106人 (障害者向け) |
⇒ | 370人 (障害者向け) |
⇒ | 6,100人 (高齢者・障害者向け) |
- 日帰り介護・活動(デイサービス)事業については、障害者のより身近な場所で実施できるように整備を促進し、地域における活動の拠点として事業内容の充実を図ります。
基本型、介護型等日帰り介護・活動(デイサービス)事業及び小規模授産所を含めた整備目標を次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕 | |||
○ | 86か所 | ⇒ | 120か所 | ⇒ | 145か所 |
- 短期入所生活介護(ショートステイ)事業については、入所施設の整備とあわせて専用居室の設置を促進し、事業の拡大を図ります。短期入所生活介護(ショートステイ)専用居室の整備目標は次のとおりとします。
○(身体障害者・知的障害者向け) | |||||
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕 | |||
38人分 (障害者向け) |
⇒ | 120人分 (障害者向け) |
⇒ | 3,600人分 (高齢者・障害者向け) |
|
○(精神障害者向け) | |||||
1か所 | ⇒ | 2か所 | ⇒ | 3か所 |
- 障害者の社会参加に必要なリフト付バスの運行等の移動支援や手話通訳者の設置、点字広報の配付等のコミュニケーション支援等を総合的に行う事業の各障害保健福祉圏での広域的な実施を促進します。あわせて、社会参加を支援する人材の養成・確保を図ります。
整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | ||
○市町村障害者社会参加促進事業 | 2か所 | ⇒ | 12か所 |
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕 | |||
○外出介護員(ガイドヘルパー)登録者数 | 120人 | ⇒ | 270人 | ⇒ | 600人 |
○手話通訳者・要約筆記奉仕員登録者数 | 250人 | ⇒ | 510人 | ⇒ | 950人 |
○点訳奉仕員、朗読(録音)奉仕員登録者数 | 318人 | ⇒ | 580人 | ⇒ | 1,080人 |
- 難病患者等居宅生活支援事業の実施により、訪問介護(ホームヘルプサービス)事業等適切な介護サービスの提供を促進します。また、多様化した患者のニーズに対応できる知識と技能を有する訪問介護員(ホームヘルパー)の養成に努めます。
- 寝たきり高齢者等に対する介護サービスを総合的に提供する介護保険制度の円滑な導入を図るため、市町村の実施体制整備の支援をはじめ、適正な制度運営のための取り組みを行います。
③ 障害児保育の充実
- 障害のない児童との集団保育が可能な障害児の受け入れを円滑に行うため、障害児保育に要する経費の助成等により、保母の処遇能力の向上、設備環境の改善等、体制の整備を進めるとともに、障害児保育を実施する保育所数の拡大を図ります。
④ 福祉機器の給付、貸与の拡大
- 身体障害者(児)に対し、身体上の障害を補い日常生活や職業生活の能率向上を図るため、車いすや補聴器等の補装具の給付を行います。
- 在宅の重度障害者(児)に対し、浴槽、ベッド等の日常生活用具を給付又は貸与し、日常生活の便宜を図ります。
- 在宅障害者の日常生活の利便を図るため、日常生活用具等の給付の拡充に努めます。
- 福祉機器の利用を促進するため、福祉機器に関する展示、相談窓口の整備等制度の普及に努めます。
- 福祉機器、介助具の適正な活用や指導をするため、福祉関係職員等の研修に努めます。
2 施設福祉の充実
『現状と課題』
障害の内容・程度等により在宅生活が困難な障害者にとっての生活の場、専門的な療育・指導の場、社会復帰をめざす訓練の場として各種福祉施設は重要な役割を担っています。
また、障害の重度化、重複化及び高齢化の傾向に伴い、施設サービスに対するニーズも多様化してきており、さらに、地域における在宅福祉ニーズの高まりによって、施設の持つ介護などの専門的な機能の地域への開放が求められています。
このことから、多様化したニーズに対応しつつ、在宅福祉サービスと有機的に連携した、利用しやすい施設の整備を進める必要があります。
また、入所型はもとより、住み慣れた地域において生活が送れるよう、身近な場所に適所型施設の整備を図っていく必要があります。
さらに、精神障害者に対しては、社会復帰のための施設整備を促進する必要があります。
『施策』
① 福祉施設の整備促進
- 重度障害者等のニーズに的確に応えられるよう、地域的なバランスに配慮しつつ、生活、療育の場としての入所施設の整備を促進します。整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | 〔平成22年度(総合計画目標年度)〕 | |||
○身体障害者療護施設 | 360人分 | ⇒ | 470人分 | ⇒ | 540人分 |
○精神薄弱者更生施設 | 960人分 | ⇒ | 1,360人分 | ⇒ | 1,450人分 |
- 最も重いハンディキャップを負っている重症心身障害児(者)を対象とした施設については、在宅福祉サービスの充実に努めつつ、施設入所のニーズを見極めて対応していきます。
- 障害者が住み慣れた地域において生活が送れるよう、福祉的配慮のされた働く場、住まいの場である適所授産施設、地域生活援助事業(グループホーム)等の整備を促進します。
- 心身障害者小規模授産所については、利用ニーズを踏まえながら整備を図るとともに、授産施設の分場方式の活用や日帰り介護・活動(デイサービス)事業への移行による法定施設(法定事業)化を促進します。
- 精神薄弱者総合福祉センター(仮称)を整備し、障害者の地域社会における生活を実現するための援助を行うとともに、地域生活の支援者、民間施設、福祉事務所等関係機関に対し、実践研修や研究等により技術的指導を行うなど援助体制の充実を図ります。
- 三重県いなば園については、県立施設の役割を踏まえ必要な整備を図ります。
- 知的障害児施設については、入所ニーズや地域性を踏まえ成人施設への転換を促進します。
- 各種福祉施設の整備については、障害保健福祉圏域を単位に地域バランスに配慮しつつ推進します。
- 入所者のプライバシーの確保等、処遇の向上あるいは障害者の状態や年齢等に対応した適正処遇の確保に努めます。このため、新築又は改築を行う身体障害者療護施設及び精神薄弱者更生施設については、入所定員の50%を目標に個室化を促進します。
- 身体障害者が通入所し、家庭あるいは地域社会での自立を目指して総合的にリハビリテーションを行う、三重県身体障害者総合福祉センターについて、機能の充実に努め、県内における指導的役割の強化を図ります。
- 肢体不自由児施設草の実リハビリテーションセンター、自閉症児施設あすなろ学園について、入所児童の重度化、多様化に対応するため、療育機能の強化を図ります。
- 精神障害者が地域社会の中で安心して生活し、社会復帰できるよう、精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)や授産施設等の整備に加えて、精神障害者生活訓練施設の整備を促進します。整備目標は次のとおりとします。
〔平成8年度末〕 | 〔平成14年度〕 | ||
○精神障害者生活訓練施設(援護寮) | 3か所 | ⇒ | 6か所 |
② 施設機能のオープン化の促進
- 家庭介護者の研修、相談、指導など施設の有する専門機能の地域開放を進めます。
- 施設入所者も地域の構成員であることから、地域行事への参加、さらには地域住民の施設行事への参加・協力など、地域との交流促進を図ります。
- 入所施設の整備に合わせ、日帰り介護・活動(デイサービス)センター、短期入所生活介護(ショートステイ)専用居室等の整備を促進することにより、在宅福祉サービス推進の拠点としての機能を付与し施設機能の強化を図ります。
- 保護者あるいは家族の疾病等により、一時的に家庭における介護が困難となる心身障害児(者)の適切な処遇を確保する短期入所生活介護(ショートステイ)事業の充実に努めます。
- 地域における在宅の重度障害者の自立を促進するため、施設を利用して日常生活訓練、入浴サービス等を行う日帰り介護・活動(デイサービス)事業の充実に努めます。
3 地域福祉活動の充実
『現状と課題』
障害者福祉の充実のためには、各種行政施策と相まって、地域住民の社会福祉活動に対する自主的、自発的な参加と協力が重要です。
なかでも、社会福祉協議会は、民間福祉活動を推進し、地域福祉活動の中核的役割を担うことが期待されており、その活動の充実、組織体制の強化を図る必要があります。また、ボランティアの果たす役割は今後ますます大きくなるものと考えられ、その育成と活動の促進を図る必要があります。
『施策』
① ボランティア活動の促進
- ボランティアの育成と活動の活発化を図るため、市町村ボランティアセンターの設置を促進するとともに、ボランティアコーディネーターの配置等その機能の充実、強化とボランティアアドバイザーの養成に努めます。
- だれもがいつでも福祉ボランティア活動に参加できるよう、ボランティア情報提供システムの構築やネットワーク化の促進を図ります。
- (財)三重ボランティア基金の充実に努め、ボランティアの養成や活動に対する助成を行うなど、ボランティア活動を推進するための条件整備を図ります。
- ふれあいのまちづくり事業等諸事業の推進をしていく中で、地域におけるボランティア活動の自主的な展開と定着化を促進します。
- ボランティアとしての知識、技術を高めるため、研修会・講習会を充実し、優れたリーダーの養成に努めます。
- ボランティア精神に基づき、非営利を基本として有償で在宅福祉サービスを提供している住民参加型サービス活動が、円滑かつ継続的に行われるよう支援に努めます。
② 研修制度の充実
- 三重県社会福祉研修センターの充実を図ります。
- 社会福祉施設職員に対して、職務内容や経験に応じた研修を計画的、体系的に実施し、資質の向上を図ります。
- 福祉人材センターにおいて、社会福祉施設等に従事した経験を持つ人に対し再就職への意欲を喚起し、再就職を容易にするための講習会を実施します。
- 三重県こころの健康センターにおいて、保健所のマンパワーの養成及び関係諸機関の職員に対する精神保健福祉知識の向上のための研修を実施し、精神障害者に対する支援技能の向上を図ります。
- 難病患者の在宅ケア支援を担う関係職員に対し難病専門研修を実施し、資質の向上を図ります。
③ 社会福祉協議会の充実
- 地域における住民の自主的な社会福祉活動の組織化等その機能の強化を図るため、市町村社会福祉協議会の専門職員の充実など、組織体制の充実強化を促進します。
4 生活の安定確保
『現状と課題』
障害者が社会において自立した生活を送るためには、まず経済生活が安定していることが必要です。
一般的に就労困難な、いわゆる稼働水準が低いあるいは稼働能力がない障害者の生活の安定を図るためには、在宅福祉サービスと相まって生活の基盤となる所得保障を充実させなければなりません。
現在の所得保障制度には、各種年金保障制度としての年金、公的扶助制度としての生活保護や障害に着目した各種手当等があります。また、互助制度である心身障害者扶養共済制度があります。
これらのうち、年金が所得保障の中心になっており、その充実について引き続き国に要望していく必要があります。合わせて年金・手当等の周知を徹底する必要があります。
心身障害者扶養共済制度については、引き続きその制度が広く活用されるよう努めていく必要があります。
『施策』
① 各種年金等給付制度の充実と制度の周知
- 特別児童扶養手当、特別障害者手当等各種手当の充実について、国に対し要望していきます。
- 年金制度の充実について引き続き国に対して要望していきます。
- 心身障害者扶養共済制度について、その周知に努め、加入促進を図るとともに、制度の充実に努めます。
- 低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などの経済的自立と生活の安定等を図るため、生活福祉資金の貸付原資の確保、貸付内容の充実に努めます。
- 高齢者等の健康の保持や適正な医療の確保等を図るため、市町村が実施する医療費助成制度に対して支援します。
- 新聞、ラジオ、テレビ、広報誌等の広報媒体を活用し、制度の周知を図ります。
主題:
障害者対策の今後の方向
-第二次長期行動計画-
〔改訂版〕
発行者:
三重県
発行年月:
1998(平成10)年3月
文献に関する問い合わせ先:
三重県津市広明町13番地
三重県健康福祉部障害福祉課