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障害者保健福祉計画
かわさきノーマライゼーションプラン

No.1

項目 内容
立案時期 平成9年6月
計画期間 平成9年度~平成22年度(14年間)

ごあいさつ

21世紀の新しい時代を目前にして、戦後50年余のわが国の発展を支えてきた経済社会システムが大きな変換期を迎えております。地方自治につきましても中央集権型の行政システムを地方分権型に転換してゆくなど、これまでの在り方を再検証される方向になってきております。
そのような中、障害者福祉の分野でも施設整備を中心とした支援から、どのような重い障害を持っていても地域で暮らすことができるような地域支援の方策が求められています。障害者の主体性を尊重した、障害者を中心においた総合的な支援を図るものとして、これまでの支援の在り方の大きな見直しが求められています。
川崎市では1981年(昭和56年)国際障害者年の年に「川崎市障害者福祉基本構想」を発表し、障害者の自立のための援助の体系化やリハビリテーションシステム、生涯授産構想などを提起しました。そしてこれらの構想は今日においても行政施策の指針として定着し、一定の成果をあげたところです。
しかし、21世紀を展望し、改めて障害者の自立を支援し、ノーマライゼーションの理念の実現をめざす時、これまで以上に障害者の人権を擁護し、社会参加をすすめる新しい構想と計画が必要となってまいりました。
「かわさきノーマライゼーションプラン~障害者保健福祉計画」は、このような考え方にもとづき、障害のある方が地域で暮らすための、相談・介護・教育・就労・住宅・まちづくり・文化・スポーツ・権利の擁護など幅広く、多様な施策の新たな方向を示したものです。障害の有無にかかわらず誰もが快適な市民生活が営める、安心してゆたかに暮らせるそのような「かわさき」をつくるための計画です。
川崎市は、この計画を推進し、生涯福祉都市「川崎」の実現のために全力で取り組んでまいりたいと考えております。また、この計画でめざすものは行政だけで推進が図られるものではなく、障害のある方もない方も全ての市民の参加と共同の取組みの中で実現が図られてゆくものです。計画実現への市民の皆さまの御理解と御協力を心から御願い申しあげます。

平成9年6月

川崎市長 高橋 清

目次

1部「かわさきノーマライゼーションプラン~障害者保健福祉計画」の策定にあたって

2部計画内容

地域支援

ともに学び働く

ゆたかに暮らす

3部計画の推進体制

4部資料編

用語解説

1部 「かわさきノーマライゼーションプラン
~障害者保健福祉計画」の策定にあたって

ノーマライゼーションとは障害のある人々が障害のない人々と同等に生活し、活動する社会を目指す理念です。障害のある人々が特別な存在として扱かわれるのではなく、当たり前の存在として地域でともに暮らし、学び、働く、豊かな地域社会づくりを進める計画として、策定しました。

1 川崎市における障害者施策の推移と計画策定の背景

川崎市は1981年(昭和56年)国際障害者年のテーマであった「完全参加と平等」の理念は川崎市民が長らく求めてきた「福祉社会」、すなわち「市民の間の相互理解と共感と共同に支えられ、老いも若きも、障害者も健常者も、すべての市民がともに生き、ともに喜ぶことのできる、福祉の心が息づく都市社会」などの21世紀の人間都市づくりの理念と一致することを確認し、川崎市においてこれを実現することを市民世代連帯の共同事業として位置づけました。
そして、川崎市における「完全参加と平等」の実現をめざし、障害者が抱える様々な問題を整理、検討し、国際障害者年以後の10年を展望した長期構想として、障害者福祉基本構想を策定いたしました。
この障害者福祉基本構想は(1)障害者の自立のための援助の体系化、専門サービスの充実(2)社会参加の方策の検討(3)市民各層への障害者問題に対する正しい理解と認識の醸成、ともに生きるための条件作りなどを柱に、生涯授産構想、総合リハビリテーションシステム、重度障害者センターなどの整備を提起しました。
これにもとづき、精神薄弱者更生施設・通所授産施設・通所更生施設の地域整備、地域療育センターや在宅支援・訪問リハビリテーションなどの地域支援機能を整備した療護施設「れいんぼう川崎」の開設などが推進され、川崎市における障害者福祉推進の基本指針として今日まで、実現に向けた取り組みが進められてまいりました。
しかし、21世紀を間近に迎え社会の状況が大きく変化してきている中で、次のような新たな課題が生じてまいりました。
(1)近年、障害者をめぐる状況は、障害の重度・重複化や高齢化の進展、地域援助へのニーズの変化、人権の擁護と生活の質の向上など大きな変化の時代を迎え、やさしく快適なまちづくりや、豊かな地域生活のための総合的な地域支援システムの構築が求められていること
(2)障害者自身の主体性、自立性を尊重し、基本的人権を持つ一人の市民として、社会活動への積極的な参加を期待し、その能力が十分発揮できるような施策の整備が急がれていること
(3)1981年の国際障害者年以後の「国連障害者の十年」が総括され、「アジア太平洋障害者の10年」の計画が策定されるなど、一層の障害者施策の推進と新たな課題が提起され、国の障害者施策計画である「障害者対策に関する新長期計画」、その具体的実施計画である「障害者プラン」の策定、1993年(平成5年)に制定された「障害者基本法」の精神を反映した障害者施策の推進が求められていること
そこで、川崎市は国際障害者年以降の施策の総括と障害者福祉基本構想の見直しを行い、新たな障害者施策課題の達成に向けて、市の取り組みの方向を明らかにすることとしました。そして川崎市総合計画である「川崎新時代2010プラン」の推進を図り、障害者福祉の充実を図る指針として、「かわさきノーマライゼーションプラン~障害者保健福祉計画」の策定を行いました。

2 基本的な考え方

 計画の策定に当たり、「川崎新時代2010プラン」を基本としながら、これまでの障害者福祉に係る諸理念を改めて検討し、3つの事項を特に重視すべき新たな計画策定の基本的な考え方としました。

1 ノーマライゼーションの実現と障害者の社会的自立の促進

国際障害者年の「完全参加と平等」の理念は、それまで保護・育成の対象とされてきた障害者が、一人の人格ある市民として、地域で働き、暮らすことを推進するものでした。この理念の実現のため、様々な施策の充実が図られ、障害者福祉の大きな前進を見ることができましたが、一方では、福祉施設などの整備や家族や介護者への支援が優先し、地域づくりや障害者自身を主体とした施策が遅れたきらいがありました。
いま、改めてノーマライゼーションの理念の実現のため、障害のある人もない人も、ともに暮らすことのできる地域づくりをめざす時、障害者を主体とした地域づくりを強く支援することが重要です。
重度の障害があっても地域のアパートやマンションを活用した生活ホームで暮らし、地域の通所施設に通いながら自立した生活を営んでいる方々が少なくありません。周囲から心配された生活も多くの支援と努力に支えられ、生き生きと働き、スポーツや文化的な活動を楽しむ安定したものへと変わりつつあります。
同時に障害者の生活の広がりはこれまで以上に住宅・公共建物や道路などの生活環境、電車、バス等の移動手段などの整備の遅れを目立たせ、障害に対する理解の不足やいまだに残る差別や偏見が地域生活への大きな壁となっています。この困難な課題を取り除くために、行政の積極的な取り組みと併せて、多くの市民的な支援の広がりが必要です。
生活の実態に即した柔軟で現実的な社会的支援の拡充とこれらの取り組みへの市民の理解と共感を推進することによって、障害者が地域の一人の市民としてあたりまえに暮らすことのできるノーマライゼーションの社会の実現が図られると考えます。

2 障害者の参画の推進と権利の擁護

川崎市ではすべての市民が等しく人間として尊重されることが、自由で活気ある都市づくりの第一義的な条件であるとし、川崎につどい、活動するすべての人の人間としての尊厳・人権の確保をあらゆる施策の基本としています。
障害があってもなくても幼くとも年老いても基本的人権を持つ一人の市民として、その権利を擁護する施策の充実が必要と考えます。
障害者は障害による社会的な不利(ハンディキャップ)を克服するために多くの支援が必要とされます。個々の障害に応じた適性な教育・福祉用具や生活の環境整備・コミュニケーション手段・情報提供などが整備されない中では、結果として権利の侵害や差別・偏見が生ずることとなります。とくに知的発達障害や精神障害のある方々にとってはそれぞれの状態に応じた配慮を前提として、はじめて対等な権利関係が成立するものであると考えます。
このために原則として障害者に関するさまざまな施策、情報提供体制、サービスの提供、施設の運営などに障害者自身の参画と意見反映が図られるよう努めます。

3 障害者を含むすべての市民のための施策の推進

障害者や高齢者などに配慮された施策や設備は、“特別な”市民のための「特別な施策」ではなく、広く多くの市民が快適な市民生活を過ごすための、なくてはならない市民共通の施策や設備と考えます。バリアフリーを推進する段差の解消やエレベーターなどの設置は、単に障害者のためだけでなく、高齢者も乳幼児を連れた母親にとってもケガや病気の市民にとっても大切な設備です。建物や施設の最も利用しやすい所にこれらが整備され、いつでも自由に、誰もが利用できることが求められています。
市民の誰もが障害を負う可能性があり、誰もが老いることを考える時、障害者への配慮や介護を必要とする市民のための施策は、暮らしやすい、やさしいまちづくりとして推進することが必要です。
障害者という市民が存在するのではなく、市民の中に障害のある方や介助を要する人々がいること、特別な施策でなく、市民一般の共通施策として障害者施策の総合化の推進を図ることが必要と考えます。

3 重点課題

 計画策定に当たり、「川崎新時代2010プラン」を基本としながら今日的な障害者施策の動向、ニーズを踏まえながら、特に重視し推進を図るべき具体的課題として、4つの課題を設定しました。

1 地域支援サービスの推進

ノーマライゼーションの理念のもと、障害者が地域で暮らすための総合的な支援が求められています。この支援は介助・介護・医療・教育・職業・住宅等の多様なものです。
従来、これらの支援は障害者施設の中で一元的に整備・提供されてきました。しかし、施設は一生を過ごす所ではありません。就労、結婚、子育てなどの市民生活を営む所としては極めて限界のある場所です。障害者自身も家族もまた地域での自立生活を望みながら必要な介護、生活の環境などへの現実的な不安から「施設」こそが家族も本人も安心できる選択として考えざるをえないものがありました。
こうした不安を解消し、負担を軽減するため、施設に入所していることと同様な安定したサービスが保障され、障害者とその家族が信頼を寄せられる総合的な地域支援こそが、障害者の自立の推進とノーマライゼーションの理念の達成を具体的に進めるものと考えます。
同時に、「施設」もまた現実の介護支援や専門的なサポートの担い手として、ニーズに応じた整備を図り、地域サービス機関として、その役割を位置づけながら、機能、マンパワーを活用し、地域生活を支える拠点としての整備を進めます。

2 総合リハビリテーションシステムの構築

すべての障害者の地域生活を最適なものとするために、必要なリハビリテーションサービスを総合的に提供できる、総合リハビリテーション体制の整備を検討実施します。障害者リハビリテーションには医療・生活・職業など多面的なアプローチと、それらを統合して一元的に運営する機関が必要ですが、このシステムにより、市内リハビリテーション機関の有機的な連携を図り、保健・医療・教育・心理・職能・工学・体育などの領域の専門的リハビリテーション技術を結集して、近代的総合リハビリテーションの提供体制を整備します。

3 高齢社会に対応した障害者施策の推進

すべての市民が生涯にわたり人間性に満ちた充実した生活が確保されるような、都市づくりをめざすとき、ライフステージに応じた健康や福祉・住宅などの包括的・総合的な施策の推進が必要とされます。
高齢期における障害者は、障害を抱えながら「老化」という肉体的精神的な衰えを併せ持つため、より専門的で手厚い支援を要するものです。従来の高齢者施策に一般化できない障害者のための高齢化施策と同時に、既存の高齢者施策や施設への障害者の適応・受け入れを推進します。すでに身体障害者手帳取得者の多くが高齢者であり、障害者施設入所者の高齢化、知的障害者の早期老化や精神障害者の高齢化など、障害の個別性を踏まえた施策の推進を図ります。

4 精神障害者支援の推進

障害者基本法により、精神障害が法的に「障害」として規定されました。疾病としての障害への保健的・医療的対応から、社会的な不利としての「障害」への支援が検討されることになりました。精神障害は多くの誤解と偏見により社会から疎外され、自立そのものが否定されるような状況がありました。これらの偏見を解き、「精神保健福祉法」にもとづき、他の障害者施策と比べ大きく遅れている福祉支援の充実に努めます。

4 計画の性格と期間

1 計画の性格 「川崎新時代2010プラン」の推進を図り、障害者福祉の充実を図るための指針とします。
2 計画の期間 1997年(平成9年)より2010年(平成22年)まで〈14年間〉
3 実施目標 計画に基づき、実施目標を設定しますが、「川崎新時代2010プラン中期計画」のローリングに併せ、適宜、実施目標を含め見直しを行います。

5 川崎市における障害者をとりまく現状

川崎市の概要

1 人口の推移

川崎市の総人口は平成8年10月1日現在1,209,212人(市人口調査)です。「川崎新時代2010プラン」によれば、平成12年(2000年)には1,289,000人、平成22年(2010年)には1,370,000人に増加すると推計されています。しかし、平成8年策定の川崎新時代2010プラン第2次中期計画の人口推計によれば、平成13年(2001年)の人口推計は1,228,000人に下方修正されていて、人口上昇率は低下し、ゆるやかな推移をたどることが予測されています。このため本計画では第2次中期計画の推計を基本として幅のある推移をたどるものとしました。

表0 市人口の推移 (人)

昭和40年 854,866
昭和45年 973,486
昭和50年 1,040,802
昭和55年 1,014,951
昭和60年 1,088,624
平成2年 1,173,603
平成8年 1,209,212
平成12年 1,228,000

1,289,000
平成22年 1,240,280

1,370,000

2 年齢3区分人口

川崎市では、全国平均と比較して生産年齢人口(15~64歳)の割合が高く、老年人口(65歳以上)の比率が低い、相対的に若い人口構成の都市です。今後は、出生率の低下等により年少人口(0~14歳)の比率は減少傾向をたどり、その構成は平成8年の14.2%から平成12年には13.7%に、平成22年には13.3%になると見込まれます。また老年人口の比率は、全国平均よりは低位にあるものの、平成8年の10.5%から平成12年には12.1%、平成22年には17.4%と急速に高まると推計されています。

表2 市年齢別人口の推移 (%)

- 0~14才 15~64才 65才以上
平成2年 16.6 75.4 8
平成8年 14.2 75.3 10.5
平成12年 13.7 74.2 12.1
平成22年 13.3 69.3 17.4

障害者をとりまく現状

1 障害者の実態

平成8年3月末日現在、川崎市における障害者人口は、身体障害者は21,240人、知的障害者は、3,488人です。精神障害者は統計・調査が実施されておらず、全国統計からの推計で市内15,000人と言われています。これらを含め障害者総計は約40,000人で、市民の3,3%を占めています。
今後、障害者の人数は人口の増加に伴い、ゆるやかな上昇を示すものと推察されます。人口に対する障害者比率から推計すると平成12年に、身体障害者は21,770人、知的障害者は3,580人程度、同様に平成22年には、身体障害者は22,440人、知的障害者は3,690人程度と見込まれます。
しかし、障害児に限って見ると、児童人口の減少傾向を反映し、横ばいないしは微減すると予測されます。

図3 障害者・障害児人口の推移

障害者・障害児人口の推移折れ線グラフ

2 身体障害者の実態

1)身体障害者人口の状況
平成8年3月末日現在、川崎市における身体障害者人口は、21,240人であり、全障害者の53%を占めています。
図4-1は身体障害者の種別内訳の推移を見たものです。肢体不自由が12,519人(平成8年3月末)であり、身体障害者の53%を占めています。内部障害は4,429人、聴覚平衡機能障害は2,075人です。障害種別の増加傾向を見ると内部障害が平成3年度からの6年間で約1.4倍増となっており、絶対数は少ないものの音声言語障害も約1.3倍増となっています。
図4-2は肢体不自由児の障害種別内訳の推移を見たものであるが、肢体不自由は533人と肢体不自由児の65%を占めています。つづいて聴覚平衡機能障害が170人、内部障害が75人となっています。視覚障害は平成3年度から減少傾向が見られます。

図4-1 身体障害者の障害区分別の推移

身体障害者の障害区分別の推移棒グラフ

図4-2 身体障害児の障害区分別の推移

身体障害児の障害区分別の推移推移棒グラフ

図5-1は障害別の等級別推移を見たものですが、全体に重度化傾向が見られ、平成8年では1級の身体障害者手帳の交付を受けている人が5,380人で全体の25.3%を占め、2級と合わせると身体障害者全体の45%を占める状況となっています。

図5-1 等級別推移

等級別推移棒グラフ

図5-2 内部障害等級別推移

内部障害等級別推移棒グラフ

2)重度身体障害者の推移
前項で1~2級の重度の身体障害を持つ人の割合が高いことは述べたが、重度身体障害者人口の推移を見たのが以下の図6です。全体では、平成8年現在の重度身体障害者は、平成3年の6,720人から約1.42倍の9,547人に増加しています。障害種別では、内部障害者が約1,52倍と高い増加傾向を見せています。

図6 重度身体障害者人数の推移 (人)

重度身体障害者人数の推移棒グラフ

3)年齢構成
厚生省の「身体障害者実態調査」によると、60才以上の障害者が、全体の6割以上を占めています。川崎市における障害者年齢別構成の統計はないが、図7-2にみるように障害者更生相談所取扱人員内訳でも60才以上の人員が約42%と半数近くを占めています。

図7-1 年齢別身体障害者

年齢別身体障害者グラフ

図7-2 身体障害者更生相談所取扱人員 (人)

身体障害者更生相談所取扱人員グラフ

4)地区特性
地区別に身体障害者人口を見たのが図8です。
川崎区は高齢者比率が高いため相対的に障害者が多くなっています。障害種別ではとりわけ肢体不自由、内部障害が高齢者人口に比例する傾向があります。
児童では高津区、宮前区に肢体不自由児が多いが、他の障害は人口に比例しています。

図8 区別身体障害者数 (人)

区別身体障害者数グラフ

図9 区別身体障害児数 (人)

区別身体障害児数グラフ

5)在宅・施設入所
市外施設を含めて施設を利用している身体障害者は160名であり、通所施設・デイサービスを利用している身体障害者は118名です。これは身障者全体のわずか1.3%にすぎません。
児童では市内の通園施設を約80名が利用しています。入所施設では市外の肢体不自由児施設及び重症心身障害児施設を29名利用しています。

図10-1 身体障害者施設利用状況

身体障害者施設利用状況グラフ

図10-2 肢体不自由児施設利用状況

肢体不自由児施設利用状況グラフ

3 知的障害者の実態

1)知的障害者人口の推移と障害程度
川崎市における知的障害者は、平成8年3月末日で現在2,488人です。
障害内訳は、最重度者が366名、重度者が705名です。これらは知的発達障害者の43%を占めています。
また、図11のとおり、障害の程度別に年次毎の推移を見ると、最重度の障害を持つ人の数が、平成3年から平成8年にかけて2倍の増加となっています。

図11 知的障害者症状分布 (人)

知的障害者症状分布棒グラフ

2)川崎市における知的発達障害児の障害程度
知的発達障害児の傾向を見ると全体割合は変わらないものの、最重度が50%増加し、軽度が12%増えていますが、重度障害が20%減少しています。
障害児の全体数は安定した推移となっているが、児童出生数の低下の中では総体的には障害児比率の増加傾向と言えます。

図12 知的障害児症状分布 (人)

知的障害児症状分布グラフ

3)年齢構成
厚生省「精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査」によると60才以上の高齢者は5%程度ですが、高齢期障害者(早期に老化傾向が見られる障害者)年齢と言われる40才以上の知的発達障害者は約20%以上に達しています。
市内施設利用者の年齢を見ても入所施設利用者の20%強が、通所施設利用者の10%が40才以上に達しています。

図13 厚生省実態調査年齢分類(平成7年度)

厚生省実態調査年齢分類グラフ

4)在宅・施設状況
川崎市の知的発達障害者の施設利用者は市内外関係施設を含めて904名、入所関連施設が442名(施設利用者のほぼ50%)、通所関連が462名ですが、法定外施設として地域作業所、地域活動ホーム、生活ホーム(グループホーム)、福祉授産場などがあり、これらを総計すると1,755名となり、約70%が障害者関連施設を利用してい ます。
知的発達障害児の施設利用者は310名、その内入所施設には61名(市外施設34名)が利用しています。ただし、地域療育センターなどで相談・通園等の支援を受けている障害児は市内知的発達障害児のほぼ全数と思われます。

図14-1 知的障害者
知的障害者施設利用状況グラフ
図14-2 知的障害児
知的障害児施設利用状況グラフ

4 教育機関・障害施設と所属人数

現在、障害児のための市内福祉・教育施設の利用者数もしくは定員を表したものが次の表です。
表3は養護学校卒業生の進路の推移を示したものですが、平均するとここ数年は就職者が減少していますが、平均すれば20%程度が一般就労しています。約80%については通所施設等の処遇の場の確保が求められています。

表3 養護学校卒業生進路の推移 (人)

-

58



59



60



61



62



63







2



3



4



5



6



7

訓練機関 1 - 1 1 4 4 7 5 2 5 4 7 7
一般就労 19 16 19 25 22 23 32 27 31 19 18 26 20
授産場 3 12 5 6 10 6 10 7 8 8 5 7 9
授産施設 15 3 23 11 15 4 9 10 14 21 21 5 14
福祉活動ホーム内作業室 1 7 2 29 30 41 12 15 19 9 17 20 22
デイサービス施設 - - - - - - - - 9 11 12 2 6
入所更生施設 16 26 17 14 9 21 15 27 17 9 9 12 9
通所更生施設 1 - - - - 4 27 18 5 20 16 9 8
地域作業所 2 3 4 5 5 4 6 5 4 12 6 2 3
その他 6 5 1 6 4 6 2 5 8 3 7 3 2
総数 64 71 72 97 99 113 120 119 117 117 115 93 100

表1 福祉教育施設概要

経営形態種別
施設種別    
市立 私立 県立・市外措置 合計
施設数 定員 [現員] 施設数 定員 [現員] 施設数 定員 [現員] 施設数 定員[現員]





- 保育園(障害児) 88 - 280 20 - 41 - - - 108 321
幼稚園(障害児) 3 - 325 - - - - - - 3 325
知的障害児通園 3 150 〈338〉 - - - - - - 3 150
肢体不自由児通園 2 90 - - - - - - - 2 90
知的障害児施設 1 50 - - - - 15 - 22 16 72
肢体不自由児施設(重心) - - - - - - 10 - 33 10 33
小計 - - 97 290 605 20 0 41 25 0 55 142 991










障害児学級 113 - 449 - - - - - - 113 449
弱視学級 2 - 2 - - - - - - 2 2
ことばの教室 5 - 235 - - - - - - 5 235
たんぽぽ学級 4 - 62 - - - - - - 4 62
知的障害養護学校 1 - 19 - - - 1 - 14 2 33
肢体不自由養護学校 - - - - - - 1 - 36 1 36
市立聾学校 1 - 25 - - - - - - 1 25



障害児学級 47 - 182 - - - - - - 47 182
弱視学級 1 - 1 - - - - - - 1 1
知的障害養護学校 2 - 53 - - - 1 - 35 3 88
肢体不自由養護学校 - - - - - - 1 - 20 1 20
市立聾学校 1 - 17 - - - - - - 1 17



知的障害養護学校 2 - 165 - - - 1 - 66 3 231
肢体不自由養護学校 - - - - - - 1 - 24 1 24
市立聾学校 1 - 13 - - - - - - 1 13
小計 - - 180 - 1,223 - - - 6 - 195 186 1,418
-



療護施設 1 60 - - - - - 46 - 1 106
短期入所 - 10 - - - - - - - 0 10
デイサービス - 15 - - - - - - - 0 15
重度障害者デイサービス 1 30 - 2 60 - - - - 3 90
更生施設 - - - - - - - 1 - 0 1
授産施設 1 50 - - - - - 15 - 1 65
通所 - 10 - - - - - 3 - 0 13
身体障害者福祉センター 4 - - - - - - - - 4 0
盲人図書館 1 - - - - - - - - 1 0
小計 - - 8 175 0 2 60 0 0 65 0 10 300
-



更生施設 1 60 - 1 50 - 63 - 225 65 335
授産施設 1 40 - - - - 8 - 18 9 58
通所事業 1 10 - - - - - - - 1 10
通所更生施設 1 25 - 4 181 - - - - 5 206
通所授産施設 1 50 - 5 249 - 2 2 - 8 301
知的障害者福祉ホーム 1 10 - - - - 1 2 - 2 12
デイサービス 1 30 - - - - - - - 1 30
ショートステイ - 10 - - - - - - - 0 10
福祉活動ホーム - - - 8 180 - - - - 8 180
障害者地域作業所 - - - 23 265 - - - - 23 265
知的障害者生活ホーム - - - 28 123 - - - - 28 123
福祉授産場 6 - 225 - - - - - - 6 225
小計 - - 13 235 225 69 1,048 0 74 4 243 156 1,755
-



援護寮 1 - - - - - - - - 1 0
(宿泊部門) - 35 - - - - - - - 0 35
(デイケア部門) - 40 - - - - - - - 0 40
地域作業所 1 20 - 19 - 390 - - - 20 410
生活ホーム - - - 7 - 28 - - - 7 28
小計 - - 2 95 - 26 - 418 - - - 28 513
合計 - - 300 795 2,053 117 1,108 459 105 69 493 522 4,977

* 〈 〉は総合利用による実利用数
注 教育機関など定員設定がなじまないもの、デイサービスなど定員が設定されていないもの、市外施設などで定員を割愛して措置されているものは現員にて利用数を算定した。

5 精神障害者の実態

1)精神障害者の現状
川崎市における精神障害者の数は把握されていない。厚生省の全国推計から人口比により算出すると約15,000人(入院患者3,000人、通院患者12,000人)となります。
神奈川県精神病院協会へ委託して実施した「川崎市における精神科医療施設の医療供給体制の現状及び整備状況」によると、市内精神科・神経科医療機関へ受診している精神疾患患者数は入院が1,420人、通院が11,793人、合計13,213人です。
入院患者1,420人は疾病別では精神分裂病が72.5%、精神神経症7.7%、そううつ病6.3%となっています。
通院患者11,793人は疾病別では精神分裂病が29,0%、精神神経症が24.9%、そううつ病が16.3%となっています。

図16 精神障害者入院患者疾病
精神障害者入院患者グラフ
図17 精神障害者通院患者疾病
精神障害者通院患者グラフ

つぎに、平成5年1月神奈川県社会復帰援護会へ委託して実施した「川崎市における精神・神経科入院患者の社会復帰ニードの調査研究」によると、市内の精神科・神経科医療機関の入院患者1,361人のうち、精神分裂病患者は1,021人であり市内に居住するものは565人となっています。
年齢分布は表4のとおりであり、全体に高齢化が著しいが60才以上の患者が入院患者の19,3%を占め、在宅と併せ11%が60才以上です。

図18-1 市内入院患者居住地
入院患者居住地グラフ
図18-2 入院患者年齢
入院患者年齢グラフ
図18-3 通院患者年齢
通院患者年齢グラフ
図18-4 入院形態別分類
入院形態別分類グラフ

2)保健所における相談状況
保健所における相談者状況は図19のとおりです。5年間の推移を見ると総数で約24%の増加があり、新規相談者が40%の急激な増加が見られます。その内訳を見ると通院者が6割近い相談者であり、30%程度の増加傾向にあります。

図19 相談者内訳

相談者内訳棒グラフ

表4 精神障害者相談状況 (人)

- 平成3年 平成4年 平成5年 平成6年 平成7年
継続相談者 1,997 2,192 2,385 2,420 2,472
新規相談者 890 997 1,107 1,022 1,210
総数 1,107 1,195 1,278 1,398 1,262

次に、診療機関の種別を見ると、入院の場合は精神病院が39%を占め、市外の病院に入院しているものがほぼ半数となっています。通院者では市内通院者が80%です。

図21-1 診療機関(入院)

入院機関分類別棒グラフ

図21-2 診療機関(通院)

通院機関分類別棒グラフ

3)診断名

診断名別では精神分裂病が44%とほぼ半数ですが、そううつ病、老人性精神病(痴呆等)が急速に増加しています。

図22 精神障害者診断名

精神障害者診断名別グラフ


主題
障害者保健福祉計画
かわさきノーマライゼーションプラン
表紙~18頁

発行者
川崎市健康福祉局障害保健福祉部

発行年月日
1997.6

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