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総合福祉部会 第13回 H23.4.26 参考資料3

門屋委員提出資料

今後の障害者の相談支援のあり方に関する見解

2011年2月10日
社団法人日本精神保健福祉士協会

はじめに

 現在、障がい者制度改革推進会議の下に総合福祉部会が置かれ、政府の障害者自立支援法の廃止方針に基づき、新たな障害者総合福祉法(仮称)の制定のための骨格提言に向けた精力的な議論が展開されている。
 我が国の障害者福祉制度については、1990年代後半から社会福祉基礎構造改革の方向性に連動して障害者ケアマネジメントの導入が検討され、身体・知的・精神の各障害別ケアガイドラインが策定された。その後、2000年の社会福祉法改正を経て、2002年にはそれまでの障害別のケアガイドラインを活用しつつも、障害種別に関わりなく、総合的で調整のとれたサービスを一体的に提供するためとして、厚生労働省は障害者ケアガイドラインを策定した。この障害者ケアガイドラインに基づき、各地で開催する障害者ケアマネジメント従事者研修会、障害者ケアマネジメントの浸透が図られた。
 一方、2003年には身体障害児・者および知的障害児・者を対象とした支援費制度がスタートした。支援費制度は、障害者が必要なニーズを具体的に示し、そのニーズの妥当性を市町村が認定することを基本とした点で画期的な制度であったが、財源確保や精神障害者が制度の対象外となっていたことなどの問題から、2006年には3障害を対象とした障害者自立支援法に移行することとなった。障害者ケアマネジメントを展開する根拠に関しては、制度的位置づけや財源が確保されないままの状態が現在まで続いている。
 今般の議員提案による障害者自立支援法改正により、相談支援体制が強化されることは評価に値する。しかしながら、障害程度区分を基本とした障害福祉サービス等の支給決定の仕組みは変わらず、相談支援や支給決定のあり方は総合福祉部会の議論に委ねられている。
 総合福祉部会においては、新法策定にあたり、議論・検討が必要な課題について、課題別作業チームに分かれての検討が進められている。本協会は精神障害者の地域生活支援と権利擁護を担うソーシャルワーカーの職能団体であることから、特に「選択と決定・相談支援プロセス」作業チームの検討に強い関心を向けているところである。
 本協会は、障害者の相談支援は本来ソーシャルワーク機能を基本に置いて、ソーシャルワーカーが担うべきとする立場から、今後の相談支援のあり方に関して総合福祉部会で示されている論点に沿って、以下に見解を示すものである。

1.自己決定支援・相談支援のあり方について

○ 相談支援は、障害者が地域で自らが望む生活を送ることを実現するために、「相談」を通じて障害者本人のニーズを確認し、自立生活の実現に必要な支援サービスを組み立てるために機能しなければならない。なおかつ、本人の意思を最大限尊重し、必要な場合は相談支援を担当する者が代弁するといった権利擁護の機能を併せ持つ必要がある。

○ 相談支援は障害者本人のニーズ中心のケアマネジメントを基本とした制度上の位置づけが必要である。

○ 相談支援は、本人の自己決定の尊重、あるいは自己決定支援を一義として展開することが大原則であり、当然ながら相談支援を担当する者には一定の質が担保されなければならない。その質の担保のためには、相談支援を担う専門職は、我が国におけるソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士および社会福祉士を基本とする必要がある。

○ 特に、精神保健福祉士は今般の資格制度改正により、2012年度から自立支援給付の対象となる地域相談支援事業(地域移行支援、地域定着支援)の利用に関する相談に応じることが精神保健福祉士の定義に位置づけられた。精神障害者の地域生活支援を担う役割が明確にされたことからも、相談支援を通じて精神障害者の地域移行及び地域定着を着実なものとしていかなければならない。

○ また、精神保健福祉士は、精神障害者の支援に限らず、精神保健上の課題を持つ身体障害者や精神科を受診している知的障害者、発達障害者、高次脳機能障害者等の相談支援においても積極的にその役割を果たす必要がある。

○ なお、相談支援専門職は単に国家資格を有するだけでなく、相談支援の実務経験を有し、必要な研修を履修した者をもって充てることが必要であるとともに、現行の現任研修の目的に則り質の担保に資するため、履修期間等の見直しを図るべきである。

2.障害程度区分の機能と問題点

○ 現行では、障害程度区分認定調査を基礎とした支給決定の仕組みに関して、特に知的障害者および精神障害者の障害程度が反映されにくいことから、障害者自立支援法の施行前から多くの批判があった。

○ 認定調査項目は、介護保険の要介護認定調査項目に手段的日常生活動作(IADL)に係る項目および行動障害に関する項目、精神面等に関する項目が加えられているものの、これらの調査項目や調査員による特記事項および医師の意見書を勘案しても、障害者本人の真のニーズを反映した支援量および支援内容の支給決定にはつながっていないのが現状である。

○ 精神疾患がある場合は、医師の意見書に精神症状・能力障害二軸評価と生活障害評価が加えられており、障害程度区分判定の勘案要素とされているが、これらの評価は医療モデルによる評価に限定されてしまい、環境との相互作用による障害の現出といった社会モデルによる評価が反映されにくいものとなっている。

3.「選択と決定」(支給決定)プロセスとツールについて

○ 何らかの機能障害を特定するために医師の意見書は必要と考えるが、障害程度区分に基づく支給決定という現行のプロセスは廃止すべきである。新たにニーズ中心のケマネジメントのプロセスを取り入れ、相談支援専門職が障害者本人との「相談」の中から望む暮らしの実現のためのニーズをアセスメントし、本人の希望を最大限取り入れた支援計画案(サービス利用計画案)を作成し、自治体担当者との協議・調整により支給決定を行うプロセスに転換する必要がある。

○ 相談支援専門職はあくまでも障害者本人の立場に立つことを基本として、自治体やサービス提供事業所とは独立して相談支援活動を行えるようにしなければならない。

○ 支給決定のプロセスには、当然ながら支給決定期間を設定し、モニタリングによる再アセスメントと支援計画の見直しを位置付け、障害者のライフサイクルに応じた継続的な相談支援体制を確保する必要がある。

○ 地域における相談支援は日常生活圏域における地域相談支援センター(仮称)を基礎的相談支援機関として設置することが望ましい。併せて広域をカバーし単一の支援センターでは対応が不十分な障害者の具体的な相談支援を担当するとともに、スーパービジョン機能、総合的・包括的相談支援機能さらには各市町村間の相談支援の格差を是正する機能もつ中核的相談支援センター(仮称)を置く必要がある。

○ 支給決定のためのツールとしては、自治体による先行事例を参考としたパイロットスタディを実施して、事例収集・分析を行い、早急に「支給決定基準ガイドライン」(仮称)を開発すべきである。

4.その他

○ 現行では、相談支援事業の設置及び運営に係る費用の財源は地方交付税であり、自治体の一般財源から裁量的に充てられており、このことが相談支援体制の地域格差を生む要因となっている。このため、上記の中核的相談支援センター(仮称)の設置と併せて、相談支援に係る財源を確保し、市町村の責任性と格差の是正に向けた相談支援体制の整備を進めていく必要がある。

○ 新たな制度においては、個別給付化される相談支援の費用以外に、相談支援センターの基礎的運営に係る費用の財源は補助金として、国の負担を明確に示す必要がある。

○ 相談支援センターの補助額決定に当たっては、ソーシャルワーカーの配置に係る費用について、その算出根拠を国家公務員福祉職俸給表とすべきである。

以上