総合福祉部会 第9回 H22.11.19 資料1
部会作業チーム(法の理念・目的)議事要旨(10月26日分)
1.日時:平成22年10月26日(火)14:00~17:00
2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂
3.出席者
藤井座長、藤岡委員、山本委員
4.議題
- 目的規定、前文、法の名称について(藤岡委員の案を参考に)
- その他
5.議事概要
■ 目的規定等についての意見交換
- これまでの部会で出た意見や自分の意識から作成し、作業チームの第一次意見と位置づけたい。また、これを踏まえた条文のイメージを作成した。
- 障害福祉の公的責任を強化すべきとの観点から、措置制度から契約制度に移行したことにより、公共による保障が、間接的になったことによる問題性についても意見の中で指摘したい。
- 障害者自立支援法が応益負担を課し、障害も自己責任という考え方の法律である点を指摘しておく必要がある。
- 新しい法を権利保障法とすることは、こだわるべきである。
- 制度の谷間がない制度にすべきという点は、部会全体としての総意と思われる。
- 制度の谷間に関しては、刑務所や入管にいる障害者も含めるべき。
- 障害者の労働の保障については、将来的には、別に法律を制定する必要がある。
- 誰のための法なのかという点については、障害者に限らず全ての人のためと考えるべき。
- 法に基づく支援を受ける権利は、障害に限らず疾病の人も対象とすべきである。また、矯正施設の入所者も入れる必要がある。さらに、国籍に関わらず含めるべきである。
- 何らかの支援を必要とする人に、必要な支援をするという理念が大切である。選択肢の保障がない限り自己決定はない。精神障害者の社会保障に関しては、国が家族に頼る部分があまりに大きい。
- 新法においては、憲法の精神や規定を踏襲することが肝要。新法では支援申請権が権利として保障されることを明記し、行政による申請拒否行為を違法なものとして罰則化すべき。
- 新法は、教育や司法の分野にも影響を及ぼすものでなければならない。 身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法(この中の福祉分野)の3法につ いては廃止し、その内容は新法に統合すべき。発達障害者支援法も同様に考えるべきでは。
- 「他の国民と同等」を強調すべき。
- 一貫して変わっていない、財政を理由とした制約に影響を及ぼす法律でなければ。
- 支援が必要な場合にその支援がなされないのは差別とすべき。
- 「個性」ではなく「差異と多様性」とすべき。
- 「医療と福祉の連携」は要注意。精神障害分野については、「連携」の名の元に医療の傘に入れられることが心配。
- 現行の成年後見制度は必ずしも障害者の意思形成に資しているとはいえない。新法の制定と合わせて、関連分野としてこの点も見直しが必要。
■ 定義について
- 「目的」や「基本的な理念」関連の条項を考えて行くうえで基本的な用語についての定義が必要。論議を進めていくうえで、言語イメージの共有が重要。
- 具体的には、①自立、②地域生活、③公的責任、④受給権または請求権など。委員間でこれらを明文化する。
■ 新法の守備範囲について
- 新法の守備範囲に関して、医療との関係等、どうしてもグレーゾーンは発生してくる。他の分野との調整をどのように表していくかが難しい。
- 他の委員から、新法の守備範囲を原則福祉サービスに限定すべきと指摘しているが、精神障害当事者の視点からは、この結論に賛成できる。現行法で精神障害に係る医療を精神保健福祉法に書いてある。
- 95年の精神保健福祉法改正の経緯を知っておく必要がある。93年に障害者基本法が制定されたことを受けて精神保健福祉法を改正したと言われるが、それは違う。このとき、精神医療における、公費優先原則を止めたが、その見返りのような位置づけで精神保健手帳の制度を入れる形で「精神保健福祉法」へ改正。
- 人権に関しては、権利条約にもある「他の者との平等」という視点を独立させて記載してもいいのではないか。「他の者との平等」については、障害者権利条約第19条にあり、居住の場の選択の自由ととられがちだが、それに限らずもっと広く考えて、新法では、生活全般に当てはめて考えるべきである。
- 生活保障的な部分に合理的配慮の考え方を持ち込むのはどうかという思いがある。過度の負担がある場合に免責条項がある。これを根拠に、財政的な理由から支援を制約するということを行政が主張できてしまうのではないか。
- 支援の請求権があるという根拠に合理的配慮を持ち込むか否かは議論が必要。義務的経費で一元化すべき。
■ 前文について
- 前文を置く論拠はなにか。また、前文の性格は何か。
- 前文が必要ないという意見も出るかもしれない。しかし、これだけ大きな改革をやっていく理念をまず最初に掲げるのは不可欠である。各条文の細切れでは伝えきれず、それをカバーする意味も。
- 前文の性格は、何かを求める根拠にはならないが、本則を解釈するに当たっての指針にはなる。
- 歴史的な経緯を知らしめるために必要。
- いつの時代でも受け入れられるような前文にする必要があり、障害者自立支援法違憲訴訟や原告団・弁護団と国の基本合意等にあまり触れるのはどうかと思い、触れていない。
- 前文の案に「ノーマライゼーション」という言葉が出てくるが、障害者権利条約には出てこない。そこにはそれなりの意味があった。
- 「ノーマライゼーション」という言葉は浸透しており、受け入れ易いのでは。
- 基本法において、「インクルーシブ」はどのように位置付けられるのか。カナ文字で使われるのだろうか。漢字にすると「包容」とか「包摂」となるが、判りにくくなってしまう。
- 前文でもあり、「インクルーシブ」と書いてその説明を後ろに付ければいいと思う。
■ 法律名称について
- 藤岡委員の案は「障害児者の支援を権利として総合的に保障する法律」となっているが主題が分かりにくい。主題は生活支援のためなのだが、「生活支援」という言葉だと狭い印象を受ける。社会参加だと労働等も含まれるので広すぎる感じもある。
- 「自立」という言葉を法律名に使うのは避けるべきである。また、「福祉」という言葉はあいまいである。「総合的」という言葉は必要か。
- 「権利」という言葉は入れるべきである。
- 「総合的」という言葉は、制度の谷間をなくすことを明らかにするために必要と思う。
- 障害者総合福祉法ではなぜだめなのかという整理が必要である。
- この日の到達点として、「障害者等の社会生活支援を権利として総合的に保障する法律」。さらに検討の必要。
■ その他
- 11月12日に作業チームの委員で集まって打ち合わせを行う。
- 前文と定義についての藤岡案をさらに精査。