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障害者制度改革推進のための基本的方向

(第一次意見)

法律や制度をより良いものにする方向性
<わかりやすい版>

内閣府

障害者制度改革推進会議
平成22年11月発行

障害者制度改革推進のための基本的方向パンフレットの表紙

ほうりつやせいどをよりよいものにするほうこうせい(ひらがなばん)

1.障がい者制度改革推進本部・推進会議とは?

 「障がい者制度改革推進本部」(つぎからは、「推進本部といいます)は、総理大臣をトップに、全部の大臣をメンバーとして、内閣(国の行政を行なうところ)に平成21年(2009年)12月に作られました。推進本部の目的は、日本の法律や制度を国連の「障害者の権利条約」の考え方に合わせて変えていき、日本の障害のある人が暮らしやすくすることです。

 国連の「障害者の権利条約」とは、障害のある人の権利を守るという国の約束です。 障害者の権利条約は、「私たちに関係することを決める時は、必ず私たちの意見を聞いて決めること」(英語でいうと:Nothing about us without us)という考え方にもとづいて、日本人を含む、世界の多くの障害のある人が参加してつくられました。

写真1

写真1:国連障害者の権利条約特別委員会の政府代表団に顧問として加わっていた東俊裕障がい者制度改革推進会議担当室長(右端)

 この推進本部が、①障害のある人と②家族や支援者など、障害のある人を支える人の思いをまとめて、改革を実現するために作ったのが、「障がい者制度改革推進会議」(つぎからは「推進会議」といいます。)です。推進会議には全部で26人が参加しています。半分以上は、障害のある人の代表です。例えば、知的障害のある人、精神障害のある人、車椅子を使う人、目が見えない人、手話を使う人、耳が聞こえづらい人などさまざまです。また、推進会議の担当室長にも、障害のある人がなっているのは大切なことです。

 推進会議は、平成22年(2010年)の1月から6月まで、全部で14回の会議を開き、これからの日本の障害のある人に関係する「法律や制度をより良いものにする方向性」についての「第一次意見」をまとめました。

 この第一次意見をふまえて、障害者基本法の改正など大切な問題については、「第二次」の意見を平成22年(2010年)12月末までにまとめる予定です。

写真2

写真2:管直人総理大臣に第一次意見を手渡す推進会議小川榮一議長

2.情報バリアフリー・情報支援の大切さ

 推進会議には、さまざまな障害のある人がいます。

 会議をきちんと理解して、自分の考えていることをしっかり発言するために、いろいろな支援があります。

 たとえば、知的障害のある人には、支援者がついています。会議の資料には、ふり仮名がつけられています。また会議の中で、難しい言葉が使われたり、今、何が起きているのか分からないときには、「イエローカード」(下の写真と裏表紙を見てください)を使って、議長に伝えることができます。耳が聞こえなくて、話されていることが分からない人のためには、パソコンを使って、何が話されているかを字幕にする人(筆記者)がついています。

 目が見えなくて、耳が聞こえない盲ろう者には、指に点字を打つ通訳者がついています。また、手話通訳者がいます。手話通訳者は、手話ができる人と、手話ができない人がお互いに理解することを手助けしてくれる人です。

 こうした、いろいろな障害に応じた対応(「合理的配慮」といいます)は、全員が会議にきちんと参加するためには欠かせません。

 推進会議の様子は内閣府のホームページ(注)の動画でも見られるようになっています。動画にも字幕と手話があります。是非ご覧ください。

※パソコンを持っていない、使うことが難しい人は、住んでいる街の役所などに相談してみてください。

写真3

写真3:推進会議で土本秋夫構成員がイエローカードを出している様子

(注)

内閣府障害者施策ホームページ
http://www8.cao.go.jp/shougai/index.html

3.基本的考え方

1)「権利の主体」である社会の一員

 障害のある私たちに関係することを決めるときは、必ず私たちの意見を聞いて決めることが一番大切です。そのためには、情報が伝わらなければ、なにも決めることはできません。今までのように、本人抜きで決められた制度によって、がまんしたり、あきらめたりするのではなく、私たちは、自分に関することのすべてを自分で選んで、決める権利があります。

2)「差別」のない社会づくり

 「差別」とは、区別して、扱いに差をつけて、分け隔てすることです。差別には、合理的配慮がないことも含まれます。

 「障害」を理由として差別しない、されない社会をつくります。

3)「社会モデル」的観点からの新たな位置付け

 障害のある人が暮らしにくい、生きにくいのは、壁(バリア)を作っている社会に問題があるからです。そうした社会の壁を取り除くためには、私たちの社会が変わらなければなりません。

4)「地域生活」を可能とするための支援

 施設や病院などで暮らすことを押しつけられることなく、誰とどこに住むかを選び、地域で自立した生活ができるように、必要とする適切な支援を受けられるようにします。

5)「共生社会」の実現

 一人一人の個性や違いを認め、障害のある人も、ない人も、同じ人間として共に生きる社会を実現します。それは、誰にも出番や役割があり、その人らしく生きられる社会です。

4.基本的な課題における改革の方向性

(基本的な問題について、よりよいものにするための方向性)

1)地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築

 (私たちは地域で暮らす権利をもっています)

 私たちの社会には、障害があるという理由で他の人と違う暮らしをしている人がたくさんいます。もちろん障害のある人への支援は必要ですが、支援を受けるために他の人とは違う生活をさせられるのはおかしいことです。

 障害のある人が施設や病院から地域に移ることを応援するとともに、地域で安心して暮らしていけるように、教育や医療、福祉などの制度をつくっていかなければなりません。そのために、国は必要なお金を用意しなければなりません。

2)障害のとらえ方(障害って何でしょうか)

 障害のある人が生活の中で大変な思いをしているのは、その人の障害のせいではなく、障害のある人を生きづらくさせている社会の問題です(社会モデル)。障害者の権利条約でも、障害についてはこのように考えられています。

 障害のある人が社会の中で生きていくためには、障害のある人の他の人より特に目立つ点(特徴)や苦手なことを変えるのではなく、その人をありのまま受け入れるように、社会のほうが変わっていく必要があります。

 私たち一人一人が、このように考えるようになれば、障害のある人もない人も同じ社会で暮らす「共生社会」が実現するはずです。

3)障害の定義(障害があるかないか、どう決めたらいいのでしょうか)

 その人に障害があるかどうか、その障害は重いのか軽いのか。それは、その人が生活していくときに、どんなことがどれくらい大変なのかで決める必要があります。

 そして、その大変さが多い人も少ない人も、障害がある人としてきちんとサービスを受けられるよう、法律などを変えていくことが必要です。

4)差別の定義(差別って何でしょうか)

 これまで、障害のある人が他の人とは別に扱われても、ほとんどの人はそれを差別だと考えませんでした。 でも、政府が調べてみると、差別だと思われることはたくさんあります。

 何が障害を理由にした差別なのかをはっきりさせて、障害のある人への差別を禁止する法律をつくる必要があります。 その時には、合理的配慮(障害に応じた対応)がないことも差別であると考えなければなりません。

5)言語・コミュニケーションの保障

(障害のある人の言葉や、コミュニケーション〔気持ちを伝えること〕の方法が用意されること)

 手話や点字、要約筆記、指点字など、障害のある人が使う言葉やコミュニケーションの方法はたくさんあります。 障害のある人にこうした言葉やコミュニケーションの方法が用意されることの大切さを、きちんと法律で決めることが必要です。

指点字や手話のイラスト

6)虐待のない社会づくり(虐待をなくします)

 障害のある人への虐待は、その人を深く傷つけ、社会の中で自分らしく生きていくことを難しくします。 こうした虐待を防ぎ、虐待を受けた人を助ける法律が必要です。

泣いている子どものイラスト

7)障害の表記(「障害」という言葉をどう書いたらいいのでしょうか)

 「障害」という漢字2文字の言葉を、「障がい」や「障碍」「しょうがい」などのように変えようという意見があります。 推進会議では、専門家などの意見をもっと聞き、国民がどのように考えるかを見守りながら、これからも議論をつづけます。

8)実態調査(障害のある人たちの生活の調査をします)

 制度を変える前に、障害のある人やその家族がどんな生活をしているのか調べます。

5.横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方

(幅広い課題について、より良いものにするための方向とこれからの進め方)

1)障害者基本法を根本的に見直す

 「障害者基本法」(今の日本で、障害のある人たちに関する、一番もととなる法律)を、障害のある人たちの権利を守るための法律にするために、この会議(推進会議)で見直します。平成23年(2011年)に新しい法律をつくります。

2)新しい推進体制を作る

 中央障害者施策推進協議会と推進会議は、新しい法律によって、新しい会議となり、国が本当に障害者の権利条約を守り、障害のある人が暮らしやすくなるように取り組んでいるかどうかを調べる会議(モニタリング機関)となります。

3)「障害を理由とする差別の禁止法」を作る

 「障害を理由とする差別の禁止法」(差別を禁止し、合理的配慮をしないことを許さない法律)をつくります。推進会議と推進会議の中の別の会議(差別禁止部会)で話し合い、平成25年(2013年)に新しい法律をつくります。

4)障害者総合福祉法を作る

 「障害者自立支援法」をなくして、障害のある人がみんな、どの地域でも安心して暮らせるようにする新しい法律(仮の名前は「障害者総合福祉法」)をつくります。推進会議と、推進会議の中の別の会議(総合福祉部会)で話し合い、平成24年(2012年)に新しい法律をつくります。

6.個別分野における基本的方向と今後の進め方

(それぞれの分野でのより良いものにするための方向性と、これからの進め方)

次のことを政府に求めます。

1)労働及び雇用(働くこと)

 福祉的就労(会社ではなく、福祉施設や作業所などで仕事をすること)について調べ、平成23年(2011年)終わりまでに結論を出すこと。

 雇用率制度(会社で働く人の1.8パーセントは障害のある人、役所で働く人の2.1パーセントは障害のある人にしなさいと法律で決められていること)いついて調べ、平成25年(2013年)3月末までに結論を出すこと。

 職場での差別を禁止することと、合理的配慮について調べ、平成25年(2013年)3月末までに結論を出すこと。

2)教育(学校と勉強)

 障害のある子どもが障害のない子どもと一緒に勉強する(インクルーシブ教育)ための基本的な考え方について平成23年(2011年)3月末までに結論を出すこと。

 手話や点字を使う勉強や、発達障害や知的障害などのある子どもに合った勉強ができるように、手話ができるろう者の先生や、 点字が使える視覚障害の先生を雇ったり、発達障害や知的障害などのことを先生に良く分かってもらうための方法などについての基本的な考え方について、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。

3)所得保障等(お金など)

 障害のある人が地域で自分らしく暮らせるためのお金を持てるようにするために調べて、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。障害のある人が地域で自分らしく生活する場所があるようにするために、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。

財布とお金のイラスト

4)医療(病院)

 精神障害のある人を本人が納得していないのに無理やり、入院させたり、医者に見せることや、「保護者制度」(家族や後見人に責任を持たせる制度)について調べて、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。

 社会的入院(本当は入院していなくてもいいのに、地域で暮らすための充分な支援が受けられないために入院していること)をなくすために、精神障害のある人が退院できるように支援をしたり、地域で暮らしながら病院に通うための支援について調べて、平成24年(2012年)3月までに、結論を出すこと。

 病院に払うお金を、応能負担(お金がある人はたくさん払うこと)にするために調べて、平成23年(2011年)の終わりまでに結論を出すこと。

5)障害児支援(障害のある子どもへの支援)

 障害のある子どもやその親が住んでいる地域で、相談しやすくし、必要な支援をしてもらえるようにするためには何が必要か調べて、平成23年(2011年)の終わりまでに結論を出すこと。

6)虐待防止(虐待をなくす)

 虐待をなくすための仕組みをつくるために、すぐ調べること。

7)建物利用・交通アクセス(建物のバリア〔段差など〕をなくす、自由に移動できる)

 地方での建物や乗り物などを、バリアフリーを進めるために調べて、平成23年(2011年)3月末までに結論を出すこと。

8)情報アクセス・コミュニケーション保障(情報をえる・ほかの人と関係を持つ)

 情報バリアフリーを進めるために何が必要かについて障害のある人が参加して調べ平成24年(2012年)の終わりまでに結論をだすこと。

 地震や津波、台風、洪水などの災害が起こりそうな時や起きた時、役所から障害のある人にわかる形で連絡が入るようにするために何が必要か調べ、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。

9)政治参加(選挙など政治に参加する)

 テレビの政権放送(政党や候補者が意見を述べること)に字幕と手話をつけることについて調べ、平成23年(2011年)3月末までに結論を出すこと。

 投票所のバリアフリーを進め、投票所へ一人で行く事が難しい人への支援を行なうよう、市町村選挙管理委員会に求めること。

10)司法手続き(警察や裁判などの手続き)

 事件の被害者や加害者になった時、様々な障害のある人が困らないようにするために警察官や弁護士、検事、裁判官は何をしなければいけないのか調べ、平成24年(2012年)の終わりまでに結論を出すこと。

 弁護士や裁判官、検事、警察官、刑務官が障害のある人を理解するために必要な研修を、障害のある人や関係者の協力を得て進めること。

11)国際協力(世界の人と協力し合う)

 国連のアジア太平洋障害者の十年という、アジア太平洋地域での障害に関係する協力を進めること。

これからの推進会議と部会の取り組みの進め方の図

障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
(これからの推進会議と部会の取り組みと進め方)

第一次意見 第二次意見 障害者基本法
改正案提出
障害者総合福祉法
(仮)案提出
障害者差別禁止法
(仮)案提出
平成22年(2010年)
推進会議で
平成23年(2011年)
主に推進会議で
平成24年(2012年)
推進会議と総合福祉部会で
平成25年(2013年)
推進会議と差別禁止部会で

 このパンフレットは「第一次意見」を一人でも多くの皆様に分かりやすく伝えたいという推進会議の思いを受けてつくりました。しかし充分でないところもあるかと思います。その分は皆様で工夫していただければ幸いです。

障がい者制度改革推進会議構成員名簿

☆議長、★は議長代理

  大久保 常明 (福)全日本手をつなぐ育成会 常務理事
  大谷 恭子 弁護士
  大濱 眞 社)全国脊髄損傷者連合会 副理事長
☆ 小川 榮一 日本障害フォーラム 代表
  尾上 浩二 (NPO)障害者インターナショナル日本会議 事務局長
  勝又 幸子 国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析 部長
  門川 紳一郎 (福)全国盲ろう者協会評議員
  川﨑 洋子 (NPO)全国精神保健福祉連合会 理事長
  北野 誠一 (NPO)おおさか地域生活支援ネットワーク 理事長
  清原 慶子 三鷹市長
  佐藤 久夫 日本社会事業大学 教授
  新谷 友良 (社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 常務理事
  関口 明彦 全国「精神病」者集団運営委員
  竹下 義樹 (福)日本盲人会連合 副会長
  土本 秋夫 ピープルファースト北海道 会長
  堂本 暁子 前千葉県知事
  中島 圭子 日本労働組合総連合会 総合政策局長
  中島由起子 アジア・ディスアビリティ・インスティテート 代表
  長瀬 修 東京大学大学院特任 准教授
  久松 三二 (財)全日本ろうあ連盟 常任理事・事務局長
★ 藤井 克徳 日本障害フォーラム幹事会 議長
日本障害者協議会 常務理事
  松井 亮輔 法政大学 名誉教授
  オブザーバー  
  遠藤 和夫 日本経済団体連合会労働政策本部 主幹
  福島 智 東京大学先端科学技術研究センター 教授

(敬称略五十音順)


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イエローカード