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高度情報化社会に向けて

パソコンのある生活

西川謙弥

 私は長期入院生活をしている。そのため外出をしたり、外の人と接する機会はとても少ない。体の自由はきかず、ふつうのナースコールの押しボタンスイッチは押せないし、パソコンのふつうのキーボードも使えない。にもかかわらず、パソコンは私の生活に欠かせないものになっている。

 秘密兵器は、モールス符号を打つことにより、パソコンの入力を可能にした特殊なキーボードである。これを使うと、指先のわずかな軽い動きですべてのキーの代わりができ、しかも、英字26文字なら14秒ほどで打つことができる。キーの入力にわずらわされずにパソコン上の作業に集中できるスピードである。

 起きている時間のほとんどをパソコンに向かっている。パソコンはとても興味深く、何時間やっていても、決して飽きることはない。なぜならば、パソコン以外のほとんどのことはすべて他の人の手を借りなくてはならないが、パソコンは自分の思うままに好きなことができるのである。

 つまり、パソコンといるときが一番自由であり、体は動かなくても、体の障害が「障害」でなくなる。

 気ままに手紙や文章を打ったり、パソコン通信で情報収集や外部の人との交流をしたりできるし、辞書や事典のCD―ROMを検索すれば、調べたい字やことがらを即座に調べられる。そればかりではない。

 市販ソフトに満足できなければ、自分でプログラムを作ったりファイルを書き換えたりして、自分に一番あった自分だけのプログラムや自分だけの使い方すら追求できるのである。

 勉強して工夫をすればするほど可能性が拡がる。私にとってパソコンは単に「道具」というばかりでなく、自分の創造力を思う存分発揮できる「場」そのものなのである。

(さいかわけんや 新潟市)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1995年10月号(第15巻 通巻171号) 48頁