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気になるカタカナ

サービス

奥野 英子

 外来語が日本に導入されるとき、適切な日本語に翻訳することが困難であったり、外来語のままのほうが適切である場合に、カタカナで表記されています。「サービス」について、身体障害者福祉分野における法令、通知、答申等をすべて当たってみましたが、「サービス」の用語として明記されていたのは次のとおりでした。

 〔サービスの種類として〕福祉サービス、施設サービス、在宅福祉サービス、デイサービス、ホームヘルプサービス、介護サービス、入浴サービス、給食サービス、送迎サービス、オンライン情報サービス、手話サービスなど。

 〔一般的なことばと結合して〕サービス内容、サービス実施方法、サービス提供、サービス利用者、サービス従事者、サービスガイドライン、サービス実施主体など。

 「サービス」が、法令、通知、運営要綱等に取り入れられた時期は、平成2年の「社会福祉八法改正」の頃からであり、高齢者の増加に伴う在宅福祉サービスのニーズの高まりとともに、導入されてきたと言えるでしょう。

 一方、一般社会においては「サービス」は広範囲に使われており、これらの一部を列記すると「家庭サービス、アフターサービス、モーニングサービス、出血サービス、サービスエリア、サービスステーション」などがあります。福祉分野における「サービス」と一般的に使われている「サービス」は、同意義のものもあれば、意味に大きな差異のあるものがあります。一般的な使われ方では、価格を低くしたり、特別な配慮をする等、提供側の恣意性がある面もありますが、福祉分野において使用している「サービス」には提供側の恣意性とか恩恵的な意味合いはなく、「事業」と同義語的に使用されています。

 ちなみに、本年7月にウィーンにおいて開催された「世界ろう者会議」において、日本の参加者から「手話サービス」の用語について、「サービスという恩恵的な用語に対して、皆さんは抵抗感はないのですか?」と問題提起がなされました。これに対して海外の参加者から「サービス」という用語には恩恵とか恣意的な意味はないとの応答がなされました。外来語がカタカナで日本に導入されるとき、本来の意味と異なった意味合いになり、国際的に誤解が生じる危険性があることに留意する必要があるでしょう。

(おくのえいこ 厚生省社会・援護局更生課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1995年11月号(第15巻 通巻172号) 40頁