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特集/障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~決定

障害者プランについて

厚生省社会・援護局更生課

【プランの骨格】

 リハビリテーションとノーマライゼーションの理念を踏まえ、次の7つの視点から施策の重点的な推進を図る。

① 地域で共に生活するために
 ・住まい(公共賃金住宅、グループホーム等)や働く場(授産施設等)の確保
 ・障害児の地域療育体制の構築
 ・精神障害者の社会復帰・福祉施設の充実等
 ・介護サービス(ホームヘルパー、入所施設等)の充実
 ・移動やコミュニケーション支援など社会参加の促進
 ・難病を有する者への介護サービスの提供 等

② 社会的自立を促進するために
 ・各段階ごとの適切な教育の充実
 ・法定雇用率達成のための各種雇用対策の推進
 ・第三セクター重度障害者雇用企業等の設置促進 等

③ バリアフリー化を促進するために
 ・車いすがすれ違える幅の広い歩道の整備
 ・公共交通ターミナルにおけるバリアフリー化の推進
 ・高速道路等のSA・PAおよび「道の駅」における障害者への配慮
 ・公共性の高い民間建築物、官庁施設のバリアフリー化の推進 等

④ 生活の質(QOL)の向上を目指して
 ・福祉用具等の研究開発体制の整備
 ・情報通信機器等の研究開発・普及
 ・情報提供、放送サービスの充実、スポーツ、レクリエーション振興 等

⑤ 安全な暮らしを確保するために
 ・手話交番の設置、手話バッチの装着の推進
 ・ファックス一一〇番の整備
 ・災害時の障害者援護マニュアルの作成・周知 等

⑥ 心のバリアを取り除くために
 ・交流教育の推進
 ・ボランティア活動の振興
 ・精神障害者についての社会的な誤解や偏見の是正 等

⑦ 我が国にふさわしい国際協力・国際交流を
 ・ODAにおける障害者への配慮、国際協調の推進 等

 平成7年12月18日の障害者対策推進本部(本部長:内閣総理大臣)の会議において、平成8年度を初年度とし、平成14年度までの7か年を計画期間とする「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」が決定された。関係19省庁により構成される障害者対策推進本部においては、平成5年3月に、同年から平成14年までを計画期間とする「障害者対策に関する新長期計画」を策定しているが、今回策定した障害者プランは、新長期計画をさらに具体的に推進していくための重点施策実施計画の位置付けになるものであり、例えば数値目標を設定する等具体的な書き込みがなされているところである。

3つのプラン

 障害者プランの策定の意義は、大きく次の3つに整理することができる。

 第1は、高齢者施策の新ゴールドプラン、児童家庭対策としてのエンゼルプランに加えて、障害者プランがスタートすることになり、保健福祉施策の3つのプランができ上がり、保健福祉施策の強力かつ計画的な推進が可能となることである。

 与党三党においては、平成6年9月以来、その機関である福祉プロジェクトにおいて、中長期的な福祉施策の推進方策について検討を進めてきており、平成6年12月に、ゴールドプランの見直し(新ゴールドプラン)と、今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)の取りまとめを実現したが、障害者のためのプランについては策定に至っておらず、積残しになっていた経緯がある。福祉プロジェクトにおいては平成7年初めからすぐに精力的に作業に取り組み、六月に、方向性についての中間的なとりまとめを行い、年末までに数値目標を含む総合プランを策定することを強調している。

 厚生省においても同じく平成6年9月に、事務次官を本部長とする障害者保健福祉施策推進本部を設置し、障害者施策の総合的な推進方策について検討を進めてきたが、与党の取りまとめの1か月余り後の平成7年7月に中間報告を公表した。中間報告においては、①障害者保健福祉分野において、具体的目標を明示した新たなプランを策定すること、②新たなプランに基づき、市町村などによる介護等のサービス供給体制を整備し、その充実を図ること、③厚生省における障害者施策を総合的に推進する組織の整備を図ること、などを提言しており、年末までのプランづくりを、厚生省も約束したわけである。

 このような一連の流れを経て、高齢者、児童家庭のプランと合わせて3つのプランが出揃うに至ったものである。なお、厚生省の中間報告の提言の③の「組織の整備」についても、現在の障害の種類別の3局3課体制を改め、平成8年度に大臣官房に「障害保健福祉部(仮称)」を設置することとしている。

数値目標の設定

 策定の意義の第2は、グループホーム・福祉ホームの整備、ホームヘルパーの増員等障害者の生活を支える基幹的な事業について、数値目標を設定するなど具体的な施策目標を明記し、その達成に向けた国、地方一体となった取組みにより、障害者施策を強力に推進することが可能となることである。

 障害者施策の計画としては既に「障害者対策に関する新長期計画」が策定されており、新たなプランについては、新ゴールドプランなどと同様に、数値目標など具体的な施策目標を設定することが政策課題となっていた。

 このため、厚生省においては、各種の事業や施設について、例えばグループホームや福祉ホームについては障害者のニーズに対応できるようにすることを目標に、また、精神障害者の社会復帰施設については、地域の社会復帰や福祉の基盤を整備することにより、退院可能な患者の社会復帰を促進することを目標に、ホームヘルパーについては障害者のニーズに対応することができるよう新ゴールドプランの整備目標に上乗せすべき増員目標として、それぞれの具体的な整備目標を示したところである(詳細については資料を参照されたい)。

 他の省庁においても、新たに整備する全ての公共賃貸住宅は、身体機能の低下に配慮した仕様とする(建設省)、第3セクターによる重度障害者雇用企業等の全都道府県域への設置を促進する(労働省)、段差5メートル以上、1日の乗降客5000人以上の既設駅について、エレベーター等の設置を計画的に整備するよう指導する(運輸省)等、具体的な施策目標を盛り込んでいるところである。

横断的、総合的充実

 策定の意義の第3は、関係省庁一体となった取組により、障害者の生活全般にわたる施策が横断的、総合的に充実されることである。

 厚生省がその担当する分野だけでプランを策定しても、住宅、教育、雇用、都市環境、通信放送など、障害者に必要とされる施策をカバーすることはできず、与党福祉プロジェクトにおいても、関係省庁一体となってプランを策定すべきとの声が強かったものである。これを受けた総理府(障害者対策推進本部担当室)が各省との調整に当たり、最終的に新長期計画の重点施策実施計画としての位置付けで、関係省庁の参加する障害者プランが実現したものである。

 こうした経過で障害者プランが策定され、平成8年度スタートということになった。概算要求の段階では「今後検討」とされていた厚生省のプラン関係予算についても、251億円増の2025億円が確保されており、これからプランの具体化に向けた取組が進められる。駅のバリアフリー化や障害者雇用の推進なども合わせ、官民一体となった取組が期待されるところである。

 

障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~

障害者対策推進本部

1 位置づけ

 「障害者対策に関する新長期計画」(平成5年度から14年度)の具体化を図るための重点施策実施計画とする。

2 基本的考え方

 国においては、ライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と、障害者が障害のない者と同等に生活し、活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念の下、「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、その推進に努めているところであるが、この理念を踏まえつつ、次の7つの視点から施策の重点的な推進を図る。

 ①地域で共に生活するために

 ②社会的自立を促進するために

 ③バリアフリー化を促進するために

 ④生活の質(QOL)の向上を目指して

 ⑤安全な暮らしを確保するために

 ⑥心のバリアを取り除くために

 ⑦我が国にふさわしい国際協力・国際交流を

3 期間

 本プランは、平成8年度から平成14年度までの7か年計画とする。

4 推進方策等

(1) 本プランの推進状況を定期的にフォローアップし、社会経済情勢の変化、関連制度・法令の改正、市町村障害者計画の策定状況等を踏まえ、必要に応じプランの見直しを行う。

(2) 障害者施策は広範な分野にわたるため、関連する分野の施策が効果的かつ効率的に実施されるよう関係行政機関相互の連携を強化する。

(3) 各施策の適正な推進の基礎となる障害者等の実態調査については、プライバシーに配慮しつつ、関係者と十分調整して実施する。

5 地方公共団体への支援

(1) 本プランに対応し、地方公共団体が地域の特性に応じ主体的に取り組む障害者施策を積極的に支援する。

 特に地方公共団体が地方単独事業で行う障害者にやさしいまちづくりや障害者の社会参加等のための施設整備、保健福祉マンパワー養成に関する事業に対して積極的な支援策を講ずる。

(2) 市町村の施策の実施に当たって、障害者等の意見を適切に反映するため、市町村の自主性、主体性を尊重しつつ、市町村障害者計画の策定と障害者及び障害者福祉事業に従事するメンバーを含む市町村の地方障害者施策推進協議会の設置等を促進する。

(3) 本プランが都道府県・市町村の障害者計画へ適切に反映され、施策の計画的推進が図られるよう、計画策定手法の普及、計画づくりへの支援等を行う。なお、必要に応じ、複数の市町村による広域的な計画づくり等の取扱いについても検討する。

6 各施策分野の推進方向

 地域で共に生活するために

 ノーマライゼーションの理念の実現に向けて、障害のある人々が社会の構成員として地域の中で共に生活を送れるように、ライフステージの各段階で、住まいや働く場ないし活動の場や必要な保健福祉サービスが的確に提供される体制を確立する。

1.住まいや働く場ないし活動の場の確保

(1) 住宅整備の推進

 ◎新設される全ての公共賃貸住宅を、段差の解消等身体機能の低下に配慮した長寿社会対応仕様とするとともに、住戸改善の際にもできる限り同様の仕様とする。

 ◎住宅に困窮する障害者等の居住の安定を図るため、障害者等を優先入居の対象とする公共賃貸住宅の供給を積極的に推進する。

 ◎障害者等が暮らしやすい民間住宅の整備を推進するため、「長寿社会対応住宅設計指針」の普及を図るとともに、公的融資制度等を通じて、長寿社会対応仕様の住宅取得、身体障害者に配慮した住宅建設・改造等の促進を図る。

 ◎生活支援の機能を持つ住宅であるグループホーム及び福祉ホームを、ニーズに対応できるようにするため、約2万人分を目標として計画期間内に整備する。

 ◎障害者世帯向け公営住宅や福祉施設を併設・合築した公共住宅団地の建設を推進するとともに、公営住宅のグループホームへの活用を進めることにより、障害種類別の特性やニーズに応じた良質な住宅の供給を図る。

 ◎地方公共団体が策定する住宅マスタープランにおいて、障害者向けの公共賃貸住宅に関する事項を盛り込むことを促進し、障害者のニーズに対応した住宅の供給を推進する。

 ◎地域生活に円滑に移行するための精神薄弱者通勤寮の整備の促進を図る。

(2) 福祉的配慮のされた働く場ないし活動の場の確保

 ◎授産施設及び福祉工場を、ニーズに対応できるようにするため、約6.8万人分を目標として計画期間内に整備する。

 ◎小規模作業所について、授産施設の分場方式の活用及びデイサービス事業の拡充による法的施設化を進めるとともに、助成措置の充実を図り、運営の安定化を推進する。

2.地域における障害児療育システムの構築

 ◎各都道府県域において、療育に関する専門的指導等を行うことのできる、障害児療育の拠点となる施設の機能の充実を図るとともに、市町村が行う心身障害児通園事業等の地域療育に対し、障害児通園施設等が指導・支援する事業を、概ね人口30万人当たり概ね2か所ずつを目標として実施する。

 ◎障害児通園施設の見直しを図り、障害の種別にとらわれない利用を図る。

 ◎在宅の障害児が身近な場所に通うことができるよう、保育所等を活用した小規模の心身障害児通園事業及び重症心身障害児(者)のための通園事業を約1.3千か所を目標として計画期間内に整備する。

3.精神障害者の保健医療福祉施策の充実

(1) 社会復帰・福祉施策の充実

 ◎グループホーム、福祉ホーム、授産施設及び福祉工場に加え、精神障害者生活訓練施設(援護寮)については約6千人分を目標として、精神障害者社会適応訓練事業については約5千人分を目標として、計画期間内に整備する。

 ◎社会復帰施設の整備を促進し機能の強化を図る。

 ◎地域で生活する精神障害者の日常生活の支援や日常的な相談への対応、地域住民との交流を支援する事業を、社会復帰施設に付置する形で、概ね人口30万人当たり概ね2か所ずつを目標として実施する。

 ◎精神保健福祉センターや保健所等による相談指導の充実、家族会活動や患者会活動への支援、精神障害者社会復帰促進センターの事業の充実、手帳に基づく福祉的措置の充実など地域精神保健福祉施策の充実を図る。

 ◎精神障害者の特性に留意しつつ、社会復帰のための訓練を充実するとともに、社会的自立をめざし訓練から雇用へつながるよう、雇用施策との連携を図る。

(2) より良い精神医療の確保

 ◎夜間や休日を含めて緊急の精神科対応ができるよう、精神科救急医療システムの整備を進める。

 ◎精神障害者の人権に配慮しつつ、合併症を含め病状に応じた適切な医療が確保できるよう体制の整備を図る。

 ◎医学的リハビリテーションにより精神障害者の社会復帰を促進する等のため、精神科デイケア施設を約1千か所を目標として計画期間内に整備する。

 ◎精神病院の病棟の近代化を推進し、療養環境の向上を図る。

 ◎質の高い療養生活が安心して送れるよう、長期入院者の医療の在り方について多角的な視点からの検討を進める。

4.介護等のサービスの充実

(1) サービス供給体制の整備

 ◎ガイドヘルプなど障害者特有のニーズにも配慮しながら、身体介護や援助を必要とする状態の者にホームヘルプサービスが的確に供給できるよう、また、デイサービスやショートステイを必要とする者及び入所施設での処遇を必要とする者がこれらのサービスを利用できるよう、市町村におけるサービス提供体制を整備する。

(2) 在宅サービスの充実

 ◎ホームヘルパーについては約4.5万人、デイサービスセンターについては約1千か所、ショートステイについては約4.5千人分となることを目標として計画期間内にそれぞれ整備する。

 ◎施設の有するマンパワー等の専門的機能を活用し、地域への支援機能の充実を図る。

 ◎公営住宅や福祉ホーム等に住む身体障害者を対象とする介護サービスの提供の充実を図る。

(3) 施設サービスの充実

 ◎重度障害者等の福祉、医療ニーズに的確に応えられるよう、地域的なバランスに配慮しつつ、生活・療育の場として必要な入所施設を整備することとし、特に供給が不足している施設の待機者を解消するため、身体障害者療護施設については約2.5万人分、精神薄弱者更生施設については約9.5万人分となることを目標として計画期間内にそれぞれ整備する。

 ◎入所施設について、個室化の推進等生活の質の向上を図る。

 ◎介護機器など福祉用具の積極的導入による施設機能の近代化、自立支援機能の強化を推進する。

 ◎多くの障害者が入所している救護施設についても、その処遇の質的充実を図る。

(4) 重度化・高齢化への対応及びサービスの質的向上

 ◎常時の援護が必要な重度・重複障害者に対する施策の充実を図る。また、障害者やその家族の高齢化に伴う諸問題に適切に対応できるよう、調査研究を進める。

 ◎障害の種別や程度等個々の特性や障害者のニーズに応じ、適切な介護等のサービスが提供できるよう、ガイドラインの策定等を行う。

 ◎障害者が生活機能を回復・取得するために必要な医療、機能回復訓練、障害者の年齢等に応じた社会生活訓練等についての研究及び開発を推進する。

5.総合的な支援体制の整備

 ◎身近な地域において、障害者に対し総合的な相談・生活支援・情報提供を行う事業を、概ね人口30万人当たり概ね2か所ずつを目標として実施する。

 ◎障害者の実情に応じた相談・調整に当たることのできる専門スタッフの養成を図る。

 ◎医療機関におけるリハビリテーション医療の一層の充実を図るとともに、歯科保健医療を含め、障害者にとっての医療の確保を図る。

 ◎相談・判定機能と施設機能、医療機能の統合連携を通じ、総合的なリハビリテーションの体制整備を図る。

6.福祉施設の適正な立地の促進等

 ◎高齢者の施設等他の保健福祉施設や地域の公共施設との合築や複合的な整備を推進する。

 ◎区画整理、再開発等まちづくりに関する事業と連携してデイサービスセンターやリハビリテーション施設等、福祉施設の適正な立地を計画的に誘導するとともに、福祉施設の公共住宅団地への併設、合築等を積極的に推進する。

 ◎福祉施設、医療施設の周辺において、障害者にとってより利用しやすい歩行空間の整備を優先的に推進する。

7.障害者施設体系の見直しと施設・サービスの総合的利用の促進

 ◎障害者のニーズに的確に応え、身近な地域において効果的な施設機能が発揮できるよう、障害の種別や程度、障害者の年齢を踏まえつつ、総合化等の観点から障害者施設体系について見直しを行う。

 ◎障害の種別や程度、障害者の年齢を踏まえつつ、障害者関係施設の総合的利用の促進を図るとともに、高齢者のものも含めたサービスの共同利用の促進を図る。

8.社会参加の推進

 ◎障害者にとって最も身近な市町村を中心に、福祉バスの運行等移動時の支援施策や手話通訳者の設置、点字広報の配布等コミュニケーション確保の施策等障害者が社会参加するために必要な援助を行う事業について、概ね人口5万人規模を単位として計画期間内に実施することを目標として推進する。

 ◎遠距離での移動を容易にするガイドヘルパーネットワーク事業、盲導犬育成事業、精神薄弱者の社会参加活動の支援事業等を推進する。

9.マンパワーの養成・確保

 ◎ホームヘルパー、施設職員、地域における専門スタッフ等の計画的養成・確保を図るとともに、作業療法士理学療法士などリハビリテーションに係るマンパワーの量的・質的充実を図る。

 ◎障害者の特性に対応できるようホームヘルパー養成研修の充実を図る。

 ◎業務省力化・勤務時間の短縮・福利厚生の充実による保健福祉職員の職場環境の整備を進め、良質な人材の安定的確保を図る。

 ◎点訳奉仕員、朗読(録音)奉仕員、手話通訳者その他専門的知識・技能を有する者の養成・確保を図る。

 ◎精神科ソーシャルワーカー、臨床心理技術者等の資格の在り方について、鋭意検討を進める。

10.市町村中心の保健福祉サービス体系

 ◎市町村域・複数市町村を含む広域圏域・都道府県域の各圏域ごとの機能分担を明確にし、各種のサービスを面的、計画的に整備することにより、重層的なネットワークを構築する。

 ◎障害児・精神薄弱者施策において、市町村をサービスの決定・実施の主体とすることを検討する。

 ◎精神障害者のための社会復帰施策や福祉施策等については、都道府県の施策の充実を図りつつ、身近な施策については市町村の役割を高めていく方向で検討を進める。

 ◎市町村が近隣の市町村と協力・連携を図ることや都道府県等との連携体制を整備することにより、地域におけるサービス提供の的確な実施を推進する。

 ◎都道府県については、市町村に対する支援や市町村間の調整、精神医療の体制整備など広域性・専門性の高い分野の業務の充実を図る。

11.成年後見制度の検討

 ◎精神薄弱者、精神障害者や痴呆性老人の財産管理や権利擁護等を内容とする、いわゆる成年後見制度について検討する。

12.所得保障

 ◎障害無年金の問題について、年金制度の在り方全体をにらみながら、年金制度の中で対応するか福祉的措置で対応するかを含め、幅広い観点から検討する。

13.難病を有する者への対応

 ◎難病を有する者に対して、関連施策としてホームヘルプサービス等適切な介護サービスの提供を推進する。

 社会的自立を促進するために

 障害者の社会的な自立に向けた基盤づくりとして、障害の特性に応じたきめ細かい教育体制を確保するとともに、教育・福祉・雇用等各分野との連携により障害者がその適性と能力に応じて、可能な限り雇用の場に就き、職業を通じて社会参加することができるような施策を展開する。

1.障害のある子供達に対する教育の充実

 ◎盲・聾・養護学校、小・中学校の特殊学級における適切な教育を行うため、研究指定校による実践的研究、各種手引書の作成等により指導内容・方法の充実を図るとともに、教育設備等に対する補助を行う等、その充実を図る。

 ◎軽度の障害のある児童生徒に対し障害の種類等に応じた専門的な指導を行うため、指導主事、通級担当教員に対する指導方法等の研修の充実を図る。

2.教育相談体制・研修の充実

 ◎教育委員会において、教育、医療、福祉等の各関係機関の専門家が連携し、早期から適切な教育相談が行える体制を整備するとともに、指導資料の作成や相談技術の向上に関する研修を実施するなど、教育相談の充実を図る。

 ◎担当教員に対し障害の特性に応じた専門的な内容(障害児の心理、各種発達検査、視覚障害者のための点字、聴覚障害者のための口話法・手話、発達特性・運動動作・病気の知識と理解等)の研修の充実を図る。

3.後期中等教育段階における施策の充実

 ◎盲・聾・養護学校の高等部について、社会の変化や生徒の実態の多様化等に対応した適切な教育を行うため、その整備を進めるとともに、教育内容・方法の改善等を図る。

 ◎盲・聾・養護学校と労働・福祉関係機関や企業との連携を強化し、現場実習の充実や職域拡大を図る等、職業教育及び進路指導の充実を図る。

4.法定雇用率達成のための障害種類別雇用対策の推進

(1) 身体障害者雇用の推進

 ◎実雇用率が法定雇用率を相当下回っている現状に鑑み、法定雇用率の達成に向けて、各種助成措置の活用、事業主の指導・援助の強化等身体障害者雇用率制度の厳正な運用を行う。

 ◎中途障害者については、雇用継続に係る諸問題を把握し、円滑な職場復帰を図るための施策を充実する。

 ◎自営業に就いている障害者については、引き続きその就業実態の把握及び支援の在り方の調査研究を行い、その結果を踏まえ、必要な雇用・就業対策を講ずる。

(2) 精神薄弱者雇用の推進

 ◎精神薄弱者の特性に応じた職域の開発、職業の能力の開発、人的援助体制等の条件整備を推進するとともに、精神薄弱者の雇用の実態を踏まえて、雇用率制度の在り方を検討する。

(3) 精神障害者雇用の推進

 ◎医療・福祉等と連携した支援体制の整備を図るとともに、精神障害者の特性に配慮した柔軟な職業リハビリテーションの実施及び雇用管理に関する支援等施策の充実を図る。また、精神障害者の雇用実態等を踏まえ、雇用率制度の適用の在り方を検討する。

5.重度障害者雇用の推進

 ◎重度障害者の雇用機会の拡大を図るため、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の支給等により、第3セクターによる重度障害者雇用企業等の全都道府県域への設置を促進する。

 ◎重度障害者の多様な職種の雇用事例の作成とその成果の事業主への普及を内容とする「重度障害者雇用促進プロジェクト事業」の充実を図る。

 ◎重度障害者等特に就職が困難な障害者については、医療・福祉関係機関との連携や、職場環境や生活環境の整備等を行う体制を整えることが必要であるため、「障害者雇用支援センター」の設置を促進する。

6.職業リハビリテーション対策の推進

 ◎「障害者職業総合センター」において、職業リハビリテーションについての高度かつ先駆的な調査研究を行うとともに、職業リハビリテーションに従事する専門職員等の確保及び資質の向上を図る。

 ◎地域の民間企業と協力し、職業的自立に必要となる総合的・具体的な障害者の職域開発のための援助を行う事業を拡大するとともに、障害者雇用企業のノウハウを活用した職場実習等弾力的な職業リハビリテーションを拡充する。

 バリアフリー化を促進するために

 障害者の活動の場を拡げ、自由な社会参加が可能となる社会にしていくため、様々な政策手段を組み合わせ、道路、駅、建物等生活環境面での物理的な障壁の除去に積極的に取り組む。

1.歩行空間の整備

 ◎21世紀初頭までに歩行者利用が見込まれる主な道路(26万㎞)のうち約5割(約13万㎞)について、車いすがすれ違え、障害者等も安全で快適に利用できる幅の広い歩道(幅員3m以上)を整備することを目標に、その整備を推進する。

 ◎障害者等が安心して移動し、憩うことができる歩行空間を画的に確保するため、住居系・商業系地区における通過交通を制限できるコミュニティ道路等の整備を積極的に推進する。

 ◎歩道の段差解消や視覚障害者誘導用ブロックの設置を積極的に推進するとともに、放置自転車をなくすための自転車駐車場の整備、電線共同溝の整備等による電線類の地中化等を通じ、安心して歩行できる空間を確保する。

 ◎大都市圏の大部分の駅や地方圏の主要な駅を中心に、駅前広場、車道部の嵩上げにより連続的に平坦性が確保された幅の広い歩道、昇降装置付立体横断施設、動く歩道等の整備等を推進する。

2.移動・交通対策の推進

(1) 公共交通ターミナルのバリアフリー化の推進

 ◎「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」等に基づき、各交通事業者等を指導するとともに、補助や財政投融資を活用しつつ、公共交通ターミナルのバリアフリー化を推進する。特に鉄道駅においては、事業者に対して「鉄道駅におけるエレベーター整備指針」等に基づき、エレベーターについては、新設又は大改良を行う駅には原則として設置するとともに既設駅についても5m以上の段差があり、1日当たりの乗降客が5千人以上ある駅には順次計画的に整備すること等を重点的に指導する。

(2) 障害者等に配慮した車両の導入及びバス停等の整備

 ◎「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両に関するモデルデザイン」やリフト付路線バスの導入等への国費による補助等の支援を活用しながら、公共交通機関における障害者等が利用しやすい車両の導入について事業者を指導する。

 ◎バス停、路面電車停留所におけるベンチの設置等施設の充実及び歩道の嵩上げによる低床式バスへの対応等を促進する。

(3) 道路交通環境の整備

 ◎都市内の障害者用駐車スペースの確保を推進することとし、特に道路附属物として整備する駐車場については、全て障害者用駐車スペースを整備する。

 ◎高速道路等のサービスエリア及びパーキングエリア並びに主要な幹線道路で整備を進めている「道の駅」の全てについて、障害者用トイレ、駐車スペースを整備する。

 ◎平成8年度を初年度とする第六次交通安全施設等整備五箇年計画に基づき、障害者の利用に配慮した交通安全施設の整備を推進する。

(4) 運転免許取得希望者等に対する利便の向上

 ◎指定自動車教習所に対し、身体障害者用教習車両の整備や改造等を行った持ち込み車両等を使用した教習の実施等、必要な指導を行う。

 ◎運転免許試験場に身体障害者用の技能試験車両等の整備や持ち込み車両による技能試験の実施を行うとともに、手話通訳員の配置、身体障害者用トイレの整備、字幕スーパー入りビデオの活用等を推進する。

 ◎各都道府県警察に運転適性相談室の設置、資器材の改善、運転適性に関する知識の豊かな適性相談員の配置等を推進する。

3.建築物の整備

(1) 公共性の高い民間建築物等の指導・誘導

 ◎「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づき、不特定多数の者が利用する公共性の高い建築物(特定建築物)の建築主に対する必要な指導及び助言又は指示を行うとともに、誘導的基準を満たすものとして知事等の認定を受けた優良な建築物に対する補助、税制上の特例措置及び公的融資による支援策の活用を通じて、特定建築物のバリアフリー化を積極的に誘導する。

 ◎旅館、飲食店等障害者等が身近に利用する民間施設について、公的融資制度の活用等により、障害者等の利用に配慮した施設整備を進める。

 ◎地域の学習活動の拠点となる社会教育施設におけるスロープや点字案内版等の整備を促進する。

(2) 官庁施設の整備

 ◎国が新たに設置する窓口業務を持つ官庁施設等については、全てスロープ、玄関自動扉、エレベーター、身体障害者用トイレの設置及び視覚障害者用床材の使用等を行う。

 ◎国の既存施設については緊急性の高いものから逐次、新設の場合と同様の仕様への改修を行う。

4.地方公共団体の福祉のまちづくりへの支援

 ◎市町村で福祉のまちづくりに関する総合的な計画の策定を促進するとともに、利用頻度の高い公共施設の改造・改善による生活環境基盤の整備を推進する。

5.農山漁村における生活環境の整備

 ◎農山漁村において、広幅員の歩道の整備、福祉施設の用地整備等、障害者等に配慮した生活環境の整備を推進する。

 生活の質(QOL)の向上を目指して

 障害者のコミュニケーション、文化、スポーツ、レクリエーション活動等自己表現や社会参加を通じた生活の質的向上を図るため、先端技術を活用しつつ、実用的な福祉用具や情報処理機器の開発・普及を進めるとともに、余暇活動を楽しむことのできるようなソフト・ハード面の条件整備等を推進する。

1.福祉用具等の研究開発・普及

(1) 福祉用具等の研究開発体制の整備

 ◎国立身体障害者リハビリテーションセンターにおける基礎的・臨床的研究開発の推進を図るとともに、産学官の連携のもと、最先端の産業技術を駆使し、安全性、利便性に優れ、かつ低価格の医療、福祉用具の研究開発を推進する。

 ◎福祉用具の開発等が整合性のとれた形で効果的に行われるよう、共用データベースや開発の統一基準の整備等の検討を進めるとともに、福祉用具の標準化を推進するため標準基盤研究等を実施する。

(2) 民間事業者等による研究開発、産業界の取組の促進

 ◎「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」等に基づき、実用的な福祉用具の研究開発を行う民間事業者等への支援等を行うとともに、福祉用具の評価基盤の整備等を通じ、産業界の福祉用具への取組を誘導する。

 ◎福祉用具の評価基盤を整備し、福祉用具の適用性の向上と安全性を確保する。

(3) 福祉用具の普及促進

 ◎障害者のニーズに見合い真に選択できる福祉用具の提供がなされるよう、相談・提供方法の多様化やフォローアップ体制の充実を図る。

 ◎福祉用具相談担当職員や適合判定等の専門職員の養成、研修を充実し、福祉用具の適正な普及を図る。

2.情報通信機器・システムの研究開発・普及等

 ◎「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」に基づき、指針に準拠した機器の産業界における開発を促進するとともに、説明会等による機器の普及を図る。

 ◎聴覚障害者のための骨伝導メカニズムによる音情報伝達システム等障害者の利用に配慮した情報通信システム、情報通信端末、情報伝達技術等の研究開発を推進する。また、最新技術の導入等に当たっての障害者の利用への配慮を進める。

3.情報提供の充実

 ◎字幕(手話)入りビデオカセットの製作、貸出等を行う聴覚障害者情報提供施設を整備するとともに、点字図書館の情報化に対応した機能の充実を図る。

 ◎保健福祉情報や福祉用具に係る情報、身体障害者向け通信・放送サービスに関する情報等、障害者が必要とする幅広い情報をデータベース化し、パソコン通信、ファックス通信等の活用により提供できる体制を整備する。

 ◎公職の選挙の政見放送の手話通訳について、環境整備の状況を踏まえ、適切に対応する。

4.放送サービスの充実

 ◎字幕番組、解説番組等について、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」に基づき、制作費に対する助成を行うとともに、効率的な番組制作技術の研究開発を推進し、障害者向け放送番組の充実を図る。

 ◎視覚・聴覚障害者向け専門放送システムの開発等を行い、視覚・聴覚障害者が放送を通して十分に情報にアクセスできるような環境整備を図る。

5.障害者スポーツ、芸術・文化活動の振興等

 ◎長野パラリンピック冬季競技大会(平成10年3月開催)を始め、各種スポーツ大会の開催、スポーツ・レクリエーション教室の開催、スポーツのできる施設の整備等を通じた障害者スポーツの振興を図る。

 ◎指導員の養成研修を強化するとともに、スポーツ大会へのボランティアの参加を促進し、障害者スポーツに対する理解と関心の高揚を図る。

 ◎障害者の参加する芸術祭や展覧会等の開催を支援すること等により、障害者の生活を豊かにするとともに社会参加を促進する芸術・文化活動の振興を図る。

6.公園、水辺空間等オープンスペースの整備

(1) 公園等における障害者への配慮

 ◎障害者等の健康づくりやふれあい・交流の場を身近に確保できるよう、21世紀初頭を目途に概ね全ての市街地において、住区単位に公園のネットワークを整備し、これらの公園内に障害者等の利用に配慮したトイレを設置する等、都市公園の充実を図る。

 ◎障害者等に野外活動の機会を提供するとともに、障害のない者との交流・ふれあいを通じ、思いやりや助け合いの心を育むことができるよう、福祉施設等と一体となった公園の整備を推進する。

(2) 水辺空間整備における障害者への配慮

 ◎障害者等が安全かつ快適に水辺空間を楽しむことができるよう、緩傾斜の堤防、スロープ、休憩施設等を備えた河川、海岸等の整備を推進する。

7.障害者の旅行促進のための方策の推進

 ◎障害者等が安心して手軽に旅行ができるよう、宿泊施設等のソフト・ハード両面における、より快適で望ましい旅行を行うための基準を策定する。

 ◎障害者等に対する宿泊施設、旅行商品等の利用情報の提供体制の整備促進を図る。

8.食生活環境の改善

 ◎視覚障害者等に対する効果的な食品の表示に関する検討等を通じ、自立した食生活の実現に向けて環境の改善を図る。

 安全な暮らしを確保するために

 災害弱者といわれる障害者を、地震、火災、水害、土砂災害等の災害や犯罪から守るため、地域の防犯・防災ネットワークや緊急通報システムの構築を急ぐとともに、災害を防ぐための基盤づくりを推進する。

1.地域の防犯・防災ネットワークの確立

 ◎地域住民及びボランティア組織等との協力により、地域安全活動の強化、地域・職域の防犯ネットワークの確立を図る。

 ◎福祉施設や障害者宅が参加したファックス・ネットワーク(交番、駐在所のファックスを利用して、管内の住民等との情報交換を行うもの)の構築を推進し、住民等との協力関係を形成する。

 ◎手話のできる警察官等の育成に努め、手話のできる警察官等を配置した「手話交番」の設置を推進するとともに、警察署の受付や街頭活動等を行う警察官等に対し、「手話バッジ」の装着を推進する。

 ◎自主防災組織の活性化及び育成、自主防災組織のリーダー育成、活動拠点の整備、防災訓練の実施等を推進し、地域住民を中心とした障害者等の災害弱者の支援体制を整備する。

2.緊急時の情報提供・通信体制の充実

 ◎ファクシミリにより緊急通報を受理する「ファックス110番」の全都道府県警察への設置、及びその普及・活用を図るための広報活動を推進する。

 ◎火災感知器及びワンタッチ式通信機器(ペンダント)による災害弱者と消防機関との間の緊急通報システムの整備を図る。

 ◎洪水、高潮、土砂災害等に関する迅速かつ適切な情報提供を行うため、災害弱者に配慮した防災情報システムの整備を推進する。

3.災害時・緊急時の避難誘導対策の充実

 ◎障害者の避難誘導体制、迅速かつ的確な情報伝達の在り方等を盛り込んだ災害時の障害者援護マニュアルの作成及びその周知徹底を図り、障害者に係る災害対策の充実を図る。

 ◎消防機関を通じ、障害者が入所する施設における避難路の段差の解消、点滅形誘導灯、誘導音響装置付誘導灯の設置等を推進するとともに、災害時における災害弱者に対する地域ぐるみの避難協力体制の確立を図る。

 ◎ボランティア組織等と連携して、災害時に障害者を支援できる体制を整備するとともに、防災訓練への参加を通じて、避難誘導等の在り方を検討する。

4.災害を防ぐための基盤の整備

 ◎病院、社会福祉施設等が立地する地域において、土砂災害を防止するために、砂防、地すべり、急傾斜地崩壊対策等を重点的に実施する。

5.防犯・防災知識の普及

 ◎巡回連絡等を通じて、防犯指導、災害時の避難場所や緊急時における連絡方法等の教示等を推進する。

 ◎防災に関するパンフレットの配布等により、障害者に対し、防災に関する知識の普及を図るとともに、住民等の障害者への援助に関する知識の普及を図る。

 ◎交番、駐在所における点字によるミニ広報紙の作成、ファックスネットワークの活用等により、視覚・聴覚障害者に対する地域安全情報の提供を推進する。

6.防犯・防災設備の開発・普及の促進

 ◎防犯機器メーカー、警備業者に対して、障害者の特性に配慮したセキュリティシステム、防犯・防災設備の研究、開発、普及を進めるよう検討する。

 心のバリアを取り除くために

 子供の頃から障害者との交流の機会を拡げ、ボランティア活動等を通じた障害者との交流等を進めるとともに、様々な行事・メディアを通じて啓発・広報を積極的に展開することにより、障害及び障害者についての国民の理解を深める。また、障害者に対する差別や偏見を助長するような用語、資格制度における欠格条項の扱いの見直しを行う。

1.障害者への理解を深めるための教育の推進

 ◎盲・聾・養護学校と小・中学校や、特殊学級と校内他学級との交流教育等を推進するとともに、学校における奉仕活動等ボランティア教育の推進を図る。

2.ボランティア活動の振興等

 ◎障害者への生活支援を厚みのあるものとするよう、ボランティア、企業、民間団体、障害者団体、労働組合等を含めた総合的なネットワーク化を図るなど、ボランティア活動等の振興を図る。

 ◎ボランティア活動を支援する事業の充実を図るとともに、拠点施設の整備を進める。

3.障害者週間における啓発・広報活動の重点的展開

 ◎12月9日の「障害者の日」を意義あるものとするため、障害者週間(12月3日から12月9日)の間に、テレビ・新聞等マスメディアを通じた広報活動、障害者団体と連携した各種行事等の実施を重点的に展開する。

4.「精神薄弱」用語の見直し

 ◎「精神薄弱」に替わる用語について、保護者団体その他関係者の意見を踏まえ、見直しを行う。

5.精神障害者についての社会的な誤解や偏見の是正

 ◎精神障害者に対する誤解や偏見が、回復途上の精神障害者の地域での自立や就労の促進、社会復帰施設の整備等に当たって大きな阻害要因となっていることから、地域住民に対する正しい知識の啓発普及や施設と地域住民との交流等を通して、その是正を図る。

 ◎各種資格制度等における精神障害者の欠格条項の見直しを推進する。

 我が国にふさわしい国際協力・国際交流を

 アジア太平洋障害者の10年の期間中でもあり、我が国の障害者施策で集積されたノウハウの移転や障害者施策推進のための経済的支援を行うとともに、各国の障害者や障害者福祉従事者との交流を深める。

1.政府開発援助における障害者に対する配慮

 ◎我が国援助の効果的な実施方策として障害者等社会的弱者に十分配慮するとの「政府開発援助大綱」の趣旨を踏まえつつ、我が国の障害者施策の知識・技術の移転による各国の障害者リハビリテーション関係者の資質の向上に寄与するため、国際協力事業団等を通じた研修員の受け入れ、専門家、青年海外協力隊の派遣等を積極的に推進するとともに、我が国の障害者自身の国際協力への参画について検討を行う。

 ◎障害者施策分野における様々な援助ニーズにきめ細かく対応するため、草の根無償資金協力やNGO事業補助金等を通じた協力を推進する。

2.国際機関を通じた協力の推進

 国連社会開発委員会のメンバー国として、国連が実施する障害者事業の策定に積極的に参加し、これらの事業を支援するための国連障害者基金への拠出を行う。

 ◎国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)に対する日本・ESCAP協力基金を通じた活動支援において、障害者関連施策を支援するため、「アジア太平洋障害者の十年」関連プロジェクトへの拠出を行うとともに、障害者等のためのバリアのない環境構築を推進するプロジェクトに対し、専門家の派遣等を通じて積極的な協力支援を進める。

 ◎アジア・太平洋地域におけるユネスコの地域協力事業への参加・協力(特殊教育の専門家を対象としたセミナーの開催、我が国からの専門家の派遣、我が国関係機関への研修訪問の受け入れ等)により、特殊教育分野の国際交流・協力を推進する。

3.国際協調・交流の推進

 ◎福祉用具の情報交流の国際協調体制の整備の推進を図る。

 ◎障害者の自立支援、介護支援、社会参加支援等、世界各国が共通に直面している課題を解決するため、我が国の持つ優れた産業技術と海外の医療福祉技術とを融合させる国際共同研究を実施する等、国際協力を推進する。

 ◎福祉用具に係るJISの国際規格への整合化を促進する。

 ◎国立身体障害者リハビリテーションセンターを中心としたリハビリ専門家の研修や民間団体の交流等を通じアジア諸国との連携を図る。


当面障害者施策として緊急に整備すべき目標(平成14年度末の目標)

1.住まいや働く場ないし活動の場の確保 (現状) (目標)

(1)グループホーム・福祉ホーム  5千人分 → 2万人分

(2)授産施設・福祉工場   4万人分 →  6.8万人分

(3)新たに整備する全ての公共賃貸住宅は、身体機能の低下に配慮した仕様とする。

(4)小規模作業所について、助成措置の充実を図る。

2.地域における自立の支援

(1)障害児の地域療育体制の整備

  重症心身障害児(者)等の通園事業 3百か所 →  1.3千か所

  全都道府県域において、障害児療育の拠点となる施設の機能を充実する。

(2)精神障害者の社会復帰の促進

  精神障害者生活訓練施設(援護寮)  1.5千人分 → 6千人分

  精神障害者社会適応訓練事業  3.5千人分 → 5千人分

  精神科デイケア施設  370か所  → 1千か所

(3)障害児の療育、精神障害者の社会復帰、障害者の総合的な相談・生活支援を地域で支える事業を、概ね人口30万人当たり、それぞれ2か所ずつ実施する。

(4)障害者の社会参加を促進する事業を、概ね人口5万人規模を単位として実施する。

3.介護サービスの充実

(1)在宅サービス

  ホームヘルパー  4.5万人上乗せ

  ショートステイ 1千人分 →  4.5千人分

  デイサービス 5百か所 → 1千か所

(2)施設サービス

  身体障害者療護施設  1.7万人分 →  2.5万人分

  精神薄弱者更生施設  8.5万人分 →  9.5万人分

4.障害者雇用の促進

  第3セクターによる重度障害者雇用企業等の、全都道府県域への設置を促進する。

5.バリアフリー化の促進等

(1)21世紀初頭までに幅の広い歩道(幅員3m以上)が約13万㎞となるよう整備する。

(2)新設・大改良駅及び段差5m以上、1日の乗降客5千人以上の既設駅について、エレベーター等の設置を計画的に整備するよう指導する。

(3)新たに設置する窓口業務を持つ官庁施設等は全てバリアフリーのものとする。

(4)高速道路等のSA・PAや主要な幹線道路の「道の駅」には、全て障害者用トイレや障害者用駐車スペースを整備する。

(5)緊急通報を受理するファックス 110番を全都道府県警察に整備する。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年2月号(第16巻 通巻175号)9頁~ 21頁