音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

気になるカタカナ

リハビリテーション

松友 了

 リハビリテーション協会の機関誌に「リハビリテーション」の解説を書く役目を引き受けた。後悔というより当惑といった方が正確である。人はそれを厚顔無恥と呼ぶであろう。私がこの業界で嫌われる根源を垣間見た感がする。何でも引き受けてしまう、「呼ばれる内が花なのよ」という芸者根性である。「断るのも能力の内」という諺を想起する。要するに無能なのである。全人間的復権を目指す自分としては不用意であった。

 とにかく、よく分からんのである。世間のイメージと専門家の概念は異なり、「定訳」もない。素人の理解では、理学療法を主とした運動機能の回復訓練である。現に、病院に行けば「リハビリ室」があり、その中には各種「リハビリ器具」が並んでいる。しかし、専門家(機関)の定義はそうではない。

 国連のもっとも新しい定義は、「障害者の機会均等化に関する基準規則」に見ることができる。そこでは、「リハビリテーションは障害を持つ人がその身体面・感覚面・知能面・精神医学面かつ、または社会機能面で最善のレベルに達し、そのレベルを維持できるようにすることを目指す過程であり、障害を持つ人がその人生を一層自立させるための手段を提供する。リハビリテーションには機能を提供、かつ、または回復させるための措置や、失われたり欠如している機能や機能面の制約を補う措置も含まれる。リハビリテーションの過程には初期の医療は含まれない。リハビリテーションには基礎的で一般的なリハビリテーションから、例えば職業リハビリテーションのような目的志向型の活動までが含まれる」と示されている(長瀬修訳)。きわめて丁寧な定義であり、とくに機能(インペアメント)面での表現は、「障害」の範囲(定義)とからみ興味あるところである。

 我が国でのもっとも新しい定義は、昨年七月に総理府が出した「市町村障害者計画策定指針」に示されている。すなわち、「障害者の身体的、精神的、社会的な適応能力回復のための技術的訓練プログラムにとどまらず、障害者のライフステージの全ての段階において全人間的復権に寄与し、障害者の自立と参加を目指す障害者施策の理念」である。ここでは、実践的な活動ではなく、政治・行政の原理・原則として打ち出され、哲学的な表現(全人間的復権)が高く掲げられている。

 概念、すなわち現実は、変化・進歩しているのであろうか。やはり、よく分からん。

(まつともりょう 日本精神薄弱者福祉連盟)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年2月号(第16巻 通巻175号) 39頁