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特集/障害者のスポーツ

電動車いすサッカー

高橋 明

 電動車いすサッカーは、重度身体障害者が残存能力(手、足、口、顎)を使って、電動車いすを操作できる人であれば、老若男女を問わず参加できるサッカー競技である。

 アメリカやカナダでは「パワーサッカー」と呼ばれ、1980年頃から四肢マヒ者の団体競技として行われている。

 日本では、1982年頃、大阪市身体障害者スポーツセンターの指導員らが「重度障害者のスポーツ・電動車いすを使ってのスポーツの研究と開発」をテーマに取り組み、「パワーサッカー」をヒントに考案したのが、電動車いすサッカーの始まりである。その後、試行錯誤しながらも仲間を増やし、1985年に、大阪市身体障害者スポーツセンターの利用者が集まって、電動車いすサッカー同好会を発足させた。そして、1989年には名古屋にもチームが誕生し、1991年からは大阪と名古屋のチームで定期交流試合を続けている。また、1995年6月には、名古屋で「第1回電動車いすサッカー全国大会」を開催、まだ参加チームは少なかったものの、これを機に同年9月に「電動車いすサッカー連絡会」を発足、大阪に事務局を置き、現在、登録チームが14チームとなり、今後も活発な活動を目指している。そして来年、大阪で開催される「第33回全国身体障害者スポーツ大会・ふれ愛ぴっく大阪」においては、デモンストレーションゲームとして行われる予定であり、ますます、電動車いすサッカーが、全国に普及することを願っている。

 競技は、市販の電動車いすのフットレスト部分に軽自動車のタイヤを半分に切ったものを固定し、(写真 略)そのタイヤの部分を使って、直径約50㎝の革製のボールを幅6mのゴールに蹴り入れ、得点を競いあう競技である。基本的なルールは、サッカーと同じであるが、1チーム4名でバスケットボールのコートと同じ広さの中で行われ、ゴールキーパーを置かないなど、ルールを多少変更したり、緩和したりして行っている。

 主な競技規則は、以下のようである。

1 コートは、バスケットボールコートを使用する(図)。

図 電動車いすサッカーのコート
図 電動車いすサッカーのコート

2 ボールはJIS規格9号、モルテンPL-D-9999(直径約50㎝)を使用する(市販されている)。

3 競技者の数は、1チーム4名で行う。ゴールキーパーは置かない。

 ① ゲーム中競技者の交代は前半、後半それぞれ2回までとする。

4 競技時間は、前半、後半それぞれ20分とし、ハーフタイムは10分間とする。同点の場合はPK戦を行う。

 ① PK戦はゴールの幅を半分にし(3m)、ペナルティキックマークから両チームの競技者が交互にキックする。

5 反則及び不正行為

 ① 車いすの横で防御した場合。

 ② 車いすの後ろで攻撃及び防御した場合、また、バック走行した場合。

 ③ 故意に車いすをぶつけた場合、タイヤの部分以外でボールを運ぼうとした場合である。

6 上記の反則を行った場合

 ① その地点から相手側にフリーキックが与えられる。

 ② ゲーム中、反則を3回行った選手は、3分間退場となる。4回目の反則をした場合、警告となり15分間の退場となる。

 ③ 故意に危険な行為をした場合、審判の判断で即退場処分になる。

7 ゴールエリア内には攻撃側、守備側ともに2名以内しか入ってはいけない。

 ① 攻撃側が入った場合、守備側にゴールキックが与えられる。

 ② 守備側が入った場合、攻撃側にペナルティキックが与えられる。

8 キックオフ、フリーキック、キックイン、ゴールキック、コーナーキックを行う場合、次のことを行ってはいけない。

 ① 守備側の競技者は、ボールから3m離れなければならない。

 ② キックを行った競技者は、他の競技者がボールに触れない限り続いてボールに触れてはいけない。

 ③ キックを行う場合は、1m以上ボールを押してはいけない。

なお、詳細については、「電動車いすサッカー連絡会」が発行している競技規則を参照してください。

(たかはしあきら 大阪市身体障害者スポーツセンター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年7月号(第16巻 通巻180号)17頁~18頁