気になるカタカナ
ショートステイ
花田春兆
残念ながらこの言葉(つまりシステム)は、障害者は障害者でも60歳前後、正式には65歳以上?にならないと、縁がないことになっている。
区役所などの所管では、障害福祉課ではなくて、高齢福祉課の在宅サービスの係りの範疇なのだ。だから、障害福祉課の窓口では、ショートステイといっても通用しない。
障害福祉課で相当するものといえば“緊急一時保護”なのだが、ショートステイとは明らかに同一ではないものが含まれている。
“保護”という言葉のイメージの悪さが嫌われることを避けて、カタカナ言葉をもってきたのだろう、と解釈した人もいたが、中身そのものも大分違うのだ。
ショートは「短い・短期」、ステイは「留まる・滞在する」で、その言葉通り緊急という意味は含まれていない。
日常の介護をしている家族が、なんらかの理由で介護できなくなった場合、特定の場所で家族に代わって面倒を見るのが、一時保護でありショートステイなのだ。
その理由が、一時保護では介護者の病気などの入院・親族の冠婚葬祭などやむを得ない場合の旅行などと、緊急の時に限られているが、ショートステイでは介護者の休養という項目が立派に認められている。大きな違いだ。
期間にしても、一時保護は3日くらいがメドなのに、ショートステイでは1週間から10日くらいまでは利用できる。可能ならば毎月でも利用することも認められている。
“保護”される場所も、一時保護では別の介護人が自宅に派遣されるケースもあるが、障害者の療護施設が少ないために病院入院が多いのに、ショートステイでは特別養護老人ホームへの入所が普通なのだ。
見落とされがちだが、老人ホームは不満はあっても生活の場であるのに、病院は生活のための場ではない。病人でもないのに入院させられて、心理的にばかりでなく本当の病人になってしまった、というのはよく聞く話だ。
というわけで、利用理由の緩和・利用日数の増加・利用場所の適正化を求めて、ショートステイの該当年齢の引下げを求める声は強くなっている。
だが、この制度が一般に知られるようになって利用度が上がったのはいいのだが、希望に応じきれないという現実がある。
区立の特養ホームが3か所ある東京の私の区でも、有数の高齢区のためもあってか、私など連続5回も抽選漏れを味合わされている。
高齢でない障害者には当分遠い存在らしい。
(はなだしゅんちょう 俳人)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年7月号(第16巻 通巻180号)43頁