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列島縦断ネットワーキング

[青森]

それぞれのゴールをめざして…

今年もまた「走れ!車いすロード」の季節がやってくる。
あなたも車いすに乗ってさわやかな風に吹かれてみませんか。

坂本浩志

● はじめに

 障害をもっている人々は身体的に不利な条件を背負っているばかりでなく、自己実現の体験に接する機会も少ない。特に在宅障害者においては種々の制限によりやってみたい事柄を実現することが困難な状況であることが多い。そこで障害者および一般市民の車いすによるマラソンを通して「誰もが住みやすい街・あおもり」を目指すことを目的とした「走れ!車いすロード」について紹介する。

● 経緯

 「走れ!車いすロード」は、昭和59年に青森市在住で車いすマラソンでは県内屈指のランナーN氏の「公道を利用して車いすで走ってみよう、そして障害者が街に出るきっかけにならないものだろうか」という言葉から始まった。翌昭和60年4月、主に青森市内のボランティアグループに声がけをし、実行委員会を結成した。その後綿密な計画と準備により同年8月「第1回走れ!車いすロード'85 」を開催する運びとなった。以後11回の大会を開催するに至っている。

● 実際

 青森市のほぼ中央部に位置する平和公園外周の道路約1kmを使用してレースを行っている。種目は1kmコースと3kmコースを設けており、障害者はもちろん健常者にも車いすを貸し出し実際に参加してもらっている。レース参加者は年々増加し昨年は80名を数えた。筆者の私も3度レースに参加(3kmコース)しているが、車いすの操作は思っていた以上に難しく、僅かな傾斜や段差であっても右往左往している状態で、いかに大変なことなのかを身をもって体験した。またレースに参加した健常者も同様のことを述べている。

 さて大会を盛り上げてくれるボランティアについて触れてみたい。ボランティアもレース参加者同様年々増加傾向で昨年は300有余名に達しており、ありがたい限りである。企画の段階から当日の会場設営、マラソンコースの整備、公園内で行うレクリエーションの準備、参加者に配布するおにぎりを握ってくれる方々などそれぞれ役割を分担して行っている。また大学生応援団や高校生ブラスバンド、そして地域住民の温かい声援がこの大会に彩りを添えている。

 さらに筋ジストロフィー症で県内国立療養所で療養中のT氏が「私はレースに参加できないが、歌で参加したい」と昭和63年にテーマソング『oh風をきれ』を作詞・作曲し発表。以後毎年ミニコンサートを開催し、レース終了後の疲れたランナーに憩いのひとときを提供している。このようにレース参加者、ボランティア、地域住民すべての人々が車いすを通して相互の理解と親睦を図り、この1日を楽しんでいるのである。

● おわりに

 近年インテグレーションやノーマライゼーションという言葉を頻繁に聞く。これらの言葉のごとく誰もがコミュニティーの中であたり前の生活ができなければならないと考える。「走れ!車いすロード」はその目的達成のために、

 ① それぞれ自身のゴールを目指すこと

 ② ハード面の不備を啓発すること

 ③ ソフトな人間を養うこと

 ④ 誰もが住みよい街にすること

以上4点を命題として今後も取り組んでいきたいと考えている。

 今年もまた「走れ!車いすロード」の季節がやってくる。あなたも車いすに乗ってさわやかな風に吹かれてみませんか…

 ちなみに今年は7月7日実施予定です。

(さかもとひろし 走れ!車いすロード実行委員会事務局)

-oh風をきれ-
(走れ!車いすロード・テーマソング)

風をきれ道路を車いすに乗って
走れ輝け息をはずませ
汗を流してひたむきに走る
一途な姿に熱いまなざし
みんなの笑顔が今でも見えます
一人一人頑張りながら
それぞれのゴールめざして
風をきれ!!

あなたと私と手を取り合って
緑の公園澄みきった青空
ひとときのまどろみ みんなで語ろう
愛することや信じることを
いつの日までも思ってほしい
ささやかな唄をあなたの心の中で
いつまでも忘れずに僕は唄うだろう
僕は唄うだろう


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年7月号(第16巻 通巻180号)62頁~63頁