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列島縦断ネットワーキング

[大阪]

箕面市障害者雇用支援センターがオープンしました

栗原 久

●障害者雇用支援センターとは何か

 平成6年10月、「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、職業生活における自立を図るため継続的な支援を必要とする障害者(以下「支援対象者」という)に対し市町村レベルできめ細かな職業リハビリテーションを実施する公益法人を、都道府県知事が「障害者雇用支援センター」(以下「支援センター」という)として指定することができるようになった。

 支援センターにおいては、授産施設等の福祉関係施設入通所者や、養護学校等を卒業後在宅で福祉サービスを受けたり、小規模作業所に通所していて、従前の雇用対策では対応が困難であった障害者や、いったん就職したものの職場不適応により離職した者等、特に就職が困難な障害者をサポートするため、福祉行政と労働行政が連携を図りながら、職業準備訓練から、就職、職場定着に至るまでの相談・支援を一貫して行う人的支援のシステムを具体化するものである。

 なお、設置費、運営費は日本障害者雇用促進協会の助成金と関係自治体の補助金等により賄われる。

●箕面市障害者雇用支援センターの設置

 平成8年3月25日、財団法人箕面市障害者事業団(以下「事業団」という。)が、大阪府知事から支援センターとしての指定を受け、4月1日事務所設置、7月1日に開所式を行い、同日、職業準備訓練を開始した。

 事業団自身は、平成2年6月に発足した公益法人であるが、その目的は「障害者に適した職種開拓のための調査研究活動や障害者の就労指導及びその実践活動を展開し、障害者の職業的、社会的自立を促進するとともに、事業を通して基本的人権の尊重と市民文化の高揚を図り、もって市民福祉の向上に寄与すること(寄附行為より)」である。

 設立に際しては、市議会の議決を経、市による10億円の出捐金の他、障害者団体が構成したモデル事業推進協会、市民からの寄与がなされ、大阪府知事の認可を受け出発した。

 平成6年度からは、就労促進事業の一環として市の委託を受け、職場実習事業(スタッフ1名)を開始し、9件の企業実習において4名の雇用が実現したが、より体系的、専門的、広範な事業展開が課題となっていた。

 これらの経緯も踏まえ、労働省、大阪府労働部との協議を重ね、熊本、滋賀、埼玉、福岡、宮崎に続き全国で6番目、大阪府下初のセンターとして指定、設置されたのである。

●本支援センターの組織と業務内容

 本支援センターの組織は所長1名、指導員2名、事務員1名、嘱託医1名であり、指定地域は箕面市(人口12万5000人)である。

 業務内容は大きく二つあるが、その一つは職業リハビリテーション関係業務であり、①支援対象者の把握、②大阪障害者職業センターへの職業評価の依頼、③職業準備訓練の実施(作業室内、企業見学及び実習)、④雇用の場の確保、⑤就職後の通勤援助、職場定着のための支援の実施、⑥住宅の確保等職業生活上の問題や事業主への相談の実施等がある。

 大阪障害者職業センターからはこの他にも個別支援カリキュラムの策定等、専門的、技術的助言を受けており、また実習先の開拓、雇用の場の確保については地元の池田公共職業安定所と連携し、さらに助成金関係では(社)大阪府障害者雇用促進協会を窓口とする等、関係機関の絶大なご協力をいただいている。

 一方、地元箕面市においては、本センターの所管課である市民生活部商工観光課が、障害者雇用事業主研修会の開催、「箕面市福祉のまち総合条例」に基づく「福祉協定」も活用した実習先の開拓等で、また健康福祉部が、対象者の把握や担当ケースワーカーの助言等で、強力なバックアップ体制を敷いている。「箕面市障害者市民の長期計画」においても、支援センターの設置が、市の障害者雇用率の独自設定(3%)等と共に重要事項として挙げられている。

 業務内容の二つ目は、障害者雇用支援者というボランティアの募集、養成、登録、支援対象者や事業主への情報提供である。

●本支援センターの現状

 現在は20~40代の知的障害者、身体障害者10名が職業準備訓練を行っているが、訓練期間は原則として1年以内、職場の基本的ルール、適切な作業態度、基礎的な作業遂行能力、適切な対人態度、通勤に関する知識・能力の体得を目的に、導入期、前・中・後期に分け、重点目標を設定し実施している。

 作業室内では、作業、生活、対人関係の各訓練を行い、支援対象者の行動観察、評価と基本的な労働習慣の体得、職業能力の維持・向上、さらには治具の工夫等を行っている。

 その後職場見学、実習を実施するが、本稿執筆時(8月)においては、職業準備性についての課題が他のメンバーよりは少なかった2名の知的障害者が、保育園の保母、ファミリーレストランの駐車場警備の企業実習を行っている最中であり、支援スタッフは段階的に関与の度合いを減らしていっている。

 職場実習は雇用予約のないものだが、本人にとっては現場の厳しさを味わうまたとないチャンス、支援者にとっては職種適性をより具体的に把握し、サポートの中身を検証する場でもあり今後積極的に展開していきたい。

 なお実習先企業の開拓に際しては、まず職場実習協力事業所登録をお願いし、職員が業務を見学、経験させてもらい、その後、訓練生の見学、実習へ向けた調整を行う。

 現在、20事業所に登録をいただいているが、その方法は、協力依頼ダイレクトメールの発送、関係者の紹介、求人ちらしを見ての電話、職安の情報等、多種多様であり、箕面商工会議所会員へのPRもしていただいている。

●今後の課題

 今後の課題の第一は、こうした事業所の協力をいかに得るかであるが、開所式に際しては市内商工業同業組合35か所をすべて訪問し、協力を依頼し、式にご招待した。

 また課題の二つ目は、訓練生の基礎的な作業遂行能力の向上に向けた指導方法と治具の工夫の充実等、支援する側の技能向上、そしてそうした成果の企業への啓発である。

 そして三つ目には、職業生活を維持、継続するために必要な生活面、対人関係面の知識・能力獲得に向けた支援であり、ひげ剃りの方法等見だしなみや、清掃、挨拶、司会の練習等も行っており、模擬面接においてはビデオ撮影の後、その場で本人に画面を見てもらい、自ら課題を発見できるよう促している。

 さらに最後に、今後、支援センターが真に地域に根づき、障害のある市民がいきいきと働ける街を作っていくためにも、障害者雇用支援者の育成が重要になってくる。

 以上、訓練2か月弱のはなはだ未熟な実践ではあるが、今後の可能性にご期待いただき、また関係各位のご指導をお願いし、稿を終えたい。

(くりはらひさし (財)箕面市障害者事業団箕面市障害者雇用支援センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年11月号(第16巻 通巻184号) 59頁~61頁