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気になるカタカナ

オンブズマン

中谷橡一郎

 オンブズマン(Ombudsman)は、「代理人」を意味するスウェーデン語で、18世紀に「王の目」と呼ばれたことに始まり、19世紀には「議会の代理人」として定着した公職の呼称とされています。現在は、政府、自治体等の行政機関に対する市民の苦情を処理するために、政府や自治体、議会が設置する「行政監察官」を意味する言葉として使われるようになっています。形態はさまざまですが、世界中で100を超える「オンブズマン制度」が機能しているといわれています。

 オンブズマンの特色は、独立した「人(マン)」として行政の決定や行動に眼を光らせること、たとえ、訴えがなくても職権によって自ら赴くことができるように、憲法や立法行為によって設置され、立法府によって任命されるのが本来的なあり方とされていますが、アメリカの州オンブズマンや、日本の市民オンブズマン(川崎市)など、行政府により任命される例(1996年7月現在、9自治体)も少なくありません。

 オンブズマン先進国といわれるスウェーデンには、国会・正義のための代理人と呼ばれる公職者と、特定の政策分野での法律の遵守状況に眼を光らせる(①消費者のための、②男女雇用機会均等のための、③人権差別禁止のための、④子どものための、⑤ハンディキャップのための)スペシャリティオンブズマン(準公職)が存在し、さらに民間でもマスメディアを見張るプレスオンブズマンが活動しています(文献1)。

 「福祉オンブズマン制度」は、東京・中野区が1990年10月にわが国で初めて、調査対象を福祉サービスに限って、「条例」によって設置した制度です。職務内容は、①福祉サービスに関する苦情申立ての受付(45日以内)、②苦情に関する調査、審査、通知を行う(45日以内)、③是正及び制度改善を求める意見表明(30以内)、④是正措置、制度改善について実施機関から報告を受ける、⑤毎年度、処理状況について報告を区長に行う〔区長は「制度」の運営状況について「区報(公報)」を通じて区民に公表する〕としています。

 オンブズマンの任期は2年で再任は可。4名以内(弁護士、大学教授、家庭裁判所調停委員など)で、区長の委嘱による選任となっています。

 「福祉オンブズマン制度」は、弱い立場におかれがちな福祉サービス利用者の権利及び利益を擁護するため、苦情処理のプロセスに実施機関以外の公平な機関である福祉オンブズマンが関与し、福祉サービスの適用にかかわる区民の苦情を公平かつ迅速に処理する仕組みです(文献2)。

(なかたにしょういちろう 社会就労センター コロニー中野・コロニー印刷)

<文献 略>


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 40頁