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特集/障害のある人の介護を考える

地域生活のなかのリハビリテーション

比留間ちづ子

 公的介護保険の導入にあたり、介護の内容をめぐって多くの議論がある。障害者の介護も、「障害者プラン」で地域生活の自立への姿勢が明確化されたが、個人のニードに応じるには施策が不足している。障害者介護の対象は高齢者と同様、全介助の状態から社会生活上の部分援助の段階までを含み、病院や施設で行われていた早期リハビリテーションが地域と生活の場で充実される施策が本来的である。この観点から地域リハビリテーションの整備について述べる。

1 介護におけるリハ的留意点

(1) 介護技術

 障害の特質をとらえ、個人の充足感があることが第1である。介護技術は重要で、たとえば寝かせ方、座らせ方ひとつで、リハにもなるが寝たきりにさせることもでき、会話次第では意欲的にも拒否的にもなる。依存的にならないような対応を備え、部分介助や支援へと切り換えられるよう、自立促進への指向性が把握されていること、障害悪化や介護者の過労防止への配慮、医療面の必要性の判断にはスタッフ間の積極的な連携が必要である。

(2) ライフスタイルやライフサイクルへの対応

 病院・施設から地域生活への適応への援助は、退院、退所前のスムーズな準備がなされることによって要介護状態を要援護状態にできる。学齢~成長期のリハは将来の社会活動や就労に影響する。障害に応じた学校カリキュラムへの協力や成長期の機能リハの体制が必要である。また、思春期の問題も丁寧に考慮されるべきである。以上のような対処の流れを想定した体制づくりが必要となる。

(3) 障害の進行とメンテナンス

 障害者は一般に老化が早いといわれる。身体の過度の負荷や変形、偏食、運動不足、精神的緊張など、生活活動の偏りのためであろう。一方、生活活動による能力の拡大もでき、障害管理による効率的な介護の選別ができよう。

(4) 心のバリアフリー

 介護上のトラブルは、家族の絆と介護者の愛情が強いときに生じる。他人の介入を拒む気持ちが作用するからといわれる。本人と家族の心のバリアフリーと介護者の自己管理への啓発が必要である。

2 地域リハビリテーションシステムについて

 リハ的観点から、在宅・施設サービスの組み合わせ利用はもちろん、24時間体制の巡回訪問、期間集中型の訪問リハなど、重点対応の体制も必要である。地域リハの効率的なシステムを次のように考える。

(1) 地域リハビリテーションセンター

 地域リハビリテーションの拠点として、①回復期リハで在宅から社会参加に早期に適応していくリハ。②障害ドッグや再訓練、障害管理の指導など、現在の更生援護施設の機能を拡大し在宅・外来型とするのが適切。③機器センターとして車いす、姿勢保持いす、補助器具等の貸出やメンテナンス、住宅改造の相談などに応じる。

(2) 社会活動促進センター

 教育、労働、福祉、リハ等の専門スタッフにより、①就労準備活動、社会生活適応活動をとおして能力や個人の特性を伸ばし、就労活動へつなげる。②授産所、作業所と連携した再訓練や体験学習の場とする。社会経験不足や学習の機会を補い、生涯学習の場として機能させる。③専門スタッフによる作業施設や事業所への巡回指導。

(3) 生活支援センター

 ①生活支援活動、給食、入浴等のサービスやガイドヘルパー、レスパイトサービス等の拠点。②相談窓口、情報センター(生活、活動、健康、法律など)。

 リハビリテーションは、生活の継続のなかでこそ実現される。障害者と健常者が共同で築く豊かな社会の基盤となる施策が必要である。

(ひるまちづこ 東京女子医大病院作業療法士、(社)日本作業療法士協会理事)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年3月号(第17巻 通巻188号) 26頁~27頁