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気になるカタカナ

アクセス

奥野英子

 アクセスという言葉を初めて目にしたのは1970年頃でした。現在、日本ばかりでなく国際的に普及しており、障害者の福祉やリハビリテーションに関係する者であれば誰でもが知っている「マーク」の名称でした。
 何だかクイズのようになってしまいましたが、皆さんお馴染みの車いすの「国際シンボルマーク」の原語名が「International Symbol of Access(アクセスの国際シンボルマーク)」なのです。 
 この車いすマークは、ニューヨークに本部を置くリハビリテーション・インターナショナル(RI)が、障害者のための生活環境づくりを促進する活動の一環として採択したものです。「建築上の障害がなく、障害者が容易に利用できる建物・施設」であることを明確に示すシンボルマークを国際的に公募し、デンマークの女子学生スーザン・コーフォードさんのデザインが、1969年にアイルランドのダブリンで開催された第11回リハビリテーション世界会議において、最優秀作品として決定されたものです。
 しかし、「アクセス」は障害者福祉やリハビリテーションの分野に限定された言葉ではありません。英和辞典によれば「接近、近づく機会、近づく道(方法、手段)、通路、入り口」と記載され、「アクセシブル(accessible)」は「近づきやすい、入りやすい、到達できる、手に入れやすい、手にはいる」等と記載されています。
 1993年に国連において決議された「障害者の機会均等化に関する標準規則」の規則5は「アクセシビリティ(Accessibility)」であり、ここでは、物理的環境へのアクセスと、情報やコミュニケーションへのアクセスが挙げられています。障害者が利用しやすい住宅、建物、公共交通機関の整備と、視・聴覚障害者が情報を利用でき、コミュニケーションを促進するための方策を採らなければならないとされました。
 アクセスに関わる日本の法律を挙げると「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年)と「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」(平成5年)があり、両法律において「アクセス」に該当する日本語として「利用」や「利便」が使われています。

(おくのえいこ 厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課障害福祉専門官)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年9月号(第17巻 通巻194号)35頁