特集/障害者プラン推進・厚生省予算
リハビリテーション どこまできたか日本の現状
教育
小鴨英夫
「障害者対策に関する新長期計画」の具体化を図るための実施計画として、平成7年12月に策定された「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」においては、リハビリテーションの理念とノーマライゼーションの理念を踏まえながら、障害のある人にとって今後何が必要であるかを7つの視点からまとめている。この中で特に教育の分野と関係の深い「心のバリアを取り除くために」と「社会的自立を促進するために」を取り上げ、現状を紹介する。
▼心のバリアを取り除くために
① 障害者への理解を深めるための教育の推進
学校教育において障害者について正しい理解を深めることは重要なことであり、児童生徒の発達段階に応じて、社会科、家庭科、道徳などにおいて指導を行うとともに、人間愛の精神、福祉の心、社会奉仕の精神などの育成を図っている。また、盲、聾、養護学校の児童生徒と小・中学校の児童生徒や地域社会の人々が活動を共にすることは、障害児に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会である。こうした交流教育を推進するために指定校による実践研究や教員等を対象とした講習会の開催のほか、障害児に対する正しい理解と認識を深めるための指導資料を作成し、全国の小中学校等に配布している。
② ボランティア活動の振興
学校教育においては豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ることが重要であり、そのためには他人を思いやる心や感謝の心、公共のために尽くす心を育てることが必要である。また、児童生徒が体験を通して勤労の尊さや社会に奉仕する精神を養うことが重要である。このような観点から、平成8年度においては、学校教育におけるボランティア活動に関する事業として、高校生を対象とした「勤労体験学習総合推進事業」(全国5地域)や小・中学校の児童生徒に対して、ボランティア体験活動等、さまざまな体験活動、学習機会を与えることについて実践的研究を行う「ボランティア体験モデル推進事業」(全国10地域)や勤労、奉仕体験を通じて中学校の生徒が主体的に進路を選択する能力を育成する「中学進路指導総合改善事業」が実施されている。
▼社会的自立を促進するために
障害者の社会的な自立に向けた基盤づくりとして、障害の特性に応じたきめ細かい教育体制を確保するとともに、教育、福祉、雇用など各分野との連携により障害者がその適性と能力に応じて、可能な限り雇用の場に就き、職場を通じて社会参加することができるよう次の施策が展開されている。
①障害のある子供達に対する教育の充実
②教育相談体制・研修の充実
③後期中等教育段階における施策の充実
④身体障害者、精神薄弱者雇用の推進
また、「特殊教育の改善・充実について」(平成9年)の報告でも、高等部の拡充整備と訪問教育実施などについて具体的な提言がなされている。
(おがもひでお 淑徳大学教授)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年3月号(第18巻 通巻200号)19頁