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街なか探検隊

神戸、海岸通りのバリアフリースポット

―ハーバーランドとメリケンパーク―

大久保健一

 僕はよく神戸に出掛けるが、その中でも電動車いすの僕でも気軽に楽しめるのが、「神戸ハーバーランド」と「メリケンパーク」だ。
 まずハーバーランドは、JR神戸駅を降りてすぐ海(神戸港)に面しているショッピングエリアだ。駅を出ると、6つのデパートやショッピングビルが立ち並んでいるのが見える。この建物をつないでいるのは、スロープと、車いすでも通れる歩道橋である。この歩道橋にはアーケードが付いていて、雨の日でも濡れずに安心してビルを行き来できる。障害者向けトイレもビルごとにあるので安心だ。
 僕のおすすめデパートには「神戸ハーバーサーカス」が挙げられる。神戸ハーバーサーカスの特徴は、内装がテーマパークのようになっているところだ。映画のセットみたいに、テーマごとに町並みが再現されていて、疑似空間の中で買い物ができる。例えば、通路にミニ電車が走っていたり、プロムナード風に震災で被災した地元の店の1坪ショップが並んでいたり、復興を感じながら横丁気分も味わえる。障害者向け設備も完備されているので、ウインドーショッピングだけでも存分に楽しめる。地下2階には「神戸洋菓子博品館」というフロアがあり、神戸のおいしいケーキ屋さんが並んでいるので、おみやげ選びには最適だ。
 ハーバーランドと言えば「モザイク」も忘れてはいけないスポットだ。ここはデパートではなく独立した専門店が90店あまり並ぶ建物で、映画館やミニ遊園地「モザイクガーデン」も入っている。ここは3階建の建物だが、通路には屋根がなく吹き抜けになっている部分もあり、建物でありながら小さな街を歩いているようだ。それとモザイクは、ハーバーランドの一番端にあり、海に面しているので、海が見渡せる。モザイクガーデンの観覧車は小さいながら、夜になると観覧車全体が虹色のイルミネーションで輝くのは神戸らしい夜景になっている。
 並んでいるお店には、神戸のお土産屋もある。そして、レストランも多種多様あり、中でもステーキハウスの「三田屋」はピアノ生演奏を聞きながら三田牛ステーキや生ハムが楽しめる。オリジナル生ビールの「輝八郎ビール」は、オーナーがこだわって作ったビールで、コクがありおすすめだ。店内はフラットで店員も親切だ。モザイクは「神戸阪急」とつながっている歩道橋から2階に入れ、建物内も段差がなく、エレベーター、障害者向けトイレも完備されている。
 ハーバーランドの地上の歩道を歩いてみると、ガス灯の街灯に照らされながら海の方に向かう。段差はほとんどない。そうすると、煉瓦倉庫レストラン街が見えてくる。ここは以前、港であったというたたずまいがあり、茶色の煉瓦で作られたロマンチックな倉庫が並んでいる。倉庫の中は、ステーキハウスやビアホールなどといったおしゃれなレストランに再利用されている。ここも、大通りから横へ入るがスロープがあり、レストランもすべてフラットだ。
 ハーバーランドは、この他にもブランド品が揃う百貨店「神戸阪急」、ディスカウントな買い物ができる「ダイエー」「メガバンドール」、カジュアルな専門店が並ぶ「オーガスタプラザ」、カラオケやバーも入っている「エコールマリン」といった、それぞれのニーズに合ったショッピングビルがある。それから文化ホールや公開ラジオスタジオ、「ホテルニューオータニ神戸」もあり、いろいろなイベントも楽しめる。難点を言えば、JR神戸駅では車いすだとエレベーターの都合でハーバーランドとは反対側に出てしまうので、歩道橋までは遠くて雨の日は少し濡れてしまう。でも、歩道橋まで行けばどこの建物へ行くにも屋根がありバリアフリーなので楽だ。
 さて、次に「メリケンパーク」を紹介しよう。最寄り駅は、JRだと元町駅だが、降りるのに階段しかなく車いすでは降りづらい。だから、車いす対応エスカレーターがあるJR・阪急三宮駅か、狭いがエレベーターがある阪神元町駅が降りやすい。JR・阪急三宮駅から電動車いすで20分強、阪神元町駅から15分ぐらいである。ハーバーランドとは、岸壁の遊歩道でつながっていて行き来できる。ハーバーランドとメリケンパークは、電動車いすで10分ぐらいだ。
 メリケンパークは、メリケン波止場が震災で壊れたあと、公園として整備された。地図で見ると海に突き出ていて波止場状になっている。まず三宮駅から三宮の街中やルミナリエ(毎年12月に電飾彫刻で彩るイベント)で有名な「東遊園地」を抜けて行くと、メリケンパーク入り口がある。公園内は池や高台などがあるが、スロープが必ずありバリアフリー化されている。
 入り口を入ってすぐに「神戸港震災メモリアルパーク」というエリアがあり、ここでは震災で壊されたままの波止場が残っていて、桟橋のような歩道で海の上を歩きながら、震災のすごさを実感できる。車いすでも海の上を海風に吹かれながら歩ける。車いすの真下には波が打ちつける、という神戸らしい経験ができる。
 そこの反対側には、神戸の地ビールが味わえるビアホール「チャルダ」がある。ここではビールを醸造していて、いくつかの地ビールや軽食が味わえる。店内は電動車いすでも利用が楽な、フラットで広いつくりだ。値段も安く、ビールももちろんうまいのでおすすめのお店だ。
 隣には「ホテルオークラ神戸」があり、高級感あふれるレストランやショップが入っている。最上階のレストランからは神戸港の夜景が楽しめ、障害者向け設備は完備している。メリケンパークの奥まで行くと、岸壁が階段状になっていて瀬戸内海が見渡せ、カップルが愛を語らう場になっている。車いすでも十分、海を見渡せる。この端の奥には「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」が海に突き出るように建っていて、波をイメージした屋根がひときわ目立つ。ここも楽に車いすでアプローチできる。
 公園中央には「神戸海洋博物館」があり、神戸港の歴史や港の仕組みがつぶさに分かる。お土産コーナーには、港らしくボトルシップを売っている。入館料は、「ポートタワー」との共通券として障害者(障害者手帳提示)は半額で350円だ。介護者も1人、半額になる。海洋博物館2階から連絡橋でポートタワーへ行ける。ここではエレベーターが分かりにくい場所にあるので、係員によく聞いたほうがいい。ポートタワーでは、エレベーターで展望室まで上るのだが、障害者に限り2階から乗せてくれるので、係員に言ってほしい。展望室からは、神戸港や神戸市街が一望できる。このポートタワービルの裏側に行けばハーバーランドへ通じる。
 メリケンパークには、この他に波止場としてフェリー乗り場(淡路、四国など)もある。メリケンパークは公園全体がバリアフリー化しているので、障害者でも十分に海の空気が吸える。ただ難点は、公園内の公衆便所の障害者トイレが使用禁止になっているので、ホテルか博物館の障害者トイレを借りなければならないところだ。
 神戸には、ハーバーランドやメリケンパークの他にも、バリアフリー化はしていないが、道は平坦で街の人たちに手助けしてもらいながら楽しめる場所として、「南京街」(中華街)や高架下商店街などがある。こちらは掘り出し物が期待できるかも。
 神戸は車いすで歩きやすい街のように書いてきたが、それは紹介した一部分であって、リフト・ノンステップバスはなく、車いすで乗れない市営路線バスや駅も主要駅以外は階段だらけ。山手に行くと車いすでは身動きとれないなど、決してバリアフリーが行き届いた街とは言えないことを書き添えておきます。

(おおくぼけんいち メインストリーム協会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年3月号(第18巻 通巻200号)62頁~65頁