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街なか探検隊 Vol.13

新潟
目が離せない新潟のまちづくり

篠田隆

市民の声が生かされた施設づくり

 新潟県では、1996年に「新潟県福祉のまちづくり条例」ができました。そのころから、新しくつくられるさまざまな公共施設や民間の商業施設でも、バリアフリー化が進んできています。そうした流れの中で、新潟市が計画を発表した施設に対して、計画・設計段階から市民グループが独自に要望をまとめ、市の担当者らとの話し合いを積み重ねてきました。その結果、当初の計画が見直され、改善されて完成した部分が数多くあります。車いす用トイレを男女別に設置すること、育児室の設置あるいは拡充、エレベーターをできるだけ大きいものにすること、駐車場から建物までの通路に屋根を設けること、赤外線補聴システムの導入、点字ブロック・音声案内触知板・電光表示などの設置等、さまざまな角度からの要望がかなえられました。
 このようにしてできた施設が、昨年秋オープンした「新潟市民芸術文化会館」や「新潟市東総合スポーツセンター」、また今年オープンしたばかりの「新潟市総合福祉会館」などです。特に、芸術文化会館については、市民からの要望もあって、建物ばかりでなく、周辺の白山公園から信濃川沿いの堤防(やすらぎ堤といいます)までが一体となって整備され、多くの市民が集う新たな憩いの場となっています。
 一般の市民が利用する公共の施設については、どのような条件をもつ人であっても、同じように利用できるものにしてもらいたい。そういう市民の切実な願いが、新潟のまちづくりの中に根づき始める一歩になったと考えています。

課題が残る交通アクセス

 しかし、解決していかなければならない課題も、まだ数多く残っています。
 いろいろある中で、最大の問題は交通の問題。つまり施設へのアクセスの問題です。前にあげた施設がいかにすばらしいものであっても、そこへ自由に行ける交通手段が十分に整備されていなければ何にもなりません。新潟のまちでは、自動車(特に自家用車)が交通の圧倒的中心を占めています。そのため各施設とも、新しくできるものには駐車場がしっかり整備されるようになってきました。その反面、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用して、そこへたどり着く手段がないがしろにされている点は否めません。
 昨年、新潟で起きた大きな問題として「亀田駅東口問題」があります。新潟市の隣りの亀田町にできた「新潟ふれ愛プラザ」という県の障害者施設の近くにJR亀田駅があります。しかし、駅からプラザへ向かう東側にはいままで、駅の出入口がありませんでした。そこで県の「ふれ愛プラザ・アクセス支援事業」ができ、駅の東口開設が決まったのですが、その中でエレベーターが計画されなかったのです。障害者団体と県、町、JR等との度重なる交渉にもかかわらず、ついに、今回エレベーターは実現しませんでした。
 また、新潟市の中心部を通る国道7号線での交通渋滞を緩和するため、横断歩道を廃止し、新たに地下歩道としてつくられた「万代クロッシング」問題など、施策の中で一面的な利便性の向上のみが取り上げられ、その一方で、多様な市民の生活の実態に行政の目が行き届いていないというのも、新潟での現状です。

市民の側からのまちづくり

 そんな中で、少しずつ市民の側からのまちづくりへの積極的なかかわりも生まれています。車いすを使う障害者はもちろんのこと、高齢者、子ども連れの親子、ベビーカーを押す人など、すべての人にとって新潟での公共交通の中心である路線バスが、自由で使いやすいバスになってほしいという多くの人たちの声を背景に「新潟に超低床バスを走らせる会」の運動が盛り上がり、バス会社や行政への要望の提出、マスコミへの訴え、実物をもってきての乗降体験会の開催など多様な運動が繰り広げられました。その後押しで、今年ついに新潟市内の路線バスにノンステップ超低床バスが導入されることが本決まりとなりました。その走り始める日が今から楽しみです。
 この運動を通して、障害種別を超えた当事者団体や高齢者、女性、子育てなどの各種市民団体から商工会議所、企業まで幅広い横のつながりがもてるようになった点は、新潟の市民運動の流れの中でも画期的なことと言えるのではないでしょうか。
 また、市内中心部の商店街は、郊外の大型店に押されて沈滞ムードにあります。そのような状況の中で、バリアフリーの考え方を商店街の活性化やまちおこし、地域おこしに結びつけられないだろうかという動きも始まっています。新潟商工会議所の商業まちづくり部会は昨年、市民グループを招いての懇談会をはじめて開催し、その中で当事者のさまざまな生の声を聞くとともに、お互いに意見の交流をもつことができて、有意義な部会でした。そのほかにも、古町商店街や万代シティ商店街など、個々の地域で独自な動きが始まっていて、今後も目が離せないといったところです。

おわりに

 2001年には新潟市で、全国ろうあ者大会が開催されると聞いています。2002年にはサッカーのワールドカップ開催もあります。その地で生活する者だけでなく、広く全国から、全世界から多様な人が集い、行き来することでより活性化していくことができるまち。そんなまちに新潟がなっていくためにも、多くの方に新潟のまちを訪ねてもらいたいものです。

(しのだたかし 自立生活支援センター・新潟)