編集後記
ゴールデン・ウィークに帰省する列車の中で、訪問看護婦を仕事としている人と隣同士の席になり、話をしました。偶然にも同郷で、しかも現在住んでいるところも近くの市だということが分かり、急に親しみが沸き、いろいろと話しはじめました。
彼女は主に高齢者の訪問看護をしているとのことでしたが、今一番の心配はやはり介護保険導入後のことだそうです。よく言われているように、介護サービスを受けたいと思っても、決められた範囲内に該当しないので、十分な介護が受けられなくなり、その足りない部分を家族が負担せざるをえなくなるだろうと、看護婦仲間で話し合っているそうです。そして、高齢者夫婦や一人暮しの高齢者の自殺が増えるのではないかと心配しているそうです。
また、現場経験のない薬剤師や医者などがケア・マネージャーの資格を取り、介護の内容を判断するようになることに危機感を持っているとも言っていました。
私は幼児期のいやな経験もあり、医者や看護婦、保健婦などすべてに対し反感に近い感情を抱いていましたが、一概には言えないのだなと思いました。これからは協力できる部分ではいっしょになって働きかけることも必要だと思い、住所と電話番号を交換してきました。
(O)
先日、事務所に、本誌でもご登場いただいている平野みどりさんと村上博さんが顔を出してくれた。都内の宿泊先からは、バスなどを利用してきたとのこと。お二人とも車いすを利用している。都内を走っている低床バスやノンステップバスは、全部の路線をカバーしていないはずなので、ちょっと心配になった。
そんな私の心配を打ち消してくれたのが、次の言葉だ。
「乗ったバスは普通のバスだったけど、運転手さんが“いいですよ”と言って担ぎ上げてくれたんです。運転手さんも対応に慣れてるって感じですね。地方では、バスなどのハード面がよくなっても人々の対応はまだまだですね。東京都は違いますよ。やっぱり、車いす利用者もみんな外に出てますからね…。気持ちの面でのストレスが少ないです。」
目に見えるところで評価しがちですが、人的なソフト面も重要なことを、改めて感じた。
そういえば、以前、車いすを利用している人と低床バスに乗ったときも、運転手さんがすばやく降車口にきて、スロープをするすると引き出して乗せるまでの早いこと。やっぱり慣れてるなぁ、と改めて思い出しました。
(K)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1999年6月号(第19巻 通巻215号)