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会議

第13回世界理学療法連盟学会報告記

田口順子

 第13回世界理学療法連盟学会が横浜において、メインテーマを「文化を超えて」とし、5月23日より28日の6日間にわたって開催された。
 加盟国が80か国に及ぶ4年に一度のこの学会は、これまで第1回目(1953年)のロンドン開催以来、欧米の先進国で開かれており、アジアで開催されるのは、今回の日本が初めてであった。
 極東という地の不利に加えて諸物価の高い日本というイメージが強く、当初は海外からの参加者はせいぜい800人前後と予想していたが、結果的には海外からは2000人近く、国内参加3000人、計5000人、延べ2万人という理学療法士が集まる一大学会となった。
 日本で初めての国際学会、しかもすべて英語というわれわれがかつて経験したことのない状況の中で、開会式から閉会式まで見事に日程をこなし、その日本人らしい几帳面さと正確さ、統制のとれた運営の組織は、これまでに見られない理学療法士の国際学会だったと海外からの参加者の賞賛するところとなった。
 閣議決定による日本学術会議との共同開催が決まり、天皇、皇后両陛下のご臨席を得ることとなった。
 日本学術会議には、現在1,221の学術団体が承認されている。日本学術会議によると、1,221の中から8学術団体を共同主催団体として選出し、その中から1学会のみ天皇、皇后両陛下にご臨席いただく学会として推薦決定するという。従って、今回のわれわれの学会が今年の1,221学術団体の頂点に立ったと言えなくもない。さすがに天皇の開会式でのお言葉は、並み居る2000人の参加者に強い印象を与えた。
 各国からの演題数は1,500題に達し、日本の592題をトップに、英国109、米国99がこれに続いた。
 特別講演は基調講演やシンポジウム、セミナー等を含めて28題、いずれも21世紀に向けた最新のリハビリテーション、理学療法学が中心であり、治療学より予防学、健康増進、保健学の方向がうかがわれた。今回の学会で目玉となった講演は、最終日に行われた公開フォーラム、瀬戸内寂聴氏による「佛の心」であろうか。医療従事者は身体を視るだけでなく、心のリハビリテーションが大切であることを強調され、豊富なエピソードを巧みに取り入れながら三つの布施について説明し、海外からの参加者1000人を魅了していた。
 消化しきれない程の盛りだくさんの学会テーマとイベントの中で、学会当初から計画の立ち遅れていたCBRフォーラムを開催することができた。プログラムにも掲載されないまま、当日、インフォメーションコーナーの掲示と500枚のチラシによる宣伝だけであったが、5月26日午後に行われたCBRフォーラムには114人が参集した。
 国内からの出席者61人、海外からは26か国53人で南アフリカの6人、米国4人、スウェーデン、ケニア、英国、台湾、イスラエルがそれぞれ3人であった。26か国のうちアフリカ勢の参加は7か国18人で、CBRに関心が高いと思われたアジアからはマレーシア、中国、台湾、香港のわずか4か国にとどまった。そのためか、グループ別の討議でもアフリカ勢の威勢のよさが目立った。
 総合司会は、南アフリカでCBRにもたずさわっている大学教授のデレ・アモスン氏が快く引き受けてくださった。まずCBRを全く知らない出席者にもCBRの概念が理解できるよう、具体的なアジアの活動を紹介しながら、ADIの中西由起子氏による講演が行われた。そのうえでアトランダムに1グループ20人に分け、CBRについての情報交換と討議が行われた。CBRについての知識も経験も千差万別で、CBRのことは知らないのでこのフォーラムに参加したという人が3割程度、自国で行われてはいるが、直接のかかわりはないという人が3割程度、直接かかわっている人が2割程度であった。国際学会というと、参加の機会が多いのは臨床家や現場で働く福祉活動家よりもむしろ教育関係者であり、その影響もあって、残りの2割は大学をはじめ養成校においてCBRの講義を担当している教師であった。
 CBRは千の顔を持つと言われるが、この十人十色のCBR活動の中で、理学療法士としての役割と有効かつ有益な技術提供は何かを模索するため、この機会に各国の情報を直接収集し、今後の参考に資するため、青年海外協力隊OBに当日のCBRフォーラムに参加してもらい、聞き取り調査を併せて行った。前もって質問項目を定め、アンケート用紙を埋めていくという作業ではなかったので、統計的資料にはつながらないが、その内容は、今後の参考となるヒントが得られた。スウェーデン、カナダ、英国等ではCBRが教育カリキュラムの中できちんと教えられていること、このことは理学療法技術がCBRの役割の中で明確に位置づけられていることを証明している。
 CBRに専門家はいらないと一時、強調された時期もあったが、反省も含めて現在は、専門的すぎない技術の提供、人々に分かりやすい、応用のきく方法を現地で編み出している。先進国では見られない適正技法を中心に大学の講義では教えているようだ。卒後教育の一環としてさえ確立していない日本の現状には、大いに参考となることであった。
 途上国からの興味ある発言で「CBRはWHOが介入してやっているが、われわれの関知するところではない。お呼びでない」「CBRとは外国の人が来てするもので、CBRが行われる特定の地域も決められたものである」というものが3か国ほどから聞かれた。押しつけの国際協力、1人よがりの援助が現地に根づいていないと受け取られて、誠に耳の痛いことであった。
 グループ討議、総括の報告については、当日収録したテープを整理し、CBRに対する26か国、53人の声を冊子にまとめる予定である。

(たぐちよりこ 日本作業療法士協会国際部長、第13回世界理学療法連盟学会副学会長)