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JIL(全国自立生活センター協議会)の活動

奥平真砂子

JILとは

 全国自立生活センター協議会は英語の名称を“Japan Council on Independent Living Centers”と言い、それを略してJILと呼ばれている。
 JILは自立生活センター(以下、ILセンターという)の連絡・協議団体であり、直接個人に対してサービス提供を行うものではないが、その設立以来、日本に障害者の自立生活の考え方を広め、自立生活センターの設立を推進して、障害当事者の力をつけるために、ピアカウンセリング講座や自立生活プログラムを組むなどいろいろな活動を続けている。また、キリン福祉財団のご支援により10年以上続いている「障害者自立生活研究会」や、海外から5人のゲストを招いた「自立生活国際フォーラム」などのイベントを開催して、障害者だけでなく社会や一般の人々を啓発することも行っている。
 その結果、1999年12月末の加盟センター数は、85を数えるまでになっている。そして、その数はまだまだ増え続けており、他の障害当事者の団体と協力しながら、少しずつであるが、だれもが人間らしく生きることができる、差別のない社会づくりを進めている。

目的と活動

 JILの設立は、1990年までさかのぼることができる。1986年に日本で初めてのアメリカ型のILセンターが設立されて以来、少しずつその数は増えてきていたが、もっとそれを推進し障害当事者の活動を活発するために、1990年の秋に何人かのリーダーたちが集まり、全国協議会の設立について話し合い、1年後の91年11月22日、「全国自立生活センター協議会」を設立した。
 JILは、以下の目的をもって発足した。
1.ILセンターの設立を支援する。
2.ILセンターが互いに連携、協力し合えるよう支援する。
3.ILセンターが社会的に認知されるように啓発を行う。
4.ILセンターが制度化され公的援助が受けられるようにする。
 そして最終的には、どんなに重度の障害をもっていても独立した一人の人間として、自分の選択と決定、責任に基づいた生活を送れる、差別のない社会をつくることを目的として活動している。その活動は、ILセンターに対するものと、広く一般社会に向けてのものに分けられる。

◆ILセンターに対して

1.人材養成支援=ILセンターで働くスタッフの養成を援助する。
2.ノウハウの提供=講師派遣、マニュアルなどの発行、講習会などの開催によりILセンター運営方法や理念、サービス提供について教える。
3.情報交換とILセンター間の交流促進=機関紙やホームページによる情報提供、委員会や交流会の開催により連携強化を図る。

◆一般社会に向けて

1.広報・啓発活動=自立生活理念の普及とILセンターヘの理解を促進する。
2.研究・政策提言=障害者の自立生活や福祉に関する研究を実施・発表したり、その結果に基づき提案や働きかけを行う。
3.権利擁護=障害者の権利保障の獲得や人権侵害を訴える活動を行う。
 最近は特に、権利擁護活動が活発で、権利擁護センターや弁護士と連携を取りながら、効果的な活動となるように心がけている。

組織

 JILはILセンターを支援する組織であり、その構成員となる協議員はILセンターである。最高意思決定機関は15人の常任委員で構成されているが、すべての協議員の中から、2年に1回の選挙で12人の常任委員が選出され、残り3人は地域性や外部からの声を聞くために、推薦によって選ばれることになっている。その常任委員の中から代表1人、副代表2人が選ばれ、事務局長は代表が指名することとなっている。
 また、権利擁護を中心にした運動体とサービス提供の事業体の両面をサポートするため、そして地方のILセンターの運営を支援するために、「権利擁護委員会」「ピアカウンセリング委員会」「介助サービス委員会」「地方ネットワーク委員会」を組織している。これらの委員会では、オンブズマンの育成やマニュアルの作成、プログラムリーダーの育成などを行っている。
 障害者の自立生活の考え方が社会に浸透してきて、それがいろいろなところに現れてきている。そのうちの一つに国の事業である「市町村障害者生活支援事業」に“ピアカウンセラー”の設置が義務づけられたことがある。そのせいか、“ピア”の意味を理解せずに、ピアカウンセラーになりたいと希望する人が大変多くなり、経験を積んだ質の高いピアカウンセラーを育てることが急務となった。そこで、2年ほど前からJILでは、ピアカウンセラーを認定することにし、実際にピアカウンセラーとして働いている障害者や研究者などを委員としたピアカウンセラー認定委員会を設置した。これまでに、約60人の障害者をピアカウンセラーとして認定している。

JILが考えるILセンターとは

 前述のとおり現在の加盟数は85団体であり、その数は増え続けている。JILではただ加盟数を増やすことを目的にしているのではなく、だれもが自己の選択と決定において地域で暮らせる社会をつくるために活動している。そして、障害があり、“ピア”の関係にあるからこそ、そのニーズを知ることができ、最良のサービスを提供でき、これまでの障害当事者の組織とは違い運動体としてだけでなく、障害者が地域で暮らすために必要な、社会サービスを提供する事業体としてもその活動域を広めている。
 そのため、JILに加盟することを希望するILセンターに対しいくつかの要件を定めて、権利擁護のほか、地域でサービスを提供しているILセンターの参加を求めている。それらの要件とは、以下のようなことである。
1.意思決定機関の責任者および、実施機関の責任者が障害者であること。
2.運営委員などの意思決定機関の過半数が障害者であること。
3.権利擁護と情報提供を基本サービスとし、かつ次の四つのサービスのうち二つ以上を不特定多数に提供していること。1.介助サービス、2.ピアカウンセリング、3.住宅サービス、4.自立生活プログラム。
4.障害種別を問わずサービスを提供していること。
5.会費の納入が可能なこと。
 これらすべての要件を満たすことは難しいかもしれないが、実力のある組織をつくっていくためには必要なことだと考えている。しかし、障害当事者中心に運営されているという要件は外せないが、サービス面が整っていないところに関しては“未来会員”や“準会員”として加盟してもらうケースもある。その場合は、事業体として実績を積んだ後に、“正会員”としてランクアップしていくことになっている。

これからの活動

 発足以来9年が過ぎ、JIL自体の組織も大きくなり、その活動はますます重要になってきている。しかし、ILセンターが存在しない県がまだあることも事実であり、障害者がサービスを提供する事業体のILセンターの社会的認知もまだまだ低い。これからも自立生活運動の理念を広げる活動を続けていかなければならない。
 また、国際的にもネットワークづくりが進んでおり、昨年の9月に世界50か国から100人以上のリーダーたちがワシントンDCに集まり、初めての自立生活国際会議が開かれた。今年は日米共催で、2回目の会議を開催する予定である。国際協力はその重要性を増しているが、その中でも特に、アジアの一員である日本は、アジアの障害をもつリーダーを育てる支援をしていくべきだと考えている。東京都八王子市のヒューマンケア協会は、独自にアジアの各国にリーダーを派遣し、自立生活プログラムやピアカウンセリングの講座を開き、現地のリーダー育成を続けている。
 国内外の障害者が経験と知識をもち、当事者だからこそできる権利擁護活動や地域生活に必要なサービスを提供し、最良の社会サービスをつくり上げ、だれもが自己の選択と決定、そして責任において生活できる社会をめざして活動を続けていかなければならない。

(おくひらまさこ JIL事務局長)

日本の自立生活センター分布状況

(1999年12月31日現在)

図 日本の自立生活センター分布状況  北海道=2、宮城=1、秋田=1、福島=6、栃木=1、埼玉=3、千葉=3、東京=21、神奈川=3、新潟=1、石川=1、山梨=1、長野=2、静岡=3、愛知=4、滋賀=2、京都=1、大阪=8、兵庫=6、奈良=1、鳥取=1、岡山=1、広島=3、香川=1、愛媛=1、福岡=4、長崎=1、熊本=1、沖縄=1