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街なか探検隊 Vol.23

富山
越中の売薬さんと世界遺産「五箇山」

平井誠一

 ご存じ「水戸黄門」の時代劇によく出てくる「越中の売薬屋」と言えば、富山の専売特許です。また、世界遺産に登録されている合掌造り「五箇山」で、富山は世界的にも有名になりました。
 富山は全国の家々に薬を売り歩いた「売薬さん」の町で、今も有名な薬屋さんが旧市街地に多く存在しています。もちろん漢方薬も多く、富山医科薬科大学などはその研究で有名なところです。また、日本海の魚がおいしく、エビのにぎりというと都会ではゆでたものが出てきますが、富山では生の甘エビがのっています。

身障者スポーツ大会「きらりんぴっく富山」の年

 今年、富山で国体が行われます。障害者国体の「きらりんぴっく」は10月末に行われますが、それに併せて富山駅も改築されることになっています。「これまでの荷物用エレベータを1人でも自由に使えるものにします」という駅員さんの話を聞き、「やっと変わるのかな」とうれしい気分です。また、これまで車いすでは駅の南口にしか出られなかったのですが、今度は地下道にエレベータが付けられ、北口に簡単に出うれるようになります(8月完成予定)。
 富山市も他の地方都市同様、町の空洞化、ドーナツ現象が進み、旧市街地は空き店舗が目立つようになっています。富山駅周辺、特に富山駅裏側の開発はめまぐるしく体育館やホテル、女性会館、自遊館(宿泊を兼ねた多目的ホール、会議室などあり)などが、歩いて5~10分ぐらいのところに建てられています。
 駅前(南口)にはショッピングセンターやホテル、銀行などが建ち並び、さらにずっと南に10分くらい歩いていくと県庁や市役所などの官庁街があります。その官庁街を横切ると桜の名所の松川に行き着きます。この松川では春に遊覧船が出て桜を満喫することができます。車いすではまだ乗ったことがないので乗れるがどうかわかりません。さらに松川べりの横には富山城があり、公園になっています。
 街中のスロープ化やバリアフリー化は公共の建築物においては進んでいますが、古い建物に至ってはまだまだ不十分です。障害者が利用できるスーパーや書店、映画館などはむしろ郊外に多くあり、車で乗り付けて利用するといったものが増えてきています。
 また、車いすを利用している人たちが泊まりやすい宿泊施設はまだまだ少なくて、現在宿泊可能なところは富山自遊館、マンテンホテル、全日空ホテル、呉羽ハイツなどです。国体を契機に増えることを期待しています。

交通アクセス

 さて、雪国にとって交通アクセスの問題は非常に大きな問題です。富山市には、市電が富山大学方面と旧市街地を走っていますが、まだまだ車いすの人が1人で利用できるものにはなっていません。バスもスロープバス3台が走っていますが、不便さと使いにくさがあり、日常的に利用するまでには至っていません。富山にノンステップバスをつくっている会社があるのに残念です。公共の交通機関が発達しない原因は、車の保有率全国一と言われるほどマイカー族が増え、一家に1台ではなく、1人に1台になっていることもあって、交通問題はなかなか改善されません。

銅器の町「高岡市」

 富山第2の都市高岡市は銅器で有名な街です。全国のお寺の鐘はここでほとんど作られているそうです。また、日本の三大仏として有名な高岡の大仏があります。交通面では今年の4月から私鉄バスがノンステップバスを導入しました。高岡も再開発が行われており、今後障害者が利用しやすい街になればと思います。またこの高岡駅は、次に紹介する世界遺産の一つである合掌造り「五箇山」への入り口でもあります。

世界遺産、合掌造り「五箇山」

 白山国立公園を望む富山県と岐阜県の県境に位置する合掌造りの村落です。平家の落人が逃げ延びてきたところと言われ、そうした中で茅葺き屋根の合掌造りが今日まで残ってきました。その最も近いところが五箇山と言われるところで、高岡駅から城端線に乗り換え、城端駅で降りてバスで行きます。普通のバスしか走っていませんが、レンタカーなど車で行けば、合掌造りの道沿いには障害者用トイレや障害者が入れるような休憩所が作られています。

立山連峰と宇奈月渓谷鉄道

 富山は海あり山あり川ありと自然がいっぱいで、そんな中で日本最高峰と言われる立山連峰がそびえ立っています。冬登山をする人も多く、夏には立山の麓である室堂までバスで行くことができます。室堂には富山駅からバスが出ています。また宇奈月渓谷鉄道は秋の紅葉を楽しむにはもってこいの場所です。宇奈月には富山駅にある富山地方鉄道の電車に乗って宇奈月駅まで行きます。そこから宇奈月渓谷鉄道に乗り換えます。渓谷鉄道は車いすに乗ったまま利用することは無理かもしれませんが、富山の自然を満喫できるでしょう。

蜃気楼の見える街、魚津

 春先には海のかなたに幻想的な街並みなどの風景が現れ、なんだかロマンチックな気分に浸れそうです。この蜃気楼を見るには魚津駅がもっとも近いでしょう。ただ、自然条件がそろわなくては見ることができません。
 私たちの富山はまだまだ交通機関の不便さが残る街ですが、今年の国体を契機にさまざまな建物や道路などが改善されてきています。点と点を結ぶ交通機関が、今後整備されるよう働きかけて、もっと住みよい都市にしていきたいと思います。

(ひらいせいいち 富山生きる場センター代表)