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障害のある子どもに対する
介助ボランティア養成講座

谷久美子

養成講座開催までの経緯

 現在、京都市内では児童館・学童保育所の学童クラブ事業において、統合育成を目的に、障害のある小学1~3年生の子どもに対し介助ボランティアの派遣が行われています。しかし、小学4年生以上の子どもには介助ボランティアの派遣が整っておらず、各個人がさまざまな方法でボランティアを探すような状態にあります。せっかく地域で同学年の友達ができても関係性が途切れてしまうことになります。
 また、就学前の障害のある子どもの家庭に対しても、サポートの手は多いとは言えません。自宅から遠い施設に通っている場合、近所の友達ができにくく、帰宅後は家族と過ごすだけになりがちです。当協会には、そういった地域とのつながりを求める余暇活動支援の相談がたくさん寄せられます。社会とのつながりがもてる場面をサポートするためには、市民感覚を活かせるボランティアを育成する必要があると考え、平成11年度に本講座の開催という運びになりました。

ねらい

 本講座では、受講生の「新鮮な感性」を大切にすることと、「自分の言葉」をもてるようにすることに重点を置きました。
 「奉仕精神」を美徳とする世代ではなく、「普通に」かかわることを簡単にこなせてしまう若い世代が多く参加できるように、チラシのデザイン、受講料設定、開催日時に工夫をこらしました。
 障害のある子どもが障害のない子どもと、または障害のない子どもが障害のある子どもと、関係をもとうとする時、そのクッションになったり、潤滑油になったりするボランティアが、「普通」の感性を失い「やってあげる」感覚では、つくれる関係もつくれなくなってしまうからです。
 また、毎講座、活発にディスカッションを行うようにしました。
それが実際にボランティア活動を行ううえで必要となってくる「相手の意思を聞き取り、自分の意思を伝える」という、非常に大切な姿勢を訓練する場面と考えたからです。
 また、そういったディスカッションの積み重ねが、「障害」を知らない人たち(子どもたち)に理解をしてもらえる「自分の言葉」を見出せると考えました。

内容

 講座は、5回に分けて行われました。毎回のテーマと様子を簡単に紹介します。

障害のある子どもに対する介助ボランティア養成講座


日時:1999年1月23日(土)~3月6日(土)、計5回
受講料:1000円
定員:50人

●第1講目 1月23日(土)
 「なぜボランティアが必要か」
 ボランティア受け入れ経験のある保護者からの体験談を聞いて、ボランティアの必要性を受講者に理解してもらう内容としました。ボランティアにしかできないかかわり方、ボランティアならではの良さ、ボランティアでは担えない部分や欠点についても詳しくお聞きしました。質疑応答では、コーディネーターが保護者と受講生とのパイプ役となってバランスをとり、保護者のボランティアへの過剰な期待に終始するということもなく、また受講生本位の空想論を交わすということもなく、両者が対等に意見を交わしました。

●第2講目 1月30日(土)
 「障害や障害のある子どもとの関わりについて」
 医学的分野から講師を招き、さまざまな障害について基本的な知識を知り、子どもとのかかわり方について学びました。また、障害のある子どもたちとかかわるうえでのトラブルを、どのように解決していくのかを考えるディスカッションの時間をもちました。知的障害のある子どもとのトラブルを想定し、パニック時の対応についてグループ討議を行いました。各グループに障害のある子ども(人)とかかわったことのある経験者が数人入り、具体的な経験談を交えて熱い議論が交わされました。

●第3講目 2月6日(土)
 「ボランティア活動への不安解決いたします!!」
 ボランティア活動経験者の事例をもとに、受講生がボランティア活動全般についての不安・問題を出しました。発表者が受講生に近い存在であったため、受講生の意見が出やすい講座になりました。また、障害者手帳・療育手帳の存在や公共施設などでの障害者割引についての豆知識をクイズ形式で紹介しました。

●第4講目 2月21日(日)
 「さぁ!!一緒に出かけましょう」
 実際にボランティア募集の相談を受けている障害のある子どもに協力をしてもらい、1日体験実習を行いました。障害のある子どもと受講生で6~8人のグループに分かれ、動物園で遊ぶ、昼食をとるといった体験をしました。子どもが帰ったあと、各グループで感想・反省を話し合いました。

●第5講目 3月6日(土)
 「楽しく、交流会」
 講座を通しての感想や、今後の活動に向けての抱負を語る場としました。また、実際に活動に参加してもらうためにボランティア登録をしてもらいました。

講座終了後の動きと今年度の取り組み

 講座終了時に介助ボランティアとして40人ほどの登録がありました。しかし、開催時期が年度末であったためか、即活動に結びついた登録者は多くはありませんでした。むしろ、個別に直接活動紹介をしたほうが、より当事者の具体的な状況が共感でき、活動が成立しやすいようです。
 今年度は、少人数で具体的な活動紹介ができるオリエンテーションという形を想定しています。そして、活動者の意見交流会・研修会といった形式で、前述のようなディスカッションを行うほうがボランティアの意識向上につながると考えています。

(たにくみこ 社団法人京都ボランティア協会)