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子ども心を忘れない仲間のサークル
-トム・ソーヤの活動-

大野祥二郎

 私たちの団体トム・ソーヤは、宮崎県の日向市近辺の青年層(平均年齢25歳)を中心に構成されています。メンバーの職業は学生、フリーター、自営業者、サラリーマン、医療・福祉関係職員などさまざまです。
 私たちのサークルは昭和63年に設立、学生時代にボランティア活動やサークル活動を経験していた数人が社会人になっても活動したいという思いでスタートしました。私自身もジュニアリーダーのグループ(地域単位の子ども会でレクリエーションゲームやキャンプ等を通して子どもと親との心のコーディネートをする中学生、高校生リーダーのグループ)に入ってボランティア活動を行ってきました。トム・ソーヤに入ったきっかけは、トム・ソーヤ発起人の中にジュニアリーダーの先輩が数人おり、また昔のようにいっしょにやろうと声をかけられたのが始まりです。
 現在の会員数は23人。進んで何かをやってみようと集まってきた者が、ボランティア活動や野外活動を通し、出会った仲間と共に楽しみながら、また、共に考えながら、いつまでも子ども心を忘れないことをサークルの目的としています。また、私たちは活動で最も大切なことは、活動に代償を求めない、私たちの活動が本当に「よいこと」になるように願うとともに、「よいこと」と思ったらできるだけのことをしようと試みるということです。
 私たちの活動の主体はアウトドア活動です。火おこし、ロープの結び方、テント張りなどのアウトドアテクニックをボランティア活動に活用しています。メンバーそれぞれの特技があり、お互いがその特技を出し合って他のメンバーに教え合ったりしています。毎年6月から7月に、私たちは自分たちの身に付けているアウトドアテクニックをいろんな人にも知ってもらいたいということで、他のボランティアサークルのメンバーや新聞広報等で呼びかけた人たちを対象に「リーダーストレーニングキャンプ」という野外キャンプを行っています。
 トム・ソーヤは今年で11年目を迎え、さまざまな活動を行ってきました。トム・ソーヤ設立当初は市内の養護施設で毎週2回ほどの学習指導、秋には施設の児童や指導員と共に、日帰りのデイキャンプ(トム・ソーヤ主催)、施設のクリスマス会などのイベントに参加し、子どもたちと一緒に楽しんできました。しかし活動7年目ぐらいから、10代・20代前半だったメンバーが20代後半・30代になるにつれ、それぞれの社会的立場が確立していき、プライベートよりも仕事にウエイトを置かざるを得なくなってきたことにより、養護施設での活動をやめてしまいました。
 また、以前私たちの活動の協力者から土地を借りて畑を耕し、秋には日ごろお世話になっている人たちを呼んで収穫をしていましたが、その土地が区画整理で整地され、一時休止となりました。そういった理由で一時期、トム・ソーヤは活動の目的を失っていたのですが、このまま終わらせたくないという気持ちもあったので、自分たちができる範囲で何か活動を再開しようと始めたのが、現在の活動です。
 現在は知的障害をもつ人とその支援をする家族のグループ(知的障害者育成会)や、私たちと同世代の知的障害をもつ当事者グループ(希会)とスポーツや野外活動等を通してレクリエーションを楽しんでいます。
 正直なところ、私は彼らとの活動を始める前までは知的障害をもつ人々に対して、突発的な行動をし、常識とはかけ離れたことをする人たちではないかという誤解がありました。しかし、彼らと共に活動を重ねていくにつれ、普通に仕事をし、私生活も私たちと同様に楽しんでいる、私たちと変わりないじゃないかということに気付き、それからは自分の恥ずべき偏見もなくなり、町で会ったら話をしたり、彼らの職場の近くにきたら顔を出したりして、普通の友達として付き合うことができるようになりました。
 現在、トム・ソーヤの問題点としては、決まったメンバーしか活動に参加しない(メンバーの固定化)ということがあります。今後はトム・ソーヤでも新しい人を受け入れることができて、活動に出てくれば仕事のストレスが解消できる居心地のいいサークルになることを目標にしたいと思います。そして、進んで何かやってみたい(ボランティア以外でも)と思っている人、新しい友達をつくりたいという人などを中心に呼びかけて、新しい仲間との出会いをつくっていきたいと思います。

(おおのしょうじろう トム・ソーヤメンバー)