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2001年ボランティア国際年に向けて

阿南健太郎

ボランティア国際年の制定

 国際年という国連が定める「年」があります。これまでには、国際児童年(昭和54年)、国際障害者年(昭和56年)、国際高齢者年(平成11年)などがありました。これら国際年は、加盟国が直面する問題に対して、各国共通の重要課題と位置付け、その解決のためのキャンペーンを行うものです。
 平成9年第52回国連総会は満場一致で、2001年を「ボランティア国際年(lnternationalYear of Volunteers:ⅠYV-2001)」とすることを定めました。
 この国際年制定の背景は、日本政府の努力抜きには語れません。もともとこの提案は、国連ボランティア名誉大使をつとめる中田武仁さんによって、平成8年に東京で国連が行ったポリシー・フォーラムで明らかにされました。中田さんは、平成5年、カンボジア総選挙の選挙監視に国連ボランティアとして参加し、殉職された故中田厚仁さんのお父様です。中田さんは厚仁さんの亡き後、全世界で活躍するボランティア活動の参加者を応援しています。その活躍の様子は皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。その姿は、日本人のみならず、世界中の人々に感動を与えています。
 また、国際的なボランティア推進機関である、ボランティア活動推進国際協議会(IAVE)、ヨーロッパボランティアセンター(EVC)、キリスト教女子青年会(YWCA)などの非政府組織(NGO)も賛同していました。
 それらの動きが高まりを見せ、また日本政府の全面的支援を受け、各国政府に支援・賛同が呼びかけられました。その結果、国連全加盟国のおよそ3分の2に及ぶ123か国の共同提案による決議を総会にて採択するに至ったのです。

国際年の目的

 ボランティア国際年には四つの目的があります。これらは相互に関連し、補完しあう関係にあります。

1.ボランティアに対する理解を深める(RECOGNITION)

 ボランティアの概念は、それを表す言葉が違っていても、あらゆる社会・地域・集団にあると言っても過言ではありません。さまざまな形態のボランティア活動を理解し、正当に評価・認知するようになることが望まれます。

2.ボランティアヘの参加が促進される環境を整備する(FACILITATION)

 長期参加ができるような休暇制度や社会保障制度などを整備するようにしています。またボランティア初心者に向けての情報提供を行い、環境整備することも必要です。

3.ボランティアのネットワークを広げる(NETWORKING)

 より効果的、効率的にボランティアが活動できるように、ネットワークを組むことを促進します。また、インターネットなどの活用も視野に入れています。国境を越えて、情報が共有されることは、次世代の市民社会には重要です。

4.ボランティアの活動を推進する(PROMOTION)

 潜在的なボランティア人口の掘り起こしをめざすために、機会提供をすすめるようにします。また、ボランティア活動の質と量についても考えていかねばならないと思います。

各国の取り組み

 ボランティア国際年は、国連内で唯一のボランティア派遣組織である「国連ボランティア計画」(United Nations Volunteers Programme:UNV)をその推進窓口として、世界各国でその準備が進められています。UNVの本部(ドイツ・ボン)には、Team2001が結成されて、国際年の準備を行っています。
 なお、各国における国際年への取り組みの状況は、インターネット上のホームページ(注1)や電子メール(注2)によって全世界へ公開・発信されています。
 障害をもつ人にかかわるNGOのいくつかが、このボランティア国際年に対して書面で支援を申し出ています。具体的には、国際障害基金、中国障害者連盟、リハビリテーション・インターナショナル(RI)などのNGOです。この支援の輪は今後も広がっていくことでしょう。
 国連では、全世界でボランティア国際年を推進するために、それぞれの国ごとに国内委員会(National Committee)を設置するよう求めています。それを受けて、さまざまな国で国内委員会が設置されたり、そのための準備が始まっていますが、UNVによれば、その形態はさまざまで、国家主導のものもあれば、ボランティアと行政が対等なパートナーシップのもとに委員会を立ち上げているところもあります。それぞれの国のボランティアを取り巻く状況によって異なっているということでしょう。

日本での取り組み

 日本においては、ボランティア国際年の推進母体について、「国内委員会」という名称は国家が主導して設置する組織という印象が強いということから、民間のボランティア関係団体主導の組織であることを強調するために、その名称を「推進協議会」とすることが準備段階で合意されました。
 結果、「2001年ボランティア国際年推進協議会」(International Year of Volunteers Consortium Japan:IYVJ)(注3)が、昨年10月12日に発足しました。
 推進協議会は、前述したボランティア国際年の四つの目的を推進するために、全国各地のボランティア関係団体、社会貢献を行う企業などに、会員としての参加と協力を広く募り、中央行政機関、国際連合、地方自治体などと連携しながら、活動をすすめています。
 具体的には、国連が定めたロゴマーク(上記参照)の管理や、ボランティア国際年の広報や各種イベントなどの事業を行っています。
 また現在、国内の障害をもつ人たちにかかわるボランティアグループや移送サービスを行う団体、当事者団体のいくつかが、推進協議会の会員として加わっています。
 冒頭にあるように、これまでの国際年が、国際○○年というように、「国際」を頭に据えていたのに、日本語訳ではあえて「ボランティア」を先にして、「ボランティア国際年」としたのは、国際的なボランティア活動のみを対象としたものという間違った印象を一般に与えないためです。ボランティア関係団体においてもそれを了承して、すべてのボランティアのための年「ボランティア国際年」と呼ぶことを確認しています。

国際年をすすめるにあたって

 ボランティア国際年はその性質上、単なるキャンペーンやサミット、会議のための年ではありません。ネットワーキングすること、そして1人でも多くの人がボランティア活動に触れる、すなわちアクションする年になることを期待しています。
 国連が21世紀の幕開けの年を、ボランティア国際年と定めたことを、私たちボランティア活動を推進する立場にある者は、大いなる関心を寄せています。それは、新世紀が”ボランティアの世紀“であることを提唱しているように思えるからです。
 ボランティア国際年は、何も海の向こうの出来事ではありません。皆さんの足元にあるのです。私たちはたくさんの方々の参加を、次のようなメッセージと共に呼びかけています。
 「みんな輝く社会へ。あなたのちからで」。くり返しますが、ボランティア国際年は、皆さんのアクションが創りあげるのです。

(あなんけんたろう 2001年ボランティア国際年推進協議会事務局)


注1 ホームページのURLはhttp://WWW.iyv2001.org/です。
注2 「ボランティア国際年グローバル・アップデート」というニュースが発行されています。登録はホームペ-ジからできます。
注3 2001年ボランティア国際年推進協議会の連絡先は以下のとおりです。
〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1 NYC内(社)日本青年奉仕協会気付
TEL 03-5453-2001
FAX 03-5453-2505

〈参考文献〉
1、JYVAブックレット No.12「2001年ボランティア国際年ハンドブック」(社)日本青年奉仕協会、1998