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補聴器の普及をめざして

高岡正

 6月6日は「補聴器の日」である。昨年、全国補聴器販売店協会と全国補聴器メーカー協議会が制定したが、今年はマスコットネームを募集したり大々的にPRの準備をしている。全日本難聴者・中途失聴者団体連合会と各協会でもPRや勉強会などを予定している。
 補聴器は、眼鏡と同じように耳が遠くなった人に必要な機器だが、万能の機器ではなく、本人と周囲の協力なしにはよい聞こえが得られないことがまだ理解されていない。
 補聴器は、最近耳穴式が耳かけ式にくらべ、大幅に売れ行きを伸ばしていると聞く。これは、使い勝手のこともあろうが、難聴になったことを周囲に知られたくないという心理が働いている。確かに呼ばれて気が付かなかったり、会話がちぐはぐになったりすることは気恥ずかしいことだ。しかし、補聴器は生活のどんな場面でも有効ではなく、電車の中や大勢の人が会話している時などは、どんなに良い補聴器でも聞き取りが困難である。
 だれしも年を重ねれば難聴になるのである。聞こえないことは恥ずかしいことではない。やはり、自分が難聴であることを周囲に伝えて理解を求めずには、良い聞こえが得られない。それには社会の理解が不可欠になる。
 街角の補聴器店が、拡声電話機、マイクと磁気誘導ループの利用など福祉制度や当事者団体の情報などを含めて、もっと気軽に入れる情報提供の場であったらと思う。
 当会も、補聴器の普及にはさまざまな補聴援助システムの普及と社会の理解が不可欠と考えて、シンポジウムの開催や小冊子を発行している。
 平成5年に全国社会福祉協議会が音と聞こえに関するシンポジウムを開催し、翌年「補聴器普及及び音環境に関する調査研究報告書」という立派な報告書が出ている。これには、補聴器普及の方策がきちんと報告されているが、残念なことにその後の施策が続いていない。さしあたって、難聴者人口を推定する実態調査が必要と考える。このデータをもとに、官民あげて、補聴器の普及と聞こえの理解を求める国民運動を始めたい。

(たかおかただし 社団法人全国難聴者・中途失聴者団体連合会理事長)