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ブックガイド

旅するためのおすすめ本

 尾崎由利子

 障害者の旅行は年々盛んになっていますが、それでも実際どこかに出かける時には、「乗り物や泊まる所や介助をどうしよう…」と、悩んだりするのではないでしょうが?鉄道やホテルそして観光地は、バリアフリー化の中で年々変わっています。そこで今回は、一般の書店で買える最近の旅行体験記やガイドブック(文中の本の価格は税抜)を紹介したいと思います。

1.ベテランから学ぶ

 草薙威一郎さんは、障害者の旅行コーディネーターの“草分け”です。車いすに乗る人の海外旅行がまだ“夢”だった1970年代から、北欧の福祉視察旅行などの添乗をしています。本もたくさん書いていますが、「障害をもつ人と行く旅」(筒井書房、1998年、1,500円)では、個人旅行やグループ旅行の計画の作り方、旅行会社の役割などを紹介しています。
 一方、電動車いすでの旅行の“草分け”は勝矢光信さんです。私が車いすの旅を始めた15年前のそのずっと前から旅行をしています。「車イスといっしよに旅に出よう!」(日本経済新聞社、2000年、1,600円)では、旅行の体験のほか、携帯スロープの使い方などベテランならではの工夫が紹介されています。
 高萩徳宗さんは若いけれどベテランのトラベルコーディネーターです。この6月にあの乙武君推薦の「バリアフリーの旅を創る」(実業之日本社、1,500円)を出版しました。行政の福祉バスの功罪など、本当のバリアフリーを創っていくための、経験に根ざした意見がいろいろ書かれていて、すごくおもしろい本です。

2.ガイドブック

 近畿日本ツーリストの「初めての旅行術」(近畿日本ツーリスト、各1,600円)は一般書店で手軽に入手できる便利なガイドです。しかも肢体不自由・視覚障害・聴覚障害と障害ごとに出版されています。
 宿泊ガイドでは、「全国宿泊情報2000年度版」(JTB、2,300円)のほか、「安くて良い宿&公共の宿」(昭文社、障害者対応状況の記載は一部地域版を除く、各地域857円)が、たくさんの宿を載せているので便利です。宿泊ガイドにはこれ1冊ですむという物はないので、いろいろ見て調べるといいと思います。
 この4月には、箱根や軽井沢など8つの観光地を紹介した「らくらくバリアフリーの旅関東周辺」(昭文社、1,600円)という観光ガイドも発売されています。

3.最新情報を知る

 最近のようにどんどんホテルや駅がバリアフリーになっていくと、数年前のガイドブックと実際とはずいぶん違っていて分かりません。そこで役に立つのが雑誌です。ご存じの人も多いと思いますが、「WE'LL(ウイル)」(ATEC INTERNATIONAL、850円)には、毎号旅行の体験記や情報が載っています。WE'LLは通信販売のほか、大手書店や一部のコンビニでも購入できるようになり便利になりました。
 行き先のバスの有無やレストランなど細かい情報はどう調べるか、これが実は課題で、地域ごとの「車いすガイド」が各地で障害者団体などによって作られていますが、ほかの地方から訪ねる場合は入手しにくく、更新が少ないガイドの内容は古くなりがちです。インターネットで情報収集するなど工夫が必要なところです。

4.旅行の工夫と楽しみ

 これだけいろいろ調べて旅行に出ても、いざ、現地に行ったら話が違っていたということもあります。でも、大変なことばかりでなく、すごくいい旅館があったり、新しいバリアフリー施設を見つけることもあります。旅行のハプニングもぜひ楽しみましょう。
 頚椎損傷の研究者小濱洋央さんとパートナーの真実子さんは、カリフォルニアでの2か月の生活の体験を「車いすでカリフォルニア」(日本評論社、1997年、1,500円)で紹介しています。ベッドの高さの合わせ方やシャワーの使い方など工夫・苦闘を知ることができます。

5.海外のガイドは?

 海外には障害者宿泊ガイドはあるのでしょうか? 実は米国には“障害者宿泊ガイド”はありません。15年前には確かにあったのですが、一般の宿泊ガイドに“車いすマーク”が記載されるようになり、さらにADA(障害をもつアメリカ人法)の影響でバリアフリー化がすすむと、障害者用ガイドはなくなってしまったのです。ユニバーサルデザイン化がさらにすすめば、宿泊ガイドの“車いすマーク”さえなくなる日がくるかもしれません。障害者対応が当たり前になって。
 ともあれ「Mobil Travel Guide 2000」(英語版16.95ドル)には、米国中の膨大なホテルが、車いすマーク付きで紹介されています。これは私が米国横断した時、毎晩宿泊先を決めるための“愛読書”でした。ヨーロッパなどでは、洋書書店やアマゾンコムなどで購入できる、英語版ロンリープラネットの旅行ガイドが役に立ちます。各国での障害者の旅行についての相談先や宿泊情報が載っています。

6.もうちよっと遠くへ!

 日本にも海外にも、どこにでも行ってしまう障害者がいます。
 「どこでも行くぞ、車イス!~寝袋ひとつでヨーロッパの旅~」(ポプラ社、1997年、1,200円)は、車いすの青年廉田俊二さんが、学生時代に鉄道でヨーロッパを貧乏旅行した記録です。ルビがふってあり、子どもや漢字の苦手な人にも読みやすくなってます。
 「夢をあきらめないで~カレンと自然と車椅子と~」(続素美代訳、TBSブリタニカ、1,500円)のカレンさんは、ヒマラヤからボリビアまでハンドサイクルに乗り、カヌーに乗り世界中を旅しています。この春、日本を走り抜けていった姿を見た人も多いのではないでしょうか?
 あなたもちょっと出かけてみませんか? もう少し遠くへ、この週末、ちょっと隣の駅に行ってみるところから。

(おざきゆりこ 障害があっても海外へ行く会「マップ」旅行コーディネーター)