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街なか探検隊

福島 天地人
田村郡・船引町

鈴木絹江

 その昔平安時代初期には、桓武天皇によって征夷大将軍に任命され、蝦夷征討を命じられた坂上田村麻呂。その田村麻呂は、801年に岩手県胆沢地方の豪族・阿弖流為(あてるい)を征討し胆沢城を築いたとされています。
 特に田村郡には、数々の田村麻呂伝説が伝え残っており、地名の由来や神社の縁起となっています。
 船引町の町名の由来も田村麻呂が率いる戦隊が、物資などを船に乗せて輸送していたおり、当時から浅瀬の大滝根川に差しかかり、隊員が船から下りて船を引いて渡った所とされています。
 阿武隈山系のすそ野に点在する田村郡は、現在合わせて7町村で構成され、その総人口は約7万8千人です。
 その中にあって船引町の人口は2万4千人。町の中心産業は、葉たばこ・そ菜などを兼業で営む農業です。田村郡の中にあっては、農工商産業の中心的な役割を持った町でもあります。

人【まちづくりは人づくりから】

 1995年に始まった福島県「人にやさしいまちづくり条例」により、郡内・町内にも条例の趣旨を受けた「まちづくり」が行われています。
 中でもわが船引町では、条例施行後の町立小中学校新校舎には徹底したバリアフリーが図られています。
 99年に完成し、私の娘(現在小4)が通う船引小学校(3階建て)では、校舎玄関前の段差解消スロープや点字の誘導ブロックが施設されています。加えて車いすトイレやエレベーターまで完備され、これまでのように、授業参観日に他の保護者の手を借りることなく参観できます。
 また、私たちの自立生活支援センター事業の慢性的な運営資金不足には、町内小中学校16校全校が、書き損じハガキの収集や募金活動を積極的に行ってくれています。
 一方、総合学習や体験学習への各学校の取り組みには、私たちのセンターや作業所を利用してもらうなど、相互に活用した人づくりを行っています。

天【自然の魅力満天】

 さて、田村郡の魅力は抜群の自然環境と言えます。「まちづくり」もそんな環境の中で進められていることが、私たち住民の誇りです。
 阿武隈山系を利用した観光名所の共通点は、魅力満天の星空です。片曽根山(船引町)、殿上山(常葉町)、釜山(滝根町)は標高6、700メートルあり、頂上までは車でのアクセスが可能です。それぞれの頂上からは360度のパノラマの視界が楽しめます。
 特に夜景と満天の星空は、都会では絶対に見ることのできなくなった星々に出会うことができます。加えて釜山(滝根町)には、日本でも有数の鍾乳洞(入水鍾乳洞・あぶくま洞、残念ながら車いすでの探検は無理)に併設された「星の村天文台」(TEL0247-78-3638)があり、650ミリメートルの大型天体望遠鏡とプラネタリウムで宇宙を身近に感じることができます。
 近接のレストハウス「釜山」では、私たちの作業所「まち子ちゃんの店」で製作しているクッキー(夏はカブトムシの型抜きが好評)をぜひお買い求めください。有精卵や自然塩など原材料にこだわった、本物の味が楽しめるはずです。

【宿泊ガイド】
 カブトムシで村おこしをしている常葉町の殿上山頂上には、天窓やロフトのついた 部屋(洋室)のある「スカイ・パレスときわ」(TEL0247-77-2070)にて、またまた空と星と対面して休息できます(車いすトイレ有り・10人以上でも同室で宿泊できます)。
 ここは施設全体が木造で、ぬくもりを感じさせることを基調としています。牧歌的な山頂のたたずまいは、展望風呂から湯船に浸かりながらゆったり遠望できます。天文ファンのみならず、とりわけ壮大でロマンティックな空・天を十分満喫したい旅を計画できます。

地【おみやげガイド】

 田村郡の春は遅いために、桜・梅・桃の花が一同に咲きます。三つの春花の象徴である、これらが一同に咲くことから名付けられたという三春町。三春町には、樹齢千年を越えるしだれ桜「三春滝桜」があります(大正12年10月12日、国の天然記念物指定・日本三大桜の一つ)。満開をはさんでの前後1週間は、東京並みの交通ラッシュに遭いますので、体力に不安のある方は日帰りの旅程を組まずに、地域情報を取り入れた計画を立ててはいかがでしょう。
 さて、当地のおみやげとしては、何といってもおいしい野菜・山菜・きのこ類です。
 1年を通して1日に寒暖の差があることから、それが地の利を育み、四季の食材に対してうま味を加えています。「三春の里」(TEL0247-62-8010)では、田村郡内のこのような特産物や手工芸品が販売されています。私たちの作業所「まち子ちゃんの店」で製作しているクッキーはここでも販売されています。

 今回の原稿依頼を受け、自分たちの地域を紹介する立場に立ち、原稿をまとめる経過の中で、私は改めて田村郡の魅力を感じました。
 天と地の間に生命を与えられている私たちの日々の営為が、豊かな文化へと創造されること、その祈りに近い気持ちを、晩秋の夜空に映してみました。

(すずききぬえ 障がい者自立生活支援センター福祉のまちづくりの会・代表)