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福岡
アメリカの脳外傷活動について
『ぷらむ』設立

小南雅稔

 平成12年5月14日、現在の医療、社会、福祉制度の狭間で、非常に悩んでいる脳外傷者が、一人で安心して社会生活を営むことができるように、現状を改善したいと考え福岡に『ぷらむ』を設立しました。

会名『ぷらむ』の由来

 ウメ=ぷらむは、寒い雪の冬を乗り越え、春一番に開花し、芳ばしい香りを与え、人々の心を和ませてくれます。
 これすなわち、高次脳機能障害者が、事故前の状態に懸命に回復するべく、冬の時代を思わせるリハビリを頑張り、春の時代が来るべき時に、一人ひとりの内在している素晴らしい個性が開花し、周りの人たちの心を和ませることができることを念願しています。この共通点から会名を選定しました。
 また、福岡は、菅原道真翁が、ウメをこよなく愛したことで知られています。
 会員が若い人が多いことから、ウメを横文字にして『ぷらむ』と命名しました。

活動企画

 会員が、一歩でも前進することを願い、施策を計画しています。
 リハビリの先進国である米国の情報を入手したいと考えていた矢先に、福岡大濠ライオンズクラブの支援を得て、10月15日福岡タワーに、NHIF(国立頭部傷害基金)創設者兼元会長であるスピヴァックさんを、お招きいたしました。

スピヴァックさん

 スピヴァックさんは25年前、娘さんのデボラさんが交通事故に遭い、重度障害から、娘さんを自分たちの手で助けたい一念で、NHIFを設立しました。一人の親として、また、会長としての悩み・苦しみなどあらゆる経験をされていて、その貴重なノウハウを教えて頂くことになりました。

講演の内容

1.リハビリプログラムの重要性

 認知・感情障害は、長期リハビリプログラムを行えば、50%の人が回復しています。残された能力を見極め、向上させることの努力が必要です。

2.NHIFについて

 1980年に設立。すべての医師・各種療法士・法律家・企業家・政治家の協力を求めて全米に運動を展開しました。
 「昏睡状態から地域社会へ」を目標に、医師らに「脳機能の回復リハビリプログラム」を作るように依頼しました。
 脳外傷の防止運動として、シートベルト着用運動などを展開しています。
 脳外傷者たちが定期的に会い、助け合うシステムとして、サポートグループを構成しています。

3.友の会として何をするのか

 脳外傷者に対する情報発信や情報収集活動、教育、啓蒙活動の展開などについて講演していただきました。

質疑

1.高次脳機能障害活動について

 脳外傷に絞って活動している。
 脳外傷は、記憶、認知障害を伴うが、知能障害と違うことを理解してもらう。

2.サポートコストの負担はだれがしていますか

 政府、機関、家族、保険会社が負担している。

3.脳外傷者の能力をどの程度引き出せますか

 脳外傷の程度・受傷部位により異なる。

4.脳外傷高次脳障害者に落ちこぼれがないための認定制度を設定していただきたいと思っています。参考にアメリカでは、どのようになっていますか

 内容は、資料を参照してほしい。

まとめ

 娘デボラが植物人間になるので、死なせたほうがよいと医師から告げられ、そんな事はさせないと思い立ち上がりました。
 事故当時は、ジェットコースターに乗っているようで、さまざまな苦労、恐怖、悲しみ、思いなどあらゆる経験をしてきました。
 しかし、みなさんは、私たちの資料がすべて参考になるので、短期間で習得できるでしょう。
 みなさん、傍観者になることなく、自分自身が主役で行動しないといけません。
 以上が、講演内容でした。講演時間2時間、質疑1時間の予定でしたが、会員の熱心な質疑から、大幅にずれ込み、会場予約時間いっぱいの13時から17時までめいっぱい使用し、閉会しました。
 しかし、素晴らしい貴重な内容だけに、まだまだ聞きたい思いから、講師の疲れも省みず、場所を替え、さらに2時間を越すお話しを聞く事ができました

感想

 この講演を聞き、素晴らしい人柄と立派な業績には、深い感銘を受けました。
 25年前の娘デボラさんの事故以来、ご両親が全人生を掛けて、あらゆる努力をされ、社会的協力の輪を大きく広げ、今では、確固たる組織を作り上げられました。デボラさんもグループホームで親友の方々と共同生活ができるまで回復されました。それは特に、子を想うご両親の努力の結果に他ならないでしょう。
 同じように味わった家族であれば、十分理解することができます。
 苦難の道を乗り越える時、私は、「ただ一人の親に過ぎないという言葉を言ってはならない」「私こそ主役、私が愛する家族のために、明日の希望の光に向かって、さあ行動推進しよう」という意識を再認識しました。家族の深い苦悩から生み出された『ぷらむ』の会が力を合わせ一致団結して、その使命を果たしていきたいと強く感じた次第です。関係各位の絶大なるご支援をお願いします。

(こみなみまさとし 脳外傷友の会『ぷらむ』会長)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2001年1月号(第21巻 通巻234号)