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「2002年・最終年記念フォーラム」と
社会福祉協議会

長尾立子

近年の障害者福祉の取り組みと成果

 「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムの開催に当たり、主唱6団体の呼びかけに応え、多くの関係団体、及び関係者の方々の賛同、ご参加をいただきましたことに心より感謝申し上げますとともに、皆様の力強いご協力とご支援により、2002年の国際会議等が成功いたしますことを心から祈念いたします。

 「国連・障害者の十年」さらに「アジア太平洋障害者の十年」の取り組みを通じて、わが国の障害者施策は大きく前進しました。障害者福祉の取り組みを振り返ってみますと、各種施策の整備・拡充をはじめ、障害者の住みよいまちづくりの推進、障害者と市民活動・ボランティア活動との協働の広がり、及び障害者団体・障害者施設・専門職団体の連携等、着実な前進がありました。
 1990年代の社会福祉におけるキーワードは、「地域福祉の推進」あるいは「地域生活支援」でしたが、この視点から障害者福祉をみますと、障害者が地域生活を実現するための在宅介護や就労支援等が重視され、地域におけるバリアフリーをめざした取り組みも大きく前進しました。さらに、重度・重複障害者のためのリハビリテーション等のサービス基盤の整備も進められてきました。
 2000年6月、社会福祉法や障害者福祉関係法が改正され、社会福祉分野における基礎構造改革の第一歩が踏み出されました。今後は、社会福祉法により、市町村において「地域福祉計画」の策定が進められようとしておりますが、福祉施策全体の中で障害者の地域生活支援策を位置付け計画的な取り組みとしていくために、市町村の積極的な対応が期待されますとともに、地域生活支援の取り組みは、障害者団体や障害者施設等に共通する重要な課題であると思われます。
 さらに今般の法改正による制度改革では、平成15年度から「支援費支給制度」という新しい福祉サービス提供の仕組みがスタートいたします。この制度は、障害者が必要とする福祉サービスを自ら選択し、福祉サービス提供者との間でサービス利用の契約を結ぶことが基本となります。この新しい制度は、従来の社会福祉の理念と仕組みを大きく変えるものですが、真にその機能を発揮するためにはサービス利用を支援する相談事業や地域福祉権利擁護事業等の充実が不可欠です。

「最終年」キャンペーンと社会福祉協議会の取り組み課題

 社会福祉協議会は、これまで各市町村段階において、障害者一人ひとりの生活課題に着目した相談や個別の支援活動、及びホームヘルプサービスやデイサービス事業等に取り組んでまいりました。ホームヘルプサービスは、全国で78パーセントの市町村社会福祉協議会が実施しております。
 さらに、都道府県段階においては「地域福祉権利擁護事業」を通じ、障害者や痴呆性高齢者等の権利擁護や生活支援に取り組んでまいりました。なかでも、市町村社会福祉協議会が取り組む地域生活支援の活動は、支援を必要とする障害者や家族を中心として福祉サービス提供の専門職、民生委員・児童委員、住民、ボランティア等による連携、支援のネットワークによって担われています。これは「小地域ネットワーク活動」とも言われる活動であり、60パーセント余りの市町村社会福祉協議会が取り組んでいます。
 一方、市町村は「市町村障害者計画」を策定し、地域生活支援のネットワーク活動等の基盤ともなる各種在宅サービス等の整備に努めています。「最終年記念フォーラム」のキャンペーン事業のひとつに、「市町村障害者計画の策定と促進」が掲げられていますが、社会福祉協議会は、地域福祉推進の視点から、今後も地域生活支援ネットワークの確立やその普及、「障害者計画」策定への参画、そして市町村・都道府県域における障害者団体間や障害者福祉関係者の連携のための役割を果たしていくことが重要であると考えております。
 さらに、平成15年度からは、市町村において「地域福祉計画」の策定が進められる予定ですので、地域福祉の視点からの障害者計画の見直しや充実にも取り組んでまいります。
 本フォーラムが、構成団体や関係者の地域における連携をいっそう強固なものとし、また各キャンペーン事業への市民参加の契機となり、障害者福祉の歴史を大きく発展・飛躍させる画期的ものとなりますよう、ともに取り組みを進めましょう。

(ながおたつこ 社会福祉法人 全国社会福祉協議会会長)