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情報が「ある」か「ない」かで、人生は変わる

鬼頭義徳

 同じ障害をもつ仲間がたくさんいる病院に入院した人は、障害をもって生活する方法や社会参加の仕方など、自立していくための情報(知恵)提供を早い時期から受け、将来の見通しを立てることができます。一方で、同じ時期、同じ障害でありながら、情報のまったくない病院に入った人は、病院を転々としたり、将来が見えず苦しい時を過ごし続けることも多く、自立した生活を獲得するまでにとても遠回りをしなければなりません。
 このように、障害をもつ人にとって「情報」はその人の生活を大きく左右するものであり、情報があるとないとでは、人の生き方までも変えてしまいます。
 国際障害者年以降、障害者の自立や社会参加が強く叫ばれ、障害者自身も情報の入手を必死で行い、地域での自立した生活を実現させてきましたが、これはまだ一握りの存在でしかありません。パソコンやインターネットの普及により多様な情報の入手が容易になったと言われている昨今ですが、手足に障害をもった人が本やインターネットで情報を得るためには、本をめくる工夫、コンピュータを操作する手段が必要であり、簡単に情報を得ることはまだまだできない現状です。また、社会との接点が少ない障害をもつ人は、今ある有益な情報の存在すら知らずに、現状での生活を送り続けることを余儀なくされています。
 故に、中間ユーザーの役割が非常に重要となります。中間ユーザーは障害者の周りにいる人たち(家族、ヘルパー、医者、看護婦、行政の担当者等々)であり、情報の提供者として一番身近な存在であり、その情報は障害をもった人にとって大きな力となります。しかし、障害をもつ人の自立支援をすべて中間ユーザーが背負うのは荷が多すぎます。中間ユーザーをバックアップするための「情報センター」の設置が必要です。それはただ単に情報のデータベースを提供するだけではなく、中間ユーザーを支援するシステム(研修や情報の共有など)やさまざまな情報のコーディネート機能を持つべきだと考えています。
 現在では、国の施策の中に中間ユーザーを支援する、このような情報センターの構想は残念ながらありません。私たちは、早急に、情報の提供、収集、分析、共有化のシステムについて構築を行うとともに早期に実現していくことを提案します。

(きとうよしのり AJU自立生活情報センター代表)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2001年2月号(第21巻 通巻235号)