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定年後の障害者に障害基礎年金の併給を

野澤克哉

 ご存知のように、20歳以前に障害者になった障害程度1~3級の障害者には所得制限(2000年度で単身者で全額支給は348万1000円、一部支給は446万7000円)があるが、満20歳になると無拠出制の障害基礎年金が支給される。その額は2000年度で身体障害程度1、2級(国民年金の障害程度1級)の場合は年額100万5300円、身体障害程度3級(国民年金の障害程度2級)の場合は年額86万4200円支給されている。
 これは所得制限内であれば、一般就労が困難な重度の障害者(たとえば寝たきりの障害者)であっても、就労が可能な重度の障害者(たとえば聴覚障害者)であっても同じである。法の下の平等に基づいているから障害によって区別がないことは理解できる。だが、現在は障害基礎年金制定時と障害者の置かれている社会状況は大きく変わっており、今のような等級制限と所得制限だけを要件としていることは果たして妥当であろうか。
 たとえば、障害者の雇用の促進等に関する法律によって重度の障害者であっても就労能力があれば大企業に就労し、一般と同等の賃金と身分が保障される時代になっている。20歳代で所得控除後348万1000円を超えることはめったにないので、20歳代の該当者のほとんどは障害基礎年金の支給を受けている。そうすると、仮に25歳で給与が年額340万なら1級の障害基礎年金と合わせて年間約440万円の所得となる。この他に障害手当とか所得税、住民税の減免もある。これは同世代の健常者の年間所得よりはかなり高額となる。障害によって日常生活上さまざまなハンディキャップがあり、費用がかかるのだから、そういう背景を考えれば健常者より高くても問題がないかもしれない。またこれは、職場でなかなか昇進や昇格できないことが多い聴覚障害者には、若い間だけのことであることが多い。
 しかし、障害基礎年金の趣旨は働けない障害者の所得保障であるはずである。それで提案がある。60歳以上で障害者が定年退職した場合、厚生年金でも障害者は35年ぐらい勤めても年間約200万円(月に16万円)にもならないことが多い。そうすると仮に60歳までは、月に約30万円の給与と約10万円の障害基礎年金等で40万円あった収入が、定年後には約3分の1くらいになり、生活水準がかなりダウンする。個人年金があるとしても生活はなかなか大変となる。定年で退職するまでの障害者の自覚の問題と思うが、私としては、定年まで健常者と同等の収入のある障害者には、原則として障害基礎年金の支給は停止して、定年退職した重度障害者に他の老齢年金と併行して障害基礎年金を支給したほうが現実的であると思うが制度上、困難であろうか。

(のざわかつや 関東ろう連盟理事長)