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知的障害のある人のIT革命

岡庭千泰

 数年前から、知的障害のある人たちの当事者活動が始まり、多くの人が個人的に、仲間と連絡を取り合うことが多くなっていきました。身近なコミュニケーション手段としては、これまでは電話やワープロ、ファクシミリなどでしたが、その際の問題は、電話をしても、本人にかわってもらえなかったり、グループホームでは、共同の電話のため話を聞かれてしまい気楽に話せない、当然、本人が自宅にいないと伝わらない、またファクシミリでは、プライバシーが守られないなどでした。また、ワープロ、ファクシミリも「値段が高いからダメ」「使えないでしょう、やめなさい」と言われるケースが多く、手にできない人も結構いました。ワープロとファクシミリは、知的障害の人には本当に必要だと思っていますが、本人の必要性より、使いこなせないと思われたり、価格が高いなどでなかなか理解されず、広がっていきませんでした。

 世の中に、携帯電話が広がると知的障害のある人たちも携帯電話を持っている人が増えてきて、どんどん広がっていきました。これは、自分の部屋で気楽に仲間と話せる、どこでもつながることで仲間とのコミュニケーションが広がりよりいっそう、活動を広げていったようです。
 最近では、携帯電話の進化で、携帯電話でEメールができるようになり、さらに活用範囲が広がっています。私自身携帯電話を持っていないので、携帯電話でのインターネットの活用がよくわかりませんので、本人の会の活動をされている皆さんに聞いてみました。

●携帯電話を持つきっかけは?

「はじめPHSだったけど、携帯電話のほうが広く使えて便利だから」
「連絡がとれるから」
「買った携帯にいろいろな機能がついていて、やってみたら面白かった。」

●携帯電話で、メールを使っているか?

「メールのほうが話すより料金が安い」
「電波の届かない所でも、相手が受け取れない状況でも、3日ぐらいは、送り続けてくれる」

●どのように覚えたか?

「マニュアルを1ページずつ見ながら覚えた」
「わからないときは、ガイド機能を呼び出せばいい」
「友達に聞く」

●困ることは?

「機種が違うとメールが送れない、でも大丈夫なのが出始めたけど」
「料金の説明でお店の人は送信に8円、受信に8円かかると説明され、それだけかと思っていたら、通話料金もかかることがわかった」
「買うときに身分証明書が必要で、運転免許証があればそれでいいが、保険証だと、住民票が必要で、市役所に行かないといけない。療育手帳でもいいが恥ずかしい」
「お金がかかること」

●支払い方法は?

「携帯電話を使いすぎないようにプリペイドカードを使っている」
「金額が自分でわかるように、支払請求書を持って、コンビニに払いに行っている。それに、基本料金に無料通話料サービスもあるから」
「プリペイドカードは使いすぎないけど、無料通話料はないよね」
「本人の使い方にあわせればいい」
「高くてびっくりしたことある」

●携帯電話で、ほかに使っている機能は?

「ゲームをダウンロードしたり、アイドル、アニメもダウンロードしてる」
「佐川急便なんかの宅急便も頼める」
「音楽を聞いたり、カラオケしたりする」
「メール送るのも、急ぎは速達機能を使ってる」
「iモードで、振り込みもしてる」

●パソコンは、使っているか?

「会社で、使っていて必要になってきた」
「会社で捨ててあったパソコンを拾ってきてやってみたら、おもしろかった」

●パソコンを覚えるのはどうか?

「大変。お金を出してパソコン教室に行っている。表計算とかできるようになりたい」
「うちのほうでも、月1回パソコン教室をやってる。手紙を書いたりしてる」
「障害者福祉会館のパソコン教室へ行った。その時は年賀状を作った」
「音声入力もやってみたが、風邪をひいてたりして、声が少し違うとうまくいかない。」

●パソコンで、やってみたいことは?

「インターネット。でも、難しい」
「やはり、情報提供など。ただし、別料金がかかるので、料金のことが心配」

●携帯電話のメールや、パソコンなどを使ってみてどうか?

「すごく楽になった」
「鉛筆を持って書くのは1時間ももたないが、入力するのは、平気」
「自分が学生の頃、電話も公衆電話ばっかりだったし、パソコンもなかった。あればよかったのに」
「連絡取り合うのに、番号とか入力しちゃうから、いちいち覚えたり、メールが記憶されているから、メモしなくていい」

●どうしたら、みんなにも広がっていくか?

「携帯電話も、パソコンも高い」
「料金などがわかりにくい、わかりやすくしてほしい」
「教え方も、ていねいに教えてくれれば、わかると思う」
「せっかく、インターネットとかで呼び出しても、漢字など難しい。そこが問題」
「興味はあると思う。使える場所が必要」

 「知的障害のある人とIT」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
 各地でのパソコン教室や、前年度の国の緊急予算対策にも、知的障害者向けのIT機器の整備事業が入ったように、近頃は、社会全体に「IT」という言葉が広がり、知的障害のある人たちにも、その影響は始まっています。
 パソコンを持っている人はまだ少ないようですが、ニーズはあります。しかし、使いやすさや、手軽なツールは携帯電話です。これは、知的障害のある人たちの生活を変えていくツールだと思います。
 たとえば本人の会の仲間で待ち合わせをして迷子になっても、携帯電話をもっていれば場所の確認ができるし、また、出かける途中で計画が変更になったり、分かれて行動しなくてはならないときでも安心です。
 課題は価格が下がることや、使い方を教えてくれる場所や、人数が増えること、技術的な面では、インターネットで出てきたものがわかりやすい文章になったり、漢字にルビがつく、文章がわからないときは「わかりやすくなるソフト」などがあれば、もっと広がると思います。
 今回は、使っている本人の方々にお話を伺いましたが、便利に活用していて、びっくりしました。周囲にいる人のほうが、ITの進化についていけず、本人たちに「ダメ」と言ってないか、改めて考えさせられました。
 障害のある人こそ、もっとこのような機器が必要であり、社会を広げていくことにつながると思います。そのためにも、国の知的障害者向けのIT機器の整備事業は、障害のある人が使えるようになるための機器の整備、環境の整備をめざして施設などに予算化されていますので、みなさんにどこに行けばいいのか、時間帯など各地で公表してほしいと思います。
 そして、そこの施設利用者だけでなく、オープンにして、できれば平日の夕方や土曜日、日曜日に使えるようにお願いしたいと思います。くれぐれも、職員が使うパソコンにならないように。

(おかにわちひろ 全日本手をつなぐ育成会)